Black Onyx [ブラックオニキス];2008/ 04の記事一覧

ここでは、Black Onyx [ブラックオニキス]での 2008年 04月 に掲載した記事を表示しています。
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 やがて彼女は足の動きを完全に止めた。
 もしかしたら一時的なものであるかもしれない。しかし絶え間なく内部を抉られる痛みから幾許かの解放を与えられた安心感は大きく、俺は深く息を吐き出した。これまで呼吸をすることすら忘れていたかのようだ。吐く息は長く続いた。
 彼女はその瞳を輝かせながら微笑していた。刺された太腿は次第に熱を帯び、変色してきていた。彼女はくすりと小さく笑い声を零すと、俺の太腿からヒールを躊躇なく引き抜いた。
「ぐ……ああああああっ!!」
 俺は再度絶叫した。それは既に声とは呼べないほど潰れた響きとなっていた。
 あまりの痛みに、俺は太腿を押さえて転げ回った。小さく開いた穴から赤く生温かいものがドクドクと滴り落ち、地面を染めていく。彼女はそんな俺の側にしゃがみ込み、薄ら笑いを浮かべながら俺の様子をじっと観察していた。
 ひとしきり声を出し終え、俺は倒れ込んだまま再び身体を丸めた。
 あくまで本能的な行動だった。決して抵抗ではない。
 自分の身体が小刻みに震えていることに気付いたのは、その時だった。その時もしも、彼女の手が俺の全身を撫でてくれなければ、その震えにすら気付かなかったかもしれない。
「あ……あうぅ……」
 言葉にならない声が口から溢れる。再び俺の目が涙でいっぱいになっていることに気付いたのは、もっと後になってからのことだった。彼女はそんな俺をそっと抱きしめた。
「よく頑張ったね。」
 彼女が極めて優しい口調で俺に語りかける。
 俺は堪えきれずに声を上げて泣いた。それは先ほどの涙とは全く違うものだった。鼻の奥を気持ちよい刺激が包み込む。
「ありがとうございました……。ありがとうございました!」
 素直な、率直な心の声だった。彼女の見せた優しさに触れ、己の小ささを強く感じる。同時に、彼女の行為を受け止めきれなかった自分の不甲斐なさを腹立たしく思う。
 もはや俺の快楽は、彼女から与えられる苦痛無しでは存在し得ない。恐怖の中で見出した愉悦は、既に俺の全身を支配していた。俺は、この身の全てを彼女に捧げても構わないとすら思い始めていた。
 彼女の足元で大の字になる。彼女の全てを受け入れたい。彼女にこの身を預けたい。その気持ちが、自然と俺を突き動かしていた。彼女は俺を見下ろしながら「ふふ」と笑い声を漏らすと、再び俺の身体中を踏み付け始めた。
「ぐああああああっ! があああああっ!!」
 彼女のパンプスが俺の全身を襲う。顔面を踏み躙られ、鼻血が噴き出す。胸を圧迫され、呼吸困難に陥る。腹をストンピングされ、胃液を吐き出す。先ほど突き刺された太腿を再び執拗に甚振られ、呻き声を発する。しかしそれを求めているのは、間違いなく俺自身だった。
 彼女が一言「よく我慢したね……」と呟く。そして彼女の足は俺の股間へと移動された。俺は血の流れる口から「ありがとうございます」とだけ言葉を発し、冷たくて硬い彼女のパンプスによって与えられる快楽を享受する。彼女の足はゆっくりと俺の陰茎を擦り始め、次第にその運動を激しくしていった。
「あっ……あふぅ……。はうっ……」
 卑猥な声とともに、俺は膨れ上がったモノから欲情の全てを吐き出した。

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 俺の全神経は、彼女に突き刺された肌へと注がれていった。
 太腿に開いた穴は、大きさにすればほんのわずかなものだ。しかしそれは紛れもなく、俺の動きの全てを支配するものであった。俺にとってその穴は、俺が彼女に支配されているのだということを意識せざるを得ない、刻印としての役割を果たしていた。
「あ……ぐぅ……ぅが……」
 一点を突き上げる尋常でない痛みから、俺は苦悶の声を上げ続ける。彼女はそんな俺の姿を嬉しそうにまじまじと見つめながら、紅い舌をチロリと覗かせる。唇をねっとりと舐め、瞳を揺らめかせた。
「ぐああっ! があっ!! あっ……ぐああああああっ!!」
 再び俺の喉の奥から、半ば強制的に掠れた声が絞り出される。彼女がヒールの先を俺の太腿に突き刺したまま、内部をグリグリと抉り始めたからだ。俺はたまらず彼女の脚にしがみ付く。全身から冷や汗が滲み出てくるのが分かる。
「痛いのね。そう……、痛いんだね……」
 彼女のそれは決して同情の声ではなかった。
 必死で縋りつく俺の目は、次第に涙で翳んでいった。既に彼女の姿は輪郭程度しか分からない。しかしそうであるが故にか、俺にはそこに直接見える以上のものが彼女の奥底から見えた気がした。
 彼女は、もがき苦しむ俺の姿を見ることを心底楽しんでいるのだ。そして同時に興奮し、おそらく性的な快楽をも感じている。しかしそれは、対象が俺だからという訳では決してない。彼女は、弱者を嬲る行為そのものに快感を覚えているのだ。
 うまく言葉にはできない。ただ漠然と、俺はそんな風に感じた。
 絶え間なく襲いかかる激痛に苦しみ、もがき、絶叫し、俺は意識が朦朧としてきていた。ただ一つ俺の陰茎だけが、そんな俺を小馬鹿にするように強い自己主張を続けていた。
 やがて彼女は悪戯っぽい声で俺に囁く。
「もっと深く入り込んじゃおうかな。」
 とても信じられない言葉だった。今ですら気を失ってしまいそうな痛みだ。
「ご、ごめんなさいぃ! ……があっ……ゆ、許してくださいぃ……」
 俺は必死で彼女に許しを乞う。そんな俺を見ながら、彼女は掴んだ俺の髪を一層強く引っ張る。俺の顔はさらに彼女の顔に近付けられた。お互いの唇同士が触れ合うほどの距離で、彼女は俺の涙を指先でそっと払う。再び視力を取り戻した俺の瞳には、妖艶な彼女の美貌が映し出されていた。
「……もっと、欲しい?」と彼女がポツリと呟く。甘い香りが俺の鼻腔を包む。吐息が肌を撫でる。彼女の誘惑に骨抜きにされる。しかし、俺の身体はとてもそれを受け止めきれそうになかった。
 必死で謝罪し、首を横に振る。縋るように彼女を見つめる。しかし彼女の言葉は続けられた。
「あと十五分かな。――こんなに膨らませて……気持ちいいのね。――痛めつけられながら感じるストーカーって最悪。――あなた本当に人間なの?――本当はもっと抉られたいんでしょ?」
 捲くし立てられる度、そして徒にヒールで中を掻き回される度に、俺の陰茎はビクビクと反応した。
 もはや男としての、いや人間としてのプライドすらどうでもよかった。俺はこうやって彼女に肉体的、精神的な苦痛を受けながら性的な興奮を覚える変態だ。きっと彼女にとっては、俺はもはや人間ですらないのだろう。
 俺は確実に彼女の狂気に惹かれ、その攻撃性の虜になっていた。しかし俺は、同時に彼女への恐怖心も強くしていた。彼女からは常に病的な殺意が感じられたから。
 この時の彼女の言葉に対して首を縦に振ることは、俺にはどうしてもできなかった。

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 俺はおかしくて仕方がなかった。
 彼女に対して隠し事をしようとすること自体がそもそも間違いだったのだ。彼女は俺の全てを見透かしているというのに。
 ヒールの先に付いた缶をゆっくりと取り除く彼女の姿を見ながら、俺はそう考えていた。
 完全なる敗北を感じる。抵抗する意志は、もはや皆無だった。
 彼女の攻撃的な足。それは慈悲の欠片もなく……、しかし疑いようのない、俺の理想の足……
 もはや自分にも彼女にも嘘をつくことはできなかった。仰向けに倒れたままの俺は、いつの間にか彼女の足元にひれ伏している快感に酔っていたのかもしれない。
 彼女の見せる狂気は、今や俺にとって至福をもたらすものとなっていた。股間が熱い。欲情は高まっていくばかりだった。
 再び彼女がパンプスを俺の陰部に這い回らせる。俺はこの身の全てを彼女に預けようと、大の字になった。冷たくて硬い彼女のパンプスは、俺の欲求を満たす最高のアイテムなのだと気が付いたから。
「やっと正直になったね。じゃあ、分かるよね……」
 そう言って彼女は足で俺の身体中を撫でた。思考が徐々に麻痺していく。俺は彼女の発する言葉に、ただ「はい」とだけ答え、彼女の足元に跪いた。


