Black Onyx [ブラックオニキス];2007/ 12の記事一覧

ここでは、Black Onyx [ブラックオニキス]での 2007年 12月 に掲載した記事を表示しています。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 雪はしんしんと降り続いていた。
 絶えず途切れない人の声の中、除夜の鐘が厳かに鳴り響く。
 僕は女王様の後ろに貼り付くように、人混みを歩いている。

 出したい……。

 除夜の鐘が百八回撞かれるのは、人間にその数だけの煩悩があるからだという話をどこかで聞いた。
 今の僕はと言えば……まさに煩悩の塊だろう。
 僕は女王様に射精管理をされている。最後に射精したのは、もう一ヶ月も前になるだろうか。
 羽織ったコートの下は全裸。首には首輪が付けられ、女王様はそこについたリードを持っている。お尻の穴にはリモコンバイブが挿入されており、さっきからずっと微振動を続けている。そのリモコンはもちろん女王様の手の中だ。
「人がたくさんね。」
 女王様は僕の方を振り返ることなく、僕に語りかける。
 コートからストッキング、ピンヒールに至るまで全て黒で彩られた女王様の姿はとても美しく、僕はその姿を見るだけでもどかしさを抑えきれない。
「ほら。ちゃんと歩きなさい。」
 歩きながら女王様は、後ろにいる僕の鳩尾を肘で突いたり、ピンヒールの先で足を踏みつけたりする。僕はその度に、与えられた苦痛によって過敏に下半身を反応させてしまう。
「女王様。僕……」
 腰の辺りが熱い。僕の興奮は既に限界を迎えていた。自分の欲求を抑え込めない。
「何?」
 冷静な瞳に見据えられ、僕はそこで言葉を続けられなくなる。
「はうっ……」
 挿入されたバイブが振動を強くする。射抜くような瞳はそのままに、女王様は口元を弓なりに曲げた。女王様にとって、僕が欲求を口に出すことを抑制するのは赤子の手を捻るが如きことなのだ。あらためてそれを自覚させられる。僕は俯き、黙って女王様の後ろを再び歩き続ける。
「どうしたの?」
 黙り込んだ僕を見て女王様が声をかける。僕はその問いに、すぐには応えることができなかった。
「我慢、我慢。いい子ね。」
 茶化すように女王様は再び僕に声をかける。しかし僕はまだ口を開くことができなかった。
 ――女王様。僕は苦しいです。出したい……。こんな僕の気持ちにも気付いてもらえないんでしょうか? そう思うことも罪ですか? 女王様……。僕は、だんだんとあなたが分からなくなっています……
 自分の中で不安が募っていくのが分かり、自己嫌悪に陥る。きっと僕はこのまま……女王様の玩具にされながら……。それで飽きたら、きっと……
 いつの間にか、目の前には大きな境内が見えていた。
 それに気付いた時、僕の首輪がぐいと強く引かれる感触があった。本堂を前に女王様は、既に礼拝を始めていたのだ。リードを手にしたままで。

Back | Novel index | Next
今年も残すところ、あと半日を切りました。

三月より立ち上げたBlack Onyx [ブラックオニキス]ですが、私自身あらためて掲載してきた小説を読み返しながら、その時その時の思い出を噛み締めています。
作品を形にしていく悪戦苦闘の作業。完成した時の喜び。そして何より、読者の方々からのアクセスや温かいコメント、メッセージ。
大変充実した時間だったと、あらためて実感しています。
皆様のご愛顧により、無事年を越すことができそうです。

皆様の中でのBlack Onyx [ブラックオニキス]は、どういう存在でしょうか。
私は、単純に皆様がお楽しみいただける場であればそれでよいと思っています。
皆様にとってこのサイトがそういう場であったなら、それは大変光栄なことです。

お礼を兼ねて、年越しものの短編小説を書きました。
お楽しみいただけたら幸いです。

それでは皆様、どうぞよいお年をお過ごしください。
来年も、Black Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞよろしくお願いいたします。
クリスマスに因んで、サイトデザインを変更していました。
物語の内容についても、この時期に見合ったものをと考えていました。
今回もryonaz作品としては、ちょっと異質なものだったかと思います。
正直、本当はもっとドタバタさせてもいいかなという気持ちもあったのですが、今回はこのような作品に仕上がりました。
さまざまなバリエーションをもって作品制作をしていきたいと考え、日々妄想を働かせております。

仮設置という形で掲示板を設置しています。(※閉鎖しました)
・妄想や願望、逆リョナやSMの情報など、いろいろと自由に活用していただきたい。
・交流の場としてお使いいただきたい。
・読者の皆様の妄想や嗜好を私自身がお聞きしたい。
そんな思いから設置したものです。
私自身にもまだ定まったビジョンがなく、皆様には使いにくく感じさせているような気もします。申し訳ありません。
最低限のマナーは要求させていただいていますが、それ以外には特に制限はございません。
形式にとらわれず、遠慮なくご自由にご活用いただければと思っています。
皆様のお声が聞けたら嬉しいです。


