Black Onyx [ブラックオニキス];2009/ 02の記事一覧

ここでは、Black Onyx [ブラックオニキス]での 2009年 02月 に掲載した記事を表示しています。
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Soulさんより、第三弾です。
こういったご好意が当サイトを、何より私自身を支えてくださっています。
あらためて、謝意を表します。
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● 柳本紗希
女子高生シリーズ」より

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Soulさんからの贈り物、第二弾です。
最近のゲームシステムも然ることながら、それを活用する技には本当に感心させられます。
昨日の優美子といい、今日の彩香といい、上手に特徴を捉えていただけて嬉しいです。
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● 安藤彩香
女子高生シリーズ」より

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友人のSoulさんより、贈り物を頂きました。
Black Onyx [ブラックオニキス]のキャラクターを、「ソウルキャリバーⅣ」で作ってくださいました。
当サイトのために時間を割いてくださったお気持ちが、とても嬉しいです。
個人的には、イメージぴったりです。いろいろな表情や動きが見られるのも良いですね。
それにしても、今のゲームのシステムは凄い……
たくさん頂いているので、数日に分けて公開させていただきます。
Soulさん、本当にありがとうございました。
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● 優美子
優美子シリーズ」より

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●とらドラ! 原・竹宮ゆゆこ 画・絶叫 [アスキー・メディアワークス]
 1巻:腹に肘打ち、苦悶

●イケてる2人 佐野タカシ [少年画報社]
 29巻:腹に蹴り、胃液、鼻血、白目、咳き込み
 〃 :腹にパンチ

●我が家のお稲荷さま。 原・柴村仁 画・松風水蓮 [アスキー・メディアワークス]
 3巻:腹にパンチ、気絶

●屍姫 シカバネヒメ 赤人義一 [スクウェア・エニックス]
 10巻:腹に膝蹴り、胃液、咳き込み、苦悶

●美女で野獣 イダタツヒコ [小学館]
 8巻:腹にパンチ、吐血(?)
 〃 :腹にパンチ、吐血(?)
 〃 :腹に蹴り、苦悶、吐血
 〃 :腹にパンチ、吹き飛び

●009ノ1 石森章太郎 [角川書店]
 1巻:腹に跳び蹴り、転倒


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
●鉄腕バーディー ゆうきまさみ [小学館]
 1巻:脇腹に掌底、貫通、痙攣、嘔吐、死

●スレイヤーズ ライト・マジック 原・神坂一 画・佐々木心 [角川書店]
 1巻:腹にパンチ、白目、苦悶、気絶
 〃 :腹にパンチ、眼球出

●ちぇんじ123 原作&絵コンテ・坂口いく 漫画・岩澤紫麗 [秋田書店]
 9巻:腹にパンチ

●黒神 原・林達永 画・朴晟佑 [スクウェア・エニックス]
 3巻:腹(脇腹?)にパンチ
 4巻:腹にパンチ、出血、気絶
 〃 :腹(胸?)に打撃、胃液、咳き込み
 5巻:腹にパンチ、出血、吹き飛び、気絶
 9巻:腹にパンチ、出血、吹き飛び、気絶
 〃 :腹にパンチ、連打、白目、吐血、嘔吐(?)、気絶


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
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僕を殺してください。

これまで幾度となく聞いてきた言葉。

最初はたまらなく嬉しかった。嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れたほどだった。

欲情の合致する相手が、そこに存在する。そんなこと、信じられなかったから。

でも、やっぱりそれは実を結ばなかった。どのM男も、反応は同じだということを知った。

「契約」や「信頼関係」。こんな時、こういった言葉はあまりにも無力だ。

――殺されそう。

そんな風に感じている間、彼らの表情は恍惚に満ちている。でも……

――殺される。

その瞬間、彼らは当初の契約を簡単に覆してしまう。

もちろん、どうして彼らがそんな風に掌を返すのかわからないほど、私だって馬鹿じゃない。

でも私は、自分の身に及ぶ危険も承知し、彼らにもそれを確認した上で、信頼し、覚悟を決めてる。

だけど、そんな必要はなかった。もう期待もしていない。

彼らの私への評価は、限度を知らない暴力女。Mの喜ばせ方を知らない人間。

実際、その通りかもしれない。

私の中にあるのは、結局、私の快楽の追究でしかない。

だから私は、女王様になんてなれない。



END

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ブーツで踏み付けてください。足を舐めさせてください。やさしく扱いてください。