 まるで過ぎ去ることのない嵐のようだった。
 彼女の洗礼は俺の全身をくまなく包み込んだ。肩、背中、臀部、脚から爪先に至るまで、あらゆる部位が激痛に覆われ、たまらず身を丸めて倒れ込む。彼女のパンプスの爪先は皮膚を削り、靴底は内部にまでその振動を伝え、ヒールの先は肌に喰い込んでいく。
 聳え立つ自身を抱えたまま、俺は怒涛の如く襲い来る彼女の猛攻を受け続けた。その苦痛は喉の奥から絶叫となって絞り出された。
「ぐあああああっ! があ……あがっ……」
 その叫び声すらも途中で切られる。喉の奥に異物の感触がしたからだった。大きく開けた俺の口には、彼女のパンプスが爪先から深く捻じ込まれていた。口一杯に彼女のパンプスを頬張った俺は、泥の感触と、それに混じる異様な生臭さに、たまらず嘔吐感をもよおす。息苦しさから涙が溢れてくる。彼女がその足を俺の口から引き抜いた時、俺は堪えきれずに胃の内容物を吐き出した。
 外灯を背にした彼女の表情は、逆光ではっきりとは見えなかった。しかしそれを補うかのように、彼女が上げ続ける笑い声は俺の耳に一層強く響いてきていた。その歓喜と狂気に満ちた声を聞く度に、俺の興奮はどんどんと高まっていくのだった。
「潰してあげるよ。」
 彼女の笑いの混じった声が聞こえたと思った瞬間、太腿に一際強烈な痛みが走った。
「ぎゃああああああっ!!」
 その痛みの大きさに呼応するように、俺の声もまた一段と大きくなる。
 見ると、彼女のヒールの先は俺の太腿に深く突き刺さっていた。
 彼女のヒールからじわじわと血が滲み出してくる。――いや、違う……。その血は彼女のパンプスからではなく、俺の太腿から流れ出していた。あっという間に、ズボンが血に染まっていった。
 あまりの痛みに俺の目からはさらに涙が溢れ、全身は脂汗で覆われていった。
 彼女はそこで動きを止め、肌にヒールを喰い込ませたままで俺の顔を覗き込む。彼女はその瞳に恍惚の輝きを湛え、至福と興奮の入り混じったような表情を浮かべていた。
 俺の髪を掴んでぐいと自分の方へと引き寄せた彼女は、俺の耳元で「痛い?」と小さく呟く。俺が震える声で「はい」とだけ答えるのを確認すると、彼女はさらに小さな声で「そう」と囁いた。
 目の前にある彼女の顔を見つめる。その口の端は一段と大きく持ち上がっていた。

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 意味深な彼女の仕草に、俺は胸を穿られるような気持ちがする。俺は何のために彼女のタバコを? その答えは俺自身にもはっきりとは分かっていなかった。ただ、その時の俺に不純な気持ちがあったことはどうしても否めなかった。しかし、ここでそれを認めてしまってはいけないのだということも十分承知していた。
 大きく息を吐いて呼吸を整え、俺は努めて冷静に言葉を返した。
「……別に。意味なんてないですよ。ただ、ポイ捨てが大嫌いなだけで。」
 彼女は俺を見下ろしたまま、じっと俺の目を覗き込んでいた。俺の額にじわりと脂汗が滲んでくるのが分かる。しかしここで目を逸らす訳にはいかない。彼女はそんな俺の様子を見ながら、口を開く。
「そう。ゴミ拾いが趣味なのね。いい子ね。」
 彼女の「いい子」という言葉の響きに何故か心を刺激される。俺は何とか誤魔化そうと必死だった。
「……好きでやってますから。落ちてる物は何でも拾いたくなるんです。」
 念を押したつもりだった。しかしその言葉を聞いた彼女は笑顔を消す。
「何でも……ね。ふーん……」
 ポツリと呟く。俺はたたみかけるように言葉を連ねる。
「そうです。あなたこそ、そんな意味のないことを聞いて……」

「――ふざけるな。」

「……っ……」
 彼女の低く鋭い罵声が俺の胸を貫く。
 俺は全身に冷水を浴びせられたような感覚を覚えた。ビクッと身体を震わせる。彼女の言葉の意味が分からず、俺は鼓動を大きく高鳴らせる。だからと言って動揺を見せるわけにはいかなかった。
 彼女の眼光は一際鋭くなり、その表情には恐ろしいまでの殺気が感じられた。
 俺はあくまで惚けて見せようと、さらに言葉を放とうとした。しかしそれは叶わなかった。
 それは、彼女の手に握られていたものに見覚えがあったからだった。スチールの空き缶だ。コーヒーのラベルがうっすらと見えた。その瞬間、俺の全身が総毛立った。
「……どうして、これは拾わないの?」
 彼女の言葉が俺を抉る。間違いない。見られていた。俺はさっきコーヒーの空き缶を思いきり蹴ったことを思い出し、完全に返す言葉を失った。
「ゴミ拾いが趣味なんて、ウソ……」
 言いながら彼女はその空き缶を無造作に自分の足元に放り、パンプスで踏み付けた。グシャッという音とともに缶が潰れる。その缶を彼女はさらに勢いよく何度も踏み付ける。グリグリと踏み躙る。やがて空き缶は缶の様相を失い、小さなスチールの塊と化した。
 俺は自分を正当化する術を完全に失った。それどころか、彼女が缶に足を振り下ろしたり踏み躙ったりする様子を見ながら、俺は興奮していたのだ。未だ大きく膨れ上がったままの陰茎は、ズボンの中からビクンビクンとその存在を主張し続ける。
 やがて彼女はそのスチールの塊をヒールの先で突き刺し、そのまま俺の陰部へと押し当てた。身体が大きく反応する。缶の付いたヒールを股間にぐいと押し付けられ、俺はたまらず喘ぎ声を漏らす。
「発情してるんでしょ? 私の破壊を見て、さ……」
 そう言って彼女は再び笑顔を見せると、「ふふ」と笑った。それは、俺のもっていたちっぽけな抵抗感や拒否感、正義感というものの数々を悉く奪っていくものだった。

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 彼女の足は凶器であり、殺戮兵器だ。冷酷無慈悲で残忍なその足……。そんなことは今さら百も承知だった。しかしそれを知った上で、いや……むしろそうであったが故に、俺にとって彼女の足は最高に魅惑的なものとなった。そして、その恐ろしい「凶器」を持つ女性だからこそ、俺は惹かれ、虜になり、……期待した。それはもう疑いようのない事実だった。
 彼女の瞳は再び俺を冷たく見下ろしていた。先ほどと変わらぬ笑みを口元に残して。
 まるで心の奥を覗かれているような強烈な視線に、思わず俺は目を背ける。動揺から、自分の目が泳いでいるのが分かる。
 そんな俺を手玉に取るように、彼女は俺を挑発した。
「気持ちよくしてあげようか……」
 彼女の言葉に吸い込まれそうな感覚になる。モラルや理性は既に抑え込まれていた。俺の中には快楽への渇望と欲求だけが残され、彼女に救いを求めるように、ただ心の中で乞うた。
 ――逝きたい……。逝かせてください……
 彼女はじっと俺を見下ろし、その短いスカートを指先でつつと持ち上げる。さらに露出を高めた脚から、俺は目を離すことができない。彼女がゆっくりとその足首をくるくると回す。その妖しい仕草に、俺の心は完全に骨抜きにされてしまう。
 ふいに彼女が腰を曲げて屈み込む。何かを拾い上げるような仕草だ。しかし、今の俺にとってそんなことは問題ではなかった。俺の目はその時、彼女のスカートからちらりと覗く下着に釘付けになっていたのだから。
 俺の欲情は頂点を極め、彼女に縋りつきたい気持ちで一杯になっていた。しかし彼女は俺の方を向かず、今、拾い上げた物を興味深げにじっと見つめていた。そして込み上げてくる衝動を堪えきれなくなったかのように、彼女は吹き出し、大声を上げて笑った。
 その時、ようやく俺は彼女が手にした物に興味を惹かれた。何気なく彼女の指先に視線を移動する。
 そこにあった物をふと見る。――うっすらと口紅の付いた、拉げた一本のタバコ――それが目に入った時、俺は急激に身体が冷えていく感覚に包まれた。
 両足を持ち上げられた時、ポケットから落ちてしまったのだろう。
 羞恥心が頭を擡げてくる。
 動揺を隠しきれず、俺はそれから目を逸らす。不純な気持ちからそれを手にしていたことは、自分自身がよく分かっていたからだ。
 彼女はひとしきり笑い終えた後、穏やかな口調で言葉を発する。
「……これ、何かな?」
 予想通りとも言える問いかけだった。しかしその意味するところがとてつもなく大きいことが、俺には分かっていた。さっきの彼女の高らかな笑いが頭を過る。きっと彼女も確信を得ているに違いない。間違っても「それはタバコです」などという馬鹿げた答えを求めているわけではないのだろうから。
「う、あ……うぅ……」
 答えに窮し、俺は口篭る。何とか言い訳をしなければという思いはあれど、気が急くばかりでそれはうまく言葉にならない。彼女はそんな俺の心を見透かしているかのように、妖しい笑みを浮かべる。口元を緩めたまま、彼女はさらに問い詰める。
「これを、どうしてあなたが持っていたのかな?」
 言いながら彼女は、パンプスの爪先でコツコツと地面を軽く突いていた。