今回も、作品をお読みいただいた方々に感謝申し上げます。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
 どれほどの時間、彼女と見つめ合っていたのだろう。
 この部屋は物音一つしない。俺たち二人の間にも、長い沈黙があった。もちろん、その沈黙は俺にとって決して心地の悪いものではない。彼女にとっても、それは同じことだろう。そこにあるのは、お互いの心が通じ合ったという喜びと、それによる安心感、充足感……。
 静かな聖夜。静寂が俺たちを含め、この世界の全てを包み込んでいるようだった。
 彼女がそっと俺の手に触れる。俺はその手を、両手で覆い返す。確かにそこには言葉のないコミュニケーションがあった。
「由梨……」
 俺が彼女の名前を呼ぶ。
「……徹くん。」
 彼女が名前を呼び返してくる。今の俺には、それで十分だった。
 こんな素晴らしい夜を体験できたこと、そして、彼女がここにいてくれること……
 この胸に、その幸せを噛み締めていた。
 俺は彼女の姿をあらためて見回した。欲情を掻き立てるサンタ衣装の赤。その下から覗く彼女の瑞々しく綺麗な生足。そしてその先に見える、白い下着。ゆっくりと顔を上げれば、そこには幼さの残る可愛らしい笑顔がある。その瞳、鼻、唇、髪……。
 彼女の全てが愛しい。彼女に対する狂おしいほどの愛情に身を任せ、俺は彼女に思いきり跳びついた。その勢いで、俺たちはベッドの上に倒れ込む。

 ――!!――

 ……俺は自分の愚かさを呪った。
 何せ彼女は天性のドジっ子……。彼女は何も悪くない。さっきまであれほどいろいろなハプニングがあったじゃないか。それなのに……どうして俺は……
 軽率な行動を取ってしまったことを今さら悔やんでも仕方がない。今俺に出来ることは、意識を……しっかりと……保って……いること……
「ごふっ……」
 小さな咳き込みが口から漏れる。どうやらそれはできない相談らしかった。

 ――今日は一日幸せな時間が過ごせて……よかった……

 遠退いていく意識の中で、俺は心からそう思った。
 跳びついて倒れ込んだ勢いがカウンターとなり、見事なまでに俺の鳩尾の急所を撃ち抜いた彼女の膝。その見事なまでの白く美しい脚が、俺の目にしっかりと焼き付いていた。

 最後に聞こえた言葉は……「あれ? 寝ちゃうの?」だったっけ? 「徹くんって本当に楽しませてくれるよね……」だっけ? よく聞き取れなかったな……

 倒れゆく俺を見る彼女の口元が笑っていたのも、きっと気のせいだったのだろう……。



END

Back | Novel index | Next
「ゆ……由梨。由梨!!」
 痛みが酷くなっていく。俺は必死になって彼女を起こした。
「……ふぁ?」
 彼女が目を覚ます。
「あ……あの、あの! し……下! って言うか、口のところ!」
 痛みで呂律が回らない。しかし彼女はようやくそれで、事の全てを理解した様子だった。
「あ……うううっ!」
「ぐあっ! しゃ……しゃべらないで。放して!」
「は、はひ。」
 そこまでして、ようやく俺のモノが彼女の口から解放された。覗いてみると、俺のモノにはくっきりと彼女の歯形が残っていた。
「ふ……いひぃ……」
 解放された安心感と、後を引く痛みとで、俺は声を漏らす。そんな俺の姿を見て、彼女はあらためて自分の失敗を自覚したようだった。
「あ……あぅ……。ぅぅ……ご……ごめんなさい。」
 今日、彼女の謝罪の言葉を何度聞いただろう。彼女は天然のドジっ子だ。今日、あらためてはっきりと分かった。そんな彼女を、今は本当にこの上なく愛しいと思っている。

 ――俺はもう、彼女がいれば何もいらない。

「ありがとう。最高に気持ちよかったよ。」
 俺の言葉に感動したのか、彼女の目が潤む。
「そんなドジなお前を、世界の誰よりも愛してる。」
 素直に口から出た本心だった。きちんと言葉で伝えられたと、俺は満足感で一杯だった。
「徹くん、本当に本当にごめ……」
 人差し指で彼女の口を押さえる。俺はゆっくりと首を横に振った。
「そうじゃないよ、由梨。」
 彼女はその言葉で全てを悟ったように、大きく息を吸い、ゆっくりと言葉を口にした。
「……ありがとう。」
 彼女の天然はきっと常軌を逸したものだな、と俺は思った。
 これから先、彼女にはもっともっと苦労させられるんだろうなと自嘲の念を強くする。しかし、それでも俺にとっては最高の彼女だ。むしろ、こんな彼女だからこそ、これほどまでに愛しいと思えるのだろう。
 俺は彼女の全てを受け入れていこうと、心から思った。
「由梨が、俺の全てだ。」
 そっと彼女の頭を撫でる。
 彼女は俯いたまま、ただ涙を浮かべて何度も、何度も頷いていた。

Back | Novel index | Next
 出来るだけ痛みを顔に出さないようにするのに苦労した。
「も……もう大丈夫、だぁっ! ぐ……ありが……とぼっ!」
 おかしな言葉が口から漏れる。彼女はようやくその手から俺の睾丸を解放してくれた。
「大丈夫になった? ごめんね。ちゃんと大丈夫になった?」
「あ、あぁ、もちろん。由梨のマッサージの、お……おかげかな。ありがとう。」
「よかった。嬉しいよぉ。」
 彼女は本当に嬉しそうな顔をしていた。俺はこの笑顔にめっぽう弱い。燃え上がった俺の欲情が、再び顔を出してくるのが分かった。
 意を決して、俺は彼女にお願いをする。
「あ、あのな。もっと気持ちいいことがあるんだけど……駄目かな?」
「え? もっと気持ちいいことがあるの? はい。させてください。」


 彼女は舌を絡めるようにして、俺の膨れ上がったモノを口で包み込んだ。
「うっ……あふっ……」
 あまりの気持ちよさに、俺は一瞬で昇天してしまいそうになる。これまでこんな幸せなイヴの夜があっただろうか。
 これで気持ちいいんですか? と、言葉にならない声で聞いてくる。心配性なところがまた可愛い。
「あぁ。とっても。」