鞭で。縄で。蝋燭で。手で。ローファーで。ヒールで。素足で。ビンタで。蹴りで。パンチで。針で。

顔面を。睾丸を。首を。顎を。腕を。太腿を。腹を。尻を。背中を。肩を。全身を。

もっと強く。もっともっと強く。ちょっと強すぎます。もっと弱く。とにかくやさしく。

SMは一種の契約だと、誰かが言ってた。今では、私もそう感じてる。

契約だからこそ、お互いに相手を信頼し、安心してプレイを楽しめる。そんなものかもしれない。

私の憧れていたSMは、所詮「夢」に過ぎないのだと実感した。

お互いに求める欲情が合致した時にSMが成り立つのなら、最終的には両者が快感を得て良いはず。

M男たちは、最後には例外なく射精を望んだ。事後、ボロボロの身体で、満足げな面持ち。

でも、私が満たされることはなかった。考えてみれば、それは当然のこと。満たされるはずがない。

それでもいいと思った。

もしかしたら、もっと違った形があるのかもしれない。たまたま相性が悪かっただけかもしれない。

SMの何たるかなんてわからないから。でも、私の求めていたものとは違う。それは確かだった。

きっと、私がわがままなんだろうね。

満たされることがないとわかっていながら、まだどこかでその影を追い求めてる。

でも、そもそも欲求が合致することなんて、あり得るの?

無茶な私の欲求に応えてくれる人なんて、本当にいるの?

私の答えはノー。

M男が安心してS女に身を任せることができるための契約。それが「信頼関係」と呼ばれるのだと思うから。

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SがMを求める。MがSを求める。それはごく自然な欲求。

Sは、相手に肉体的・精神的な苦痛を与えたり、それを想像したりして、加虐性欲を満たす。

Mは、相手に肉体的・精神的な苦痛を与えられたり、それを想像したりして、被虐性欲を満たす。

その欲情が互いに合致した時、SMという関係が成り立つのだと教わった。

憧れだった。

心の奥がじわりと温かくなってくるような、すうっと血が冷たくなっていくような、不思議な感覚。

まだ見ぬ男性に思いを馳せた。欲情の合致する相手が見つかる。そう信じて疑わなかった。

この関係を紡ぐためには、信頼関係が必要不可欠。これも同時に教わったことだった。

でも、当時の私は、そんな面倒なことはすっかり忘れてた。

SMがしたい。

自分の中の欲求だけが、どんどんと膨らんでいった。

望みを叶えるのは、思った以上に簡単だった。相手は、必要以上にたくさん見つかったから。

恋に恋する年頃だったのかもしれない。

私の気持ち次第で、こんなにも簡単に手に入ってしまうことが、少し怖かった。

M男という人たちの存在。

彼らは新しい世界を見せてくれた。隠すことなく、私に素の自分を見せてくれた。

夢を見させてくれた皆さんには、今でも感謝の気持ちでいっぱい。

彼らは私の足下にひれ伏し、命令に従い、おそろしく従順だった。

でもその反面、彼らの願望や欲望はすごく強くて、私はその凄まじいエネルギーに翻弄された。

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引き続き、美里のイラスト公開。本日は、責め絵を一枚掲載させていただきます。
個人的に大好きだから、という理由でお願いしています。読者の方々もきっと!……は私の推察ですが。
いつも無理言ってすみません。suzuroさんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
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● 辻美里 2 (※一枚目はこちらに掲載)
女子高生シリーズ」より
 suzuroさんコメント…可愛らしく、悪びれない表情で男を蹴っちゃう。そんな彼女の魅力を出したいです。
 ryonazコメント…おとなしそうな顔。でも、しっかりと膝はめり込ませる。美里らしいです。彼女の怖さはここにあり!