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 彼女が俺の両足を持ち上げ、腰の辺りで固定する。そして、開かれた俺の両足の間から彼女の足が滑るように股間へと潜り込む。パンプスの爪先から裏、ヒールの先が俺の陰部を弄る。
 彼女の意図は全く見えなかった。とは言え、抵抗しようと思えば身を捩るくらいのことはできそうなものだった。しかし俺の身体がそれをしようとしない。あくまで本能的な欲求に囚われ、俺は無意識のうちに彼女の行為に身を預けていた。
 ふと、彼女が口を開く。
「気持ちいいんでしょ? ここ……」
 ふいを突かれ、俺は口篭もる。もはや言い返すことなどできる訳がなかった。虚勢を張った俺のモノは、理性とは裏腹に大きくそそり立ってしまっていたのだから。
「あ、うぅ……」
 再び声を漏らす。彼女のパンプスは容赦なく俺の股間を這いずり回った。その硬く、無機質な感触があまりにも心地よく感じられる。そんな中、彼女はさらに言葉を続けた。
「逝かせてあげようか。……私の足で……」
 舌先で唇を舐め回すような仕草を繰り返しながら彼女が言う。その美貌と色気がますます俺を誘惑する。いっそのこと彼女に全てを委ねてしまいたいといった衝動にまで駆られる。――冗談じゃない! 殺されたいのか!――俺の精神が警告を放つ。しかしそう考えれば考えるほど、俺のモノはさらに自己主張を強くしていった。その間にも彼女は俺に快楽を与え続ける。
 巨大な欲望が俺を包み込んでいった。しかし俺の中にある「現実」という名の鎖もまた、決して俺を解放しようとはしなかった。
「よ、よせ! やめろよ!」
 欲情をかなぐり捨てるように、俺は精一杯の言葉を吐き出す。しかし彼女は表情一つ変えることなく、その足の動きを止めることもなかった。
「この残酷な足が、あなたの今日のオカズだったんでしょ?」
 口元だけで笑いながら、俺をさらに責め立てる。
「身体が抵抗してないよ。ほら……」
 彼女の言葉の一つ一つが、俺の心の奥の方を刺激する。俺はこの時既に、彼女の虜になってしまっていたのかもしれない。突き上げてくる快楽に乗じ、身体をビクビクと痙攣させる。今にも絶頂を迎えそうになり、俺はとうとう覚悟を決めた。
 しかしその瞬間、彼女は俺の股間からそっとその足を離した。
「あぁ……あ……」
 あまりにも情けない声が漏れる。
 それはひと気のない闇に木霊し、やがてはカエルの鳴き声によってかき消されていった。
 もう隠しても仕方がない。俺は確実に期待していた。今、目の前に立っている妖しく冷酷な女性の足で逝かされることを……
 俺のモノはいきり立ったままで行き場を失っていた。急に空しさが込み上げてくる。
「あ、うぅ……」
 それは紛れもない、俺の心の声だった。
 もどかしさを感じていたのは俺の下半身だけではない。俺は、今日出会ったばかりの彼女に対して、生殺しにされたような心のもどかしさをも感じていた。彼女に見放されることを一瞬でも怖いと思った。それは本当に異常なことだと分かっていた。そして、もしそうであるなら、俺はもう異常者でも構わない。そんな風にさえ思えてきていた。

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 黙り込んだ俺を横目に、彼女は冷静に携帯電話を操作していた。
 ――あれを見られてはまずい……
 その気持ちだけが俺を急かす。しかし俺は押さえ込まれた腕と下腹部の鈍痛が相俟って、身動きを取ることすらままならない。いっそのこと誰かに助けを求めたいとも思ったが、何しろこんな田舎だ。人の姿など見えやしない。ましてやここは農道の片隅。人とすれ違うことなど、まず期待できないことだった。
 やがて彼女は目的のものを見つけ出したのか、ニヤリと不吉な笑いを零した。
「ふーん。これ、どうするの?」
 画面には、彼女がカエルを踏み潰す様がハッキリと映し出されていた。
 俺は戸惑う。俺はどうするつもりだったのだろう。俺は……
 その時、俺の中にある考えが浮かんだ。ここで彼女に屈しては警察行きは免れない。いや、むしろ俺は告発者であり、被害者なのだ。俺は、善意の第三者……
 俺は大きく一つ息を吸い込むと、彼女を睨みつけた。そして精一杯低い声を振り絞った。
「立派な虐待現場ですよね、それ……。今の時代、うるさいですよ。それに加えて、俺への暴行だ。一緒に警察に行きますか? それともこれ、ブログにアップしましょうか?」
 必死だった。
 身体の震えが止まらない。その上、未だ俺を内部から突き上げてくる苦しみが、俺に立ち上がることを許さなかった。彼女を見上げながら、俺は彼女を威嚇する。何とかここで優位に立ちたい。それだけを考えていた。
 しかし、彼女は表情一つ変えなかった。下目遣いの瞳が恐ろしく冷たい。微笑を浮かべた彼女の表情に、俺は動きを止められた。先ほど遠目で見た時より遥かに美しく端正な顔立ちに、俺は思わず魅入ってしまっていた。
 彼女はゆっくりと立ち上がると、いきなりパンプスの爪先で俺の腹を蹴り上げた。
「ぐが……あ、あぁぐ……」
 思った以上に重い蹴りが俺の鳩尾に喰い込み、蹲っていた俺の身体は仰向けに倒される。同時に彼女は自分の足を持ち上げ、俺を踏み潰すような仕草を見せる。彼女の足の裏が目前に迫る。俺は恐怖のあまり身動き一つ取ることができなかった。
 彼女は足の裏を俺の目の前で固定したまま、くすくすと笑い声を上げた。彼女のパンプスの裏には、先ほど踏み殺したカエルの群れの残骸らしきものが所々にこびり付いていた。無惨なその破片を見ていると、さっきの彼女の行為がまざまざと瞼の裏に浮かんでくる。
 ――この女はヤバイ。頭のイカれた病人だ。絶対関わらない方がいい。
 そう自分に言い聞かせる。しかしその時、彼女の笑い声は一段と大きくなっていた。
 俺は腹立たしさから大きな声を上げる。
「何がおかしい! 今すぐ警察に、あっ……」
 思わず喉の奥から卑猥な声を漏らしてしまう。彼女が持ち上げた足を俺の下半身へと移動し、ズボンの上から俺の陰茎を優しく撫で回し始めたからだ。
 彼女の目は決して笑ってはいなかった。瞳の奥に冷酷な光を湛えている。そして口元だけがうっすらと笑いを浮かべているのだ。勝利を確信して薄ら笑いを浮かべ、今にも獲物に喰らいつこうとする殺気立った表情……とでも言ったらいいのだろうか。
 俺は蛇に睨まれたカエルのように、動きを奪われていた。

