{
2007/08/24(金) }
遠くからバイクの音が徐々に近付いて来るのが分かった。
それは私たちの目の前で止まった。乗ってきた人物がフルフェイスを両手で頭から取る。
信二だった。
彼はこの光景を目の当たりにすると、ここで私が行ったことを全て理解したように見えた。
目の前の男は必死になって信二に助けを乞おうとしていた。
私が再び手を放すと男は膝から崩れ落ちた。私は信二に縋ろうとする男の背中を足で押さえ込む。
「間に合わなかったか……?」
信二の声が聞こえる。
「やっぱり来てくれたんだね。」
私はそれだけを言うと、男の背中をぐりぐりと踏み躙った。男が絶叫する。
「三人ともまだ辛うじて生かしてあるよ。とことん苦しめて殺したいからね。」
私は真剣だったが、その声は興奮からか幾分高ぶっていた。その私の言葉に信二は多少の安堵の表情を浮かべた。それからまた真剣な面持ちになると、私に諭すように話し始めた。
「優美子。俺はお前が好きだ。愛してる。」
突然の告白に胸を打たれる。信二が話を続ける。
「俺は永遠に、お前の味方だ。だからよく聞いてくれ。」
私は黙って耳を傾けた。呼吸を少し整えてから信二は提案した。
「こいつらを殺しちゃいけない。警察沙汰にならないようにするんだ。いいか。こいつらを飼うんだ。」
信二の突拍子もない提案に、私はしばし言葉を発することができなかった。しかし彼の表情は真剣そのものだった。
「こいつらを奴隷にして、毎日拷問するんだよ。簡単に殺してしまうより、長期に渡ってその罪深さを思い知らせた方がいい。」
確かにそれは一理あると思った。『毎日拷問』という言葉に私の感情はさらに高揚する。
「このまま、終わりにしてしまっていいのか? 京香は、それだけで満足するか?」
……虚をつかれた。私はこの時になって初めて、いつの間にか自分が本来の目的を忘れていたことに気付かされた。
――姉さん……。そっか。私、復讐に来たんだよね。いつからこんな風に?…どうして私は?……
「お前は、こいつらに己の罪深さを認めさせて、償わせるべきだ。きっとそれが……優美子にとって為すべき正義……」
――正義……正義……。そうだ。私の復讐はまだまだ終わりじゃない。姉さんの無念は、こんな生温いものでは決して晴らすことができない。
自分の頭が整理されていく。それを感じると同時に、私は信二への尊敬の念をさらに強くしていた。しかし、その提案に乗ったところで、姉の仇をいつまでも生かしておける自信もなかった。
何しろ私は……既に、敵を痛めつけることに快楽を覚えてしまった女……
その気持ちを汲んだように、彼はにやりと一つ笑みを零しながら続ける。
「楽しむのも悪くないと思うぜ。そんなお前も魅力的だ。なに、これから先、もし警察沙汰になるようなことがあれば、俺が全てを被って自主してやるさ。誰が何と言おうが、お前は正義の裁きを下してるんだ。自信をもてよな。」
彼の言葉に、胸の奥がすっと落ち着いてくるのを感じた。その包容力に私は心を奪われていた。
――信二……
そこまで言うと信二は、持ってきたバットで倒れた男の頭を殴りつけた。
「そう。これは俺が全部やったことなんだよ。」
男は意識を失った。私は思わず、信二の胸に頭を埋めていた。
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それは私たちの目の前で止まった。乗ってきた人物がフルフェイスを両手で頭から取る。
信二だった。
彼はこの光景を目の当たりにすると、ここで私が行ったことを全て理解したように見えた。
目の前の男は必死になって信二に助けを乞おうとしていた。
私が再び手を放すと男は膝から崩れ落ちた。私は信二に縋ろうとする男の背中を足で押さえ込む。
「間に合わなかったか……?」
信二の声が聞こえる。
「やっぱり来てくれたんだね。」
私はそれだけを言うと、男の背中をぐりぐりと踏み躙った。男が絶叫する。
「三人ともまだ辛うじて生かしてあるよ。とことん苦しめて殺したいからね。」
私は真剣だったが、その声は興奮からか幾分高ぶっていた。その私の言葉に信二は多少の安堵の表情を浮かべた。それからまた真剣な面持ちになると、私に諭すように話し始めた。
「優美子。俺はお前が好きだ。愛してる。」
突然の告白に胸を打たれる。信二が話を続ける。
「俺は永遠に、お前の味方だ。だからよく聞いてくれ。」
私は黙って耳を傾けた。呼吸を少し整えてから信二は提案した。
「こいつらを殺しちゃいけない。警察沙汰にならないようにするんだ。いいか。こいつらを飼うんだ。」
信二の突拍子もない提案に、私はしばし言葉を発することができなかった。しかし彼の表情は真剣そのものだった。
「こいつらを奴隷にして、毎日拷問するんだよ。簡単に殺してしまうより、長期に渡ってその罪深さを思い知らせた方がいい。」
確かにそれは一理あると思った。『毎日拷問』という言葉に私の感情はさらに高揚する。
「このまま、終わりにしてしまっていいのか? 京香は、それだけで満足するか?」
……虚をつかれた。私はこの時になって初めて、いつの間にか自分が本来の目的を忘れていたことに気付かされた。
――姉さん……。そっか。私、復讐に来たんだよね。いつからこんな風に?…どうして私は?……
「お前は、こいつらに己の罪深さを認めさせて、償わせるべきだ。きっとそれが……優美子にとって為すべき正義……」
――正義……正義……。そうだ。私の復讐はまだまだ終わりじゃない。姉さんの無念は、こんな生温いものでは決して晴らすことができない。
自分の頭が整理されていく。それを感じると同時に、私は信二への尊敬の念をさらに強くしていた。しかし、その提案に乗ったところで、姉の仇をいつまでも生かしておける自信もなかった。
何しろ私は……既に、敵を痛めつけることに快楽を覚えてしまった女……
その気持ちを汲んだように、彼はにやりと一つ笑みを零しながら続ける。
「楽しむのも悪くないと思うぜ。そんなお前も魅力的だ。なに、これから先、もし警察沙汰になるようなことがあれば、俺が全てを被って自主してやるさ。誰が何と言おうが、お前は正義の裁きを下してるんだ。自信をもてよな。」
彼の言葉に、胸の奥がすっと落ち着いてくるのを感じた。その包容力に私は心を奪われていた。
――信二……
そこまで言うと信二は、持ってきたバットで倒れた男の頭を殴りつけた。
「そう。これは俺が全部やったことなんだよ。」
男は意識を失った。私は思わず、信二の胸に頭を埋めていた。
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