 ベッドの横にある窓から外を見れば、雪がしんしんと降り続けていた。
 俺は最高のクリスマスイヴを迎えられたことに感謝しながら、あらためてこの由梨という女を幸せにしたいと思った。健気に俺に奉仕する彼女。その姿がとても艶かしく感じた。

 彼女の不器用だが一生懸命なフェラチオをしばらく受け続け、俺は既に絶頂寸前だった。
 ――もう逝ってしまいそうだ……。
「由梨……」
 声をかける。しかし彼女からの返事はない。
「由梨?」
 再び名前を呼ぶが、結果は同じだった。

 ――!!――

「ぐぁ!」
 瞬間的な激痛が股間を襲った。絞めつけられるような痛みを陰部に感じ、俺は声を漏らす。その痛みはギリギリと強まっていった。
 たまらず彼女を見る。彼女は俺のモノを咥えながら眠ってしまっていた。そのため、歯が剥き出しになり、俺の竿部を容赦なく絞めつけていたのだった。

Back | Novel index | Next
 ベッドの感触は柔らかく、気持ちがよかった。
 相変わらず彼女は謝ってばかりだった。そんな健気な姿が、俺の中の愛しさを膨れ上がらせる。
「もう、大丈夫だから。気にするな。それより、支えてくれてありがとな。」
「うぅぅ……徹くん、どうしてそんなに優しいの? どうして……」
 また泣き始める。たまらず俺は彼女を強く抱きしめた。
 しばしの沈黙。
 小刻みに震えていた彼女の肩が次第に落ち着いてくる。身体を離した時、彼女は積極的に俺のジーンズのベルトを外し、ゆっくりとズボンを下ろした。パンツの上から股間をゆっくりと、静かに撫でる。
「はぅ……。」
 つい声が漏れる。
「ここ、痛くしちゃったから……。一生懸命、由梨に治させてください……」
 赤面しながら彼女がポツリと言う。
 鼓動が大きく高鳴るのが、自分ではっきりと分かった。
 確かに今日はいろいろなことがあって大変だった。まるで昔のドタバタコメディドラマを見ているような錯覚にさえ陥った。でも、今俺はこうして彼女とベッドを共にしている。
 彼女が俺のパンツをゆっくりと下ろし、下半身が露になる。俺は期待で胸が張り裂けそうになる。彼女はその指先で、俺のそそり立ったモノにそっと触れた。
「うっ……」
 快感で俺の興奮は高まるばかりだった。彼女はその指を亀頭から竿部を伝って根元まで這わせる。そして、掌でそっと俺の睾丸を包み込んだ。
 ――うっ……焦らさないで……。

 ――!!――

「ぐあっ! ああっ! 痛っ!」
 彼女は何を思ったのか、俺の睾丸を掌でグリグリと擦り合わせた。鈍痛が内部へと込み上げる。
「あの、ここが気持ちいいって友達に聞いたから……。」
 内臓を直接抉られるような痛みが俺を襲う。
「あ、でもちょっと……あぐぅ!」
「うぅ、まだ痛むんだね。もっと強く揉んだ方がいいかな……」
 彼女がさらに力を込める。さらなる激痛が俺を覆い尽くす。
「あがぁ! ち……ちが……ぎぃぃぃ……」
「痛かったんだね、本当に。ごめんね。ちゃんとマッサージするから。」
 睾丸が潰れてしまうのではないかと思うほど、彼女は精一杯その手に力を込めていた。地獄とも思える痛みが悉く俺に襲いかかる。
「ぐぅあああああっ!!」
 絶叫する。しかしそれは彼女にとっては逆効果だった。痛そうな反応をすればするほど、彼女はその手の力をどんどんと強めていった。
 彼女のマッサージは続いた。その時間は、俺にとっては永遠とも思えるほど長く感じた。

Back | Novel index | Next
 部屋を片付けている間、俺たちの間に会話はなかった。いや、もう既に言葉を放つ必要はなくなっていたのだ。二人黙ったまま、部屋を綺麗に元通りにする。しかし、そんな風に心が落ち着いてくると同時に、俺には再び身体の痛みが舞い戻ってきていた。
「そろそろ……」
 俺が言葉少なに伝える。
「……はい。」
 彼女は俺の胸にそっとその頭を凭れかけた。
 その時、俺は一瞬目の前が真っ白になった。さっき身体に受けた痛みを堪えきれなくなっていたらしい。足元がふらついたと思った次の瞬間、俺は床に向かって倒れていった。
 
 倒れていく間は、まるでスローモーションの映像を見ているようだった。
 
 彼女が唖然とした顔で俺を見ている。
「徹くん? 徹くん!」
 彼女の顔には明らかに動揺の色が窺えた。
 ――心配させるわけにはいかない……でも……
 身体は床に向かってどんどんと倒れていくばかりで、自分の意志ではどうすることもできなかった。それと同時に、意識が遠退いていくのが分かった。
 彼女が俺を抱きかかえようと、とっさに身体をこちらに向けて突進する。

 ――!!――

 そして……俺の意識は瞬時に覚醒され、同時に、再び込み上げてくる激痛に思わず声を上げた。
「ぐああああぁっ……あぐううっ……」
 さっきよりも目がはっきりと見えた。彼女は何が何だか分からないといった様子でただただ俺を見つめていた。
 俺は彼女に助けられた。下手をしたら床に叩きつけられていたことだろう。彼女に感謝するよう努める。しかし俺を襲う激痛は、俺にそんなことを考える余裕すらも与えてくれなかった。
「うぅっ……うぅっ……」
 呻き声だけが漏れる。
「と……徹くん? 大丈夫? 徹くん!」
「ひ……膝……」
 俺は何とか、彼女に一言だけ告げることができた。
 倒れ込んだ俺と、それを正面から受け止めようとした彼女。二人の身体は勢いよく倒れ、そして……
 俺の大きく広げた股の間には、彼女の膝が入っていた。
「あ……あ、ご……ごめ……ご……」
 彼女のニードロップが、見事に俺の睾丸に突き刺さる。俺は身を縮こめ、水面に打ち上げられた魚のように、身体をくねらせ続けていた。

