{
2007/04/30(月) }
この夜の霧は深かった。
己が足元すら覚束なくなるような、暗い闇が辺りを覆い尽くしていた。
椿は、そっと手の中の小刀を握りしめる。
身を包む忍者装束は紅を基調としたものだ。炎を模した刺青が、その脚に施されていた。
椿の目の前に立ちはだかる嵯峨原城は、戦の緊張に包まれている。
震えそうになる自分に、「これは任務だ」と言い聞かせた。
三国の勢力争いは日に日に勢いを増し、もはや話し合いでの解決などは望むべくもなかった。
嵯峨原城を巡る戦の中では毎夜、武士達の多くの血が流されていた。
椿は忍びとしての自分の役割をあらためて肝に命じると、ゆっくりと城に向けて足を運んだ。
…………
潜入した城の中は異常なまでに静まり返っていた。
そのことが、かえってこの戦の緊張感と物々しさを表現している。
暗雲が立ち込める中、至る所に武士達の姿が見える。
椿は身を屈め、ひっそりと任務に向けての行動を開始しようとしていた。
月明かりだけが城の中をうっすらと照らし、その輪郭をぼんやりと映し出している。
城の門は開かれていたが、一人の武士がしっかりと見張りに付けられていた。
緊張と不安で鼓動が高鳴る。その鼓動が相手に聞こえてしまいはしないかと内心震えていた。
椿は門の前の武士に近付き、相手を注視しながらに視界に入らないようそろそろと背後に回りこむ。
「…ごめんなさい…」
背後から武士に耳元でささやくと、椿は逆手に持った小刀で武士の喉元を切り裂いた。
「く…」
ほとんど声もなく武士は息絶え、その場に崩れ落ちた。
手がいつまでも震えている…。人はこんなに簡単に死んでしまうのだ…
武士の亡骸をしばらくじっと見つめ、椿はさらに城の奥へと足を踏み入れた。
門を潜ると目の前には高い城壁で囲まれた嵯峨原城がその姿を現す。
城の至る所に武士が配置され、それぞれが提灯を持って見張りをしている。
椿は一瞬怯んだ。先ほど人を一人、難なく殺めてしまった罪悪感や恐怖感が一体となって椿を包み込んでいた。
「これが私の任務…。大名塚本を暗殺するまでは…帰れない…」
椿はあらためて自分にそう言い聞かせ、決意を固めた。
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己が足元すら覚束なくなるような、暗い闇が辺りを覆い尽くしていた。
椿は、そっと手の中の小刀を握りしめる。
身を包む忍者装束は紅を基調としたものだ。炎を模した刺青が、その脚に施されていた。
椿の目の前に立ちはだかる嵯峨原城は、戦の緊張に包まれている。
震えそうになる自分に、「これは任務だ」と言い聞かせた。
三国の勢力争いは日に日に勢いを増し、もはや話し合いでの解決などは望むべくもなかった。
嵯峨原城を巡る戦の中では毎夜、武士達の多くの血が流されていた。
椿は忍びとしての自分の役割をあらためて肝に命じると、ゆっくりと城に向けて足を運んだ。
…………
潜入した城の中は異常なまでに静まり返っていた。
そのことが、かえってこの戦の緊張感と物々しさを表現している。
暗雲が立ち込める中、至る所に武士達の姿が見える。
椿は身を屈め、ひっそりと任務に向けての行動を開始しようとしていた。
月明かりだけが城の中をうっすらと照らし、その輪郭をぼんやりと映し出している。
城の門は開かれていたが、一人の武士がしっかりと見張りに付けられていた。
緊張と不安で鼓動が高鳴る。その鼓動が相手に聞こえてしまいはしないかと内心震えていた。
椿は門の前の武士に近付き、相手を注視しながらに視界に入らないようそろそろと背後に回りこむ。
「…ごめんなさい…」
背後から武士に耳元でささやくと、椿は逆手に持った小刀で武士の喉元を切り裂いた。
「く…」
ほとんど声もなく武士は息絶え、その場に崩れ落ちた。
手がいつまでも震えている…。人はこんなに簡単に死んでしまうのだ…
武士の亡骸をしばらくじっと見つめ、椿はさらに城の奥へと足を踏み入れた。
門を潜ると目の前には高い城壁で囲まれた嵯峨原城がその姿を現す。
城の至る所に武士が配置され、それぞれが提灯を持って見張りをしている。
椿は一瞬怯んだ。先ほど人を一人、難なく殺めてしまった罪悪感や恐怖感が一体となって椿を包み込んでいた。
「これが私の任務…。大名塚本を暗殺するまでは…帰れない…」
椿はあらためて自分にそう言い聞かせ、決意を固めた。
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