{
2007/03/07(水) }
小倉は昇天した後、ぐったりとして動かなくなった。
ただ、そこで終わっていればどんなによかっただろう……
冷静な顔で小倉のそれを自分の中から抜き、少し離れた優美子はその後、無防備に仰向けで寝ている小倉の腹めがけてニードロップをしたのだ。
小倉は苦しそうな声をあげ、藤村と同じように、血を吐いて動かなくなった。
もはや尋常でないことは誰の目から見ても明らかだ。それなのに……
……優美子の、何かを悟ったような落ち着きと無表情な顔は一体何なのだろう……
――本当に、彼女こそが女神なのかもしれない……
俺の中で何かが壊れ始めていた。
正義や秩序。俺が大好きな言葉だったはずだ。
恐怖に屈することなく、いつでも自分の信念を貫く。
大人たちは俺を褒め、俺自身そういう自分を誇らしく思っていた。
――本当は……違うのかもしれない……
自分の中の光と闇が入れかわり、精神世界に混乱を招く。
俺の中のモラルが揺らぎ、崩れていく……
――俺は一体……今まで何を見てきたんだろう……
優美子は小倉の腹に突き刺さった自分の膝を抜き取り、そんな俺の姿を見ながら、ゆっくりと……ゆっくりと……
最後の獲物となった俺に向かって迫ってきた。
俺の頭には、もはや思考力や判断力は存在しなかった。
ただ目の前に突きつけられた現実を見ながら、震える体で「恐怖」を表現するしかなかった。
今まさに、一歩一歩と迫り来る、優美子という名の脅威に対して……
「さぁ、最後の一人ね。どうしてあげようかしら。」
優美子が楽しそうに、満面の笑みを浮かべて近づいてくる。
俺は優美子のその言葉に虚をつかれた思いだった。
「最後の一人」……「一人」……
――そうか……彼女にとって俺は竜崎ではなく、最後の一人……
……大勢の獲物の中の一人なんだ……
そう感じた瞬間、俺はもう一つの自分の気持ちに気付き、自嘲の念を強くした。
――俺が?……この俺が……? ばかな! 相手は優美子。あの優美子なんだ……
そう、俺は優美子を憎んでいる。
冷血……残忍……無慈悲……。しかし、恐ろしく魅力的な……魅力的な……?
――女神?……笑わせるな。竜崎。お前は何を期待していた?
――彼女の中の特別な存在に?……彼女の魅力に?……いい加減にしろ!
――悪魔だ……お前は今悪魔の狂気に晒され、心まで奪われかけているんだ……
その瞬間俺の頭は思考を再開し、恐怖はやがて激しい怒りとなって優美子に向けられていた。
そして俺は次の瞬間、無我夢中で優美子に向かって拳を振り回していた。
Back | Novel index | Next
ただ、そこで終わっていればどんなによかっただろう……
冷静な顔で小倉のそれを自分の中から抜き、少し離れた優美子はその後、無防備に仰向けで寝ている小倉の腹めがけてニードロップをしたのだ。
小倉は苦しそうな声をあげ、藤村と同じように、血を吐いて動かなくなった。
もはや尋常でないことは誰の目から見ても明らかだ。それなのに……
……優美子の、何かを悟ったような落ち着きと無表情な顔は一体何なのだろう……
――本当に、彼女こそが女神なのかもしれない……
俺の中で何かが壊れ始めていた。
正義や秩序。俺が大好きな言葉だったはずだ。
恐怖に屈することなく、いつでも自分の信念を貫く。
大人たちは俺を褒め、俺自身そういう自分を誇らしく思っていた。
――本当は……違うのかもしれない……
自分の中の光と闇が入れかわり、精神世界に混乱を招く。
俺の中のモラルが揺らぎ、崩れていく……
――俺は一体……今まで何を見てきたんだろう……
優美子は小倉の腹に突き刺さった自分の膝を抜き取り、そんな俺の姿を見ながら、ゆっくりと……ゆっくりと……
最後の獲物となった俺に向かって迫ってきた。
俺の頭には、もはや思考力や判断力は存在しなかった。
ただ目の前に突きつけられた現実を見ながら、震える体で「恐怖」を表現するしかなかった。
今まさに、一歩一歩と迫り来る、優美子という名の脅威に対して……
「さぁ、最後の一人ね。どうしてあげようかしら。」
優美子が楽しそうに、満面の笑みを浮かべて近づいてくる。
俺は優美子のその言葉に虚をつかれた思いだった。
「最後の一人」……「一人」……
――そうか……彼女にとって俺は竜崎ではなく、最後の一人……
……大勢の獲物の中の一人なんだ……
そう感じた瞬間、俺はもう一つの自分の気持ちに気付き、自嘲の念を強くした。
――俺が?……この俺が……? ばかな! 相手は優美子。あの優美子なんだ……
そう、俺は優美子を憎んでいる。
冷血……残忍……無慈悲……。しかし、恐ろしく魅力的な……魅力的な……?
――女神?……笑わせるな。竜崎。お前は何を期待していた?
――彼女の中の特別な存在に?……彼女の魅力に?……いい加減にしろ!
――悪魔だ……お前は今悪魔の狂気に晒され、心まで奪われかけているんだ……
その瞬間俺の頭は思考を再開し、恐怖はやがて激しい怒りとなって優美子に向けられていた。
そして俺は次の瞬間、無我夢中で優美子に向かって拳を振り回していた。
Back | Novel index | Next