Back | Novel index | Next
 最初に訪れた時に見た小奇麗な女子らしい部屋は、今はその様相を変えていた。
 ケーキで汚れた床。蝋燭があちこちに散らばり、クッションその他の小道具類は辺りに散乱していた。
 俺は彼女を抱きしめていたその手を放し、痛む身体に鞭打って起き上がると、四つん這いになって残ったケーキを平らげた。
「全部食べさせてもらったよ。ありがとう。最高のプレゼントだったよ。」
 彼女の枯れかかっていた涙が再び溢れてくる。さっきまでの涙とは違う涙だということは、すぐに分かった。
 
 ――泣き虫で不器用な彼女。でも……いや、だからこそ俺の、最高の彼女だ。

「徹くん……ありがとう。うぅ……本当に、ありがとう。」
 彼女の泣き顔がとても可愛らしく思えた。
 俺はゆっくりと立ち上がり、彼女に手を差し出した。彼女は俺の手にそっと小さな手を重ねる。彼女もゆっくりと立ち上がり、俺たちはあらためて対面する。
 互いに見つめ合う。
「……由梨。」
「……徹くん。」
 
 ……………

 長いキスだった。
 これほどまでに愛しい思いから口づけを交わしたことなどなかったと思う。彼女を飲み込んでしまいたい。彼女と一つになりたい。心から、そう思えた。
 ゆっくりとお互いに唇を離した時、彼女は少し恥ずかしそうに俯いていた。俺にも、もう言葉は必要なかった。無言のまま、またしばらく互いに見つめ合った。
 彼女が口を開く。
「徹くん。今日は……帰っちゃイヤ。」
「え?」
「このままで……。今日は、ずっとこのまま……」
 心が大きく揺さぶられる。しかしそれは動揺からではないことは分かっていた。本当に純粋な気持ちで、俺自身も心のどこかでそれを待ち望んでいたのだ。
「私を、抱いてください。」
 俺は真剣な眼差しで彼女を見つめる。短く「あぁ」とだけ答えると、また彼女を強く抱きしめるのだった。

Back | Novel index | Next
「あわわっ! あう……あぁっ、ごご……ごめん。」
 彼女の謝罪の声。痛みが熱さだと脳が認識する頃には、既にその痛覚はなくなっていた。
「大丈夫。落ち着けって。俺が代わりに……」
 しかし彼女は動揺で一杯になっているようだった。手から次々と火の点いた蝋燭を放してしまい、それが俺の身体中に落ちてくる。
「熱っ! ああっ! ちょ、ちょっと由梨!」
 俺の中にも動揺が広がる。
「あわわわ……あぅあぅ……どうしよ。どうしよう!」
 その俺の微妙な心境の変化を敏感に捉えたのか、彼女はますます慌てた声を出した。
「いいから落ち着け。俺が……げへっ!」
 立ち上がろうとする俺の身体を再び激痛が襲う。どうやら彼女は、俺の身体を踏んだり蹴ったりしているらしかった。彼女の蹴り、踏み付けが身体中に飛んでくる。
「けけ……消さなきゃ! 早く、消さなきゃ! 徹くん! 徹くん、大丈夫!?」
 言いながら、彼女の蹴りは次第にエスカレートしていく。頭や背中、尻や足など至る所を踏み付けられてまともに言葉が出ない。腹や股間を蹴り上げられ、内臓を揺さぶられる感覚から俺は苦悶の呻き声を上げるしかない。
 たまらず俺は仰向けになって倒れ込んだ。その時、目に映りこんだのは、彼女の跳び上がる姿だった。次の瞬間、俺は内臓を潰されるような感覚に思わず嘔吐をもよおす。ドスンという音とともに、彼女が勢いよく俺の腹の上で飛び跳ねていた。
「大丈夫? 熱いの? ねぇ! 返事してよぅ、徹くん!」
 まるで俺の腹がトランポリンであるかのようだ。彼女は嗚咽を漏らしながら、必死で俺の腹の上で何度も何度も飛び跳ねる。俺は苦しさから既に言葉を出すことも出来なくなっていた。

 俺の意識が朦朧としてきた頃、彼女はようやく落ち着いた様子を見せた。腹の上から降り、ボロボロになった俺の身体をじっと見つめている。その瞳には涙が浮かんでいた。
「あ……。あ……私、つい必死になっちゃって……、あの……」
 彼女が俺の横にペタリと腰を落とす。今にも声を上げて泣き出しそうだった。そんな彼女の姿が、再び俺の心をくすぐる。朦朧とする意識を覚醒させようと、俺は自分の両頬を両手で思いきり叩いた。
「大丈夫。ごほっ……大丈夫だよ、由梨。ほら、火は……もう消えてる……だろ。」
 掠れた声で何とか彼女に声をかける。
「うぅ……徹くん。」
「ありがとな、心配してくれて。必死で……消そうとしてくれた、その気持ちが……嬉しいよ。」
 彼女は相変わらず涙を浮かべたままであったが、その言葉で幾分落ち着いた様子だった。
「徹くん。好き! 徹くん!」
 倒れ込んでいる俺の胸に、彼女が飛び込んできた。彼女の口からこんな素敵な言葉が聞けるなんて思ってもみなかった。
 俺は身体の痛みなど忘れて、彼女を強く抱きしめた。

