Black Onyx [ブラックオニキス];2008/ 05の記事一覧

ここでは、Black Onyx [ブラックオニキス]での 2008年 05月 に掲載した記事を表示しています。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 嶺岸さんの必死な形相が可愛かった。
 大きな声で何かを訴える様子は、駄々をこねる子どもみたいで愛しかった。思わずぎゅってしたい衝動に駆られる。……反省。でも、自分の罪を認めない態度はやっぱりよくない。自白をしない悪い子にはお仕置きが必要だよね。
 私は彼の左手をぐいと捻り上げる。
 小指の骨を第二関節から折ると、彼は絶叫した。その時点で私を掴む力は緩んだけど、念のため薬指の骨も同じように折ってあげた。再び彼は絶叫して私から身体を離す。彼は蹲ったままで呻き声を上げていた。
 何とか落ち着いてくれたみたいでまずは一安心、かな。
 彼は左手を押さえ、床に膝をついたままで涙を零していた。心なしか、さっきよりも元気がなくなっているような気がする。怯えた目で私をじっと見つめている。私が近付こうとすっと足を前へ出すと、彼は「ひっ」と声を上げて後ずさる。その行動がすごく可愛くて、私はつい何度かその仕草を繰り返す。その度に、彼もまた同じ仕草を繰り返す。
 ……この人ならきっと、ちゃんと自白して反省できるはず。
 でも彼は、それを認めることができなかった。私の問いに対しては「やってないんです。信じてください」の一点張りだった。
 ……まだちゃんとしたいい人にはなれてないみたい。少しがっかりしたけど、私がちゃんと自白できるようにお手伝いしなくちゃ……
 私はそう心に決め、彼につかつかと近付いていった。
 側に寄ると、彼は身を縮めて肩を震わせた。弱々しい声を上げながら嗚咽を漏らす様子を見ていると、また身体が火照ってくる。怯える様子に興奮してしまうこの癖は、未だに治っていない。私は思わず笑みを零していた。
「ちゃんと素直な人になれるまで、しっかり痛めつけさせてもらいますね。」
 そう言って私は再び彼の左手を持ち上げ、中指にも手をかける。彼は絶叫した。声が震えている。
「や、やめろ!」
 と言いながら私の手を振り払い、まるで芋虫のように這いながら壁際へと向かう。彼の足はガクガクと震えていた。恐怖のあまり足に力が入らなくなっているようだった。そんなに自分の犯した罪に怯えるなら、最初からやらなければいいのに。
 ……もう、困った人。
 私は彼を見下ろしながら、その後をゆっくりと歩いて追った。
 彼が必死で声を絞る。
「く、来るな!」
「ダメです。ちゃんと自白するまでは。」
「俺はやってないんだ。」
「あっ。まだそういう態度なんですか? そういうのよくないです。」
「信じてくれ……ください! こんなことしても、俺……僕は本当に――」
 その時、彼に追いついた私は、彼の髪を掴んで強制的に立たせた。力が入らないのか、手を放すとすぐに膝から崩れ落ちてしまう。なかなか自分で立ってくれない。
 私はチェーンネックレスを外して彼の首にかけ、同時にそれを窓にある格子に潜らせて彼の身体を固定した。少し爪先立ちをしてやっと首回りに余裕ができる高さだ。
 崩れたら首を吊ってしまうその姿勢になって、ようやく彼は震えながらも足に力を入れ始めた。

Back | Novel index | Next
 机に置かれた火のついたタバコを手に取る。
 私は刑事さん二人をかき分け、暴れる嶺岸さんの首筋にタバコの先をぐいと押し当ててみた。
「ぐああああっ!」
 叫び声とともに、彼がエビみたいに大きく身体をのけぞらせる。その反動で彼は刑事さん二人の手を離れる。私はすかさず持っていたタバコを捨て、同時に彼のお腹に力いっぱい拳を叩き込んだ。
 彼は呻き声を上げ、そのまま床に倒れ込んで悶絶した。
 ……バタバタしてる姿がちょっと可愛い。
 刑事さん二人は「ふうっ」と大きく息を吐きながら呼吸を整え、襟元を正し始めていた。
 私は転げ回る彼の喉元をブーツの底で踏み付けて押さえ込みながら、
「担当の後藤由香利です。よろしくお願いします。」
 と、自己紹介をする。
 取調執行人としての仕事がこれから始まるのだと思うと、胸のドキドキが収まらない。私は自分の緊張を解すように、大きめの声で彼に告げたつもりだった。けれど彼はその言葉がまるで聞こえていないかのように、目を大きく見開いたまま、顔を真っ赤にして痙攣し始めていた。
 ……せっかくの自己紹介なのに、タイミング悪いな。
 一呼吸ついた刑事さん二人は、まるで何事もなかったかのように彼に背を向け、
「では、ひとつよろしく頼むよ。」
「お願いしますね。」
 と、私に声をかけた。私が「はい」とだけ答えると、彼らは無言のまま取調室を出て行った。
 ドアの閉まる音を背中で聞きながら、私は嶺岸さんの喉仏にさらに体重を乗せる。彼はやがて口から泡を吹き、ぐったりと全身の力を抜いた。失禁し、ズボンの下半身がじわじわと濡れていく。
 ……ちょっとやりすぎちゃったかな。これから尋問しなきゃいけないし。
 私は足を彼の喉元から放す。周囲を見回すと、ちょうど刑事さんが残していったライターが目に入った。手に取り、彼の耳を炙る。肉がじりじりと焦げる音を立て始めた頃、彼は悲鳴を上げて飛び起きた。何が起こったのか分からないといった様子で耳を押さえている彼の姿が滑稽で面白い。
 私は再度、自己紹介をした。今度はちゃんと聞いてくれたと思う。
「じゃあ、早速質問させていただきますね。」
 呆然としている彼に向かって、私はさらに言葉を続ける。
「あなたは京握区内で、無差別に罪のない多くの人たちを殺傷した爆弾魔ですね。」
 その言葉を聞いても彼は無言のままだった。相変わらず耳を押さえたまま、身体を震わせ始める。
 私がさらに「答えてください」と言った時、彼が突然私に飛びかかってきた。
「ふざけんな! 俺はやってねえ!」
 と怒声を吐きながら、私に掴みかかる。
 とてもそんなことをするような人には見えなかったので、すごくびっくりした。何より、私はこの時あらためて、処刑人と取調執行人の違いを実感していた。私が今まで拷問してきた人たちは皆『違反者』という肩書きをもった人たちだった。そんな彼らには法の下、適切なメニューが与えられていた。態度も基本的には従順だった。私はそういう人たちに、メニューの一つ一つを与えていただけ。でも、今は違う。目の前の彼もそうだけど、ここに来る人たちは皆、まだ自白もしていない容疑者なのだ。こうやって襲いかかってくることも多々あるのだろう。
 彼のお陰で、私はまた一つ勉強することができた。

Back | Novel index | Next
 ***

 人事異動が終わって、新しい部署に回された。私は今年度、晴れて『正当拷問自白法違反者処刑人』から『正当拷問自白法取調執行人』へと昇格になった。
 刑事としてのランクアップはもちろん嬉しいけど、それについては正直まだ実感がない。それよりも私が何より嬉しかったのは、憧れの凛先輩と同じ部署で働くことができるようになったということ。
 さっきも私を気遣って電話までしてくれた。本当に素敵な先輩だと思う。先輩も言ってたけど、これから一緒に仕事をすることもあるんだろうなぁ。そう考えると、すごく楽しみ!
 今日は初日だから本当に緊張したし、正直疲れたけど、でもやっぱりやり甲斐のある素晴らしい仕事だと思った。
 私の手で一人でも多くの悪人を自白させてみせる。そしていつか、全ての悪人をこの世から消してみせる。何より私は今、刑事として働けることがすごく嬉しい。悪人を懲らしめることがすごく楽しい。
 この気持ちを持ち続けている限り、私はこれからも仕事を続けていけると思う。