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 ――今日の俺はどうかしてるな。
 そう自嘲することで、彼女への好奇心を断ち切る。
 未練はあるが、いつまでも追っている訳にもいかない。
 つとポケットの中に手を突っ込めば、先ほど拾ったタバコの吸殻が手に触れる。反対の手をポケットに入れれば、携帯電話に触れる。それを確認する度に、俺は不思議と安心した。何気なくそれを取り出し、先ほど撮った写真を確認しようとボタンを操作する。

 異様な雰囲気を感じたのは、その時だった。

 先ほどと変わらぬアスファルトの湿った臭い。両脇の田んぼから聞こえてくるいくつものカエルの声。草葉が風に揺れる音。そのどれもが、先ほどと変わらぬ様相を呈していた。しかし何か違和感がある。
 その正体が分かった時には、既に時は遅かった。
「……ストーカーさん。」
 囁くような済んだ声が耳元をくすぐる。
 俺は思わず「ひっ」という情けない声を上げる。驚きのあまり、危うく腰を抜かしてしまうところだった。
 そう。さっき抱いた違和感の正体は、人が側に迫ってきている気配によるものだったのだ。
 ちょうど仄かな外灯の下に戻った時だったため、その声の主がさっきの女性であることはすぐに分かった。しかし今さらそれに気付いたところで、どうすることもできない。俺はただ精一杯、シラを切ることだけを考えていた。
「な……何のことですか? ストーカー? 何の……うっ!」
 言葉は最後まで聞いてもらえなかった。
 下半身にドスンと響く衝撃が走るとともに、俺は身体をくの字に折り曲げて膝を地面についてしまう。じわじわと下腹部を不快な痛みが襲う。どうやら睾丸に膝蹴りを受けたらしい。見上げればさっきの彼女がその白い膝を持ち上げ、くすくすと笑いながら俺を見下ろしていた。
「うぅ……ぅ……」
 蹲ってうめく俺の前に、彼女がしゃがみ込む。少し肌蹴たスーツの胸元と短いスカートの中からちらりと覗く下着が、俺の思考力を次第に奪っていった。
 彼女は口元に笑みを浮かべたまま俺に語りかけた。
「……これ見てたね。」
 彼女は優しい口調で言いながら、俺の目の前に転がった携帯電話を手に取る。おそらく蹴られた時に俺の手の中から滑り落ちたのだろう。自分の犯した失態に気付き、思わず声を上げる。
「あ! そ……それは!」
 慌てて奪い返そうと手を伸ばす。しかし彼女は携帯電話に目を向けたままで、俺の伸ばした手を軽々と捕まえた。女性とは思えないほどの力だった。俺はそのまま腕をピクリとも動かせなくなる。
 彼女が再び口を開く。
「これが……どうしたの? 言ってみてよ。」
 相変わらず穏やかな口調だった。しかし彼女の言葉には、相手を追い詰めていくような威圧感があった。それは、じわじわとカエルを嬲り殺した先ほどの彼女の姿そのものを表しているかのようだった。

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 やはりシャッター音は聞こえなかったようだ。
 彼女は変わらず、既に潰れきっているであろう「何か」を未だ熱心に踏み付け続けている。
 俺は再び携帯電話を手に取り、今度は彼女の足をアップにしてもう一枚撮影した。心臓がバクバクと音を立てているのが分かった。しかし、不思議と罪悪感はなかった。彼女の姿を収めることができた喜びだけが、俺を包み込んでいた。
 しばらくすると、彼女は再び歩き出した。
 カエルの合唱の中でわずかに聞こえるコツコツというヒールの音が、彼女の妖しい美しさを想起させる。暗闇の中に彼女が吸い込まれていく。闇とともに彼女が消えてしまうのではないかという不安が俺の中に渦巻く。
 俺は急いで立ち上がり、逸る気持ちを抑えながら彼女のいた外灯まで足を運んだ。そこには、俺の想像していた以上のものがあった。
 原型を留めない平らな物体が一箇所に固まり、その無惨な姿を晒していた。一目見ただけでは、それが少し前まで生きていたものだということすら分からない。しかしそれは確かにカエルの死骸の群れだった。既にどちらの方向を向いているのかすら分からないほど、見る影もなくなっている。グシャグシャに潰れた死骸の塊を見ながら、俺はますます高揚していった。
 ――大量の殺戮……。あの美しい彼女が。あの美しい足を凶器に変えて……
 先ほど見た光景を回想する度に、俺は股間が熱くなっていくのを抑え切れなくなる。
 興奮はまだまだ治まりそうになかった。


 家はもう、すぐ目の前にまで近付いてきていた。
 俺はまだ湿り気の残るアスファルトの道を一歩、また一歩と歩き続ける。既に彼女の姿は目を凝らさなければ見えないほど遠くにあった。その姿も、もうすぐ闇へと消えていく。そう考えると、次第に妙な気持ちになってくる。できるだけ長く彼女の姿を見ていたい。そんな思いが込み上げてくるのだった。
 そして俺は家とは反対の方向へと歩を進めた。彼女の後を追って……


 暗闇に溶け込んだ彼女の姿を見つけるのは容易ではなかった。
 よほど遠く離れてしまったのだろうか。そんな不安が募ってくる。気付けば家から随分と離れた所まで来てしまっていた。残念だという気持ちが心の中に溢れてくる。
 ――もう二度と会うことはないのかもしれない。
 そう思えば思うほど、彼女の姿を一目でいいから見ておきたいという衝動に苛まれてしまうのだった。
 ただでさえ田舎の農道だ。自分の家までの一本道だからこそ、外灯もそれなりに立っていた。しかし今は、それを脇道に逸れてきているのだ。外灯もほとんどなくなり、闇が深くなってきている。
 足元が見えにくく、さっきから数々の空き缶に躓いている。その音が妙に耳に障り、何となく不快な思いがする。
 彼女を見つけられない苛立ちからだろうか。
 俺は無性に腹が立ち、再び足元に現れたコーヒーの空き缶を思いきり蹴り飛ばした。同時に俺は、自分の行為の馬鹿らしさをあらためて自覚していった。

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 俺はまるで吸い込まれるように彼女に近付いていった。もう少し気付くのが遅かったら、彼女を照らす外灯の下に自分も入っていたかもしれない。
 高ぶる感情を何とか抑え込む。彼女に気付かれないギリギリのところまで行って身を潜め、じっと彼女を見つめる。
 俺はおかしなことを考えている。
 できるだけ近くで彼女の無慈悲な行動を見ていたい。もしできるなら、生物を潰したそのパンプスの裏を見てみたい。パンプスにこびり付いているであろう生物の無惨な姿や付着した血液が見てみたい。そして、その凶器である彼女の美しい足をじっと見つめたい。その足で……
 ――俺は一体何を考えている?
 ……全く、馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しいはずなのに……
 次から次へと頭を過る妄想の数々に、俺は振り回され続けていた。自戒の念が俺を突き刺す。しかしそのおかしな考えは、どうしても頭から離れていかないのだ。
 未だ彼女は、ヒールの先や爪先を地面に押し当てて何かをすり潰すような動きを繰り返していた。ゆっくりと、まるでその感触を楽しんでいるかのような愉悦の表情に心を打たれる。
 無意識だった。
 俺はズボンの中に手を忍ばせていた。完全な漲りを見せるそこを無雑作に握り締め、上下にゆっくりと擦った。自分の行為のあまりの異常さに気付いてその手を止めるまでの間、俺は彼女から一度も目を離すことはなかった。


 ひとしきり行為を終えた彼女は、パンプスの爪先で地面を擦るような仕草を見せた。おそらく、踏み潰したものを一箇所に集めているのだろう。
 ――凶行以外の何物でもない。
 そう自分に言い聞かせつつも、俺はやはり彼女とその足から目が離せなくなっていた。
 彼女は一通り集め終わったのか、少し呼吸を整える。そして再び、今度はその塊の上に両足のヒールをじわりじわりと喰い込ませていくのだった。その恐ろしい残虐性に、再び俺の鼓動は大きく高鳴る。
 もはや俺は理性を失いかけていた。しかしそれは確実に、彼女への恐怖心からだけではなかった。
 ――なぜなら俺は……
 思わず五、六歩後ずさる。彼女の側からより自分が見えない位置へと、俺は移動した。
 ――もう自分は誤魔化せない。俺は興奮しているんだ。
 そして、俺は暗闇の中で携帯電話を取り出した。
 ――大丈夫だ。幸いカエルの鳴き声がうるさい。音は聞こえないはずだ。
 設定をカメラモードへと切り替える。
 興奮からか俺の手は震えていた。何とか心を落ち着けながら、外灯に照らされた彼女にレンズを向ける。遠くからではあったが、なるべく大きく写るようにズームボタンを押し、焦点が合うのを待つ。点灯する邪魔なライトを手で覆い隠す。万が一にもこんな行為がバレたら大変だ。それに、こんなライトで照らさなくても、彼女は外灯の下で煌々と輝いていたのだから。
 レンズ越しに見る彼女はとても美しかった。
 狂気と恍惚が入り混じったような表情。その紅い口元は弓なりに曲がっていた。大人の色気を全身から漂わせている。
 その姿に見惚れながら、俺は思いきって撮影ボタンを押した。