Back | Novel index | Next
 舐めながら俺は、彼女の顔をちらりと覗き見る。本当に嬉しそうな笑顔がそこにはあった。
「うぅ……徹くん……」
 俺は彼女が好きだ。あらためてそう自覚する。彼女のためなら、こんなの大したことではない。
「うん、美味い! さすが由梨だな。」
 精一杯の褒め言葉だ。実際、彼女の作ったケーキは美味しかった。料理上手な彼女に惚れ直す。自分の間抜けな格好はだんだんと気にならなくなっていた。
「あ、そっちにもついちゃってる。あぅ、あっちにも。えぇん、そっちにもー。」
「い、いや、ちょっと待って。」
 彼女の指示の早さについていけない。しかし、彼女は言いながらどんどんと涙声になっていく。
「うぅ。徹くんのウソツキ! 全部食べてくれるって……うっ……言ったのに……」
「あ、いや、だから、ちゃんと食べるって。食べ……ぐぼっ!」
 彼女の足の裏の感触を感じる。気付けば頭をぐいと押さえつけられていた。それを理解した矢先、彼女はその足で俺の頭を何度も踏み付け始めた。
「食べてくれるって。食べてくれるってー! ウソツキー!」
 ガンガンと頭を踏み付けられ、俺は為す術を失っていた。彼女の涙声がどんどんと激しくなっていく。俺は彼女を落ち着けようと、打ち付けられる痛みに耐えながら出来るだけ冷静に応えた。
「あぁ……。ちゃんと食べるよ……ごほっ。だから、安心しろ、由梨。」
 おそらくケーキと鼻血でベトベトになっているであろう顔を由梨に向け、微笑んでみせる。
「……徹くん。」
 彼女は幾分落ち着き、いつもの可愛らしい笑顔を見せる。
 それを見て安心した俺は再度、躊躇なく散らばったケーキと生クリームを食べ続けた。
「あ!」
 丁度半分くらい食べ終えた頃だろうか。急に彼女が声を上げた。
「どうした?」
「あの……実は蝋燭も買ってあったの。すっかり忘れちゃってて。ごめんね……」
 彼女の瞳が再び潤む。俺は彼女の、この感情表現の豊かなところが大好きだ。
「じゃあ、せっかくだからな。今からでも持って来いよ。」
 優しい口調でそう答える。彼女の顔に笑顔が戻ると、俺はまた嬉しい気持ちでいっぱいになる。「やったー」と子どものように跳びはねていく彼女の後姿は本当に愛らしい。そんな幼さの残る彼女だからこそ、そこから溢れる何とも言えない独特の艶かしさが、却って俺の欲情を掻き立てる。
 間もなく彼女は、その小さな手に溢れんばかりの蝋燭を持ってきた。
「これこれ。えへへ。」
 ケーキ用の、細くてねじれたカラフルな蝋燭だ。嬉しそうにそれらを束ね、カチカチとチャッカマンを鳴らす。しばらくすると、蝋燭が燃える音が俺の耳に聞こえてきた。
「あぐっ!」
 首筋に痛みのようなものが走る。触ってみると、それは蝋であった。

Back | Novel index | Next
「……え?」
 おもむろに彼女の方へ目を向けると、彼女は涙ぐみながら俺を潤んだ瞳で見つめていた。再び、彼女の声が俺の耳へと届く。
「……ウソだよ。こんなの食べてくれるわけないよね……。」
 淋しそうな笑顔で彼女が明るく言う。その健気さが、俺の心を揺さぶる。意を決して、屈みこんで床に散らばったケーキへと目をやる。彼女の綺麗な足が視界の隅に入り、俺は胸が高鳴る。
 彼女はそのケーキを、そっと足の指先でつまんで持ち上げる。
「徹くん……」
 俺は思考が停止していた。彼女の足先の美しさに魅了される。見上げれば、丈の短いサンタ衣装から彼女の白い下着がちらりと覗いている。胸がさらに大きく高鳴り、雰囲気に飲まれるような感覚に襲われる。彼女が足でトントンと軽く床を叩く。
 彼女のあまりの可愛らしさに、俺は思わず彼女の足を舐め回していた。
「嬉しい。本当に嬉しいよぅ、徹くん……」
 彼女のこの言葉に救われる。彼女の喜びこそが、俺の生き甲斐なのかもしれない。

「あ……あぅっ……」
 しばらく舐め回すと、彼女が喘ぎ声を上げる。その声にたまらず俺は彼女を抱きしめようと、身体を起こす。その時だった。
「美味しい? 徹くん。まだたくさんあるんだ。生クリームも、頑張って作ったんだ。」
 彼女がぽつりと呟く。見れば床一面にはまだケーキの山が溢れている。
「で、でもでも。頑張って少しでも食べてくれだんだし。もう十分だよ。」
 俺の中で葛藤が渦巻く。
「ば、馬鹿言うなよ。せっかく作ってくれたものを、無駄にできるわけないだろ。」
 俺は覚悟を決めた。散らばっているケーキを持ち上げようとする。
「あ……。あ、ううん、何でもない。」
「どうした? ちゃんと食べるよ。」
「そうじゃなくて、その……。生クリームも一生懸命。」
「分かってるよ、ちゃんと……」
 言いかけて俺は床をあらためて見る。生クリームは床にペットリとこびり付いてしまっていた。ケーキを持ち上げると、スポンジが生クリームからはがれてしまうのだ。
「全部……。あ、何でもないの。」
 その言葉が全てを物語っているようだった。彼女の瞳からは涙が零れ落ち、それを隠そうと懸命になっているのがよく分かった。
「安心しろよ。ちゃんと全部食べるからさ。」
 俺はもう引っ込みがつかなくなってしまっていた。床に這いつくばり、まるで犬のようにケーキを口一杯にほおばる。
 彼女を悲しませたくない。ただその一心で、俺は床についた生クリームも舐め始めた。

