[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 俄かには信じ難い内容ではあった。
 …人体解剖学…。人体の器官や組織を研究する学問といったところだろうか。
『信二。私、復讐する。あいつらに…地獄を味わわせて、姉さんの無念を晴らす。』
 優美子の決意を耳にした今、その気持ちを疑う気も否定する気も一切ない。しかし彼女にはおそらく格闘の実戦経験がない。研究の成果がうまくいくという保証もない。それに…優美子にとってそれが最善の方法なのか。姉の京香がもしこの場にいたなら、そんなことを望むだろうか。
 幾重にも重なる不安と葛藤の渦が俺を飲み込み、頭が混乱してくる。
 バイクに跨り、夜の街を疾走する。
 ――俺は一体、どうしたらいい? どうしたら彼女の力になれるのだろうか…
 春の夜風が肌を優しく撫でていった。混乱する頭を冷やすように、俺はその春風に身を委ねていた。


 優美子と出会ったのは、まだお互い中学生の時だった。
 一見気が強く、どこか冷たい感じを漂わす反面、内面は素直で優しい女だった。
 あの事件を境に、優美子がこれほどまでに変わってしまうとは夢にも思わなかった。いや、本当のところ優美子自身は何も変わってはいないのかもしれない。
 自分の正義を信じて突き進む魂の気高さ、目標に向かって努力する姿勢は、優美子のもつ最大の美徳だった。それは変わらない。
 ただその目標の焦点があの事件をきっかけに変わってしまった。それだけのこと。
 その目標が例えどんなものであっても、俺は最後まで彼女の味方でいたいと思っていた。
 そう。例え親や親戚、友人を敵に回してでも、俺は優美子に心から寄り添っていたいと願った。
 その気持ちに嘘はない。


 夕暮れの街角を過ぎていく。
 運命の出会いというのは人が想像しているほどロマンティックではないということを、俺はこの時初めて知った。それは時に残酷で…非情で…
 きっかけは馬鹿らしいものだ。すれ違いざまに肩がぶつかった…ただそれだけのこと…
 因縁をつけてくる不良。「殺すぞ」などと軽々しい口を叩く屑野郎。
 この時、俺の中の何かが完全にふっ切れたのだ。
 気付くと俺は、ヘルメットで殴っていた。
 何度も…何度も…何度も…何度も…
 相手が許しを乞うたところでやめる必要はない。俺はさらに強く、強く、殴り続けた。
 ――こいつは今日から…優美子の実験体だ…
 俺が彼女にしてやれること。彼女の力になれること。こんなに簡単なことだったんだ。
 ――優美子のことが大好きだ。心から愛している。俺が…力になってやる。
 その思いが俺を後から後から支え続けた。
 随分と思い悩んでいたことがまるで嘘であるかのように、俺の心は清々しかった。

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