 容疑者 嶺岸秀一 二十四歳

 
 取調室の前に立った途端、すごく荒っぽい声が聞こえてきた。
「違う……。違う! 俺はやってねえ! やってねえんだよ!」
 私は気を引き締め、身に着けたミニスカートの裾を整える。この白のプリーツスカートは、買ったばかりのお気に入り。動きやすさを考えて、上半身には淡い黄緑の半袖Tシャツを選んだ。高めのヒールのついた薄いブラウンのブーツは膝丈サイズ。このコーディネートは、春を意識したものだ。アクセサリにも気を遣って、今日はネックレスとダイヤの指輪を身に着けてみた。
 案内係の警官の「よろしくお願いします」という言葉に「はい!」と短く元気に返事をした後、私はドキドキしながら取調室の扉を開いた。
 室内を覆う煙の臭いがきつかった。机上の灰皿の上には火のついたままのタバコが適当に置かれていて、煙がモクモクと出ていた。正直ケムかった……
 紫煙の向こう側に、うっすらと男性二人の姿が見える。どちらも取り調べに当たっていた先輩刑事さんだ。でも、まだ部署に配属されたばかりで顔を見ても名前が浮かんでこない。後で勉強しておかないと……。次いで、その二人の刑事さんが、必死で取り押さえようとしている人物の姿が目に入った。
 白んだ狭い部屋の中で目を凝らしてその顔を確認する。彼の第一印象は、私の想像とは全く違っていた。茶髪でもなければロン毛でもない。顔立ちには幼さが残り、純真な雰囲気を感じさせる。細身の身体に普段着をまとった彼は、真面目を絵に描いたような青年だった。
 正直、私にはとても罪を犯すような人間には見えなかった。
 刑事さん二人は私が入室したことを確認すると、
「後藤くん! こいつを取り押さえてくれ!」
 と、私に声をかけてくる。その声はとても切迫したものだった。
 私は表情を引きしめ、彼らのいる方へと急いだ。

Back | Novel index | Next
 冷えた空気が火照った身体に心地よかった。
 思った以上に疲れていたらしい。ゆっくりとお湯に浸かったことで、手足が幾分軽くなっているのが分かった。
 浴室の照明を切って部屋に入り、すぐさまドレッサーへと向かう。ちょっと前までは、こんなバスローブ一枚の姿では寒くてたまらなかった。あらためて、季節の移り変わりの早さを実感する。
 髪を頭の上で軽くまとめ、化粧水を手に取る。それをコットンに多めに含ませ、頬を丹念に撫でていく。化粧台の前には、たくさんの美容液や化粧品が並んでいる。それらを使ってお肌のケアに勤しむ。
 一通り終わって顔のお肌チェックをしている頃、小さなケータイが私を呼んだ。掌の半分ほどの大きさのそれを手に取る。着信表示には大切な先輩の名前が浮かんでいた。
「はい!」
 喜びと期待でつい大きな声を出してしまう。
「もしもし、由香利――」
 甘くて優しい声が身を包む。
 さっきまで感じていた疲れがまるで嘘だったかのように、身体中に元気が漲ってくる。
「凛先輩、こんばんは! おつかれさまです!」
「うん。今日は本当におつかれさま。正直、疲れたでしょ?」
「はい。でも、先輩から電話をもらったら急に元気になっちゃいました。」
 通話口の向こう側から、苦笑にも似た笑い声が聞こえる。
「……どうだった?」
「そうですね。初めての仕事だったので、いろいろと新しい発見がありました。」
「どんな?」
 凛先輩のその言葉を聞き、あらためて今日の出来事をふり返ってみる。その時になって初めて、今日の日記をまだつけていなかったことに気が付いた。そのことを考え込み、しばし沈黙してしまう。
 再度、先輩の言葉が通話口から聞こえてきた。
「あ、いきなりそんなこと聞かれても困っちゃうね。ごめん。」
 黙り込んでしまったことで心配をかけてしまったのかもしれない。慌てて口を開く。
「ごめんなさい。いろいろとあったんですけど。」
「一口では言えないよね。本当、無理しなくていいから。またゆっくり聞かせてね。」
「ありがとうございます。これからも頑張ります!」
「――ん……あの、さ……。……あまり気張らなくていいからね。」
「ご心配、ありがとうございます! 嬉しいです!」
「もし辛かったら――」
「全然! 今日もすごく楽しかったので!」
「……そう。……それならいい。これから一緒に仕事をする機会もあると思うから、よろしくね。」
「はい。こちらこそです。どうぞよろしくお願いします!」
 そこで通話は途切れた。
 凛先輩から直接電話してもらえたことで、心までリラックスできていることに気付く。あらためて先輩に対する感謝の気持ちが膨れ上がってくる。心地よい気分で机に向かい、私は一冊のノートを手に取った。新しく買った分厚いノートの表紙には『由香利ノート』と記してある。表ページの見開きに書いた『正当拷問自白法 執行記録』という大きな文字を見ていると、今日の仕事の光景がまざまざと脳裏に浮かんでくる。私は夢中になってノートにペンを走らせた。
 ノートを書き終えた時、私の胸はなぜか大きな高鳴りを見せていた。
 ふと時計を見上げる。針は深夜一時を指していた。
 ――こんなにドキドキして、眠れるのかな?……でも明日も仕事! 寝不足は美容の敵!
 そんなことを考えながら、私はベッドに潜り込んだ。

Back | Novel index | Next
●ふたりエッチ 克・亜樹 [白泉社]
 31巻:腹に棒打、苦悶

●ハンター・キャッツ あろひろし [徳間書店]
 1巻:腹に肘打ち、気絶
 2巻:腹にパンチ、ダウン
 〃 :腹に肘打ち

●変幻戦忍アスカ 黒岩よしひろ [集英社]
 上巻:腹に石投、貫通、吐血
 下巻:腹に蹴り、吹き飛び、苦悶
 〃 :腹にリング投げ当て、流血、気絶

●天然少女 萬 こしばてつや [講談社]
 3巻:腹に(石握り)パンチ、鼻水、胃液、苦悶
 〃 :腹にパンチ、連打、涙
 5巻:腹に箒打
 〃 :腹に箒突き、苦悶
 6巻:腹にパンチ、苦悶
 8巻:腹に蹴り、吹き飛び
 〃 :腹に蹴り

●女子アナ魂 -こはるON AIR- 海野そら太 [集英社]
 1巻:腹に跳び蹴り


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
<ブログランキング>

FC2ブログランキング
いつもクリックのご協力を頂き、本当にありがとうございます。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


<特別 pick up>

【創作系】
言わずと知れた、コギャルリンチ系イラストサイト様です。
エッグのお部屋
当サイトへも素晴らしいイラストを提供してくださいました。管理人は足を向けて寝られません(笑)
昔のイラストやGIFアニメを再公開されています。想い出深い方もきっと多いはず。ぜひご来訪を!

Back | Link category | Next
女子高生シリーズも、いつの間にか九話目に入っていました。
今回の作品は、前作「瀕死遊び」を踏まえた内容となっています。
初めてお読みいただいた方は、こちらも併せてお読みくだされば、より楽しんでいただけるかと思います。

麻美大嶋学園二年。彼女たちも無事進級できたようですね。
今回はまたまた新キャラ登場。彩香、紗希のクラスメートの美里です。
Mっ気のある強い娘。口調は優しく、責めは残忍。そんなタイプもいいかなと。
彼女への応援も、ぜひよろしくお願いします。

それにしても、FC2のブログランキングというヤツはシビアですね(苦笑)
マイナーな嗜好ゆえ、なかなか上位に入れないのは承知なのですが。
最近は、そもそも需要がどのくらいあるのだろうかと、少々不安を感じております……
いつもクリックしていただいている方々には、大変感謝しております。
どうもありがとうございます。

こちらの事情で申し訳ありません。何卒、クリックにご協力くださいませ。

ブログランキング → FC2ブログランキング

また、作品をご覧いただいている方、拍手ボタンを押してくださっている方、wikiへの情報を下さっている方、そしてコメントを下さっている方にも、併せて御礼申し上げます。
皆様に支えられ、励まされながら、何とか頑張っております。
今後も、どうぞよろしくお願いいたします。

