[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 姉の葬式のゴタゴタが終わった後、私は悲しさを紛らわせるように、医学書を見た。
 いえ。それはきっと、医学書を見ることが、姉と会話する唯一の手段であると感じていたから。そして、それがあの男たちへの復讐にきっとつながると信じていたから。
 ――姉が熱心に人体について研究していたのは、きっとこの時のためなのだ。
 そう何度自分に言い聞かせただろう。それでも時々、これが姉の望んでいたことなのか不安になることがあった。そんな時は、いつも医学書を通じて姉に語りかけるのだ。
 ――姉さん。これで…いいんだよね…
 側で姉が笑ってくれているように感じた。私は、間違っていない。私は、正義…
 私にとっての『医学書』は、既に立場を一変していた。
 それまでは、受験の勉強をより深める程度のものだったのに、今や人体破壊実践のための知識として必死に研究すべきものへと変わっていた。

 それから私は研究を続けた。小さい頃から医者を目指す姉の側に私はいた。
 医学書の類は姉が読むのを横からちょこちょこと盗み見る程度ではあったが、私は確かにその医学書を通じて姉の存在そのものを肌で感じていたのだ。
 こうしてあらためて見てみると数々の専門用語に眩暈がしそうになる。
 訳の分からないドイツ語?の羅列に発狂しそうにもなる。
 しかし私はそれでもやらなければならなかったのだ。だってそれが、姉の残した遺言であると感じていたから…。あの日から復讐することをこの胸に何度も刻み付けてきたのだから…。

 私の中の『正義』がじくりと疼いた。



 喫茶店で注文した紅茶に手をつけた頃、ようやく信二が姿を現した。
「…よう。元気か?」
 信二が声をかけてきた。気さくな表情で私に声をかける。
「髪、下ろしたんだな。」
 信二のさりげない言葉が今は心底心地がよかった。私の頭を優しく撫でる。
 これまでポニーテールにしていた髪を、今は結わずにさらりと下ろしていた。
「うん。特に理由はないんだけどね…。って…ううん。やっぱり信二には本当のこと言うね。」
 二人で押し黙る。沈黙がしばし辺りを包み込む。
「あいつらが…いつも夢に出てくるの。鳥肌が立つくらい気持ち悪い表情で…目の前で…汚いものを見せながら…。絶対に、忘れられない…許さない…」
 信二はそんな私の肩をそっと抱いた。
「これからは俺がお前を守ってやる。ずっと、ずっとな。」
 温かかった。信二の手が私の頭を優しく撫でる度に、私の胸が大きく高鳴る。こんな経験は生まれて初めてだった。
「姉さんとね。同じ髪型にしたんだ。せめて、私があの人を忘れることがないように、そして…」
 そこで言葉を区切る。私は決意を噛み締めるように言葉を続けた。
「あいつらのことを、決して忘れることがないように…」

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