Back | Novel index | Next
 ハート型のクッションが可愛らしいと思った。
 彼女の家に入ったのは、今日が初めてのことだった。窓の外には雪がちらつき、忙しなく流れる人の群れはそれぞれの目的をもって互いに交錯していく。そんなイヴの夜の景色は何となく神秘的に感じられるから不思議なものだ。
 凍えるような街並みに比べ、ここはまさに異世界だった。クリスマスに合わせて彩られた、いかにも女の子らしい部屋。暖房の効いた温かいこの部屋で、彼女と二人きり。
 俺は内心、緊張と期待で胸が張り裂けそうになっていた。
「リラックスしてね。」
 彼女が遠くの方で俺に声をかけているらしい。耳の奥でかすかに返答を求められている感覚だけが俺の脳に伝わってくる。しかし、俺はその言葉の意味すらも掴めない。
「あ、あぁ……」
 気の抜けた返事をする。それほど、俺の心は緊張を露にしていた。
「ジャジャジャジャーン! 由梨、お手製のクリスマスケーキなのだー!」
 彼女が元気よくケーキを運んでくる。
 その姿が視界に入った時、俺は夢見心地だった自分の心が一瞬にして覚醒されるのを感じる。鮮やかな赤と白のコントラストが効いたサンタの衣装。それは膝上までで途切れ、そこからは彼女の生足が覗いていた。両耳には、雪の結晶を象った小さなピアスが揺れている。小さく幼さの残る彼女のスタイル。身に着けた衣装がそれを目一杯活かし、彼女の魅力を引き出しているようだった。
 俺は無意識のうちに彼女の姿に目を奪われていた。しばし放心状態にも似た感覚を味わう。
 ――可愛い……
 素直にそう思った。それを自覚した時、俺はさっきまでの緊張した心が幾分解されていくような思いがした。そして、さっきまでとはまた違った緊張が俺の中に渦巻く。股間が熱くなってくる感覚に多少の罪悪感を覚えながら、俺は精一杯元気な声で、彼女に応えた。
「ありがとう。楽しみだよ。」
 返事をすることで、いくらか心に余裕が生まれる。微笑ましく見つめる俺の方に歩を進めながら、彼女は嬉しそうに言葉を続ける。
「あ、はは。味の保証はできないけ……わぁっ!」
 ……その時、俺の視界は一瞬にして失われた。何が起こったのか分からず、俺は一生懸命思考を働かせる。
「あああっ! ご……ごごご……ごめん、徹くん。」
 彼女の謝る声。
 どうやら彼女が足を滑らせ、俺の顔にケーキが勢いよく飛んできた、ということらしい。それを理解した時、俺は平静を装って彼女に精一杯の優しい言葉をかける。
「いや、はは。仕方ないよ。でもせっかくのケーキが、これじゃ台無しだな。」
 目元を手で拭いながら、視界を取り戻そうとする。
 しばしの沈黙が二人の間を抜けていった。その後、おずおずと彼女が口を開く。
「食べて……くれる?」
 とんでもないその言葉に耳を疑う。しかし彼女の声は、とてつもなく可愛らしいものだった。

Back | Novel index | Next
単純明快。自分の妄想を、端的に爆発させた作品といったところでしょうか(笑)
時に、このような思いきった作品を書きたくなることがあります。
良くも悪くも、ryonazの正直な姿が表れていると思います。

100,000ヒット記念小説のリクエスト投票にご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。
サイト立ち上げ以来、初めてのリクエスト受け付けでした。
どれほどの項目がいただけるのか、また、どれほどの投票がいただけるのか、期待と不安で一杯でした。
たくさんのご投票をいただき、大変嬉しく思っています。
リクエスト上位のどれかを小説にさせていただきますので、掲載をお待ちください。
また、今回小説にしなかった作品についても、リクエストいただいた項目は一通り全てチェックさせていただきます。
今後の作品の参考にさせていただきたいと思っています。
皆様のお声が聞けて何よりです。あらためて、感謝申し上げます。

※なお、リクエストの投票結果はこちらからご覧になれます。

早いもので、今年も残すところ約半月となりました。
サイトをここまで運営してこられたのも、ご来訪いただいている皆様のお陰です。

今後もますます精進していきたいと思います。
これからも、Black Onyx [ブラックオニキス]をどうぞよろしくお願いいたします。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
「げええぃやあああ!……ぐぅあうああああ!!」
 地獄という場所が本当にあるのなら、ヒョロ男の叫びはそこのものに限りなく近いのではないだろうか。それくらい、男の叫び声は大音量で耳障りが悪かった。
 私はヒョロ男の身体を押さえつけたまま、陰部を丁寧に切り取っていった。亀頭にナイフの先を入れ、中から開くように先の穴を広げる。そのまま竿部を伝ってナイフを下まで移動する。そして、睾丸の一つを突き刺した。まさにその瞬間の叫び声であった。
「うぎぃやああああ!! おぐうぁ……んぐぅああああ!!」
 ヒョロ男の陰部は既に血塗れになっていた。血飛沫を浴び、私はその感触にしばし身を委ねる。例え腐った男でも、その血の匂いは私に愉悦を感じさせてくれる。尤も、世の中の善人と呼ばれる人たちにこんな真似はしない。この男たちのような人間のクズ相手だからこそ、罪悪感の欠片ももたずに私は欲求を満たすことができるのだ。
 患部からナイフを横向きにし、今度は玉筋を抉っていく。強烈な痛みからか、ヒョロ男は絶叫をやめようとはしない。全くうるさいことこの上ない。私はそのままもう片方の睾丸にナイフを滑らせる。男はそれを敏感に察知し、涙ながらに私に訴える。
「片方は……せめてもう片方は……」
 私は片手でもう片方の睾丸を掴み、そっとナイフを振り上げる。
「やめて……ください! お願いします! 何でもしますから!」
「別に……。何もしなくていいわ。私はあなたたちをただ壊したかっただけだから。」
「ごめんなさい!……もうやめてください! お願いしますうううっ!」
「……あれ? そう言えば、あなたさっき私に何て言ったっけ?」
 私の中に冷たい感情が湧き上がってくる。
「『やっべ、俺たち怒っちゃうかも。後悔しちゃうよ。』だったっけ?」
 私は嘲笑うようにヒョロ男に声をかける。男は後悔の表情を見せている様子だった。小刻みに身体を震わせ、また叫ぶ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。俺が……いやあの、僕が間違ってましたああぁ!」
 無様なヒョロ男の姿が滑稽で仕方がなかった。私はそこでまた表情を消す。無表情のまま、無言で男の残された睾丸にナイフの焦点を当てる。
「や……やめ……ごめんなさい。痛え……ごめんなさい。許し……」
「大丈夫よ。すぐに楽にしてあげるから。」
 そう言って私は、ナイフを力一杯振り下ろした。