●美里のキャラ絵 →   
●彩香のキャラ絵 →  
●紗希のキャラ絵 →   

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。

Back | Novel index | Next
 無惨な姿を晒した高岡と都村を美里が見つけたのは、校舎の陰に辿り着いた時だった。
「こ……これ……」
 目を大きく見開く美里をよそに、彩香は苦笑いを浮かべていた。紗希は知らぬふりを装っている。
 美里があらためて彩香のローファーに目を遣ると、彩香は高らかに笑った。そして、
「私たちの勝手。美里には関係ないよ。」
 と、あっさりとした口調で言う。その言葉を聞いた紗希は「本当、ハイキック好きだよね……パンツ見えてたし……」と呆れた様子で呟く。
 高岡の顔面は不自然に歪み、鼻や口から血を流していた。
 美里はにっこりと笑うと都村の方へと目を移す。都村は身体を丸めて地面に転がっていた。その口からは大量の吐瀉物が吐き出されていた。彼女はすっと都村の身体を揺すり、吐瀉物を喉から流し出す。紗希はその様子をちらちらと気にしながら見ていた。
「喉が詰まるといけませんので、一応。」
 と、美里が言うのを聞き、紗希は少しバツの悪い表情を見せる。
 彩香はそんな紗希の様子をわざとらしく見ながら、薄ら笑いを浮かべていた。
「膝蹴り一撃でゲロだよ。紗希、何で瀕死遊びに参加しないわけ?」
 彩香は皮肉っぽくそう紗希をからかう。紗希は黙ったままプイと目を逸らした。それを見て美里が「ふふっ」と笑う。
 彩香は屈託のない笑顔を美里に向けながら、言葉を続ける。
「それにしても、ダブルSだなんて失礼なネーミングだと思わない?」
 くすりと笑う美里。紗希は「別に……」と言って彩香と目を合わそうとしない。美里が口を開く。
「まぁ、いいんじゃないでしょうか? お二人ともドSですから。」
 その言葉で三人は同時に笑い声を上げた。彩香が俄然元気になる。
「じゃあ、今日からはそのドSが三人だね。トリプルS! んー、まぁ悪くないかも。」
 彩香がそう声高に言うのに対し、紗希は「いやだよ……」と漏らす。美里は困った顔をしていた。
「えと、あの……でも、私はイニシャルSじゃないんで……むしろ……」
 その言葉に彩香と紗希が同時に反応する。彩香が美里の肩を掴んで目を輝かせる。
「あ、ミサトだからMか! うん。まさに名は体を表すだね。強いドMっていうのもいいじゃん。」
「いえあの、……ドMってほどでは……」
 美里は苦笑いを浮かべるが、自覚しているのかそれ以上言葉を続けなかった。
「それよりさ……」
 ふと立ち止まり、彩香が紗希の方へ視線を移す。
「紗希は何で黙って見てたわけ? あんたいっつもそういうとこあるよね?」
 皮肉めいた口調だった。紗希はそれに落ち着いた声で答える。
「目をみれば分かるよ。自信がなきゃあんな目はできない。」
 そう言って紗希はにっこりと笑う。美里の頬が赤くなる。
「それにさ……」
 ――気に入ったんだ。私たちを売ろうとしなかったその心意気が――
 それは小さな声だった。
 彩香は顔を目一杯に歪めて紗希を肘で小突く。紗希は照れたように俯いた。
「じゃあ、気晴らしにもう一人やっとこっか。まだ少し昼休みあるしさ。」
 と、彩香が屈託なく笑う。紗希はまた呆れ顔でため息を一つ吐く。
 美里はそんな二人の様子をくすくすと笑いながら見ていた。
「よし、そうと決まったら教室まで急ご。」
 そう言って、彩香は足を早めた。
 紗希と美里はお互いに顔を見合わせて笑い合い、彩香の後に続く。
 校舎へと向かう三人の影が、地に長く伸びていた。



END

Back | Novel index | Next
「う……げえええっ……」
 宮田が苦悶の声を上げる。
 強烈に引いた美里の肘は見事に彼の鳩尾を貫き、彼から呼吸と身体の自由を奪っていた。
 宮田は地面に倒れ、腹を押さえて転げ回った。胃から逆流してきた液体を吐き出しながら、何度も咳き込む。美里を見上げる。彼女の表情には哀れみにも似た感情が浮かんでいた。
「な、なんでだよ……」
 宮田が呻き混じりの声で問う。美里は蹲る彼の側にしゃがみ込み、
「苦しいですよね。ごめんなさい。」
 と、同情と謝罪を込めた言葉を述べる。
「でも……やっぱり卑劣な人には従えませんので。」
 申し訳なさそうに耳元で囁く。
 すっと宮田の背中の方へと回った美里は、その細い腕をするりと宮田の首に巻きつける。彼は目を大きく見開き、青ざめた表情を見せる。怯えからか、彼の身体は小刻みに震え始めていた。
「や、やめ――」
「――正々堂々とする方が、かっこいいですよ。」
「わ、分かった! す、すみませんでした! ……だから……」
 その言葉を聞いて美里は満面の笑みを浮かべる。
「――すぐ楽になりますからね……」
 そう言って美里は腕に力を込める。彼女はそっと瞳を閉じた。宮田はやがて白目をむき、ガクッと全身の力を抜いた。彼は口から泡を吹き、意識を失った。


 高岡と都村はどちらともなく、美里に背を向けて一目散に走り出した。
 美里は彼らを追おうとはしなかった。一つ大きなため息を吐くと、乱れた制服を整える。気を失って倒れている四人をしばらく無表情のまま見つめた後、踵を返して教室へと向かう。
 その時だった。
 パチパチと手を叩く音と質素な歓声が聞こえ、美里は驚いて足を止める。彼女が音のした方へと目を向けると、そこには彩香と紗希が微笑を浮かべて立っていた。
 美里の頬が赤く染まる。
「あ、あの……」
 彼女はそれ以上の言葉を発しなかった。彩香が明るく声をかける。
「美里、おつかれ。」
 見られていたことを恥ずかしく思ったのか、美里は俯く。紗希はそんな美里の側へと寄ると、頭をポンポンと優しく叩いた。紗希は何も言わず、ただにっこりと笑って美里の肩を優しく抱きしめた。
 やがて三人は教室へと向かって静かに歩き出した。ふと、美里が彩香に声をかける。
「あれ? 彩香さん。その靴……」
「――ん?」
 見ると彩香のローファーには所々に血が付着していた。彩香は慌ててその血を手で払おうとする。紗希はそれを見てくすりと笑いを零した。

Back | Novel index | Next
 高岡と都村は完全に怖気づいたようだった。
 数分のうちに三人もの男子がやられた。そのことが、彼らから戦意そのものを悉く奪っていったのだろう。美里の強さを目の当たりにした二人の身体は震え、腰は引けていた。
「や……やべーよ、こいつ。」
「マジかよ……」
 二人がじりじりと後ずさるのを見て、宮田は憤りを露わにする。
「お前ら! 何してんだよ!」
 しかしその言葉を聞いても高岡と都村は俯いたまま応えようとはしない。宮田はふうっと一つ大きなため息をつくと、貫くような視線を美里へと向ける。
 美里もまた、じっと宮田を見据えていた。しかしその目はどこかうつろだった。口元にはわずかに笑みさえ零れている。
「甘く見すぎたな……」
 宮田は言いながらすっと構えの体勢を取る。対する美里は棒立ちのままだ。視線だけを宮田に向けながら、静かに口を開く。
「やめてください。もう分かってくれましたよね?」
 そう言って俯く。髪が美里の顔を覆う。宮田は少し体勢を崩して苦笑し、
「そうだな……分かったよ。」
 と、頭をポリポリと掻いてみせる。しかしその目には獣のような輝きを宿したままだった。
「でも俺らにもプライドがあんだよ……」
 と、宮田は再び構えの体勢に戻る。「どうしてもやるんですか?」という美里の問いに対し、「あぁ」とだけ返すと、宮田は彼女に勢いよく飛びかかっていった。


「ん……ふっ……」
 声を上げたのは美里の方だった。宮田は彼女の髪を掴み、後ろ手に捻り上げる。
「お前は強ぇよ。でもな……」
 と、宮田が美里の耳元で囁く。彼の吐く息が耳にかかり、彼女が喘ぐ。
「お前は、あいつらの攻撃も避けなかった――」
 言いながら、宮田はさらに強く彼女の髪を引き上げ、腕を捻る。
 美里は苦痛の表情を見せながらも、その頬は少し赤みがかってくる。「んっ……」という呻き声を漏らすのを見て、宮田は口の端を大きく歪める。
「やっぱりな。ホントは好きなんだろ? こういうの。」
 美里はぼうっとした瞳で宮田を見つめ、口を開く。
「……そうなんだと思います。正直、さっきの『バカ野郎』もツボでした。」
 その言葉を聞いて、宮田はますます表情を卑猥に歪める。彼女の悶える仕草や従順さが、彼の加虐精神を強く刺激しているようであった。
「じゃあ、言う通りにできるよな。」
 宮田が好色な瞳で美里を舐めるように見回す。
 彼の手が勢いよく振り上げられた。