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いつもありがとうございます!
suzuroさんより、美里のイラストを頂きました。イメージ画と、最初にいただいたラフ画を、同時掲載いたします。
これで、麻美大嶋学園(女子高生シリーズ)の主要人物、全員を描いていただいたことになるんですね。
あらためて感激いたしました。こんなにもご尽力を賜り、大変幸せに思っています。
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● 辻美里 1 (※二枚目はこちらに掲載)
女子高生シリーズ」より
 suzuroさんコメント…いわゆる「萌え」を意識して、絵柄や塗りを変えてみました。なかなか難しいですね。
 ryonazコメント…飾らない素朴な面持ち。幼さの残る表情の中に垣間見える匂やかな色気。とても可愛らしいです。

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「この世には、不思議なことなど何ひとつない」
京極夏彦氏が、著作を通して訴えかけていましたね。
宗教者・霊能者・占い師・超能力者。彼のカテゴライズとそれら個々の分析は面白いです。

"奇跡"に対して貪欲で、"奇跡"を渇望しているのに、それを認められない。
「常識外れだ!」「こんなもの認めない!」「全てプラズマだ!」 etc...
理性の限界(哲学者カント氏)への、無意識の挑戦なのでしょうか。
それでも「何か」が引っかかる。心のどこかでその「何か」を信じている。それが心を捕えて放さない。
誰もが「逆チョコ」の狙いに気付きながら、それでも送ってしまった人は果たして幾人?……と、脱線。
――人間とは、かくも不思議な生き物なり。

本作の主人公、宇崎さんもまた然り。
「現状に従うか、それとも打開するか。それはあなたの自由です」(占い師曰く)
これが彼の選んだ道だったわけですね。めでたしめでたし。
約一ヶ月に渡って、ゆっくり連載させていただきました。
お楽しみいただけていれば幸いです。

今回も、最後までお付き合いいただいた方々に、心より御礼申し上げたいと思います。
これからも、Black Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞよろしくお願いいたします。

●常盤のキャラ絵 →  
●日野のキャラ絵 →

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「生きてますか?」
 魂を揺さぶるような声だった。耳を擽る響きに、俺は顔を上げた。
 目を疑わずにはいられなかった。
 透き通るような指先。神々しさを湛える眼差し。上品な薄紫色のヴェール。探し求めていた人が、確かにそこにいた。
「占い師さん……」
 弱々しい声で呟く。彼女は俺の姿を見てにっこりと微笑み、目を細める。それだけで、世界が光輝いて見えた。激しく痛む身体に鞭を打ち、よろよろと彼女の方へ歩を進める。
「こんなにボロボロになって」
 彼女はそう言って、俺を胸にそっと抱いた。
 地面や吹き荒ぶ寒風の冷たさも、全て忘れてしまうほどの温もりだった。痛みや苦しみなど、もはや感じることもなかった。滴る血液すら、今では温かい。
「占い師さん。俺は、俺は……」
 ――ずっと、あなただけを待っていた。
 彼女の腕の中で、俺は止め処なく溢れ出る涙の存在を知った。
「注意しなさいと申し上げましたのに……」
 笑顔を絶やさぬまま、彼女は俺の頭を優しく撫でた。そのたおやかな手が、俺の全てを受け入れてくれるようだった。俺はこの身を彼女に預け、この上ない至福を享受する。
「寒かったでしょう。お飲みなさい」
 そう言って彼女は俺から少し身体を離し、銀の器を地面に置く。俺の目の前だった。そこには、湯気のたった茶が並々と注がれていた。その香りに、脳の奥が刺激される。
「――相川さん……」
 俺はとっさに、その名を口にしていた。
 彼女がくすりと笑う。記憶の中の、可憐で意志の強そうな瞳と、目の前の瞳が重なった。
 やはり彼女こそが、俺の唯一の理解者だった。彼女は慣れた手つきでヴェールを剥ぎ取り、
「あなたにはいろいろな道がありました。そして、どの道も開放されていた」
 柔らかな声色で俺に語りかける。まるで妙なる音楽を聴いているかのようだった。
 しなやかな彼女の指が顎を擦る。掌が頭を、背中を、腰を撫でる。俺はその愉悦に酔い痴れた。
 犬。注意。――それらは不吉な運命を示した預言だと思っていた。彼女の言葉の意味を問い、否定し、抗うことだけを考え、必死になっていた。しかし、今は違う。
 彼女が俺の目前に掌を差し出す。俺にはもうすべきことがわかる。その行為に対する躊躇もない。なぜなら今の俺は、彼女の占いの全てを受け入れているのだから――
 俺は彼女の掌に、自分の右手をそっと重ねた。彼女はその美貌に微笑を湛え、
「私たちは、似た者同士」
 冷静な口調で言を放ち、袖のひらひらとしたドレープから何かを取り出す。赤い首輪だった。
 彼女はそれを、俺の首に回す。俺はされるがまま、それを受け入れた。恍惚すら感じられる。
「あなたが選んだ道は、……私の飼い犬」
 カチャリという小さな金属音が鳴った。俺が彼女に繋がれた証だ。彼女の口が、言葉を紡ぐ。
「これからは、私があなたを守ります」
 目から再び涙が溢れた。俺は膝をつき、うやうやしく地面の器に口をつけた。
 じわりと広がる温かさは、俺にとっての彼女そのものだった。