 男の絶叫が、いつまでも夜の路地裏にこだましていた。
 私は地獄を見ているような男の狂った表情に興奮し、下半身は既に愛液でベトベトになっていることに気が付いた。この時間をいつまでも感じていたい……。そんな風に考えながら、私は男の首を足で押さえつけた。
「あなたたちみたいな男がいるから、私は楽しめるわ。さよなら。これでお別れね。」
 
 グシャリという音と同時に、夜の路地裏にこだましていた男の声は途絶えた。
 永遠とも思われる静寂が、辺りを包み込んでいた。



END

Back | Novel index | Next
「覚えておいてほしいの。」
 ヒョロ男は痛みと恐怖で、私の言葉などきっと耳に入ってはいないのだろう。足をガクガクと激しく震わせ、もはや立ち上がることもできない様子だった。私から離れようと必死で私に背を向けていざる。そんな男を見下すように見つめながら、私はゆっくりと後を追う。
「私から逃げることなんて、出来ないってこと……」
 ヒョロ男の表情は私からは見えなかった。ただ、これ以上ないほどの恐怖を味わった男の顔は、何となく想像できた。その想像が、私の加虐欲をますます掻き立てるのだった。
「あんよが上手。あんよが上手……。ふふふふ、あっはっはっは。」
 たまらず笑いが込み上げてくる。この男が晒しているみっともない姿は、私を激しく興奮させた。男は私の言葉かけには全く反応せず、ただひたすらいざり続けた。そして、声にならない声で必死に叫び続けていた。
「た……たす……け……。ころ……殺され……」
 その姿を十分堪能した後、私はヒョロ男の背中を勢いよく踏み付けて倒した。「ぐえっ」という声とともに男は動きを止める。私の足の下で、それでも男は必死でもがいていた。ヒールの先が背中に喰い込んでいる。潰れた蛙のような男の姿が何となく愛しく感じられた。
 私は、ヒョロ男の身体中をナイフで切り刻んだ。身を小さく丸めてその痛みに必死で耐えている。
「頼む! お……お願いだ! い……いや……お願いします! 殺さないで……」
 涙混じりの声が私の耳に届く。
 ――何だ。まだちゃんとしゃべれるんじゃない。
 私はさらに激しくナイフを振り翳した。ヒョロ男の身体の所々から血飛沫が飛び交う。それを見ると、私は異様な性的興奮を覚えるのだった。
 しばらく切り刻んだヒョロ男の服はボロボロになり、その間の至るところから血が溢れてきていた。私は先ほどのデブ男同様、その男のズボンも下ろした。男は恐怖で顔を引き攣らせている。
「さ、始めましょうか。患部の切断。」
 自分の言葉に思わず吹き出してしまう。それとは正反対にヒョロ男の顔はますます蒼白になり、まるで鬼や悪魔を見るような目で私を見つめた。
「せ……切断って……冗談……」
 私は虚をつかれた。この男と会話が成立したのは、これが初めてだったような気がしたからだ。そのことに少し安心し、私は努めて優しい口調で言った。
「あら。ちゃんと会話ができるんじゃない。よかった。」
 ヒョロ男の表情は相変わらず強張ったままだった。不自由な身体を何とか動かしながら、必死で身体をくねらせている。
「は、はい。もう許してくれ……ください。俺は超悪ぃことをあなたにしました。許して。」
 その言葉が再び私の怒りに火を点けた。
 ――許して……。またそれか。一体私があなたの何を? こいつもやはり、単なる馬鹿……