Back | Novel index | Next
 末松は欲望を抑えきれない様子だった。
 鷲掴みにした美里の両胸の感触に浸るように、ただひたすらその小さな胸の谷間に顔を押し付けていた。目的を完全に忘れてしまったのか、鼻息を荒くしている。篠崎が倒れたことにすら気付いていないようだ。
 美里が息遣いを激しくする。彼の自身もまた、完全に怒張しきっていた。
「い、痛い……」
 と、彼女が喘ぐ。魅惑的な声音が彼の理性を吹き飛ばしたようだ。彼は鼻息を一層荒げる。下半身からは既に透明の液体が滲み出てきていた。
 末松の無様な様子を見ていた宮田の怒りは、もはや頂点に達しているようだった。
 宮田の口から「バカ野郎!」という声が放たれる。美里はその罵声に身体を大きく反応させる。末松は彼の言葉を聞いてビクッと大きく身体を震わせると、即座に彼女の胸から顔を放す。
 末松がふと美里の顔を見ると、そこにはうっとりとした表情が浮かんでいた。彼はニヤリと笑みを零すと、彼女の身体をぐいと持ち上げた。
「え? ちょ、ちょっと……」
 美里が動揺した表情を浮かべる。
 末松は「寝てもらうぞ」と言いながら、彼女の身体を地面に叩きつけるように勢いをつける。
 美里は膨れっ面をしていた。そして「もう……」と呟くと、末松の首筋に強烈な手刀を見舞った。
 口から泡を吹き、末松はドサッと勢いよく倒れて気を失った。
「重いって思いました? だったら、許しませんから……」
 と、彼女は心配そうに言葉を漏らす。無論、その言葉が失神した彼に聞こえるはずもなかった。
 美里は倒れた二人を交互に見ながら、肌蹴た制服を整える。それから彼女は、未だ苦悶を続ける篠崎の方へゆっくりと歩を進めた。
「あの……見えました?」
 篠崎は股間を押さえたままきょとんとする。その質問の意味が分からずに答えに窮しているようだ。
 美里は続ける。
「見ましたよね。持ち上げられちゃったし……」
 篠崎はこの時、彼女の言わんとしていることが理解できたようだった。スカートの中を見たかと聞いているのだ。もちろんこんな状態にある彼にそんな余裕などあるはずもなかっただろう。
 篠崎は苦悶しながら、何やら言葉を絞ったようだが、
「――きっと、ブラも……うぅ……」
 という彼女の言葉に遮られる。
 美里の目にはいつの間にか涙が溢れてきていた。おそらく羞恥心に耐え切れなくなったのであろう。彼女は蹲る篠崎の頭上で、膝を高く持ち上げる。そして「忘れてください……」と懇願の瞳を篠崎に向ける。彼の表情は青ざめていた。
「わ、忘れる! 忘れるから……だから――」
 そこまで聞いた美里は安心したようににっこりと笑った。そして「おやすみなさい」と優しく囁くと、彼の頭をローファーの裏で勢いよく踏み付けた。
 顔を地面に叩き付けられた篠崎もまた、末松と同じように呆気なく気を失った。
 彼が顔を埋めた白い砂が、みるみるうちに赤い砂へとその姿を変えていった。

Back | Novel index | Next
 ポカンと口を開け、男子五人はそこに立ち尽くしていた。
 美里はすっと立ち上がり、身体に付いた砂を平然と払い落とす。それから黒木を見下ろし、
「『死ねや!』はちょっとツボでした。」
 と、ポツリと呟く。そう言った彼女の頬は赤く染まっていた。
「でも、正直タイプじゃないんです……」
 美里の妙な言動。それに加えて彼らが予想だにしなかったであろうこの状況。男子たちの瞳は露骨に戸惑いの色を湛えていた。誰ともなしに、互いに顔を見合わせている。
 怒声は止み、異様な静けさが辺りを包み込んでいた。
 業を煮やしたのか、宮田はその雰囲気を打ち破ろうとするかのように声を張る。
「お……お前ら、何マグレにビビってんだよ? 早くやっちまえよ!」
 その宮田の言葉を機に、彼らは再度自分自身を奮い立たせようと気張っているようだった。「マグレ」という言葉が、今の彼らには一番納得のいく言葉だったのだろう。
 中でも特に勢い付いたのは、篠崎と末松だった。今度は二人が、お互いの顔を見合わせる。目と目で言葉を交わしているようだ。同時にコクリと頷く。そして二人は一斉に美里に襲いかかった。
 美里は二人が襲いかかってくるのをかわそうとすらしていないようだった。
 篠崎は彼女の髪をぐいと掴み上げ、末松は両手で胸を鷲掴みにする。彼らの奇襲を受け止めた彼女は喘いで身を捩る。篠崎が髪をさらに引っ張って頭を持ち上げ、拳を振り上げる。
 その時、美里は恍惚にも似た表情を浮かべていた。
 篠崎が頬を赤める。彼女の吐息は熱っぽく、瞳が緩んでいた。彼がふと目線を下へと向けた時、彼女の制服が乱れているのに気が付いた。末松が胸を掴んでいるので、肌蹴てしまったらしかった。その中から覗く白い下着を目にし、篠崎は目の色を変えた。彼のモノがムクムクと膨れ上がってくる。彼は自らの欲情を打ち消すかのように目を瞑って頭を何度か振った。そして「あああっ!」という叫びとともに、その拳を美里の頬に叩きつけた。
 美里の顔が横に振れる。
 彼女はそのまましばらく俯いていた。篠崎はその様子を見ながら、さらに拳を振り上げる。その時、彼女はふと顔を上げ、彼の顔をじっと見つめた。
 頬を少し赤く腫らした美里の瞳には涙が浮かんでいたが、その表情はまるで愉悦に浸っているかのようだった。
 篠崎が一瞬怯む。
 そして彼女の口から吐息混じりの声が聞こえた時、彼は振り上げた拳を忘れ、完全に動きを止めた。
 その瞬間だった。
 美里の瞳が揺らめき、目にも留まらぬほど速い裏拳が篠崎の眉間を打ち抜いた。彼が声を漏らしてよろめいた時には、既に彼女の膝が篠崎の睾丸を見事に蹴り上げていた。
 篠崎は「ぐむっ……」という呻き声を上げ、膝から崩れ落ちた。
 美里は哀れむような瞳で篠崎を見下ろし、
「……痛かったですよね。」
 と、心配そうな声で囁く。
 痛みの大きさからか、篠崎の目に涙が溢れてくる。
 彼は股間を押さえながら、地面を転がって悶絶した。

Back | Novel index | Next
 辺りは再び怒声に包まれた。
 黒木は感情を剥き出しにして宮田を押し退けると、美里に掴みかかった。声を荒げ、
「てめえ、ふざけてんのか! 見せしめが嫌ならやるしかねえんだよ!」
 と、目をギラつかせる。
 肩を掴まれた美里は顔を顰めた。黒木から視線を逸らす。しかしそれでもなお、彼女の返事は変わらなかった。
「……できません。したくありません。」
 その言葉で黒木はますます感情を露わにし、右手を振り上げた。
「じゃあ、死ねや!」
 拳は美里の顔面目掛けて振り下ろされた――


 彩香は顔を真っ赤にしていた。
 湧き上がる感情が全身から滲み出てきている。しかしその矛先は、今は男子たちにではなく隣にいる紗希に向けられているようだった。
 紗希は無表情のまま彩香の口を塞ぎ、その腕を背中の方へと捻り上げていたのだ。
 引き止める紗希の意図が分からないためか、彩香は激しい抵抗を見せる。しかし塞がれた口からはもごもごと小さな音がわずかに漏れるばかりだった。関節まで決められているため、身動きすらまともに取ることができていない。
 彩香はふり返り、鋭い眼光で紗希を睨みつける。しかし、紗希の表情はとても穏やかだった。紗希は彩香と目を合わせ、にっこりと微笑む。彩香は虚をつかれたのか、その瞳を白黒させる。
 しばらくして聞こえてきた音――それによって、彩香の荒い息遣いも次第に静まっていった。
 やがて紗希は彩香から手を放し、人差し指を自分の口に当てて再びにっこりと笑う。彩香はムッとしたままではあったが、既に紗希の意図は理解できているようだった。事の成り行きも大体想像ができたのだろう。それ以降、彼女が感情を荒立てることはなかった。
 再び、二人はそっと壁の陰から顔を覗かせた。