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 ――間違いない……。これは……潰れたカエルだ。
 それに気付いた時、無意識にさっきの女性の方へと目を向ける。彼女はまだ暗闇の中にいるようで、その姿は確認できなかった。次の外灯までは少し距離があった。
 ――彼女がやったのだろうか。こんな残酷なことを……あの綺麗な女性が?
 俺の心臓が鼓動を大きくしていくのが分かった。
 先ほどの何かを叩き潰すような仕草や、踏み躙るような行為。あれは、カエルを潰すためだったのだろうか。俺にはどうしても理解できなかった。なぜ? 何の目的で? どうしてあんな美しい人が?……
 分からない……。しかしもし仮に俺の想像が当たっていたとしたら、あの女性のパンプスの裏にはベットリと血に塗れたカエルの残骸が……
 心臓が、一際大きく跳ねた。と同時に、下半身が急激に熱を帯びていく。
 ――俺は……興奮している?
 一体何にだろうか。まさか潰れたカエルに興奮したとでもいうのだろうか。この異様な状況で、なぜ俺は勃起しかけている?
 俺は無意識に、踵を返した。先ほどのタバコを見つけた外灯へと向かって――


 ぼんやりとした灯りに照らされたタバコは、先ほどのままだった。
 口紅のついた、踏み躙られたタバコ。これはおそらく彼女が吸って踏み躙ったものに違いない。そう考えると、俺の股間はますます肥大化していった。
 こんな感覚は生まれて初めてだった。
 彼女の冷たい笑みや踏み付ける行為、そして何匹ものカエルの命を奪ったあのパンプス……
 そのことを考えれば考えるほど、興奮してくる自分がいる。
 ――俺は、一体……
 自分が分からないまま、俺はそのタバコを拾い上げる。夢中で口紅の跡を舐め回した。踏み拉かれたタバコが見せる歪な形は、彼女の足が、パンプスがしたこと。そう考えながら舐め回していると、俺は不思議な感覚に囚われてしまう。気付くと俺はそのタバコをポケットにしまっていた。
 その時、自分の立っている二つ前の外灯の下に彼女の姿が再び見えた。また立ち止まっている。
 自分は何を期待しているのか。何を知りたいのか。何を見たいのか。そのどれもが理解できなかった。しかしいつの間にか俺は、彼女の見せた「何か」に惹かれていたのだろう。興味を抑え切れず、俺は無我夢中で、彼女のいる外灯まで急ぎ足で進んでいった。


 俺は彼女のいる外灯の少し前で立ち止まり、暗闇に身を潜めながらじっと彼女の様子を見ていた。彼女はこちらの外灯の下でも、足で何かをグリグリと踏み付けている。
 ――やっぱり、彼女があのカエルを……
 そう考えると、ますます股間が熱くなってくる。この感情をどう表現したらいいものだろうか。
 彼女の攻撃的なパンプスやそこから覗く足の甲、そしてそれを覆う薄いストッキング。そのどれもに眩暈がしそうだ。常識的に考えたら、これは生物虐待の現場だ。彼女の残虐な行為に怒りを覚えたところで、何の不思議もないはずだった。
 しかし俺は違った。
 彼女の行為が残虐であるほど、そして残虐だと思うほど、彼女のあの美しい足によって生物の命が次々と奪われていってるのだと思うほど、俺の心臓の鼓動は激しくなるばかりだった。

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 足早に家路を急ぐ。丁度外灯の下まで来た時、ふと目に入ったものがあった。
 ――タバコ?
 無造作に踏み消したような歪な形だった。普段ならこんなもの目にも留まらないはずだった。しかし今日はそれが妙に気になる。俺は足を止めてしゃがみ込み、そのタバコをよく見た。すると、タバコのフィルター部にうっすらと口紅らしきものが付いているのが分かった。それが女性の物だと思うと、なぜか俺の胸は大きく高鳴る。地面は濡れているのに、そのタバコはあまり濡れておらず、真新しい感じを受けた。
 ――捨てたばかりなんだろうか……
 俺は無意識にそのタバコに手を伸ばしていた。

 ……ふと自分の行為の不自然さに気が付く。
 別に掃除をするつもりなどないのだから、タバコを拾う理由がない。
 ――何考えてんだか。
 自嘲し、俺はタバコから目を離すと、また足早に歩を進めた。

 外灯の光が俺に届かなくなり、代わりに闇が俺を包み込んだ頃。
 ふと目の前の外灯の下に人影らしきものが見えた。暗闇の中、俺は立ち止まる。相手を驚かせてしまうかもしれないという気持ちからだったかもしれない。不審者だと思われたくなかったからかもしれない。いや、その人物に幾許かの興味をもってしまったからかもしれない。
 そこに見えたのは若い女性だった。そのルックスに、俺は目を奪われずにはいられなかった。
 外灯の光を受けた彼女の大きな瞳がまず目に入った。鼻筋はすっと伸びており、唇は紅く輝いている。薄く塗られた化粧が、目鼻立ちの整った美しい顔をさらに際立たせていた。細身だがメリハリのある妖艶な肢体を、グレーのスーツが覆っている。スカートは短く、そこからすらりと伸びた脚を薄いストッキングが包んでいた。黒く艶やかなパンプスが、存分に大人の色気を醸し出している。
 女性はどことなく冷たい雰囲気を漂わせていた。
 彼女がなぜ外灯の下で立ち止まっているのかまでは、遠目から見ている俺には分からなかった。しかしそこでの彼女の行動は、ひどく異常なものに見えた。
 彼女は外灯の下をじっと見つめながら、しきりにその足を地面に叩きつけたり、グリグリと踏み躙るような仕草を見せていたのだ。その表情は妙に艶かしい。俺は次第に、彼女に惹きつけられていった。
 彼女はしばらくそうした行為を繰り返した後、再び湿った道を歩き出した。
 俺は内心ホッとしたような、しかしもう少し彼女を見ていたかったような複雑な心境に駆られていた。
 彼女が外灯の光から外れ、暗闇に覆われる頃、再び俺がさっき彼女の立っていた外灯の下に辿り着く。俺は彼女の先ほどの行為が気になり、ふと下を見る。そこで俺は、自分の目を疑った。
 そこには原型を留めていないと思われる緑の物体が、平たく伸びていた。しかしそれが何かの生物であることは直感的に分かった。よく見てみると、緑色の中に赤や茶色の物体が混じっている。
「これは……か、カエル?」
 戸惑いを隠せなかった。少しでも気持ちを落ち着けようと、周りを見回す。しかしそれは、逆に自分の気持ちをさらに混乱させる効果しか持ち合わせていなかった。
 俺は驚きのあまり声を上げそうになる。それは決して大袈裟な反応ではなかったはずだ。
 外灯の下には、他にも同じように平たく伸びた緑の物体が、無数に存在していたのだから。

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 いつの間にか雨は上がっていた。
 傘を持ってきていなかった俺はホッと胸を撫で下ろした。いくつもの笑い声が渦巻く中、俺は立ち上がった。外は既に暗闇に覆われ、空には丸い朧月がぼんやりと顔を出していた。
「んじゃ、そろそろ行くわ。」
 仲間たちはまだ話に夢中になっている。唯一、俺の言葉に気付いた清水だけが一言「おう」と応えた。その言葉を背中で聞いた後、俺は帰路についた。