END

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 俺の……功績の証――
 今やそのリングも真っ赤に染まり、確かにそこにあったはずの薄い血痕は覆い隠されてしまっている。
 空しさだけが込み上げる中、耳元でコツッという聞き覚えのある音がかすかに聞こえた。
「こんばんは」
 常盤部長だった。……いや、もう元部長か。それなら、もう常盤でいい。それにしても、どうしてこんなところに彼女がいるのだろう? 復讐でもしに来たのだろうか。それならそれで、好きにすればいい。俺はもう、負け犬なんだから。
「それで? お話って何?」
 常盤の言葉の意味がわからず、俺は困惑する。しかし、今の俺は思考力が衰え過ぎていた。それどころか、気を失うのを堪えるだけで精一杯の状態なのだ。
 黙ったままの俺を、彼女が見下ろす。ゆっくりと動くその口元を、ただぼうっと眺めていた。
「日野さんから電話を頂いたの。あなたが私に、どうしても言いたいことがあるから、って……」
「…………」
「あなたの、本当の男らしさ、とかを見てほしいとか何とか……」
 ――これは現実なのだろうか? それとも、痛めつけられすぎて、幻でも見ているのだろうか。
 それほどまでに、彼女の言葉は捉えどころがない。
「彼女は優しい人ね」
 くすりと笑う常盤を見上げながら、俺は日野の顔をぼんやりと思い浮かべていた。
 ――何の冗談だ? そもそも、あいつが俺をこんな目に遭わせたんじゃないか。俺への思いやりを見せることで、常盤に媚び諂うつもりか? 情けをかけて、俺に感謝しろとでも言うつもりか?
 ……わからない。正直、考えるのも面倒臭い。俺にとってはもう、そんなことはどうでもよかった。
 常盤はすっと俺の横に立つと、当たり前のようにヒールの先を俺の喉に当てる。
「こんな男のために……」
 喉仏をじわじわと圧迫され、俺はたまらず咳き込む。しかし俺には、もう反抗する気力も体力も残っていなかった。ヒールの先が俺の全身をなぞり、這い回り、――時折、鋭い牙をむく。身体中を執拗に嬲る。
 俺の喉からは、苦悶の声が絶え間なく絞り出された。
「とうとう、新しい言葉は覚えられずじまいだったのね」
 太腿に突き立てられたヒールの先が傷痕を抉り、俺は絶叫する。
「……挙句、私に逆らってこんなところで寝てる。あなたは、……犬以下ね」
 そう言い放った常盤の語尾に力強さを感じる。と――、そう感じた瞬間、彼女の足の甲が視界を遮った。強烈な衝撃が顔面に走る。回転する視界の中、大きく振り抜かれた彼女の脚線美が目に焼き付いた。
 俺は脇道にある民家の塀に、勢いよく身体ごと叩きつけられた。苦痛が身を包み、呼吸が止まる。直後、肺にある空気の全てが吐き出されるような感覚に陥る。項垂れ、膝をつき、コンクリートにドサリと横たわる。
 積まれたゴミ袋の山が、じっと俺を見ているような気がした。同時に、雑踏に紛れ、くすくすと嘲笑する声が一つ、二つ、三つ、四つ、それ以上……。何故か、課内の光景がまざまざと蘇る。
 聞き慣れていたはずの、耳を甚振るあの声たち。……それにしても、よく似ている。……本当に、よく似ている――
「生ゴミが道の真ん中にあったら、邪魔でしょ」
 常盤の声はやけに遠くから聞こえた。俺に目を合わせようともしないまま、彼女はその場を去った。
 ――とうとう、……犬以下、か。
 鉄錆に似た臭いと生ゴミの臭いが混ざり合い、鼻を突く。自然と涙が溢れてくる。それは決して、感情からこみ上げてくるものではない。俺にはもう何も見えないのだから。聞こえないのだから――
 ただひとつ感じるのは、コンクリートが徐々に温かくなっていく、ということだけだった。
 俺は瞼を閉じ、すうっと息を吸った。乾いた空気が、喉を焼くようだった。