 ――ドスンという鈍い音とともに、低い悲鳴が響く。
「ぐはぁっ!」
 黒木は背中から砂の上に倒れ込み、その腕は美里がしっかりと握っていた。その光景を見れば、美里が黒木に一本背負いを見舞ったのだということくらいは一目瞭然だ。間髪入れず、彼女は呼吸を見失って青ざめている黒木の首にするりと腕を絡ませる。チョークスリーパーの形だ。そのままググッと力を込める。
 黒木がもがく。口から舌が突き出し、涎が零れていく。彼の顔は次第に赤くなり、その身体は徐々に痙攣してくる。
 他の男子たちは突然の出来事に呆気に取られたのか、ただその様子を見ていることしかできていなかった。
「――ごめんなさい。」
 美里の冷静な声が小さく響く。そして彼女は、黒木の喉に喰い込んでいる腕に瞬間的に強い力を込めた。
 黒木の全身が一気にだらりと垂れ下がる。黒い瞳がぐるりと白く反転する。
 美里が手を放すとともに、彼の身体は仰向けのまま地面に崩れ落ちた。
 みるみるうちに黒木のズボンの股部分が濡れ広がっていった。

Back | Novel index | Next
 俯いたまま美里は声を絞る。
「あ、あの……ダブルエスって……?」
 その言葉を最後まで聞くことなく、黒木は言葉を重ねる。
「サヤカとサキのことだよ、このボケが! あいつらのやってること、お前もいつも見てんだろが!」
 高岡が「惚けんなよ!」とさらに彼女を威圧する。他の男子たちも厳しく彼女を睨みつけていた。
 彼女は困惑した表情で、疑問を震える口から漏らす。
「……知ってます。でも、それと私と、あの……どういう関係が?」
 しかしその言葉は、却って男子たちの怒りに火をつける結果にしかならなかったようだ。
 群集がさらに大声を上げる中、先ほど拳を壁に叩きつけた宮田が冷静な声で彼女に告げる。
「見せしめだよ……。この意味、分かる?」
 卑猥な含み笑いを浮かべながら、彼は美里の頭をポンポンと軽く叩く。その言葉を聞き、美里は強張った表情のまま身を硬くした。
「いつもの俺たちの痛み、味わってもらうからな。」
 と、黒木。美里は今にも膝から崩れ落ちてしまいそうなほど震えていた。
 そこへ再び宮田が口を挟む。
「……と、言われると怖えよな? そこでだ……」
 その言葉を機に、男子たちは一斉に身の毛もよだつような嫌らしい微笑を零し始めた。
 宮田は言葉を続け、美里に取引をもちかけた。彼女が告げられた内容は、彩香と紗希の卑猥な写真を撮影してくるというものだった。しっかりと顔が写っていることを条件として提示された。


 紗希がぐいと彩香の手を引く。
 耳をそばだてるあまり、彩香が校舎の陰から身を覗かせてしまいそうになっていたからだ。
 彩香が小声で問う。
「ねえ、今の聞こえた? あいつら、何て言ったの?」
 紗希にはその言葉がしっかりと聞こえていたようだ。しかし彼女は彩香の問いには答えず、依然としてその様子を黙って見ているだけだった。


「間違っても奴らにチクったりすんなよ。」
 そう言って宮田はようやくその拳を校舎の壁から離す。同時に、黒木も美里の顎から手を放した。宮田は「分かったら行け」と言い放つと美里に背を向ける。他の男子たちも口々に捨て台詞を吐きながら、ぽつりぽつりと教室に向かって歩き始める。
 その時、ふいに美里が口を開いた。
「……嫌です。」
 思わぬ言葉に、全員の視線が再び美里へと注がれる。耳を疑ったのか、男子たちはざわめく。
 美里は先ほどまでとは打って変わり、毅然とした態度で男子たちを見つめていた。
「今、何つった? あ?」
 顔を近付け、宮田が威嚇する。しかし、美里の表情が変わることはなかった。

Back | Novel index | Next
「――美里?」

 彩香が呟く。紗希は無言のままでコクリと頷いた。
 美里と呼ばれた女子生徒は二人のクラスメートだ。彩香とも紗希とも特に親しい間柄というわけではなかったが、顔を合わせれば挨拶を交わすし、休み時間になれば話をする。自分から責めに加わることは一度もなかったが、瀕死遊びにも毎回見学者として参加していた。
 近からず、遠からず。彼女たちとはそれくらいの関係であった。
 背は小さい。小柄な紗希とほぼ同じくらいの身長だ。スタイル抜群の彩香とは対照的に、彼女は典型的な幼児体型であった。胸やヒップの膨らみもそれほど目立たない。漆黒の艶やかな髪ではあるが、その髪型は流行を意識している風ではない。目鼻立ちは整っているが、どちらかと言えば美人というより可愛らしい雰囲気をもつ女子生徒であった。
 彩香と紗希の目の先にはその美里と、彼女を取り囲むように徒党を組んだ男子数人が映っていた。その数は六人。宮田、黒木、高岡、篠崎、末松、都村。無論、彼らもまた二人のクラスメートであった。
 彼らの目はあからさまに威嚇の色を湛え、一人一人の口からは数々の暴言が吐き出されていた。
「死ねよ、てめえ!」
「うぜーんだよ! 何とか言えよ、ボケが!」
「犯すぞオラ! それとも今すぐ死ぬか? あぁ?」
 飛び交う男子の罵声に早くも我慢の限界を迎えたのか、彩香の拳がぐっと固く握られる。それに気付いた紗希は彼女に視線を向けることなく、手だけで制す。身体を震わせる彩香に気を配る様子を見せつつも、紗希は美里と取り巻きの男子たちを冷静に見つめ続けているようだった。
 にじり寄る男子たち。ある者は憎しみの眼光を向け、ある者はその口元に薄ら笑いを浮かべている。美里はじわじわと校舎の方へと追いやられ、やがて壁を背にして足を止めた。
 彼らの中のリーダー格である宮田が彼女を脅すように腕を勢いよく振り上げ、彼女の耳の横を掠めて壁にその拳を叩きつける。美里の表情は青ざめ、肩は小刻みに震えていた。その様子を見ながら彼は美里にずいと顔を近付けると、
「何で呼び出されたか分かってんだろ? あ?」
 と、ドスの効いた声で静かに口を開く。
 美里はその声に一層身体を大きく震わせながら、上擦った声で「いえ……」とだけ答える。それは今にも消え入りそうな声だった。しかしその反応が、却って彼らの怒りという名の油に火を注ぐ。先ほどより一段と大きな罵声が辺りを包み込んだ。
 そんな中、逆上しきった表情の黒木が横から近付き、彼女の顎をぐいと持ち上げる。
「ダブルSのクソどもだよ! 知らねえなんて言わせねえ!」
 

 陰から覗いていた彩香がその言葉にピクリと反応する。
 紗希は唇を噛み締めた彩香にちらりと目を遣り、首を少し横に振った。「まだその時ではない」という合図のつもりだったのだろう。
 今にも飛び出していきそうな勢いを見せていた彩香は、さらに強く拳を握り締める。
 紗希の表情は変わらなかった。ただじっと、瞬き一つせずに彼らを見つめていた。

Back | Novel index | Next
 拳は深くめり込んでいた。
「うぅ……ぐふぅ……」
 彩香と向かい合っていた男子生徒は、力なく彼女の脇をすり抜けて倒れ込んだ。身体をくの字に曲げ、黄色味がかった液体と吐瀉物を口から零している。ピクピクとその身を痙攣させるその男子を見下ろす彩香の表情は、これ以上ないほどの輝きを湛えていた。
 甲高い歓声が教室中を包み込む。
 彩香と男子を取り巻いていた女子生徒たちのうちの一人が「八分五秒!」と声高に叫ぶ。彩香はその言葉を聞くと同時に、口を大きく開いて歓喜の声を上げた。
 瀕死遊びの形式を変えてから、今回が彼女の最高記録だった。感情表現が豊かな彼女が跳びはねて喜んだのも無理はない。
 いつものように、倒れた男子を他の女子たちが取り囲み始めた頃、ふと彩香に耳打ちする女子がいた。
「……ちょっと、いい?」
 彩香が視線を声の方へと移す。その声の主は紗希であった。愉悦に浸っていた彩香にとっては、急に呼びかけられたことが鬱陶しく思えたのかもしれない。彼女はあからさまに表情を顰めると、半ば投げやりな態度でそれに応えた。
「何よもう。せっかくいいところなのに――」
「時間がないの。急いでくれる?」
 彩香の言葉を遮るように、紗希は彼女の声に言葉を重ねる。紗希の瞳には冗談の一つも許さないほどの切迫した緊張感が漲っていた。彩香の表情が一気に引き締まる。
「分かった。」
 とだけ彩香が答えると、紗希は彼女の手を引いて教室の外へと足を急がせた。


