[18禁] 逆リョナ小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
 葵はおもむろに、壁に立てかけてあった桐を手に俺の方へ向かってきた。
 豆電球の明かりが逆光となって、葵の表情は読み取れない。
 ただ黒く細いシルエットが、俺の目の前に大きく立ちはだかり、俺のモノに焦点をしぼるようにして桐を振り上げていた。
 …やめろ…頼む…やめてくれ…
 葵が手に力を込めるのが分かる。俺は目を閉じ、覚悟を決めた。
 その時だった。俺の前方から叫び声が聞こえてきた。
「やめろ…葵!やめてくれ…」
 その声の主は、ぼろぼろになった亮平だった。
 葵の手が止まる。その手は小刻みに震えていた。
「どうして…。あなたにそんなこと言われたくない!こいつは…」
「そいつは、何もしていない!何もしてないんだ!!」
 声帯がほとんど潰れてしまっているのか、その声はもう既にがらがらにしゃがれてしまっていた。
 葵はその言葉を聞くと一瞬たじろぎ、手に込めた力をふっと抜いたように思えた。
「だ…だってこいつは…あなたと同じ…」
「俺が…俺だけがやったことなんだ。」
「そんなこともう関係ない!こいつだって…その時その場にいたんでしょ!!無関係じゃないよ!」
 葵は既に冷静さを失っていた。
 …確かに…俺はあの場所にいた…言い訳はできない…
 しかし亮平は言葉をさらに続けた。
「そうだよ。そいつも俺と同じ場所にいた。俺を…止めるためにな。」
 表情は分からないが、その言葉に葵からは明らかな動揺が見て取れた。
「だから…そいつも殴ったんだ…。むかついてたんだ。…雪乃の瞳は…常にそいつを見てた。俺は…そいつも殺そうと思ったんだよ!」
 …馬鹿…それは…言わなくていい…
 亮平に金属バットで頭を殴られたことが俺の一時的な記憶喪失に繋がっていたことは、記憶を取り戻した俺自身には既に勘付いていたことだった。
 それなのに…
「じゃあ…あなたが殴ったことで…」
「あぁ。そいつが…記憶喪失になったんだよ。おそらく…な…」
 苦しそうな声で亮平が真実を告げる。
「俺が…全て…俺がやったことなんだよ!」
 最後の力を振り絞るように亮平は声を大にして叫んだ。そしてまたぐったりと倒れ込んだ。

 葵は再び泣き崩れた。静かにすすり泣く葵の姿が、不憫でならなかった。

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