{
2008/07/05(土) }
「実習は明日からでしょ? 大変だね」
「そうだな。でも、これもこれで仕事だからさ」
「うん。わかってる。でも、その……」
口篭る美里の顔色が曇るのが見える。
「どうした?」
「ん……とね。……ううん。何でもない。家庭教師様、頑張ってください」
妙に引っかかる言い方だった。気にはなるが、僕にはもう時間がない。
「じゃあ、行ってくる。コーヒーありがとう。よかったらケーキ、僕の分も食べて」
「うん。気をつけて。いってらっしゃい」
その言葉を背中で聞きながら、ドアを開ける。その時、ふと思いついたことがあった。
「あ、それから……」
言いながら美里の方をふり返る。彼女はあどけない笑みを僕に向けていた。
「ん? 何?」
と、不思議そうな顔で首を傾げる。
「明日、学校ではあくまで他人行儀でな」
「え? どうして?」
美里には僕の真意が掴めていないようだった。ますます不思議そうな表情を浮かべる。そんなところもまた可愛いのだが。
僕は再び言葉を続けた。
「実習は美里のクラスなんだ」
「うん。それで?」
美里はまだきょとんとしている。この察しの悪さもまた、僕が兄バカになってしまう要因だと思う。
「だからさ……僕たちが兄妹だってことはバラさないように、事前に先生方にお願いしてあるんだ」
「え?」
「だって、それでひいきしてるなんて思われたら、美里もやりにくいだろ?」
その言葉を聞いた美里は、突然笑い出した。
「な……なんで笑うんだよ?」
「ごめんなさい。だって、お兄ちゃん変なこと気にしてるから……」
美里は、まだくすくすと笑っていた。
「とにかく、あまりなれなれしくしない方がいいから。もちろんそれが僕のためでもあるし」
と、美里を諭す。
美里はにっこりと僕に笑みを向けると、一言「わかった」と元気よく返事をした。
その笑みを見て、すっと心が軽くなる。
僕もまた笑顔で「じゃあ、行ってくる」と言い残し、家を出た。
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「そうだな。でも、これもこれで仕事だからさ」
「うん。わかってる。でも、その……」
口篭る美里の顔色が曇るのが見える。
「どうした?」
「ん……とね。……ううん。何でもない。家庭教師様、頑張ってください」
妙に引っかかる言い方だった。気にはなるが、僕にはもう時間がない。
「じゃあ、行ってくる。コーヒーありがとう。よかったらケーキ、僕の分も食べて」
「うん。気をつけて。いってらっしゃい」
その言葉を背中で聞きながら、ドアを開ける。その時、ふと思いついたことがあった。
「あ、それから……」
言いながら美里の方をふり返る。彼女はあどけない笑みを僕に向けていた。
「ん? 何?」
と、不思議そうな顔で首を傾げる。
「明日、学校ではあくまで他人行儀でな」
「え? どうして?」
美里には僕の真意が掴めていないようだった。ますます不思議そうな表情を浮かべる。そんなところもまた可愛いのだが。
僕は再び言葉を続けた。
「実習は美里のクラスなんだ」
「うん。それで?」
美里はまだきょとんとしている。この察しの悪さもまた、僕が兄バカになってしまう要因だと思う。
「だからさ……僕たちが兄妹だってことはバラさないように、事前に先生方にお願いしてあるんだ」
「え?」
「だって、それでひいきしてるなんて思われたら、美里もやりにくいだろ?」
その言葉を聞いた美里は、突然笑い出した。
「な……なんで笑うんだよ?」
「ごめんなさい。だって、お兄ちゃん変なこと気にしてるから……」
美里は、まだくすくすと笑っていた。
「とにかく、あまりなれなれしくしない方がいいから。もちろんそれが僕のためでもあるし」
と、美里を諭す。
美里はにっこりと僕に笑みを向けると、一言「わかった」と元気よく返事をした。
その笑みを見て、すっと心が軽くなる。
僕もまた笑顔で「じゃあ、行ってくる」と言い残し、家を出た。
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