 彼女たちは、この瀕死遊びというゲームに熱中していた。しかしゲームとは名ばかりで、実態は女子たちによる男子いじめそのものであった。
 この事態に教師は厳しく指導をしてきたが、根底からの解決にはまだ至っていない。
 私立麻美大嶋学園にはクラス替えがない。そのため、その危険な遊びもまたその形を変え、新学期を迎えた現在でもクラスの男子たちを苦しめ続けていた。


 二人が向かった先は校舎裏だった。
 滅多に使われることのない空き教室の並ぶ校舎の裏手だ。普段なら人の気配すら感じることのない場所である。しかし今日は事情が違った。低い怒声のようなものが幾重にも重なり、校舎裏を賑わわせていた。
 彩香が怪訝な表情を見せる。
「一体、何なの?」
 問いかける彩香の質問に答えることなく、紗希は校舎の陰からそっとその声のする方へと視線を向けていた。彩香は「もう」と呆れた声を上げる。彼女はその膨れっ面を隠そうともせず、紗希に重なるようにして同じ方向をそっと見つめた。

Back | Novel index | Next
●KATSU あだち充 [小学館]
 4巻:腹にパンチ、咳き込み
 〃 :腹にパンチ

●CYNTHIA_THE_MISSION シンシア ザ ミッション 高遠るい [一迅社]
 2巻:腹に打撃、胃液
 〃 :腹に発勁、内臓破裂、吐・流血、死
 3巻:腹にパンチ
 4巻:腹に蹴り、胃液、気絶
 〃 :腹に裏拳
 〃 :腹に肘打ち、苦悶
 5巻:腹にパンチ
 6巻:腹にパンチ、胃液、吐血、苦悶
 7巻:腹に蹴り
 〃 :脇腹にパンチ、胃液、苦悶
 8巻:脇腹に発勁、吹き飛び

●D.Gray-man ディー・グレイマン 星野桂 [集英社]
 7巻:腹に蹴り、吐血、吹き飛び

●ゼロイン いのうえ空 [角川書店]
 vol.1:腹に銃で峰打ち、吹き飛び、咳き込み、胃液
 〃  :腹に銃で峰打ち、連打、胃液、吐血、気絶
 〃  :腹に後ろ回し蹴り、気絶
 〃  :腹に肘打ち、吹き飛び、苦悶、気絶
 vol.3:腹に銃で峰打ち、連打、吹き飛び、咳き込み
 〃  :腹に棒(?)打、吐血
 〃  :腹に銃で峰打ち、連打
 vol.4:腹に銃で峰打ち、胃液、吐血、気絶
 vol.6:腹に蹴り、吹き飛び
 vol.7:腹に銃で峰打ち、吹き飛び

●ごてんばチアリーダーズ 宗我部としのり [少年画報社]
 2巻:腹に裏拳


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
suzuroさんのスケッチブックの一部を大公開です。
今回お願いして、suzuroさんが日頃描かれているイラストを送っていただきました。
※画像をクリックすると、拡大します。携帯の人はこちら→ 1 2

    
suzuroさんコメント…
 スケッチブックということで、言ってしまえばただの落書きなんです。
 普段は、SM、逆リョナ、リョナ、エロ、女の子、男の子、いろんなジャンルの絵を描いています。
 こんな絵を載せる場を作っていただいた、ryonazさんに感謝いたします。
ryonazコメント…
 本当にありがとうございました。suzuroさんの落書き>私の真剣な絵、ということで(笑)

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。

Back | CG index | Next
『ピューと吹く!ジャガー』という漫画があります。
ご存知の方も多いかと思いますが、うすた京介氏の書かれているギャグ漫画です。
その中の「五月病」を取り扱った作品を見ていて何となく思いつき、何となく書きました。
軽いタッチの不条理ストーリーです。
最近はドギツイ作品ばかり執筆していましたので、ちょっと頭休めにと。
頭が弱いので、時々こうやって脳みそをユルユルにしないと滅入ってしまいます(苦笑)
気軽に読んでいただければ幸いです。

GWも終わりました。
皆様におかれましても、どうぞ五月病にはお気をつけくださいませ。

逆リョナ@wiki」作成にご協力下さっている方々、本当にありがとうございます。
皆様から頂く情報には、大変助けられています。個人レベルではやはり限界がありますので。
情報は随時募集しています。ぜひ、お気軽にお寄せください。よろしくお願いいたします。

次回は「女子高生シリーズ」続編を掲載予定でおります。
よろしければ、どうぞお付き合いください。
今後とも、Black Onyx [ブラックオニキス]をどうぞよろしくお願いいたします。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
 苦しさから目に涙が溜まってくる。
 ひとしきり吐き終えた時、ふと後ろに気配を感じた。ふり返ると、そこには真紀が燃えるような瞳で僕を見つめていた。僕は身体を無意識に縮こめる。
「殺してほしい?」
 真紀が恐ろしい言葉を吐く。僕は大きく身震いをすると、首を何度も横に振った。しかし彼女は「ふーん」と気のない返事をする。そして後ろから僕の髪をぐいと掴むと、今度はトイレの壁に僕の顔面を叩きつけ始めた。
「があっ!」
 たまらず倒れ込みそうになる。真紀はそんな僕の腹に膝を突き立て、身体を支える。
「ぐぅえっ!」
 再び髪を掴まれ、瞳を覗き込まれる。真紀の口元は緩み、「ふふ」と声を漏らす。彼女が右手を振り上げるのが見えた。パンという音とともに、僕の顔が横に振られる。打たれた左の頬はすぐに熱を帯びてきた。さらに右側からも打たれる。それから何度も、彼女のビンタは右から左から容赦なく飛んできた。僕はただひたすら「ごめんなさい。ごめんなさい」と情けない声を上げ続けた。
 しばらくすると、真紀はふと僕の髪から手を放す。僕は彼女から与えられた苦痛で身体中がだるく感じられてきていた。
 真紀はしばらくぼうっと天井を見つめ、それからふと僕を見る。先ほど部屋で見たのと同じような、うつろな瞳だった。彼女がポツリと口を開く。
「ちょっと、何してるの?」
 予想外の言葉に僕は呆気に取られる。
「もう、嫌らしいんだから。女の子のトイレ覗くなんて最低。」
 ――?……いや、あの……え?
「早く出ていってよ、もう。」
 あまりにも理不尽な言葉だと思った。しかしながら、この時の真紀は確かに僕の知っている真紀だった。さっきとは打って変わった明るい声だ。僕は彼女の手から解放されたことに安堵し、ふうっとため息を漏らす。「ごめん」とだけ言い残し、すぐさまトイレから出る。やがて中から、彼女の機嫌のよい鼻歌が聞こえてきた。
 ――何だったんだろう?……一体、彼女って?
 疑問は尽きなかった。しかしながら、真紀がいつもの様子に戻ったことで僕は安心感に包まれていた。しかしながら、彼女から受けた攻撃は未だ僕を苛み続けていた。彼女がトイレから出てくる頃には、僕は身体の限界から布団の上に倒れ込んでいた。真紀はそんな僕の姿を見て心配そうな声を上げる。
「どうしたの? 大丈夫?」
 僕にはもうツッコむ気力すら残っていなかった。身体中が痛む。
「大丈夫だよ。ただ、ちょっと休んでいい?」
「あ、うん。もちろんそれはいいけど。本当に大丈夫?」
 言いながら真紀は僕にそっと布団をかける。側に横になり、僕の頭を撫でる。心配そうな顔をしながら、彼女はしきりに僕の傷痕を擦る。彼女にその優しさが戻ってくれただけで十分だった。しかし身体の痛みは消えない。僕は正直に答える。
「……うん。ただ、何だか身体が重くなってきちゃって……」

