{
2007/07/12(木) }
ゴトンという音が別荘内に響き渡った。
コンクリート仕立てのこの別荘では、少しの物音が館内中に聞こえる。僕は無意識に息を殺した。
彼女たちが動き出したのだ。先ほどの部屋を出て廊下を歩いている音がよく聞こえる。
僕は恐ろしくなった。考えてみれば、いつかこの時が来ることは最初から分かっていたことだった。しかし、その瞬間の恐怖心というものがこんなに大きなものだということは、少し前の僕にも想像がつかなかった。
部屋の一室に籠る。じっと息を潜めて耳を欹て、彼女たちの動きを読む。コツコツと響く足音が徐々に遠ざかっていくのが分かる。きっと僕を監禁していた部屋へ向かったのだ。いずれ異状に気付いた彼女たちは…
「くそっ!」
思った以上の大音量で間もなく予想通りの反応の声が聞こえてくる。すぐ側で聞こえた気がして僕は身を震わせた。
ちっという舌打ちの音。ヒステリックな二つの声が耳を劈く。僕は思わず耳を塞いだ。
いずれこの場所にもやってくるだろう。
――こうなったら…やるしかない…
僕は物音を立てないように気をつけながら部屋の中をかき回した。何か武器になるものはないかと懸命に探した。部屋には小さな木のドレッサーが置かれていた。引き出しを一つ一つ開けて中を確認する。
――これだ…
そこには口紅やパフなどに紛れて一つのナイフが入っていた。そっと手に忍ばせる。部屋の内側からドアにそっと近付き、廊下の様子を探る。一つの足音がこちらに近付いてくる。どうやら手分けをして探し始めたようだ。
――やるなら、今しかない。
ドンという音を立てながら一つ一つのドアを開けて中を調べていっているのが分かる。もう、すぐ隣の部屋までやってきている様子だ。僕は覚悟を決めた。勝敗などどうでもいい。ただ、もうじっとしていられなかった。
やがて僕のいる部屋のドアが開かれた。ドアの背面に貼り付くような形で身を隠す。当然だが、彼女は既に服を着ていた。ピンクのチュニックにマイクロミニのスカート、黒いハイソックスにローファーという格好だった。僕は心臓の音が相手に聞こえてしまいはしないかと思えるほど鼓動を強くしていた。
「動くな…」
彼女は硬直した。僕は声を低くして腕を彼女の背後から首に絡ませ、反対の手でナイフを首元に突きつける。彼女の表情は読み取れない。僕より背が少しだけ高かった。髪の感じからしてそれは瞳のきつい方の子だった。ちっという舌打ちが聞こえる。そのままお互いに動けなくなった。
「ふぅ…どうしたいの?」
彼女の声は余裕に満ちていた。状況は僕の方が圧倒的に有利なはずだ。ここで怯んではいけない。
「僕を、ここから出せ。」
しばし、互いを沈黙が包む。彼女の表情は窺えない。しかし、肩を少し震わせているのが分かった。
――笑っているのか。
僕はたじろいだ。予想もつかなかった彼女の反応に驚きを隠せない。その油断が、僕にほんの少しの隙を与えたのだろう。彼女はそれを見逃してはくれなかった。
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コンクリート仕立てのこの別荘では、少しの物音が館内中に聞こえる。僕は無意識に息を殺した。
彼女たちが動き出したのだ。先ほどの部屋を出て廊下を歩いている音がよく聞こえる。
僕は恐ろしくなった。考えてみれば、いつかこの時が来ることは最初から分かっていたことだった。しかし、その瞬間の恐怖心というものがこんなに大きなものだということは、少し前の僕にも想像がつかなかった。
部屋の一室に籠る。じっと息を潜めて耳を欹て、彼女たちの動きを読む。コツコツと響く足音が徐々に遠ざかっていくのが分かる。きっと僕を監禁していた部屋へ向かったのだ。いずれ異状に気付いた彼女たちは…
「くそっ!」
思った以上の大音量で間もなく予想通りの反応の声が聞こえてくる。すぐ側で聞こえた気がして僕は身を震わせた。
ちっという舌打ちの音。ヒステリックな二つの声が耳を劈く。僕は思わず耳を塞いだ。
いずれこの場所にもやってくるだろう。
――こうなったら…やるしかない…
僕は物音を立てないように気をつけながら部屋の中をかき回した。何か武器になるものはないかと懸命に探した。部屋には小さな木のドレッサーが置かれていた。引き出しを一つ一つ開けて中を確認する。
――これだ…
そこには口紅やパフなどに紛れて一つのナイフが入っていた。そっと手に忍ばせる。部屋の内側からドアにそっと近付き、廊下の様子を探る。一つの足音がこちらに近付いてくる。どうやら手分けをして探し始めたようだ。
――やるなら、今しかない。
ドンという音を立てながら一つ一つのドアを開けて中を調べていっているのが分かる。もう、すぐ隣の部屋までやってきている様子だ。僕は覚悟を決めた。勝敗などどうでもいい。ただ、もうじっとしていられなかった。
やがて僕のいる部屋のドアが開かれた。ドアの背面に貼り付くような形で身を隠す。当然だが、彼女は既に服を着ていた。ピンクのチュニックにマイクロミニのスカート、黒いハイソックスにローファーという格好だった。僕は心臓の音が相手に聞こえてしまいはしないかと思えるほど鼓動を強くしていた。
「動くな…」
彼女は硬直した。僕は声を低くして腕を彼女の背後から首に絡ませ、反対の手でナイフを首元に突きつける。彼女の表情は読み取れない。僕より背が少しだけ高かった。髪の感じからしてそれは瞳のきつい方の子だった。ちっという舌打ちが聞こえる。そのままお互いに動けなくなった。
「ふぅ…どうしたいの?」
彼女の声は余裕に満ちていた。状況は僕の方が圧倒的に有利なはずだ。ここで怯んではいけない。
「僕を、ここから出せ。」
しばし、互いを沈黙が包む。彼女の表情は窺えない。しかし、肩を少し震わせているのが分かった。
――笑っているのか。
僕はたじろいだ。予想もつかなかった彼女の反応に驚きを隠せない。その油断が、僕にほんの少しの隙を与えたのだろう。彼女はそれを見逃してはくれなかった。
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