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 日野がその足を持ち上げた時、俺は安堵の息を吐いた。
 酸素が胸に通ってくる。と――、同時に、不快感が胸を突く。俺は背中を浮かせ、二、三度、激しく咳き込んだ。安心とともに、沸々と怒りの感情が舞い戻ってくる。
「ふざけんな! 日野――」
 その言葉は途中で切られた。
 日野はその持ち上げた足を、今度は俺の腹に思いきり踏み下ろした。パンプスの底がめり込み、反動で、頭と足が持ち上がる。
「ぐえええぇっ!!」
 急速にこみ上げる吐き気に耐え切れず、俺は嘔吐した。腹を抱え、地面をのた打ち回る。それでも、酸っぱいものが後から後からせり上がってくる。嘔吐を繰り返す。コンクリートの至る所に、俺の吐瀉物が撒き散らされていった。
 日野は、転げ回る俺を容赦なく踏み付け続けた。時には鈍痛が、時には刺すような痛みが、次から次へと俺の全身を襲う。その間、彼女が言葉を発することはなかった。
 ――まさか、殺すつもりか……?
 直感が身の危険を告げ始める。…………怖い。……怖い!
「や、やめ……げふぅっ! おね……っがはぁっ!!」
 初めて味わうその恐怖心から、俺は必死で助けを乞うた。しかしその声は言葉にならない。
「これがあんたの正義なんでしょ?」
 日野の言葉が胸に突き刺さる。間髪入れず、今度は俺の身体中を蹴り始める。
「あぐっ!……ぐうぅっ……、ごふうっ!」
 喉から苦悶の声が絞り出される。それでも彼女は、その力を緩めようとしない。
 重い……
 とても女の蹴りとは思えなかった。彼女の爪先、足の裏、ヒールの先、踵。その全てが凶器のようだ。それらは瞬く間に、俺の頭を、頬を、顔面を、喉を、肩を、腕を、胸を、腹を、睾丸を、太腿を、脛を、……俺の全身を痛めつけていった。
 外部を斬られるような痛みと、内部を破壊されるような苦しみと――
 みるみるうちに、身体の自由が損われていく。コンクリートのそこここに、赤い染みができていく。
 俺は夢中で身体を海老のように丸め、
「ぐああああぁっ!」
 絶叫する。しかし彼女は無言のまま、俺を容赦なく蹴り続けた。

 どしゃぶりの雨に打たれているようだった。それはとても重く、鋭利な雨だった。
「少しは買ってたのよ。あの日の前まではね」
 やがて、日野が足を止める。俺はもはや、蹲ったまま身体を小刻みに震わせることしかできなかった。
「あんたは、本当に……負け犬ね」
 それが最後の言葉だった。くるりと踵を返し、彼女はその場を離れていった。
 ――そうだよ。俺は負け犬だ……。
 傷だらけの痛む掌を、必死で目の前に翳す。
 星ひとつ見えない都会の夜空を背景に俺は、既に光沢を失ったリングを、ただ見つめていた。

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 頬を撫でていく寒風が、少しだけ俺の酔いを醒ました。
「何すんだ、こらぁ! おい!」
 自分の呂律が回っていないことに気付く。日野は答えず、平手を俺の頬に勢いよく叩きつけた。
 視点がぶれる。
 ふらつき、倒れそうになる俺の胸座を、彼女は両手で掴み上げた。
「来なさい」
 俺は、路地へと引きずられていった。