 サークル仲間とこうやって馬鹿話に華を咲かせたのは久しぶりだった。
 以前は熱心に顔を出していたものだが、最近は顔を合わせる機会すらあまりなかった。一応、ダンスサークルという名目をもっている。しかしそれは表向きの姿で、実際は気の合う仲間同士が集って作ったお友達集会みたいなものだ。特に目標もなければ活動もほとんどしていない。集まってやることと言えば、さっきのように意味のない雑談をするか、飲みに行くかくらいのものだ。活動日すら決まっていない。そもそも中学からの付き合いである清水に誘われなければ、このサークルの存在自体知ることはなかっただろう。
 そんな自由なサークルだからこそいつでも気ままに顔を出せる。その特質を俺は決して嫌ってはいなかった。しかし逆に言えば、これといった表立った活動がないため、気が付くと足が遠退いてしまうのだ。
 俺にはこれといった趣味がない。生活費は、ひと月ごとに親から生活に困らない程度の仕送りがあるから、バイトもしていない。だから今日も特に用事がある訳ではなかったが、講義が終わったその足で帰路につこうとしていたのだ。それが最近の俺の日常になっていた。そこへ突然の大雨。
 足止めを喰らわなかったら、今日このサークルへ足が向くこともなかっただろう。そして、それは俺だけではなかった。同じように足止めを喰らった懐かしい顔ぶれが次々と集会場へと入ってきた。それぞれが久しぶりに会ったということもあり、集まった皆はそれを懐かしんだ。他愛もない話がどんどんと膨れ上がり、気付けば男ばかりの雑談会が開かれていた。
 ――こんなに夢中になって話をしたのは本当に久しぶりだ。
 そう考えると、天気予報を裏切って勢いよく降り出してくれたあの大雨に少しだけ感謝の気持ちすら芽生えてくるから不思議だ。さっきまでの余韻を楽しんでいるうちに、電車は俺の降車する駅にまで着いていた。


 電車を降りてから家まではほぼ農道の一本道だ。アスファルトがまっすぐに伸びた両脇を、だだっ広い田んぼが挟み込んでいる。長い道のりであるにも関わらず、設置された外灯はほんのわずかだ。
 雨上がりを知らせるかのようなカエルの合唱がうるさいくらいに辺りを包み込んでいた。
 これも田舎の良さだと言えばそれまでかもしれない。しかし俺はここを通る度に、東京の大学に憧れていた頃を思い出さずにはいられなかった。
 俺は雨上がり独特のこのアスファルトの臭いがどうも好きではなかった。

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逆リョナ情報をwikiにまとめようと考えています。
皆様から寄せられた情報がまだごくわずかなので、私自身が調べた結果を中心に掲載しています。
よって、現在は腹責め漫画に特化したものになっていることをご了承ください。
随時情報をまとめていきたいと思っていますので、ぜひぜひ情報をお寄せください。
内容はもちろん腹責めに限りません。

「女が男を責める」シーンであれば、何でも結構です。

逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
(尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
例えば「誰が誰に」や「漫画のページ数」など、詳細情報なども頂けると助かります。
また、「wikiのまとめ方が分かりにくい」「こうしたらどうだろうか」などのご意見、ご提案、アドバイスなどがございましたら、そちらもお気軽にお寄せください。

◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
●CLAYMORE クレイモア 八木教広 [集英社]
 2巻:腹に蹴り、転倒

●お天気お姉さん 安達哲 [講談社]
 1巻:腹に蹴り、連打
 〃 :腹に膝蹴り
 3巻:腹に蹴り、気絶、内臓破裂
 6巻:腹にパンチ、連打(描写なし)

●女豹 鬼窪浩久 [実業之日本社]
 1巻:腹に膝蹴り、胃液
 2巻:腹に肘打ち、胃液、吐血、泡吹き、嘔吐、気絶
 〃 :腹に膝蹴り、胃液
 3巻:腹に肘打ち
 〃 :脇腹に蹴り、気絶
 〃 :腹に肘打ち、胃液、気絶
 5巻:腹に膝蹴り、苦悶
 6巻:腹にパンチ、胃液、嘔吐、気絶(?)
 7巻:腹に蹴り、胃液

●女豹[レボリューション編] 鬼窪浩久 [実業之日本社]
 5巻:脇腹に蹴り、吹き飛び


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
テーマは「やみ(病、闇)」と「かい(悔、壊)」です。

ryonazを海に沈めるのは、なるべくご遠慮ください。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
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 血塗れになりながら幸太は謝罪し、許しを乞うた。しかし彼女にとってのそれは、自発的な彼の声、言葉、行動であること以外の意味はもたないようだった。彼女は片方の指先で彼の顎を掴み、口を抉じ開け、舌先を摘む。もう片方の手には、キラリと光るナイフがしっかりと握られていた。
 幸太は涙で顔をグシャグシャに濡らしていた。彼女は無表情のまま、彼の舌先にナイフをそっと近付け、耳元に唇を寄せる。
「……これで、うるさい音も無くなるよね。」
 恐怖心からか、幸太はさらに身体を大きく震わせた。その息遣いは酷く荒い。
「そしたら、また元通りに直るよね……」
 そう言って彼女は幸太の舌にナイフを押し当て、ギリギリとその肉を裂いていった。その時の彼の声は聞くに堪えないものだった。柔らかい肉がじわじわと切り分けられていく。血管の一つ一つがブチブチと音を立ててちぎれていく。それに伴って勢いよく噴き出してくる血液と、後から後から流れ出てくる血液。彼がいくらもがいても、叫んでも、涙を流しても、彼女は決してその手を休めようとはしなかった。
 やがてボトリという音とともに、幸太の舌先が床に転がった。その瞬間、彼の動きが止まった。ブルブルと身を震わせ、恍惚とも苦悶ともつかぬ表情を浮かべている。おそらく絶頂を迎えたのだろう。彼女もそれに応じるように幸せそうな表情を浮かべ、身体を痙攣させていた。しかし、彼女の中に何かが注がれることは決してない。「ソレ」が可能になるのは、おそらくあと何年も先のことだろうから。
 幸太はやがてピクリとも動かなくなった。彼女はそれまでの余韻を味わうかのように二、三度腰を揺らすと、ゆっくりと彼の陰茎を自分の膣内から引き抜いた。
 鶯の声が再び室内に入り込み、部屋は静寂に包まれた。
 彼女は無言のまま、切り落とした幸太の舌先をハイヒールの踵でグリグリと踏み躙る。その瞳はこの上なく冷たい輝きを帯びていた。潰れた肉片から溢れる血液が、床を染め上げていった。
 彼女は、動かなくなった幸太を見つめ、再び愛しそうにそっと抱きしめた。


 今や現代医学は急速な進歩を遂げている。
 ―― 先天的な全盲 ――
 手術によって幸太の瞳に光が差す日も、それほど遠い未来のことではないのかもしれない。
 その時、幸太は自分の見る影もない姿をどう思うのだろう。その元凶である、自分に似た顔の女性をどう思うのだろう。それが実の母親だと知った時、どう思うのだろう。
 その答えを、舌を失った幸太の口から聞くことはもうできない。
 ――尤も、幸太はもう二度と動くことはないのかもしれないが……
 妻に抱きしめられた幸太の小さな口を大量の血液が塞いでいるのを確認し、私は心の中でそう呟く。真実を知らぬままに事切れる。彼にとってはそれが一番の幸福なのかもしれない。
 幸太は確かに彼女を求めていた。その中で得た苦痛や快楽の全ては、彼自身が望んだもの。目の見えない彼にとっては彼女が世界そのものだった。彼の幸せは、彼女の中にのみ存在した。それだけが真実。
 ――もし私が止めていたら?
 自問し、すぐにそれを否定する。妻は決して私の言葉など聞きはしない。いや、もう自分に嘘をつくのはやめよう。偽善者ぶることに意味などない。私はこうやって、妻と我が子が紡ぐ関係をじっと見ていることでしか、もはや性的な興奮を覚えることはなくなっていたのだ。それだけが、私にできたこと。それこそが、私の望んでいたこと……。二人の行為を止めることなど考えられなかった。
 ――しかし、それも今日でおしまいかもしれないな……
 心の中でそう呟きながら、私はドアノブに勢いよくかけた自分の精子を無感情に見つめていた。 

