{
2007/05/02(水) }
…肩が痛む…気付くと先ほど斬られた肩から出血していた。
予め用意してきた布を肩に巻きつけ、手当てをする。
…これ以上…続けられるかしら…
椿は自問した。嵯峨原城内部からはまだ多くの声が聞こえてくる。
…できるの?…私に…
椿は暗闇に包まれながらその場に座り、考え込んだ。
頭が朦朧とする。草陰に座り込み、身を隠したまま椿は意識が遠のいていった。
椿の育った潮鳴の里は、これまで何人もの忍者を輩出してきた。
古来より世に送り出した忍びは数知れない。
自分の親の顔すら知らない椿にとっては、潮鳴の里が全てであった。
椿は幼い頃から忍術についてたくさんのことを学んできた。
老師が椿に声をかける。
「ばかもん!こんなことでへこたれておってどうする!忍びの道は険しく…そして厳しい…」
老師はいつも叱るばかりで、褒め言葉はほとんど口にしない。それでも、何かあった時に密かに助けてくれていることを椿は知っていた。
「やーい、やーい。つばきのへなちょこー。」
いつも憎まれ口を叩いてくるのは、同じ里で育った仲間の男の子だ。彼も椿と同じ孤児で、里の子どもとして育てられていた。
…へなちょこ…いい度胸じゃない!…私の本気見せてあげる!
老師の下、二人は忍具を手に競り合う。一人前の忍びになる為に。励まし、励まされ、時には組み手の相手として真剣に闘った。
稽古は毎日夕暮れになるまで続いた。
ある時、彼がぽつりと言った。
「…なぁ、つばき?お前、夢ってあるのか?」
疲れ果てた身体の椿は、草むらから起き上がることもできない。それは彼も同様で、二人で倒れ込んでいる時のことだった。
彼の表情は見えない。
「俺はよ。いずれ立派な忍びになって、大名に天下を取らせるんだ。そして戦が終わったら、必ずここに戻ってくる。この潮鳴の里にな。」
椿も彼も、物心つく前からこの里にいた。生まれた場所は知らないけれど、ここが二人の故郷なのだ。
「はくしん…」
呼びかける椿の声に、返事はなかった。ただ黙って、二人で空を見上げた。
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予め用意してきた布を肩に巻きつけ、手当てをする。
…これ以上…続けられるかしら…
椿は自問した。嵯峨原城内部からはまだ多くの声が聞こえてくる。
…できるの?…私に…
椿は暗闇に包まれながらその場に座り、考え込んだ。
頭が朦朧とする。草陰に座り込み、身を隠したまま椿は意識が遠のいていった。
椿の育った潮鳴の里は、これまで何人もの忍者を輩出してきた。
古来より世に送り出した忍びは数知れない。
自分の親の顔すら知らない椿にとっては、潮鳴の里が全てであった。
椿は幼い頃から忍術についてたくさんのことを学んできた。
老師が椿に声をかける。
「ばかもん!こんなことでへこたれておってどうする!忍びの道は険しく…そして厳しい…」
老師はいつも叱るばかりで、褒め言葉はほとんど口にしない。それでも、何かあった時に密かに助けてくれていることを椿は知っていた。
「やーい、やーい。つばきのへなちょこー。」
いつも憎まれ口を叩いてくるのは、同じ里で育った仲間の男の子だ。彼も椿と同じ孤児で、里の子どもとして育てられていた。
…へなちょこ…いい度胸じゃない!…私の本気見せてあげる!
老師の下、二人は忍具を手に競り合う。一人前の忍びになる為に。励まし、励まされ、時には組み手の相手として真剣に闘った。
稽古は毎日夕暮れになるまで続いた。
ある時、彼がぽつりと言った。
「…なぁ、つばき?お前、夢ってあるのか?」
疲れ果てた身体の椿は、草むらから起き上がることもできない。それは彼も同様で、二人で倒れ込んでいる時のことだった。
彼の表情は見えない。
「俺はよ。いずれ立派な忍びになって、大名に天下を取らせるんだ。そして戦が終わったら、必ずここに戻ってくる。この潮鳴の里にな。」
椿も彼も、物心つく前からこの里にいた。生まれた場所は知らないけれど、ここが二人の故郷なのだ。
「はくしん…」
呼びかける椿の声に、返事はなかった。ただ黙って、二人で空を見上げた。
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