 並んだ店はどこも閉店しており、諸所に設置された街灯以外の光はない。
 そこでようやく日野の手から解放された俺は、地面に尻餅をついた。ぶつかった臀部の痛みよりも、地面の冷たい刺激の方がきつく感じられた。尻を伝い、冷気が全身に染み込んでくるようだ。
「お前、いい加減に――、うっ……ぐ」
 上半身を起こして悪態をつく俺の胸元を、日野がぐいと踏み付ける。俺は仰向けに倒れたが、それでもパンプスは、容赦なく俺の胸に喰い込んだ。
 地面とパンプス。――どちらも冷たく、どちらも硬かった。
 じわじわと体重をかけられ、俺は苦しさから呻き声を上げる。同時に、理不尽な日野の行為に対する反抗心が、沸々と芽を出してくる。擦れた声をふり絞り、
「どういうつもりだ!」
 と、感情を剥き出しにする。箍が外れたように、言葉がさらに口から流れ出る。
「何だよ! どうせお前だって、俺を馬鹿にしてんだろ? 上だと思ってんだろ!? あ?」
 自虐的な笑いが込み上げてくる。それでも表情を変えない日野に向かい、
「下々の者は御礼を言わなきゃな。奢ってくださって、ありがとうございましたぁ」
 わざとらしく、棒読みでそう吐き捨てた。
「……本当にがっかり」
 日野は冷静な声でそう言い放った。見下すような視線が癪に障る。彼女はすぅと息を吸い込み、言葉を続けた。
「今の自分の姿、ちゃんと見えてる?」
「何言ってんだ。意味わかんねぇ」
「みっともないとは思わないの?」
「クビのことか? 知るか。ただ俺は、自分に正直になっただけだ。正しいと思ったことをしたんだよ」
「じゃあ、さっきのあれも?」
「あ?」
「店の人に絡むのも、正義なんだ」
「あぁ。俺は悪くねぇ。あの店員の根性が曲がってんだ」
「そう……。あんた、もう終わりね」
 その言葉を機に――
「ぐっ……、ああああぁっ……!」
 日野はさらに俺の胸を強く押し潰した。

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 もはや、自分が生きているのか死んでいるのかすらわからなかった。
 次の日も、その次の日も、俺は朝から晩まで、サティーンの館に何度も出向いた。家に帰る時間すら惜しくなり、館の前で夜を明かしたこともあった。しかし、待てども待てどもシャッターが開くことはなかった。
 時折、見慣れた街並みを見回す。――そこには何もなかった。
 色褪せてでも感じていたはずの街は、今や姿そのものを消してしまっている。溢れていたはずの騒音も、人の流れも無い。それらの全てが、俺の錯覚だったのかもしれない。
 この上ない虚無感が、絶えず自分を覆い尽くしている。ただそれだけが、俺にとっての真実であるように思えた。

 五日ほど経っただろうか。
 ベッドの上。俺は携帯電話の呼び出し音で目を覚ました。会社からだ。受話器の向こうから、正式に処分が決まった旨を告げられる。
「荷物はこちらから自宅に送ります。今まで、ご苦労様でした」
 その言葉が最後だった。
 プツリと電話が切れる。それは、俺が社会から完全に切り離された音のように感じられた。
 項垂れ、ただじっと膝を抱えていた。何も思わず、何も考えず、ただ、じっと……

 陽が傾き始めた。
 今頃、会社では、俺がクビになったことを嘲笑して盛り上がっているだろうか。それとも、今回のことを一社員の不祥事として扱い、皆が偽りの同情を部長に向けているだろうか。これを機に「ますますの会社の発展を」などとして、宴会のひとつも開くのかもしれない。いや――
 もしかしたら何事もなかったように、皆がいつも通りの勤務を行っているのかもしれない。そして、俺が果たした正義……。果ては、俺が会社にいたという事実すら、皆の記憶から失われていってしまうのかもしれない。
 俺自身だって、もう自分が何なのかわからない。己の存在自体が疑わしい。
 ――自分の存在を肯定してほしい。自分が自分であることを、誰かに証明してほしい。
 いてもたってもいられなかった。俺は再度、家を飛び出した。

 相変わらず閉まったままのシャッター。それを背凭れにして、地面に座り込む。
 何気なく斜め向かいに視線を動かした時、生ゴミの袋を漁る野良犬の姿が偶然目に入った。
 ――俺は、こいつと同じなのかもしれない……。俺は……、野良犬。
 苦笑し、ふらりと近寄る。撫でようと手を伸ばす。野良犬は、唐突にその俺の指先に噛み付いた。
 激昂し、犬を振り払う。思いきり蹴り上げる。野良犬は弱々しい声を上げてその場を去った。
「俺は、お前みたいなクソ犬とは違うんだよ!」
 声を張り上げる。すると、通りすがりの中の幾人かがこちらに注目するのがわかった。睨みつけるように目を遣れば、誰もがさり気なく目を逸らす。俺を恐れ、あからさまに避ける。それは、俺が人間であることの十分な証明だった。なぜなら、人間がこんな風に恐れる相手は、結局、人間しかいないのだから。
 心がすっと軽くなる。気持ちが大きくなる。そこには確かに、生きた人間の鼓動が存在していた。
 ずいと身体を起こす。勢いに任せ、俺はたまたま目に留まった居酒屋にふらりと入った。

