{
2007/05/03(木) }
目が覚めると、椿は涙を流していた。
夢を見ていたらしい。遠い日の、温かくも寂しい夢…
幼馴染は、もう潮鳴の里にはいない。己の夢のために旅立っていった。
里が襲われた時、彼がいてくれたら。そう悔やんだこともある。
戦で里の人手が少なくなっている時に、襲撃は行われた。潮鳴の忍びは腕に覚えのある者ばかりといえど、圧倒的な武力の前に敗れていった。
老師もその時に逝った。椿も片腕を失いかねないほどの怪我を負った。
軍を指揮したのは、隣国の大名、塚本権三…。
彼の城の名は、嵯峨原城。黒くそびえるその城に巣食う大名をこの手で殺す。
それが、今回の任務。
椿は頬をつたう涙を拭った。
――私は任務のために生まれたのだ。
椿は立ち上がり、城の内部へ静かに歩を進めていった。
暗闇はいっそう辺りを包み込み、霧もますます深くなってきた。
城内の階段を一歩一歩摺り足で上がっていく。壁を背に忍んで歩く。
ふすまの前にさしかかった時、その向こう側に人の気配を感じた。
腰を屈めて向こう側の様子を探る。どうやら部屋の中にはその一人だけが待機しているようだ…
椿は迷わず小刀を逆手に持ち、後ろ手にふすまを突き刺した。
「うが…」
低い小さな声が漏れる。
…また一人、出来上がり…
ふすまを突き刺した小さな穴から血飛沫が漏れ、小刀から血が滴り落ちる。
敵を殺す度に、椿の使命感が満たされていく。素早く、迅速に、美しく。
老師から教わった以上の技を、椿は実践の中で覚えていった。
小刀を素早く抜き取ると、ふすまの向こう側からどさっと人の倒れる音がする。
ふふ…おやすみ…
小刀を軽く振って血を払うと、椿はまた壁を背に城の最上部へ向けて進み始めた。
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夢を見ていたらしい。遠い日の、温かくも寂しい夢…
幼馴染は、もう潮鳴の里にはいない。己の夢のために旅立っていった。
里が襲われた時、彼がいてくれたら。そう悔やんだこともある。
戦で里の人手が少なくなっている時に、襲撃は行われた。潮鳴の忍びは腕に覚えのある者ばかりといえど、圧倒的な武力の前に敗れていった。
老師もその時に逝った。椿も片腕を失いかねないほどの怪我を負った。
軍を指揮したのは、隣国の大名、塚本権三…。
彼の城の名は、嵯峨原城。黒くそびえるその城に巣食う大名をこの手で殺す。
それが、今回の任務。
椿は頬をつたう涙を拭った。
――私は任務のために生まれたのだ。
椿は立ち上がり、城の内部へ静かに歩を進めていった。
暗闇はいっそう辺りを包み込み、霧もますます深くなってきた。
城内の階段を一歩一歩摺り足で上がっていく。壁を背に忍んで歩く。
ふすまの前にさしかかった時、その向こう側に人の気配を感じた。
腰を屈めて向こう側の様子を探る。どうやら部屋の中にはその一人だけが待機しているようだ…
椿は迷わず小刀を逆手に持ち、後ろ手にふすまを突き刺した。
「うが…」
低い小さな声が漏れる。
…また一人、出来上がり…
ふすまを突き刺した小さな穴から血飛沫が漏れ、小刀から血が滴り落ちる。
敵を殺す度に、椿の使命感が満たされていく。素早く、迅速に、美しく。
老師から教わった以上の技を、椿は実践の中で覚えていった。
小刀を素早く抜き取ると、ふすまの向こう側からどさっと人の倒れる音がする。
ふふ…おやすみ…
小刀を軽く振って血を払うと、椿はまた壁を背に城の最上部へ向けて進み始めた。
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