「そっか……。もしかしたら五月病なのかもね。」
 
 ……僕は彼女がますます分からなくなった。



END

Back | Novel index | Next
「うーん……」
 と真紀は唸り、再び憂鬱そうな表情を浮かべる。
 幸い今日は日曜日だ。休日になるとデートに出かけるのが僕たちの日課になっていたが、気分が悪いのなら無理をする必要はない。
「今日はゆっくり休もうか。」
 そう言って、僕は布団を用意する。真紀は深いため息を吐き、また窓の外に目をやっていた。
 真紀の症状が分からず、僕は不安に駆られる。
「……やっぱり、季節柄なのかな?」
 無意識に出た独り言だったが、真紀はそれに反応する。
「季節柄って? どういうこと? こういう気分になる病気があるの?」
「いや、病気って言うかさ……」
 そこまで言って僕はふと先ほどのことが気がかりになった。真紀のあの態度の変容は一体何だったのだろう。いきなりあんなことをするなんて。そう思うと、僕は口を開かずにはいられなかった。
「あの、さ。さっきは何であんなに怒ったの?」
「え? 何が?」
 真紀の反応に僕は驚く。
 まるでさっきまでのことをすっかり忘れてしまったかのように、彼女は平然とした表情を見せていた。
「何って。さっき僕を蹴ったでしょ? すごく怒って。聞いただけだったよ、五月病じゃないかって――」
 そこまで言った時、真紀は唐突に立ち上がり、僕の方へと向かってきた。
 顔を掴まれ、僕は自分の敷いた布団の上に倒される。
「え? ちょ……あ、もごっ……」
 僕の口に真紀の足が捻じ込まれる。喉につかえる感触に不快感を覚え、たまらず吐き気を催す。彼女はやがてその足を僕の口から引き抜くと、躊躇なく僕の顔面を踏み付けた。噴き出す鼻血とともに、痛みが込み上げてくる。思わず僕は唸る。
「……今、何て言ったの?」
 その真紀の声音は明らかに威嚇の様相を呈していた。
 僕は何が何やら分からず、ただその痛みに悶え苦しんだ。彼女の足の下から滑り出すと、僕は顔面を押さえて身体を転がした。
「ぐ……あぁ……」
 呻き声を上げる。それでも真紀の猛攻は収まらない。転がる僕を甚振るように、何度も身体中を蹴り上げる。僕は理由が分からないまま、ただ身を丸めていた。
「ご、ごめん。僕、何か気に障ること言った? だったら、謝るから!」
 しかし真紀の蹴りはなおも続く。しかし、この時僕には一つだけ分かったことがあった。「五月病」だ。さっきからこの言葉に彼女は反応し、普段は決して見せることのない凶暴性を発揮している。嫌な思い出があるのかもしれない。何かトラウマがあるのかもしれない。
 そんなことを考えていた矢先、真紀のニードロップが仰向けに倒れた僕の腹を見事に抉った。
「ぐ……うええぇ!……あぐぅ……」
 強烈な不快感が僕を包み込む。内部から突き上げてくる嘔吐感に耐え切れず、僕は必死でトイレへと駆け込んだ。
「どこ行くんだよ、おら!」
 真紀の罵声を背中で聞きながら、僕は便器に顔を突っ込み、喉の奥から勢いよく吐瀉物を吐き出した。

Back | Novel index | Next
 真紀の口から「ううん」という言葉が聞こえるまで、随分と長い時間がかかったように思えた。僕はひとまず安堵のため息を漏らすが、まだ不安はこの身を解放してくれない。彼女は未だ心ここにあらずといったように、ただ窓から見える真っ青な空をじっと見ていた。
 間違っても、これ以上僕の不安を煽るような言葉を真紀に重ねてほしくなかった。
 既に僕の心は深淵に落ちてしまったかのようだ。元気な表情を繕うことすらままならない。いつもの明るい真紀に戻ってほしい。変な気持ちに囚われてほしくない。
 真紀の気持ちを別の方へ向けようと必死で考えた。彼女の調子の悪さを何とか説明できれば。そう考え、再び僕は苦し紛れに彼女に問いかける。
「――五月病ってことはないかな?」
 僕の言葉に真紀はピクリと反応し、その顔を窓から僕へと向ける。言葉を続ける。
「ほら、よくあるでしょ? 何となく憂鬱になるっていう……ふぐっ!」
 唐突に、真紀の肘打ちが僕の鳩尾を捉える。僕はたまらず身体を前のめりにする。
「――な……何を? ……!!……」
 ……僕は言葉を途中で呑み込まずにはいられなかった。真紀の瞳の端がつり上がり、ギラギラとした輝きを湛えていたからだ。彼女の明らかな変容に翻弄される。
 真紀の鋭い眼光が突き刺さり、僕は思わず身体を竦める。彼女はふいに立ち上がって僕の髪を掴むと、再度爪先で僕の鳩尾に強烈な蹴りを放った。
「ぐあ……っはあっ!」
 呻き声を吐き出し、僕はその場に倒れ込む。真紀はすかさず僕の背中を踏み付け、グリグリと踏み躙った。
「何それ? 私を馬鹿にしてんの?」
 真紀の口調は真剣そのものだった。こんなことは初めてだった。僕は混乱する。
 ――どうして?
 訳が分からないまま腹を押さえて悶絶する。食べた直後に蹴られたため、パスタが喉元へと逆流してくるのが分かる。込み上げてくる吐き気を何とか抑え、必死で彼女に問う。
「ど、どうしたの?……急に……」
 真紀が怒った訳を知りたかった。もしかしたら時期の問題もあるのかもしれない。精神的に不安定になっているだけなのかもしれない。とにかく理由が知りたかった。
 しかし真紀は無言のままでいる。僕は言葉を続けた。
「もしかして、生理とか? そういう時って、不安定になるもんなんだろ?」
 それを聞いた真紀は急に笑い出した。少し頬を染めながら、恥ずかしげに顔を手で覆う。
「や、ヤダ! 違うもん。そんな恥ずかしいこと言わないでよ、変態!」
 真紀の蹴りが再び僕の顎を正確に捉える。
「あがっ!」
 僕は勢いよく仰向けに倒れ込んだ。真紀の表情はさっきとは打って変わった綻びを見せていた。さっきの行動の意味は分からなかったが、彼女の機嫌が直ったことに僕は安堵する。
「あ、はは。そうだね。いくら彼女でも、失礼だよね。ゴメンゴメン。」
 僕はそう言って精一杯の笑みを浮かべる。
「そうだよ。あっはは! もう本当に恥ずかしいよう。」
「でも、ちょっと元気になったみたいで安心したよ。」
「うん。何かすっきりしたみたい。」
「よかった。でも風邪でもないのにどうしたんだろうね?」

Back | Novel index | Next
 雲ひとつない空はどこまでも続いていた。
 キッチンから戻ってきた彼女は、手にした二人分のパスタをテーブルに並べる。
 その腕は陽光が差すと透けてしまいそうなほど白い。すらりと伸びたしなやかな指だ。その付け根の一つにはプレゼントした指輪が輝き、僕の顔は自然と綻ぶ。しなやかな指先からふとその顔に目を移せば、切れ長の瞳がまず目に入る。それは常に光を灯しているかのように煌いて見える。
「どうかしたの?」
 と、僕の視線に気付いた彼女が問いかける。僕は「いや」とだけ答え、その厚めの唇が湛える紅に魅入る。端正で優美な彼女の顔を彩る化粧は決して厚くない。艶やかな長い黒髪は首の後ろで束ねられている。軽くネイルの塗られた生足が艶かしさを醸し出す反面、彼女が身に着けたTシャツとスパッツからはラフで健康的なイメージが漂っていた。
 いつも甲斐甲斐しく家事をする。そんな彼女が僕の一番の自慢だった。
「ありがとう、真紀。」
 いつも通りの台詞だ。しかしその気持ちに偽りはない。心を込めて僕は彼女にそう声をかけた。
「あ、……うん。」
 その声音に違和感を覚え、何気なく真紀の方へ顔を向ける。
 浮かない顔をしている。
「――どうかした?」
「ん……ううん、……」
 何となく反応が鈍い。調子でも悪いのだろうか。
 その時、目の前に置かれたカルボナーラの匂いが僕の鼻腔を包み込んだ。とても良い香りだ。
 真紀は俯いたままで僕の向かいに座る。
 何となくすっきりしない気分ではあった。しかしあまり気にされると却って鬱陶しいこともあるだろう。そう考え、僕はいつもより少し元気な声で「いただきます」と声を上げてパスタを頬張る。
 その時、ふいに真紀がポツリと呟く。
「……もう、終わりかもね――」
 唐突な言葉に少し驚く。ちらと真紀を見る。彼女はフォークを片手に片肘をテーブルにつき、ふうっと大きなため息をついていた。
 さすがに心配になって真紀に再び声をかける。
「大丈夫? 具合でも悪い?」
 返答はなかった。相変わらず真紀は一口もパスタに口をつけない。僕はフォークを置いてつと立ち上がり、彼女の横に座る。じっと顔を覗き込むが、彼女の瞳はどこかうつろだった。
 熱が心配でそっと真紀の額に手を当ててみる。熱があるような感じはしない。
 彼女が再び口を開く。
「熱なんてないよ。ただ何となくね……嫌なの。」
 消え入りそうな声だった。その言葉に僕は胸騒ぎを覚える。
 ――倦怠期? マンネリ?
 不安が募ってくる。つい心のままに言葉が滑り出る。
「嫌……ってのは、僕に?」
 努めて平静を装ったが、声が上擦ってしまう。僕の言葉を聞いても変わらない真紀の様子に、僕の不安はますます膨れ上がっていくばかりだった。