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 呆れて声も出なかった。俺を見つめる無数の阿呆面に嫌気がさしてくる。
 ――ふん。所詮は馬鹿の群れか……
 普段は散々俺を馬鹿にしていた女たちも、今は無言のままだ。女たちの底の浅さを、あらためて実感する。
 一度、深く息を吸い込んだ後、俺はこの会社で唯一の理解者である相川さんの姿を探した。
 彼女を発見するのにさほど時間はかからなかった。しかし彼女の表情は、俺の期待していたものとは明らかに違っていた。そこに見えたのは、――俺に対する侮蔑と嫌悪……?
 ――何だよ。どういうことだよ? 相川さんまでが、どうして……?
 俄かに混乱の波が押し寄せる。身体が震えてくる。貧血のためか、ふらりとよろめく。同時に聞こえる、女たちの悲鳴。頭を抱える俺から身を守るように、皆が俺から離れる。相川さんの行動も、他の者と同じだった。
 ――相川さん……これは、君のためでもあったんだ。俺は、……この理不尽な社会に……
 その時、つと前に足を踏み出した者がいた。専務だった。顎まで髭を伸ばし、目に痛いほどの豪奢なスーツを着ている。頭は禿げ上がっているが、揉み上げだけは異常に長い。そのくせ、普段は全く存在感のない人間だ。そんな男が、こんな時に限って矢面に立つ。専務は、
「君はもう帰りなさい。しばらくの間、自宅待機するように」
 と、俺に厳しい口調でそう指図した。
 再び、視線を相川さんに向ける。彼女は無言のまま、ただ冷たい視線を俺に投げかけるだけだった。
 俺はすごすごと荷物をまとめ、早々に退勤した。

 どこをどう歩いたのか全くわからない。いつ自宅へ着いたのかも、いつ着替えたのかも、いつベッドに横たわったのかもわからない。そして、自分が果たしてこの部屋で、どれほどの時間、考え込んでいたのかすら……。とにかく、全てがわからなかった。
 気付けば、夜の九時を回っていた。
 今日はあの占い師に告げられた様子見期間の最終日だ。とにかく、あの占い師に会わなければ。
 俺は防寒対策もそこそこに、夜の街へと足を運んだ。
 
 正義を貫いて何が悪い。間違ったことを間違っていると言って何が悪い。俺は、間違ってない。
 犬。犬。犬!
 そうだ。あいつらこそ、社会に飼い慣らされた犬同然なんだ。俺は、ただひたすら尻尾を振り続けるあいつらのような存在にはなりたくない。
 肝っ玉の小さい男。陰で悪口を言うことしかできない女。皆、臆病者の根性なしだ。
 俺は、あいつらとは違う。そんな馬鹿げた現実に立ち向かい、自分の正義を貫いた。それは信念であり、根性であり、勇気であり……。俺は、自分のしたことを誇るべきなんだ。ただ――
 目的の場所に着いた時、俺は全身を絶望感に覆われてしまった。

