[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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「きゃあっ!」
「――っ!」
 突如、女の子の悲鳴が上がり、誠一は身を硬くする。その声を聞いて集まってきた男女の群れもまた、彼の緊張を高める。
 皆の視線を集めたのは、大きなツチイナゴだった。茶褐色で、細かい毛の生えたバッタだ。それが門前に置かれたプランターから唐突に跳び出してきたことが、女の子の声の原因だということだった。
「……はああぁ」
 誠一の強張った筋肉が、急速に弛緩していく。彼は安堵の溜息とともに、
 ――びっくりさせるなよ。俺の心臓を止める気か。
 心の中で悪態をついた。
 野次馬たちも、原因がわかった途端、興醒めしたようだった。それぞれが、時間の無駄だったと言わんばかりに、己の道へと歩を戻す。しかし女の子は、未だにアスファルトの上のツチイナゴに怯え、身を震わせていた。もしかしたら、あまりのショックで足が竦んでしまっているのかもしれない。
 ――やれやれ。
 できれば関わり合いになどなりたくない、というのが誠一の本音だった。だが、こういった状況で見てみぬふりをできるほどの冷たさも、彼はもち合わせていない。お人好しなのか、お節介なのか……
「ん、あー。あの――」
 その声とともに、再度チャイムが鳴った。
 女の子は硬直したまま、視線だけを誠一に向ける。そこに涙が溜まっている――と、彼が認識したときには、既に女の子の視線は目の前のツチイナゴに戻っていた。
「今、追い払うから」
 と前に踏み出そうとした誠一の歩は、クシャッ――、という聞き慣れない音によって止められた。
 硬直が、女の子から誠一へと移った。
 地面――そこにいるはずのツチイナゴ――を執拗に踏みにじる彼女の脚はしなやかに、そして力強く、アスファルトという名の舞台で踊っていた。誠一はゆっくりと視線を上げ、彼女の顔を覗き見る。
 ――天使?
 それが、彼の素直な第一印象だった。
「もう大丈夫だよ」
 と、優しく微笑む天使に、しゃくり上げながら女の子が礼を言う。その間、誠一はその天使から目を離すことができなかった。彼女もその視線に気付いたのか、誠一のほうへと顔を向ける。何よりも彼が驚いたのは、
「あ、お父さん!」
 その天使が、五年ぶりに再会する自分の娘だという事実だった。

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コメント
この記事へのコメント
ついに娘と再会しましたね。ツチイナゴを執拗に踏みにじる彼女の残虐性はすごいです。先がものすごく気になります。面白い小説ありがとうございます。
2011/04/24(日) 08:25 | URL | ひらき #-[ 編集]
こちらこそ、お礼申し上げます。
ひらきさんの強い思いに、心打たれています。ありがとうございます。
それを口実に開き直り、現在、ゆっくり中断。加速更新中です(笑)
楽しんでくださっていることを大変光栄に、幸せに感じています。
2011/04/25(月) 00:08 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]
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