{
2007/03/07(水) }
ふと小倉の様子が目に入った。
当然と言えば当然のことだった。思えば俺の方からついてきてくれと頼んだわけではなかった。
それ以前に、俺は自分から小倉や藤村を何かに誘ったことは、ただの一度もなかった。
『調子にのるな。お前は狂ってる。』
……啖呵をきったのは俺。そう……俺だけなんだから……
この二人はそんな俺についてきただけ。俺に賛成する権利、優美子に反対する権利。
当然もっているはずのそれは、そこでは認められなかった。
彼女の暴力は常識で考えられる範囲を大幅に超えていた。
江戸時代には将軍が町民を相手に「試し斬り」なるものを行い、それが認められていたというような話をどこかで聞いた。
優美子のそれは、まさにその時代と同じものであった。
今まで何人も、彼女の圧倒的な強さに服従してきた。
男も女も、担任教師ですら暴力によって屈服させ、権力の名を縦にする。
その強さを実際に見ることがなかった自分は、やはり甘かったのだろう。
小倉も同じだった。
実際にその強さを目の当たりにした今、小倉の行為を、誰が責められるだろう。
小倉は俺の方を一目も見ることなく、一目散に扉に向かって走った。
「ねえ!」
それを遮ったのは優美子のあまりにも鋭い声であった。
……その瞬間、背筋が凍りついた。
小倉に向かって呼びかけた優美子の方を見ると……
――まさか……まさかそんなことが許されるわけがない……
もう十分じゃないか……
俺の足は一層すくみあがり、その場から一歩も動けなくなっていた。
思わず足を止めてふり返った小倉もまた、その光景に腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。
優美子は、足で藤村の腹を踏みつけ、グリグリと、まるでタバコをもみ消すように甚振っていたのだ。
「う、えええええっ……げええっ……」
あまりにも残酷なその光景は、まさに生きしに見る地獄であった。
それ以上に、何よりも恐ろしいと感じたのは、優美子の本当にうれしそうな笑みであった。
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当然と言えば当然のことだった。思えば俺の方からついてきてくれと頼んだわけではなかった。
それ以前に、俺は自分から小倉や藤村を何かに誘ったことは、ただの一度もなかった。
『調子にのるな。お前は狂ってる。』
……啖呵をきったのは俺。そう……俺だけなんだから……
この二人はそんな俺についてきただけ。俺に賛成する権利、優美子に反対する権利。
当然もっているはずのそれは、そこでは認められなかった。
彼女の暴力は常識で考えられる範囲を大幅に超えていた。
江戸時代には将軍が町民を相手に「試し斬り」なるものを行い、それが認められていたというような話をどこかで聞いた。
優美子のそれは、まさにその時代と同じものであった。
今まで何人も、彼女の圧倒的な強さに服従してきた。
男も女も、担任教師ですら暴力によって屈服させ、権力の名を縦にする。
その強さを実際に見ることがなかった自分は、やはり甘かったのだろう。
小倉も同じだった。
実際にその強さを目の当たりにした今、小倉の行為を、誰が責められるだろう。
小倉は俺の方を一目も見ることなく、一目散に扉に向かって走った。
「ねえ!」
それを遮ったのは優美子のあまりにも鋭い声であった。
……その瞬間、背筋が凍りついた。
小倉に向かって呼びかけた優美子の方を見ると……
――まさか……まさかそんなことが許されるわけがない……
もう十分じゃないか……
俺の足は一層すくみあがり、その場から一歩も動けなくなっていた。
思わず足を止めてふり返った小倉もまた、その光景に腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。
優美子は、足で藤村の腹を踏みつけ、グリグリと、まるでタバコをもみ消すように甚振っていたのだ。
「う、えええええっ……げええっ……」
あまりにも残酷なその光景は、まさに生きしに見る地獄であった。
それ以上に、何よりも恐ろしいと感じたのは、優美子の本当にうれしそうな笑みであった。
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