 ――たった一言でいい。そんな俺を、認めてくれる言葉が欲しかった。

 閉まったサティーンの館のシャッターを前に、俺は涙を流して崩れた。

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 占い師の預言を受けてから今日で三日だ。様子見の最終日ということになる。
『現状に従うか、それとも打開するか。それはあなたの自由です』
 彼女の言葉が鮮明に蘇ってくる。
 考えてみれば簡単なことだったのだ。犬……、注意……。
 俺は、犬じゃない。だが、仮に犬であったとしても、別に構わない。どちらにせよ、俺がするべきことは決まっているのだから。自分の犬を否定するか、犬であることを誇って噛みつくか……
『災いは必ずしも不幸と同一ではありません』
 ……そう。そして、それが災いだとしても、それが不幸につながるかどうかは、結局、自分次第なのだ。
 なぜか笑いがこみ上げてくる。
 出勤を終え、自分の席に着いた時、いつものように湯のみに茶が並々と注がれているのに気付いた。俺は相川さんの方を向き、親指を立てて御礼のサインを送る。彼女はにっこりと微笑み、軽く頭を下げた。
 社会とは皮肉なものだ。相川さんはああいう人柄だからこそ、上司の良いように扱われてしまっている。俺のように手際が悪い人間には、あらゆる仕事を押し付けて、事あるごとにいびる。
 ――こんな間違ったシステムには、一発ぶちこんでやる必要があるんだ!
 握った拳の中で宝石が煌いていた。リングに目を遣ったまま、湯のみに口を付ける。その瞬間、背後から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「宇崎さん、ちょっといいですか?」
 予想通りだった。昨日の無断早退の件で、常盤部長から声がかかることは重々承知だったからだ。
 俺は「はい」と返事をし、立ち上がる。振り返ると、パリッと決まった臙脂色のスーツが目に入った。部長だ。いつものように俺を見下ろしながら、紅色の唇を動かす。
「昨日の早退の件でお話があります。ちょっとこちらへ」
「……嫌です」
「え?」
 意外な言葉だったのだろう。彼女は明らかな動揺を見せた。そして俺は――
「きゃあぁっ!」
 間髪入れず、右の拳を常盤部長の頬に思いきり叩きつけた。彼女は机にぶつかり、倒れ込む。身体をわずかに微震させながら、呻く。顔を覆う手はみるみるうちに赤く染まっていった。
 俺の指を締めるリングに、血液が付着している。内心の笑いが止まらない。
 ――ついに、俺はやってやった。
 興奮に打ち震えながら、俺は常盤部長を見下ろした。
「俺を訴えますか?」
「あ……なた……」
 彼女の戸惑う表情が小気味良かった。一泡吹かせてやれたことが誇らしい。見たか、女共。これでもう俺を馬鹿にしたりできまい。俺はたった今、男を見せてやったのだから。
 悠然と課内を見回す。そこで初めて気が付いた。課内が異様な静寂に包まれているのだ。
 そこにいる人間たちの表情を一人ずつ確認する。しかし、どの顔からも、尊敬の表情や煌く眼差しは見られなかった。

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 寒さなど感じなかった。
 街に溢れる騒音も、人の流れも、何もかも、俺の意識に働きかけてはこない。それにしても、街というものは、こうも色褪せたものだっただろうか。
 占いの館――サティーン。
 そこへ向かう道のりだけが、なぜか色鮮やかに見える。まるで俺を誘っているかのようだ。
 一歩足を踏み入れた時、俺は心から安堵した。ふっと肩の力が弛むのがわかる。いつもと変わらぬ館の雰囲気が、衰弱した心に安らぎを与えてくれるようだった。
「いらっしゃいませ。来られると思ってました。今日はお早いんですね」
「無断で早退してきてやりましたから。でも、携帯が鳴る心配すらない。必要ないんですよ、俺なんて」
「また、何か?」
「……はい」
「そうですか」
 占い師の淡白な口調は相変わらずだった。しかし、今日はそれでもいいと思った。目の前の綺麗な女性と、仕事に関係のない話でもしたい気分だった。
 机を挟み、互いに向かい合って座る。同時に、彼女が再び口を開く。
「昨日の儀式の効果はありましたか?」
「……少なくとも、良い事があったとは思えませんね」
「そうですか」
「あの、占い師さん」
「はい?」
「犬には、……生きる価値すら無いんでしょうかね?」
 思わず自嘲する。腰掛けた椅子の背凭れにゆったりと身を預けていると、この世界がいかにくだらないものかが見えてくるような気がする。占い師はそんな俺の様子を見ながら、
「お元気が無いようですね」
 無機質な声を発した。
 俺の返答を待たずして、彼女は俺の右手の中指にすっとリング状のものをはめる。洒落っ気のない、銀色の指輪のようなものだ。よく見ると、小さな宝石らしきものが埋め込まれている。
 それから占い師は、真剣な表情で俺の目を覗き込んだ。忘れていた彼女の瞳の美しさに、あらためて気付く。すうっと惹き込まれていく感覚に陥る。やがて彼女は無表情のままで、
「もちろん、価値はありますよ」
 さらりと言った。その言葉が、俺の心の奥を刺激する。俺は彼女の瞳を見つめ返し、さらに訊く。
「俺みたいな犬にも……価値が?」
「あなたは犬ではありませんよ。少なくとも、今は」
「でも今日、……負け犬だって」
「決まったんですか? 前回も申しました。従うも、打開するも、あなたの自由だと」
「俺の、自由……?」
「そう。それに、仮にあなたが犬なら、噛みつくこともできますよね」
 俺は言葉を返さなかった。指にはまったリングへと視線を移し、ぐっと拳を固く握った。

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