[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 白鳥先生は、俯いたままで立っていた。
 そう。彼女は俺と会ってから、いや――、正確には、俺の死体を見てから、ずっとずっと泣いていたのだ。ただ、涙という液体が目から零れていなかっただけで。
 彼女を救ってあげたかったのかもしれない。自身が救われたかったのかもしれない。
 俺は、今日のこの日を、ずっと待ち望んでいたのだ。白鳥先生を毎日見られることを喜びながら、同時に、日々沈んでいく彼女の様子を見ることに耐えられなくなってきていたのだ。だから――
「お辛いですよね。まさか、こんな形で……」
「はっ。他人のせいにしないでくださいよ。辛いのは、先生のほうでしょ」
 無意識に、突っかかった。白鳥先生の表情が曇る。
「どういう――?」
「もう、嘘はつかなくていいですよ」
「嘘なんて――」
「嘘ですよ」
「違います!」
「本当は――」
「やめて!」
「――もう死んでほしい。……そう、思ってますよね」
「…………」
 無言が全てを物語っているようだった。俺は、不思議と清々しい気分だった。
「でも、それは無理ですよね。理屈では、もう死んでいるんですから」
「……やめて」
「だから、せめて――」
「もう、もうやめて! やめて!……お願い!」
「…………」
「もう……。もう……」
 彼女を追いつめるつもりはなかった。ただ、言わずにはいられなかった。己の器の小ささに呆れながら、すぐに謝罪の言葉を重ねる。そして、
「同情は要りません。先生が、自分を責める必要はないですよ」
 素直に心の内を告げた。
 そこまで話したあとで、俺は手術室へと搬送された。

 医学的に動くはずのない身体。呼吸もしていないのに、喋る死体。
 意識を保ち続けた俺を、彼女だけが、生きている患者として扱ってくれた。
 陽があたり、風の入る病室。彼女の計らいに、感謝の気持ちは絶えなかった。

 施された全身麻酔は、俺への気休めのつもりなのだろうか。もちろん、何の意味も為していない。予想通り、意識ははっきりしていた。
 手術着を身に着けた白鳥先生も美しかった。だが彼女の表情には、やはり俺の好きだったあの笑顔はない。ただ、代わりにそこには、今まで一度も見せたことのなかった彼女の涙があった。
 ――患者の前で泣くなんて。
 俺は、彼女の優しさを胸に刻み、
 ――あんた、それじゃ、医者としては失格だ。でも、
 そのしなやかな手によって、
 ――本当に、……人間らしい、いい女だ。
 静かに、眼球が摘出されていくときを待った。
 俺が彼女を見ることを、今、彼女が不可能にした――
 機能するはずのない俺の下半身が、なぜかピクリと反応したような気がした。

 これで、全ての臓器提供が終わった。
 病院に置いてある必要のなくなった自分という死体が、これからどうなるのか――そんなことには興味がなかった。ただ、全ての臓器が無くなってもなお、想うことを忘れられない自分という存在が不思議でならなかった。

 俺は幸福だ。
 あなたに出逢えた。



END

Back | Novel index | Next
コメント
この記事へのコメント
死してなお自分の臓器に執着する

人は多いのでは?

なかなか臓器提供は進んでいないのか

な?

コーディネーターも大変らしい。
2011/10/16(日) 10:54 | URL | 昼の梟 #LkZag.iM[ 編集]
ryonazわーるどです。
彼は、幸福感に包まれながら、最後の日を迎えましたね。
ハッピーエンドです。めでたしめでたし。
お楽しみいただけていれば幸いです。
臓器への執着――。自分のものでなく他人のもの。保持でなく破壊。
すみません、独り言です……
2011/10/16(日) 18:00 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。