{
2007/06/12(火) }
そこは真っ白な世界だった。
部屋高くについている一つの窓だけが、外の風景を四角く切り取っていた。ぼんやりとして霧がかかったような外観は、俺の深層心理をそのまま映し出しているかのようであった。
…あ…
目の前で昨日の女性が俺をじっと見つめながら立っていた。
また…あの夢か?…
女はゆっくりと俺に近付いてくる。甘く、とろけるような芳しい香り。
彼女はその細い指先で俺の顎を軽く持ち上げると、俺にキスをした。そして次の瞬間、俺の鳩尾めがけて容赦ない力で拳を打ち込んだ。
「うえっ!!」
思わず声を上げ、悶絶する。女は拳を俺の腹に突き立てたまま、小首をかしげて俺の顔を覗き込む。
苦しさから身体をくの字に曲げた俺をじっと、笑顔のままで見つめていた。
目を大きく見開き、口から舌半分をだらりと垂らす。喉元からこみ上げる嘔吐を必死で堪える。
彼女は続けて俺の首を掴むと俺を押し倒した。倒れた先にはいつの間にかベッドがあり、俺はその上に転がるように身を投じた。
馬乗りになった彼女は俺を見下ろしながら、両手でじわじわと俺の首を絞める。
「く…かはっ…」
声を漏らす。苦しくてたまらない。
徐々に体重をかけられ、息をするのもままならない。
しかし彼女はその手の力を緩めることはなかった。
しばらくそうした後、彼女は片方の手を後ろに持っていった。何かを取り出している。
相変わらず俺の首を絞める力は入ったままだ。
彼女が片方の手で取り出したもの。それは…いくつもの太い注射針だった。
「な…何を?…」
彼女は黙ったまま一度その手を離すと、想像以上の力で俺の服を引きちぎっていった。再び片手で首を絞めると、反対の手で俺の身体中に躊躇なく針を突き刺していく。俺は悲鳴を上げた。
そんな俺を見つめながら彼女はなおも妖艶な笑みを俺に向けている。
………
痛い…痛い…。
肌を次々と突き破る針の痛みは想像を超えるものであった。
――いや、これは夢だ。夢なんだ。痛みなど、実は少しも感じてなどいないのだ。
そう思い込もうとする俺をあざ笑うように、彼女はくすくすと笑う。
格調高い品性のある声音。俺はとっさにそんな風に感じた。
それにしても、身体中に感じているこの痛み。これは本当に虚像なのだろうか。
俺は確かに感じるその痛みから、必死で目を逸らそうとしていた。
Back | Novel index | Next
部屋高くについている一つの窓だけが、外の風景を四角く切り取っていた。ぼんやりとして霧がかかったような外観は、俺の深層心理をそのまま映し出しているかのようであった。
…あ…
目の前で昨日の女性が俺をじっと見つめながら立っていた。
また…あの夢か?…
女はゆっくりと俺に近付いてくる。甘く、とろけるような芳しい香り。
彼女はその細い指先で俺の顎を軽く持ち上げると、俺にキスをした。そして次の瞬間、俺の鳩尾めがけて容赦ない力で拳を打ち込んだ。
「うえっ!!」
思わず声を上げ、悶絶する。女は拳を俺の腹に突き立てたまま、小首をかしげて俺の顔を覗き込む。
苦しさから身体をくの字に曲げた俺をじっと、笑顔のままで見つめていた。
目を大きく見開き、口から舌半分をだらりと垂らす。喉元からこみ上げる嘔吐を必死で堪える。
彼女は続けて俺の首を掴むと俺を押し倒した。倒れた先にはいつの間にかベッドがあり、俺はその上に転がるように身を投じた。
馬乗りになった彼女は俺を見下ろしながら、両手でじわじわと俺の首を絞める。
「く…かはっ…」
声を漏らす。苦しくてたまらない。
徐々に体重をかけられ、息をするのもままならない。
しかし彼女はその手の力を緩めることはなかった。
しばらくそうした後、彼女は片方の手を後ろに持っていった。何かを取り出している。
相変わらず俺の首を絞める力は入ったままだ。
彼女が片方の手で取り出したもの。それは…いくつもの太い注射針だった。
「な…何を?…」
彼女は黙ったまま一度その手を離すと、想像以上の力で俺の服を引きちぎっていった。再び片手で首を絞めると、反対の手で俺の身体中に躊躇なく針を突き刺していく。俺は悲鳴を上げた。
そんな俺を見つめながら彼女はなおも妖艶な笑みを俺に向けている。
………
痛い…痛い…。
肌を次々と突き破る針の痛みは想像を超えるものであった。
――いや、これは夢だ。夢なんだ。痛みなど、実は少しも感じてなどいないのだ。
そう思い込もうとする俺をあざ笑うように、彼女はくすくすと笑う。
格調高い品性のある声音。俺はとっさにそんな風に感じた。
それにしても、身体中に感じているこの痛み。これは本当に虚像なのだろうか。
俺は確かに感じるその痛みから、必死で目を逸らそうとしていた。
Back | Novel index | Next

