[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 寒い。
 波風が、さっきより泣き声を大きくしている気がした。
 早く確かめて帰らないと……、早く見つけないと……、凍え死んでしまいそう。
 埋めたのは、……このあたりだったよね。
 ……うん、そうだよね。そう。……多分。そう。うん。ねえ、そうでしょ? そうだったよね?
 掘って、掘って、どんどん掘って――
 ――いた!
 安堵の息が漏れた。表情が綻ぶのがわかる。
 カケルくん。ヒトシくん。ソウイチロウくん。
 確認作業は、とても苦しい。今日いたからといって、明日もいるとは限らない。
 万が一、誰かが掘りおこしてしまったら……。万が一、波が土ごと彼らを拐っていってしまったら……。万が一、この元彼たちが土から這い出して逃げてしまったら……
 不安は尽きない。
 妄想が膨らんでいく。胸が高鳴り、唇が震える。寒い。寒い。いるよね? あれ? さっき……、いたよね?
 ――もう一回だけ、確認しよ。
 土をかけ終わった場所を、再度、掘って、掘って、掘って――
 蛙がいた。さっきは見つからなかった。冬眠してる。迷惑な蛙。こんなところで春を迎えられたら、元彼たちが驚くだろうし、邪魔にもなるだろう。だから、きちんと踏み潰しておいた。二度と目覚めないように。何度も何度も踏んだ。中途半端では安心できないから、中身が全部出てペッタンコになるまで、丁寧に、しっかりと。
 そのときになって、はじめて自分が裸足だったことに気づく。
 ……どうして、履いてないんだっけ? あぁ、足、……こんなに汚れちゃったじゃない、このバカ蛙!……うぅ、手が冷たい。きつい。つらい。……助けてよ。ねえ、誰か。誰か!……って、誰もいないよ、当然。ははっ。
 ――あ、そうだった。カケルくん? ヒトシくん? ソウイチロウくん?
 掘って、掘って、掘って……
 ――いた! やっぱり、いた! ほら、いた! いたでしょ? ほらねっ!
 安心を胸に刻み、きちんと埋めなおす。そうしてはじめて、わたしは帰宅することができる。

 毎日、毎日、毎日、毎日、わたしは穴を掘った。掘り続けた。
 不安だから……、ただひたすら。
 ――いた!
 おとといも、昨日も、やはり元彼たちは、そこにいてくれた。
 まるで、デートの待ち合わせのように。……あ、それじゃ三股になっちゃうか、ごめんね、あははは!
 胸がすうっと軽くなる。こんなにも不安に押し潰されそうなのに、確認するだけでここまで安心できる。わたしはなんて幸せなのだろう。……とても、幸せ。幸せ者だよ。こんなに容易いもの。ね? そうだよね? わたし、幸せだよね? ねえ?
 あぁ……寒い。寒い、寒い、寒い。もう、寒いよ、うぅ……、う……うふ、ふふっ。はは、……ははっ、あっはははははははっ!
 
 それなのに……
 ――あ。
 平和な日常というものは、こんな風に、あっという間に崩れてしまうのだ。

 ……いない。

 いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。いない。
 どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして? どうして?

 その時、除夜の鐘の音が、風に運ばれてきた。
 今日は、大晦日。

 ――あぁ、そっか。

 きっとお参りに出かけたのだ。
 そんなことにも気づかなかった自分が、なんだかとても可笑しくて――
 わたしは大声で笑った。



END

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