[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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 猫は虎になりたかった。
 大きく、気高く、強く、たくましく、美しい。猫はその存在に憧れ、いつしかそうなることが目標となり、そのために日々、努力を重ねていった。
 大きくなりたくて、餌をどんどん食べた。できるだけ、気高く振舞った。強く、たくましくなりたくて、自分の弱さから目を逸らした。指摘されれば怒り狂い、自分の弱さを潰すために、周りを攻撃した。そして自分の強さをアピールした。できるだけ、美しくふるまうよう常に心掛けた。
 やがて、肉の皮が彼を大きくした。
 やがて、他の猫に語っていったありもしない彼の武勇伝で、彼は気高さを保った。
 やがて、己を大きく見せようとする努力が実り、彼は己を強くたくましいと思い込んだ。
 やがて、彼は妄想の中で美しい虎になった。
 ――ほら、偶然、こんなところに鏡があるよ。ほらほら、見てごらん。
 猫は言葉を失った。
 ブクブクと膨れた全身は、気高さの欠片も映さない。脆弱さを隠すにはあまりにもブヨブヨで頼りなく、美しさを演出するにはあまりにも汚らしく、醜かった。
 そこにあった自分の姿は、あまりにもつまらないものだった。
 それでも猫は、その肉皮を着て歩いた。自分は虎だ。必死でそう思い込むことで、まわりの猫の嘲笑を嘲笑し返した。猫だと指摘されればやはり烈火の如く怒り、爪で抉って回った。まわりの猫が傷つき、倒れていく様子を見ると、強くなった自分が見えてくるようで心地よかった。だんだんと、彼の周りには猫がいなくなっていく。彼にとっては、それが誇りだった。
 自分は、猫が怖がる存在になった。
 自分は、大きくなった。
 自分は、強く、たくましくなった。
 自分は、美しくなった。
 ――そう。どの程度? もしかして、あそこにいる虎たちのように?
 目前に現れた虎の群れの中に一も二もなく跳び込んでいったのは、彼にとっては当然のことだった。だって、仲間だから。それ以上の理由など、彼には必要なかった。例え、虎にとっては彼が、単に分厚い肉皮に包まれた奇異な化け物であったとしても。
 猫は襲われた。
 あまりにも大きく、強い影たち。彼には、成す術がなかった。
 同じ虎だと話せば馬鹿にされ、悪意がないと話せば醜さを嘲笑われ、強さを見せようとすれば手も足も出ず……。そうして、かろうじて生き延びた猫は、自分の努力の足りなさを嘆いた。
 もっと大きくなるために、餌を求めた。だが、肉皮がもっと厚くなるだけだった。
 もっと気高くふるまってみた。だがその分だけ、襲われたときの傷が痛んだ。
 もっと強く、たくましくなるために、むき出しの爪で歩いた。だが、彼のまわりにはもう猫がいない。
 もっと美しくなりたかった。だが、肉皮は決して彼をオシャレに飾ってはくれない。
 猫は悔しがった。
「自分は、弱い虎だ。弱い虎だ。弱い虎だ。もっと大きく。もっと強く――」
 とうとう猫は、動けなくなった。
 必死で身に着けてきた肉皮――もう、重くてピクリとも動かない。

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コメント
この記事へのコメント
この小説を読ませていただいて見栄を張るのは良くないと思いました。自分も注意します。
2011/07/22(金) 18:07 | URL | ひらき #k62HVzjU[ 編集]
光栄です。
ご感想、ありがとうございます。
「身の程知らず」「分不相応」など、日本には物事の本質を捉えた素晴らしい言葉がたくさん存在しますよね。
物語を教訓にしていただけるなんて、大変光栄です。
2011/07/23(土) 21:02 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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