 狂気に満ちた妻の笑顔と幸太の小さな身体を見届けた後、私はそっと部屋を離れた。
 少し古びた結婚指輪が、カラリと音を立てて床に転がった。



END

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 彼女は幸太の睾丸に片手を添えながら、万遍なく陰茎に舌を這わせた。彼女の唾液が全体に付着し、それに伴って彼の陰部をなぞる彼女の舌の動きも滑らかになっていった。
「ふぅぅ……。はうぅぅ……」
 彼女の舌先が若芽に触れる度に、幸太は弱々しい声で喘いだ。彼の怯えた表情はいつの間にか消え去り、再び恍惚の表情が彼の顔に浮かんできていた。しかし、やはり先ほどの自分の誤った行動を悔いているためであろうか。彼の動きはどこかぎこちなかった。
「はあうぅっ……」
 一際大きな喘ぎ声。彼女は頬張るように、幸太の陰茎を呑み込んでいた。彼女がゆっくりと顔の上下運動を始めると、彼はさらに激しく悶えた。カポカポという卑猥な音が部屋に響く。彼は既に我慢の限界だったのだろう。彼女から与えられる刺激によって、既に絶頂を迎える寸前のようだった。
 彼女はしばらくフェラチオを続けながら、上目遣いで幸太の様子をじっと見ていた。彼が今にも絶頂を迎えようといった寸でのところで、彼女は咥えていたモノを口から吐き出す。
「は……はぅ……ぅぅ……」
 今にも泣き出しそうな声を上げ、幸太はその身を捩った。
 彼女は声を漏らして笑うと、冷たい笑みを浮かべたまま幸太に問う。
「……逝きたいの?」
 それは幸太にとって、女神の囁きのように感じられたに違いない。表情を緩め、彼は何度も大きく頷きながら「はい」と答えた。おそらく彼は「逝く」という言葉の意味すらも分かっていないのだろう。しかしそれが、いつも自分に至福を齎してくれるものだということは理解しているようだった。
 感極まったのか、幸太はその瞳から大粒の涙を流していた。

 床に足をつけたままの姿勢で、今二人は一つになっていた。
 彼女は幸太に身体を重ね、じらすようにゆっくりとその腰を揺り動かす。首筋にキスをし、舌先で上半身を刺激する。指先で身体中をなぞる。その度に彼は喘ぎ、悶え、その愉悦に浸っているようだった。二人は融和するように滑らかに絡み合う。二人の身体がお互いの刺激を受けて激しく揺れる。
 幸太は快楽に身を委ねるように、甲高い声で喘いだ。彼が今まさに絶頂を迎えようと、身体を大きく仰け反らせる。しかし、それは叶うことがなかった。
 束の間の幸福。それは幸太が口を開いた瞬間に、ガラガラと音を立てて崩れ去った。
「き……きもちぃですぅ……あぅ。……いきますぅ!」
 彼女はその言葉を聞くと同時に、ピタリと動きを止めた。
 恐ろしいほどの静寂が部屋中を包み込んだ。彼女は幸太と一つになったまま、肩を大きく震わせる。黙ったままで、ただじっと俯いていた。その雰囲気を察したのか、彼の表情に再び恐怖の色が浮かぶ。
 彼女が威嚇するような声音で呟く。
「また……だね……」
 それを聞いた幸太は反射的に身を縮め、身体を震わせた。慌てて謝罪の言葉を口にする。しかしそれは彼女の耳には届いていないようだった。
「とうとう壊れちゃったんだね……。また勝手に口が動いた……」
 言いながら彼女は、そっと磔台の後ろに手を伸ばす。その手に握られていたのは鋭利なナイフだった。

 躊躇など今の彼女には全く感じられなかった。
 彼女は幸太と結合したまま、手にしたナイフで彼の身体中をなぞっていった。鮮血が幸太の身体中から噴き出す。唐突な彼女の行動を前に、彼はただ必死で喉の奥から声を絞り出すだけだった。

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 陽光が静かに二人を照らしていた。
 幸太の息遣いは一段と荒くなっていた。ぐったりと身体を前のめりにした彼を、無機質な手枷と足枷が磔台に繋ぎ留めていた。彼の額から汗が頬を伝って流れ落ちる。彼の放つ声は既に掠れていた。彼女はそんな彼を見ながら、再び微笑んだ。その表情はまるで花弁が綻ぶようであり、その瞳は彼の心の奥底まで見抜いているかのようだった。
「……興奮してるね。」
 言いながら彼女は幸太の睾丸をそっと握り、手の中で柔らかく擦る。
「はふぅ……ぁ……ふぅっ……」
 幸太が卑猥な声を漏らす。彼女はやがてその指先を彼の陰部から下腹部、胸、腰や肩へと滑らせていった。触れるか、触れないか、ギリギリの線を保ちながら、彼女の指は彼の上半身を這いずり回った。その度に彼は鼻から抜けるような喘ぎ声を上げ、身体をくねらせた。
 幸太のモノは既に限界を迎えているようだった。最大限にまでそそり立った陰茎をビクンビクンと震わせ、身体中を痙攣させ始めている。もどかしさからか、彼の息遣いは一層激しくなっていく。それは、少し開いたこの部屋の窓から外へと漏れるには十分すぎるほどの音量だった。
 ふいに幸太の口が開く。
「……きもちよくなりたいです。ふわって……。きもちよく!……きもちよくぅ!!」
 彼女は幸太の思わぬその言葉に、目を丸くしていた。無理もない。彼が自発的に言葉を発するのは、これが初めてのことだったのだから。彼は狂ったように身体を揺さぶり、口の端から涎を垂らしながら彼女に懇願した。その度に、彼を縛り付ける磔台もまた、ギシギシと音を立て続けた。当然、彼がこれほどまで欲情を剥き出しにしたのも、この時が初めてだった。それは、こうして毎日のように性欲を弄ばれ続けた彼の必死の抵抗だったのか、それとも欲求に耐えきれなくなった彼の心の声だったのか。
 彼女はあまりにも奇異な幸太の行動にしばらく呆気に取られていたが、やがて小さな声で「そう」とだけ呟いた。暴れる度に振れる彼の睾丸を、彼女は再びグッと握った。
「あぅっ……」
 わずかに漏れる幸太の声。彼女の片手一つで、彼は身動きが取れなくなる。
 感情の高ぶりが徐々に抑えられてきた幸太をじっと見つめながら、彼女がそっと耳元で囁く。
「……あなたは、私の玩具なの。」
 幸太の身体がその言葉でビクッと反応する。
「……私の……玩具……」
 彼女の顔からは先ほどまでの愛でるような表情は消え去っていた。無表情の中に浮かぶ、冷たく鋭い瞳。それはまるで感情をもたない人形のようであった。
 再び彼女の口から声が発せられる。
「玩具の口が勝手に動き出したの……。壊れちゃったかしら?」
 言いながら彼女は、再び幸太の全身を撫で回す。同時に、その舌でゆっくりと全身を愛撫する。しかしこの時、彼から恍惚の表情は消えていた。それどころか彼の顔面は蒼白になり、ガクガクと全身を震わせていた。ただ彼の陰茎だけは、その表情とは裏腹に大きく反り返っていた。
 ひとしきり幸太の全身を舐め回した彼女の舌は、やがて彼の下半身へと移動していった。彼女の口が、膨れ上がった彼のモノを優しく包み込む。
「は……うぅふっ……はぅ……」
 幸太から喘ぎ声が漏れる。しかし彼の表情は依然として強張ったままであった。

