[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 最初は、鏡を見ているのではないかと思った。
 顔、体型、手足の形まで寸分違わぬ自分が、目の前にいた。
 それは大きく聳え立った大型カプセルに入れられていて、ゆっくりと呼吸を繰り返していた。
「同じなのは見かけだけではありませんよ。」
 いつの間にか隣に立っていた所長が、さも得意気な面持ちで俺に語りかけた。
「考え方や行動パターン、素質や才能、それに環境によって培われた能力や知識までもが完璧にコピーされているのです。」
 クローン人間が世界的に正式な合法となってから早数年。
 当時は生命誕生への冒涜であるとか、クローン人間への差別が生じるなどといった数々の問題から闇に葬られてきていたこの研究も、今では医学の大きな進歩と発展を世に知らしめている。
 その裏で、クローンのさらなる完全化の研究が進んでいたことは俺もネットを通じて知っていた。
 もちろん、まさか自分がその研究材料の当事者になることになるとは夢にも思わなかったが。
「人類初のコピー人間がこの日本で生まれたことは、必ず後世の歴史に残るだろう。この研究によって人類はまた一歩、神に近付いたと言えるのだ。」
 所長はまたも得意気な表情を浮かべ、カプセルの中をまじまじと見つめるのだった。
 当時騒がれた不完全なクローンという存在と完全に区別するためか、彼らは『それ』をクローン人間とは呼ばなかった。
 定期的な振動音を鳴らし続けていたカプセルが、一際大きな音を立てた。
 そろそろ『彼』もこちらの世界へやってくるだろう。そこから先はお互いに別々の道を歩むことを約束させられている。
 当事者同士の利害関係による争いや、混乱を招かないようにという研究機関の方針らしい。
 まあ、自分と同じ人間に興味がわかないことはないが、仮にもしそれから先、自分が自分のクローンと一緒に行動を共にすると考えるとあまりいい気分はしない。
 この方針は、そうしたことに対する配慮なのだろうと思う。
 今後の生活は、俺もコピー人間の方も全く別々の場所で営んでいかねばならない。もちろん研究機関の全面的な援助を受けながらだ。今後は生涯不自由のない生活が約束されている。こんなに美味しい話は他にないと思った。
 両親を早くに失い、兄弟も親類もなし。就職先はまだ決まっておらず、現在就職活動中。そんな自分が研究材料に適任だと言われた時は正直驚いた。しかし今になって思えば、それは全て理に適った納得できるものであった。
 ――これからはお互いに別々の人生を歩んでいくんだな。少しの間だけでも会えて嬉しかったよ。元気でやれよ、もう一人の俺。
 俺は別室へと移動させられる。
 扉を閉めると間もなく、部屋の中からカプセルの開く大きな音が鳴り響いてきた。
 それはまるで人類の発展を告げる鐘のように、清々しく俺の耳に入ってきていた。

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する