Back | Novel index | Next
●Baby〈ベイビィ〉 おおつぼマキ [秋田書店]
 1巻:腹にパンチ、苦悶

●エンジェル・ハート 北条司 [新潮社]
 16巻:腹にパンチ、気絶
 19巻:腹に掌底、咳き込み

●灼眼のシャナ 作画・笹倉綾人 原作・高橋弥七郎 キャラクターデザイン・いとうのいぢ [メディアワークス]
 Ⅳ:腹に膝蹴り、胃液、気絶

●みつどもえ 桜井のりお [秋田書店]
 1巻:腹にパンチ、胃液、気絶
 〃 :腹に掌底、胃液
 4巻:腹に蹴り、嘔吐、苦悶

●涼宮ハルヒの憂鬱 原作・谷川流 漫画・ツガノガク キャラクター原案・いとうのいぢ [角川書店]
 1巻:腹に蹴り、吹き飛び

●ADAMAS 皆川亮二 [講談社]
 1巻:腹にパンチ、胃液、気絶
 〃 :腹にパンチ(?)、流血、吹き飛び
 〃 :腹に掌底(?)、気絶


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
●ちぇんじ123 原作&絵コンテ・坂口いく 漫画・岩澤紫麗 [秋田書店]
 1巻:腹にパンチ、吐血、吹き飛び、気絶(?)
 2巻:腹にパンチ、苦悶
 〃 :腹にパンチ(?)、胃液
 3巻:腹に棒打、胃液、咳き込み
 〃 :腹(心臓)にパンチ
 〃 :腹に後ろ回し蹴り、吹き飛び
 〃 :腹(心臓)にパンチ
 〃 :腹(心臓)にパンチ
 〃 :腹にパンチ(?)
 〃 :腹に物打、吹き飛び、咳き込み、骨折、吐血
 6巻:腹にパンチ、吐血、吹き飛び (回想)

●DRAGON'S HEAVEN ドラゴンズヘブン 脚本・深見真 漫画・笠原夕生 [スクウェア・エニックス]
 1巻:腹に蹴り、吹き飛び、苦悶
 〃 :腹に蹴り
 〃 :腹に蹴り、苦悶
 2巻:腹に肘打ち、胃液、吹き飛び

●屍姫 シカバネヒメ 赤人義一 [スクウェア・エニックス]
 4巻:脇腹にパンチ、吐血
 〃 :腹に蹴り、骨折、吐血、吹き飛び、苦悶
 6巻:腹にパンチ、骨折、胃液、吐血
 7巻:腹を踏み付け、吐血


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
明るいコギャルリンチ物語。エッグのお部屋のエッグさんが、イラストを手懸けてくださいました。
管理人というお忙しい立場にも関わらずペンを取ってくださったお心遣いが、大変身に染みます。
エッグさん、本当にありがとうございます!
※画像をクリックすると、拡大します。(高解像度版は、ここをクリック!) 携帯の人はこちら→拡大


 ryonazコメント…飛び散る血液や攻撃的な足が素晴らしい! 無機質で残忍な表情が、とても魅力的です。

エッグさんのサイト 【エッグのお部屋】
エッグのお部屋

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。

| CG index |
クラッシュものに挑戦してみました。
リアルの動画も存在するらしいのですが、それを見るのは躊躇してしまいます。
動物だったらかわいそうですし、食べ物だったら勿体無いですし……
しかしながら、やはり「足で破壊」というキーワードには反応してしまいますね(笑)
お気に入りいただけましたら、幸いです。

サイト立ち上げより一年とちょっと。
いつの間にか、今回の作品で四十作目となっていました。
マニアックな駄文サイトにも関わらず、一日にこれほどのアクセスを頂けることを嬉しく思います。
丁寧にweb拍手を押してくださる皆様のお心遣いに、いつもやる気を頂いています。
コメントやメールでのメッセージに、大変励まされています。
ここまで突っ走ってくることができたのも、皆様の支えがあってこそです。
いつも本当に有難うございます。
これからもBlack Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞよろしくお願いいたします。

逆リョナ@wikiについては随時、皆様の情報を心待ちにしております。
どんなに些細な情報でも結構です。お気軽にメールしてくださいませ。
今後も、何卒ご協力をお願いいたします。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
 俺は尽き果て、余韻に浸る。
 彼女に再び御礼を述べた後、俺は何度も意識を失いそうになった。見る影もなくなったであろう身体は、あまりの痛みでピクリとも動かなくなっていた。しかし、今ならはっきりと言える。
 俺は「彼女の物」である、と。
 ふと彼女を見る。彼女は俺に素敵な笑顔を向けていた。
 逆光が鬱陶しく思えたが、それでも俺の瞳にはしっかりと彼女の表情が見えていた。とても温かくて、優しくて、美しい。間近で見れば見るほど、彼女の整った顔立ちがあらためてはっきりと分かる。
 彼女は俺の身体中を愛撫し始めた。服を肌蹴させ、直接肌に唇を吸い付ける。優しく撫でるように、舌を這わせる。俺はしばらくその悦楽に浸っていた。やがて彼女は無言ですっと立ち上がった。
 俺は彼女がどこかへ行ってしまうのではないかという不安に駆られる。
 ――もう俺は、あなた無しでは生きていけない身体になりそうです……
 心の叫びは声にならなかった。しかし彼女にはそんなつもりは無いようだった。彼女はゆっくりとその両手を俺の両足へと運び、まるで当然のことのように俺の股を広げて腰の辺りに固定した。
 ふと違和感を覚える。
 ――これは……。?……
 先ほど自分が味わった恐怖と苦痛、そしてこの目で見た彼女の殺戮の光景、それらがまざまざと脳裏に蘇り、彼女の今の行為が俺の恐怖心と共鳴する。
「……あ、……あの――」
 彼女の声には一片の曇りもなかった。
「じゃあ、そろそろ本番ね。」
 その言葉に俺は戦慄する。耳を疑う。
 ――まさか――そんな……
 しかし俺のわずかな期待は現実になりそうになかった。冗談などではないのだ。俺の目を覗き込んだ彼女の瞳には再び鋭い眼光が宿っていたのだから。
「……どこから壊していこうかな。」
 あっけらかんとした口調。
 まるで、ショッピングで服を選ぶのに迷っているかのような、楽しげな声だった。
「ここからにするね。」
 彼女は俺の睾丸に、ヒールの先をぐいと押し当てる。ヒールは既に血塗れになっていた。
 俺はこの時になってようやく、本当の危機に気が付いた。性欲が解消されるとともに、理性の方が強く顔を出してきたのかもしれない。まだ終わらない。終わるとすれば、それは――
 ――それは……俺が完全に壊れた時……。彼女は、俺の存在そのものを潰そうとしているんだ。
 次第に、心の底から恐怖心が形となってふつふつと湧き上がってくる。
 ――潰される。壊される。殺される。……俺は、……雨上がりのカエル――
「待ってください!」
 必死で叫んだ。「何?」という彼女の言葉も掻き消し、ひたすら謝罪の言葉を口にする。
 ――怖い。怖い。
 まだ生きていたい。俺はまだ大学生なんだ。サークルで遊んで、仲間たちとだらだら騒いで。歳だって二十歳になったばかりだ。これからの人生を思うと、どうしても踏み切ることなんてできない。
 俺は彼女の物。その意識に嘘などない。彼女に身を捧げたのも本心からだ。でも……でも……
 ――ここで殺されてしまっては……全てが終わってしまう……
 やはり覚悟はできなかった。喉が枯れるほど泣き、命乞いを繰り返した。

 俺は、取引をした。
 人として最低だとか、そんなことはもうどうでもいい。我が身可愛さに、俺は……

 震える手で、俺は携帯電話のボタンを押した。幾度かのコール音の後、プツッという受信音が通話口から聞こえてくる。
 俺は努めて楽しそうな声で、受話器の向こう側へと語りかけた。

「清水。これからうちで飲まないか? いい女、紹介するからさ――」



END

Back | Novel index | Next
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。