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 幸太の絶叫が鳴りやむことはなかった。
 やがて彼女は幸太の身体中を愛撫しながら、その全身を引っ掻いていった。彼の身体には、それ以前にも彼女によって与えられた癒えない傷痕がたくさん残っていた。彼女はその痕すらも穿り返すように、彼の皮膚のあらゆる部位を抉っていく。
 綺麗にネイルが施された爪が肌を伝うと、それは白い線となって幸太に残った。それは次第に赤みを帯び、やがては赤い線となって肌から浮き上がってくる。いつしか彼の全身は、網目が張っているかのように腫れていった。皮膚の諸所は破られ、肌の至る所から血液が流れ出てきていた。
「ぃ……ぎぃあぁぁ……」
 今にも消え入りそうな幸太の声を聞きながら、彼女は嬉しそうに口元を弓なりに持ち上げる。彼が痛みで身体を捻る度に、彼女の引っ掻く力はますます強くなっていく。爪の先はなおも彼の肉を削ぎ続ける。同時に彼女はその傷痕をなぞるように、柔らかく湿った舌を這わせていく。
 彼の目からは、いくつもの涙が頬を伝って流れ落ちていった。
 彼女はにっこりと微笑みながら幸太に言葉をかける。
「痛いのね。これが嬉しいんでしょ?」
 言いながら彼女はパンパンに張った幸太のモノをぐいと掴み上げる。彼女は彼の小さな睾丸を手の中でグリグリと擦り合わせた。その刺激に、彼は全身を大きく反応させる。彼を襲ったのは鈍痛に間違いないだろう。呻き声を上げ、身体を目一杯捩る。
「あ……ぐぅ……」
 苦悶の声。しかし幸太の陰茎は、その声に逆らうかのように膨らみ、そそり立つ。
 彼女は睾丸から手を放し、今度は足で幸太の陰部を弄び始めた。優しく、時には強く、彼女はハイヒールの底や爪先、踵とあらゆるところで彼のモノを刺激した。再び「ふふっ」と彼女の声が漏れる。彼は嬲られる自分の下半身の感触を全身で味わっているかのようだった。
「もっと気持ちよくしてあげるね。」
 彼女の言葉に、再び幸太はビクッと反応する。もちろん股間を膨らませた彼にそれを拒めるわけも、拒む理由もある訳がなかった。「はい」とだけ答え、彼は股を広げて姿勢を整える。彼女は彼の陰部を弄びながら、時々睾丸に鋭い蹴りを入れ始めた。
「ぐうぅぅっ……。あぐうぅぅ! ぅぅ……」
 蹴り上げられる度に幸太の身体はくの字に曲がる。もちろん手足を拘束されているから、倒れ込むことはできない。身動きの取れない彼に与えられた選択肢は、もはや彼女に睾丸を捧げること以外にはなかった。彼女は満面の笑みをその表情に湛えながら、彼の睾丸を執拗に甚振った。それは次第にエスカレートしていく。彼の睾丸はますます赤く腫れ上がるが、同時に彼の陰茎もまた大きく膨らんでいった。
「これで感じるんだもんね、幸太は。本当に、はしたない子。」
 彼女に見下ろされた幸太は、やはりただ項垂れているばかりだった。彼の口から出るのは、やはり「はい」という言葉。しかしその声色は、明らかな性的興奮の様を表していた。
 ハイヒールの爪先が喰い込む。彼女の膝が突き刺さる。痛々しいばかりの様相を呈した幸太の陰部。しかしそれは激痛を与えられる度にビクビクと反応し、決して硬直を止めることはなかった。
「……こんなに膨らせちゃって。」
 幸太は彼女の嘲るような言葉に感極まったのか、その息遣いを一段と荒げた。にっこりと笑みを浮かべた彼女が再び彼の睾丸を強く握り締めた時、彼は喉の奥から咆哮した。
 それは紛れもない、恍惚の声だった。

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 鶯が一声鳴いた。
 麗らかな春の日の昼下がり。
 そよぐ風はまるで母のような包容力で人々の全身を包み込む。燦々と降り注ぐ陽光は大地を優しく照らし、とうとうと流れる川のせせらぎは時間を忘れさせる。
 そんな田舎の穏やかな風景は、窓ごしに佇む幸太を静かに眺めていた。
 四月に入ったとはいえ、季節の変わり目であることには違いない。部屋の中であるとはいえ、まだまだ肌寒さの残る時期。裸体のまま小一時間その場に立ち尽くしている幸太にとっても、それは決して例外ではないはずだった。それを証明するように、少しだけ開いた窓から隙間風が吹き込む度、彼はわずかに身体を小さく震わせた。
「寒いの?」
 声の主である彼女は、生傷の絶えない幸太の身体を優しく擦りながら気遣うように声をかける。
 少しウェーブのかかった彼女の髪が、柔らかい風に靡く。露出度の高いセクシーなランジェリービスチェを身に纏った彼女は、高ぶる感情を抑えきれないのか、身体をしきりにくねらせた。その度に、彼女のバストが大きく揺れる。室内であるにもかかわらず、彼女はその足に高いヒールを履いていた。
 幸太は表情一つ変えないまま、ただ一言「いいえ」とだけ答える。その言葉を聞いた彼女は「ふふ」と声を漏らす。彼女の視線の先には、この部屋にはとても似つかわしくない仰々しい磔台があった。彼女はいつものように、その磔台に彼の手足を枷で拘束する。
 幸太の瞳は決して光を映し出さない。
 ただ彼女の為すがままにその身を委ね、静かにその時が来るのを待っている。
「うっ……」
 彼女の拳が鳩尾に叩きつけられ、幸太は苦悶の声を上げる。彼女はその拳を彼の腹に喰い込ませたまま、内部を抉るように手首を捻る。
「う……がぁ……」
 幸太の声に愉悦を感じる彼女。その瞳には冷酷な光が宿り、口元は自然に緩んでいく。彼女は彼の首筋を愛しそうに眺めながら、その各所に唇をあてがう。
「苦しいの?」
 妖艶な声音で幸太に問いかける。しかし彼は苦しみのため、呻き声を上げることしかできない。口からは涎が零れ出してきていた。その様子を見ながら彼女は微笑を浮かべ、さらに彼の腹を目掛けて何度も膝蹴りを叩き込んだ。彼女の膝は、まるで内臓に突き刺さるのではないかと思われるほど、彼の腹部に深く喰い込んでいた。
「げえっ……がはっ……」
 幸太は身動きが取れないまま、続けて与えられる苦しみに耐えていた。言葉にならないうめきが、幾度となくこの狭い部屋全体に響いた。やがて彼は、先ほど食べたばかりの昼食をゲロゲロと吐き出した。これは、なにも今日始まったことではない。彼はいつもこうやって食べた物を吐かされるのだ。
「……汚い子。」
 彼女にそう罵倒され、幸太は頬を赤く染める。二人にとっては決して特別なやり取りではない。間もなく、彼の小さなモノが徐々に肥大化していった。それを確認した彼女は小さな笑い声を零すと、彼の下半身を狙って手にした一本鞭を振り下ろし始めた。
 幸太の悲痛の声が上がる。その声を耳にし、彼女の鞭を振り下ろす勢いはだんだんと強まっていった。
「不思議ね。こんなに硬くなって。」
 幸太は絶えず俯いたままだった。打たれる度、反射的に身体をピクリと反応させる。無意識に内股になると、彼女が足で小突いて再び足を開かせる。そして再度、鞭を振るう。
 幸太の陰部は次第に赤く変色してきていた。

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●ハイパーあんな 近藤るるる
 [アスキー]
 1巻:腹にニードロップ、気絶
 2巻:腹にパンチ
 [エンターブレイン]
 新装版四巻:腹にパンチ、胃液、苦悶

●低俗霊DAYDREAM 原作・奥瀬サキ 漫画・目黒三吉 [角川書店]
 2巻:脇腹にパンチ、連打
 5巻:脇腹に蹴り
 8巻:腹に蹴り、吹き飛び
 〃 :腹に蹴り、連打

●警視総監アサミ Story・近藤雅之 Art・有賀照人 [集英社]
 6巻:腹に蹴り、胃液
 9巻:腹に蹴り
 13巻:腹にパンチ
 〃 :腹に蹴り
 〃 :腹を蹴り上げ、苦悶
 〃 :腹に蹴り、気絶
 14巻:腹にパンチ、苦悶
 〃 :腹にパンチ、苦悶
 〃 :腹に肘打ち
 〃 :腹にパンチ
 15巻:脇腹にパンチ
 〃 :腹にパンチ


※注
 ・全て女から男への腹責めです。
 ・記載したキーワードは全て、私の見た限りの独断です。
 ・逆リョナ情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
  (尚、「逆リョナ@wiki」に掲載する情報は、匿名をデフォルトとさせていただきます。)
  → ◆逆リョナ@wiki [ Gyaku-Ryona@wiki ]
この度新たに、suzuroさんから紗希のイラスト第二弾を頂きました。今回は何と二枚も!
聞くところによれば、一枚目と同時に手懸けてくださっていたとか。
先日、イラストを頂いたばかりだというのに。本当に有難い限りです。
ご協力、心から感謝いたします。
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● 柳本紗希 2 (※一枚目はこちらに掲載)
女子高生シリーズ」より
 suzuroさんコメント…背景を変えて、2バージョン作ってみました。紗希は静かに支配するイメージです。
 ryonazコメント…この瞳で見つめられたら骨抜き確定ですね。穏やかな笑顔の虜になったらオシマイです。

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