{
2007/07/06(金) }
闇が迫ってくる。
暗闇がこんなに怖いものだと感じたのは、生まれて初めてのことだった。
息苦しさと心にかかる重圧が、この闇をさらに深く、厚くしていた。
いつ明けるとも知れないこの狭い空間に身を委ね、ただ怯えることしかできない。あくまで本能的な恐怖心が僕を支配していた。
壁一枚分ほどの厚みを隔てたところに、彼女らは確かに存在している。しかしその距離は近くて遠い。何より僕と彼女たちを遮っているこの薄い「壁」こそが、そもそも僕と彼女たちとの立場の違いを顕著に表しているのだ。
「あの子、どうしてあげようか。」
こもって聞こえてくる声はすぐ側からだ。しかしこの壁一枚分の厚みのために遠くに聞こえる。
「別荘まではもうちょっと時間がかかるから。それまでに考えよ?」
それに応える声もまた同じようにこもって聞こえてくる。トーンこそ高いが、その声色は冷たく乾いている。
――こんなことになるなんて…
この短時間の間に心の中で何度こう叫んだだろう。あの時、行動を起こしたのは間違いなく僕だった。しかしその結果、今自分が置かれているような状況に陥ろうなど、一体誰が予想できただろう。僕はもう考えることに疲れてしまっていた。
僕は彼女たちと場所を共にしながら、しかし彼女たちとは全く違う立場でここにいた。僕の手足を固く結んだ縄と、口にしっかりと貼られたガムテープがそのことを如実に物語っていた。
「あ、ちょっとそこで止まってくれない? ジュース買ってきたい。」
と言った声が響くと、これまでこの空間を包み込んでいた振動がやがて止まった。間もなくバタンという音とともに一人の気配が消えた。この場に残ったもう一人の声が僕に語りかける。
「ねえ、ちゃんと生きてるよね? ふふ、これからたくさん可愛がってあげるからね。」
無論、口を完全に塞がれている僕はそれに応えることなどできない。しかしこの問いかけには一つの意味があった。
彼女には僕の姿が見えていないのだ。当然、僕からも彼女の姿は見えない。何故なら僕は、彼女たちの走らせるこの車のトランクに、海老のように身体を丸めて押し込まれていたのだから。
間もなく、再び車内にバタンという音が響いた。もう一人の女が戻ってきたのだ。
「ありがと。はい、これ。それじゃ、お願いね。」
その声とともにエンジン音が鳴り、再び車は走り出した。これからどこへ向かうのか、僕はこれからどうなるのか、それら全てのことを知っているのはきっと彼女たちだけなのだろう。これから先のことを考えてみても僕にはまるで分からない。
僕は、恐怖心と必死で闘っていた。
この冷たく重い空間の中、ただ運ばれていくしかない自分は、まるで人形のようだった。
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暗闇がこんなに怖いものだと感じたのは、生まれて初めてのことだった。
息苦しさと心にかかる重圧が、この闇をさらに深く、厚くしていた。
いつ明けるとも知れないこの狭い空間に身を委ね、ただ怯えることしかできない。あくまで本能的な恐怖心が僕を支配していた。
壁一枚分ほどの厚みを隔てたところに、彼女らは確かに存在している。しかしその距離は近くて遠い。何より僕と彼女たちを遮っているこの薄い「壁」こそが、そもそも僕と彼女たちとの立場の違いを顕著に表しているのだ。
「あの子、どうしてあげようか。」
こもって聞こえてくる声はすぐ側からだ。しかしこの壁一枚分の厚みのために遠くに聞こえる。
「別荘まではもうちょっと時間がかかるから。それまでに考えよ?」
それに応える声もまた同じようにこもって聞こえてくる。トーンこそ高いが、その声色は冷たく乾いている。
――こんなことになるなんて…
この短時間の間に心の中で何度こう叫んだだろう。あの時、行動を起こしたのは間違いなく僕だった。しかしその結果、今自分が置かれているような状況に陥ろうなど、一体誰が予想できただろう。僕はもう考えることに疲れてしまっていた。
僕は彼女たちと場所を共にしながら、しかし彼女たちとは全く違う立場でここにいた。僕の手足を固く結んだ縄と、口にしっかりと貼られたガムテープがそのことを如実に物語っていた。
「あ、ちょっとそこで止まってくれない? ジュース買ってきたい。」
と言った声が響くと、これまでこの空間を包み込んでいた振動がやがて止まった。間もなくバタンという音とともに一人の気配が消えた。この場に残ったもう一人の声が僕に語りかける。
「ねえ、ちゃんと生きてるよね? ふふ、これからたくさん可愛がってあげるからね。」
無論、口を完全に塞がれている僕はそれに応えることなどできない。しかしこの問いかけには一つの意味があった。
彼女には僕の姿が見えていないのだ。当然、僕からも彼女の姿は見えない。何故なら僕は、彼女たちの走らせるこの車のトランクに、海老のように身体を丸めて押し込まれていたのだから。
間もなく、再び車内にバタンという音が響いた。もう一人の女が戻ってきたのだ。
「ありがと。はい、これ。それじゃ、お願いね。」
その声とともにエンジン音が鳴り、再び車は走り出した。これからどこへ向かうのか、僕はこれからどうなるのか、それら全てのことを知っているのはきっと彼女たちだけなのだろう。これから先のことを考えてみても僕にはまるで分からない。
僕は、恐怖心と必死で闘っていた。
この冷たく重い空間の中、ただ運ばれていくしかない自分は、まるで人形のようだった。
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