{
2007/08/12(日) }
姉が死んで、半月が経った。
あの時、あれほどまでに私の頬を濡らした涙も、もう枯れ果ててしまった。
女医として多くの患者から信頼されていた。研究熱心でもあった。私のたった一人の姉。
いろいろな話をした。相談をした。励ましてくれた。力になってくれた。
もうここに彼女の姿はない。
姉がいなくなってからの生活は、私にとってはまるで太陽を失った闇の世界を生きるようなものだった。
だからこそ、かつて姉の書斎だったこの部屋に、私は彼女の姿を求めるようになったのだろう。
机上に無雑作に置かれた数冊の医学書に、ふと目を落とす。
この部屋にある多くの医学書を通すことで、私はその先に姉の面影を感じることができた。それが、私に残された彼女との唯一のコミュニケーション手段だった。
――私も将来は姉さんと同じ医師になりたいな。
――優美子はまだ子どもだからね。もう少し大きくなったら一緒に勉強しようね。
そう話していたのがつい最近のことのように感じる。
姉のようになりたい。ただそれだけが私の生き甲斐だった。私は姉の後姿に惚れていたのだ。
パラパラとページをめくる。
私はそれを通じて、彼女と確かに会話をすることができた。彼女からのメッセージを受け取ることができた。
何度も目を通した書物の数々。それを通じて学んだことも本当にたくさんあった。
――いつから変わってしまったんだろう。
姉がこの世を去ってから、私はそれまで以上に医学書を読み漁り、独学で研究するようになった。
それは、姉がいた頃の好奇心からの学習とは大きくかけ離れたものとなった。
強い義務感、使命感。それを支えていたのは…憎悪と、呪心。
私はあの日を境に、姉のような立派な医師になりたいという夢を捨てた。それと同時に私は、別の大きな目標をもてたようにも感じていた。
あの男たちのことを考える度に吐き気を催した。
性欲に囚われ、欲望のままに、女をまるで自分の快楽のための道具のようにする。
――男なんて…皆、汚らわしい屑だ。
そう思い始めた頃には、きっともう私の中の何かが完全に壊れていたのだろう。
でも、そんな思いから熱心に始めた研究に後悔の念などは微塵もなかった。
これが姉の仇を取ることに近付く手段であると考えるほど、私はますます研究に没頭できた。
彼女が医学書を通じて、私に語りかけてくる。研究は私にとって彼女との会話そのものだった。
――大丈夫だからね、姉さん。絶対あいつらを…壊してみせるから…
無意識に口元に笑みが浮かぶ。
姉と私との共同研究。――人体の壊し方。
その成果を試す時が近いと思えば思うほど、私の胸は高鳴った。
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あの時、あれほどまでに私の頬を濡らした涙も、もう枯れ果ててしまった。
女医として多くの患者から信頼されていた。研究熱心でもあった。私のたった一人の姉。
いろいろな話をした。相談をした。励ましてくれた。力になってくれた。
もうここに彼女の姿はない。
姉がいなくなってからの生活は、私にとってはまるで太陽を失った闇の世界を生きるようなものだった。
だからこそ、かつて姉の書斎だったこの部屋に、私は彼女の姿を求めるようになったのだろう。
机上に無雑作に置かれた数冊の医学書に、ふと目を落とす。
この部屋にある多くの医学書を通すことで、私はその先に姉の面影を感じることができた。それが、私に残された彼女との唯一のコミュニケーション手段だった。
――私も将来は姉さんと同じ医師になりたいな。
――優美子はまだ子どもだからね。もう少し大きくなったら一緒に勉強しようね。
そう話していたのがつい最近のことのように感じる。
姉のようになりたい。ただそれだけが私の生き甲斐だった。私は姉の後姿に惚れていたのだ。
パラパラとページをめくる。
私はそれを通じて、彼女と確かに会話をすることができた。彼女からのメッセージを受け取ることができた。
何度も目を通した書物の数々。それを通じて学んだことも本当にたくさんあった。
――いつから変わってしまったんだろう。
姉がこの世を去ってから、私はそれまで以上に医学書を読み漁り、独学で研究するようになった。
それは、姉がいた頃の好奇心からの学習とは大きくかけ離れたものとなった。
強い義務感、使命感。それを支えていたのは…憎悪と、呪心。
私はあの日を境に、姉のような立派な医師になりたいという夢を捨てた。それと同時に私は、別の大きな目標をもてたようにも感じていた。
あの男たちのことを考える度に吐き気を催した。
性欲に囚われ、欲望のままに、女をまるで自分の快楽のための道具のようにする。
――男なんて…皆、汚らわしい屑だ。
そう思い始めた頃には、きっともう私の中の何かが完全に壊れていたのだろう。
でも、そんな思いから熱心に始めた研究に後悔の念などは微塵もなかった。
これが姉の仇を取ることに近付く手段であると考えるほど、私はますます研究に没頭できた。
彼女が医学書を通じて、私に語りかけてくる。研究は私にとって彼女との会話そのものだった。
――大丈夫だからね、姉さん。絶対あいつらを…壊してみせるから…
無意識に口元に笑みが浮かぶ。
姉と私との共同研究。――人体の壊し方。
その成果を試す時が近いと思えば思うほど、私の胸は高鳴った。
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