Back | Novel index | Next
「あ……あぁぁ……」
 気付くと気を失っていたヒョロ男が目を大きく見開き、こちらを凝視していた。遠目にも分かるほど、男の膝は激しく震えていた。
「あなたもこうなるのよ。」
 私が冷静にそう告げると、ヒョロ男の身体は弾かれたようにビクッと反応した。「ひぃぃ」という情けない声とともにガクッと膝を折って地面に付ける。男は膝立ちのままブルブルと震えていた。
 潰したデブ男に背を向けると、私はヒョロ男の方へ一歩一歩、歩を進めていった。男は身体を痙攣させながら何かをしきりに呟いていた。
「わ……悪か……悪かったよ。悪ぃ……な……頼むよ。」
 さっきの男といい、この男といい、イマイチ言っている意味がよく分からない。誰に何を謝っているのだろう。その不可解な男の行動が、却って私を苛立たせた。
 私が近付くと、ヒョロ男は頭を抱えて縮こまった。
「それ、何やってるの?」
「悪かったよ。あ、謝るって……ホントに。」
 その瞬間、私の怒りは頂点に達した。どうしてこの男たちは聞いていることに素直に答えることができないのか。
 私は片手でヒョロ男の右腕を捻り上げて手首を掴む。もう片方の手を肘の関節に添える。「ひっ」という男の声が聞こえた。私は躊躇なく肘の関節を強打した。
「があっ……ああああああああっ!」
 断末魔の声が辺りに響き渡る。折れた腕をだらりと垂らしながら、ヒョロ男は肩を押さえて必死で声を上げていた。
「右の頬を打たれたら……」
 相変わらず男は悲鳴を上げている。
「左の頬をも向けなさい……」
 蹲る男を見下ろしながら、私は今度は男の左腕を掴む。
「イエス・キリストの教えよ。少し勉強したら?」
 笑いが込み上げてくる。私がそう言っても、このヒョロ男は聞いてはいない。見かけからしても、学なんてあるようには到底見えない。ただ耳障りな声を一生懸命絞り出しながら、涙を流していた。本当に話の通じない男だ。
「や……やめ……やめええ!」
 私はヒョロ男の左腕も同じようにへし折った。
「ぐひぃっ!……ぎゃあああああああっ!!」
 ヒョロ男は地面に倒れ込み、のた打ち回った。男が転がる度に、未だ止まることのない鼻血が地面を赤く染めていった。

Back | Novel index | Next
「え……あう……」
 残ったデブ男の反応は想像通りだった。
 ――女だから、警戒してなかったのかしら?
 私はくすくすと声を出して笑った。
 デブ男は腰を抜かし、尻を地面につけたまま必死で後ずさった。私はそんな男をじっと見つめながら、じわじわとその距離を詰めていく。
「や……やめろよ。許して……」
 デブ男が声を絞り出す。瞳を潤ませながら命乞いを始める。
 ――許す? 何を。
 私は心で冷笑を浮かべた。私の胸の中がすうっと冷え、無機質な感情が芽生える。私はそれを「殺戮へと導く病」と呼んでいた。
 自制が効かなくなるのだ。この衝動が襲ってきた時、私は自分で自分を抑えることができない。
 私はデブ男に近寄ると、腹を思いきり踏み付けた。絶叫が心地いい。そのまま私は、何度も何度もデブ男の腹を踏み付け続けた。必死で腹を庇おうとする手も、だんだんと痣ができ、血を噴き出し、とうとう機能しなくなった。剥き出しになった無防備な腹を、私はまた何度も踏み付け続けた。
 やがてデブ男は口から吐瀉物を吐き出した。その光景がさらに私を興奮させる。男は既に白目をむき、ぐったりと力なく身体を横たえていた。私は笑いながらデブ男の腹をまた踏み付ける。
「ふふふふふっ……あっはっはっはっは……」
 つい声を漏らしてしまう。踏み付ける度に零れる男の呻き声が、何とも耳に心地よかった。
 グシャッという音とともに、デブ男の身体が一際大きくくの字に折れる。「がぼっ」という声が漏れたかと思うと、男は口から大量の血を吐き出した。男は自ら吐いた血の海に横たわったまま、ピクリとも動かなくなった。
「あらあら。もう寝ちゃうの? 駄目よ。まだまだ楽しませてくれなきゃ。」
 私はデブ男の付けているベルトを外し、下半身を剥き出しにする。粗末なモノが一つ、股の間からだらりと垂れ下がっていた。私はそこにある玉にヒールの底を押し付け、ゆっくりと体重を乗せていった。
「……!……ぐ……がああっ!」
 デブ男が意識を取り戻す。よほど痛いのか、男の声はまさに断末魔の叫びだった。
「……潰してあげる……ぐちゃぐちゃにね。」
 顔面蒼白になったデブ男の表情は、何者にも代え難い愛しさを醸し出していた。強がっていた子がおとなしくなり、指一本分動かす程度の抵抗もできなくなる。飼い馴らされた犬のように、従順で頼りない、可愛い表情を見せるのだ。この瞬間が、私は大好きだった。
「ひ……ひ……ひぃ……」
 私は足を少し上げる。そして、焦点を絞った睾丸に躊躇なく、ヒールの先を思いきり突き刺した。
「が……ぎぃやああああああっ!」
 デブ男は血塗れの顔を振り回し、吐血しながら地面を狂ったようにのた打ち回った。
 血がすうっと冷えていく感覚がする。男を甚振る快感は、既に私の中の大部分を支配していた。
 無力なその男を見下ろしながら、私はその身体を力一杯蹴り飛ばした。男の身体は壁に勢いよく叩きつけられ、ドサリと地面に落ちた。
 男の身体はピクリとも動かなくなった。

Back | Novel index | Next
 男たちは怯えていた。
 ひと気のほとんどない路地裏で仲良く二人で屯している男たちの目的なんて、たかが知れている。
 引ったくり、強盗、麻薬、強姦……。
 正直、彼らの目的が何であるか。そんなこと私には微塵も興味がなかった。
 私が必要としているのはただ一つ。正当性だ。それが合法か違法かなどということではない。
 ――罪悪感を覚えるかどうか。
 ただそれだけが私に必要な正当性だった。
 そんな私にとって、こんなところで屯しているお兄さん方に出会うことができたのは幸運というべきかもしれない。彼らは間違いなく「悪」だ。それが分かれば、後は私の好きなようにできる。
 ただ、ナイフを手にしただけでこれほどまで彼らが怯えるとは想像以上だった。こういう男たちは相手が女だと思うと決まって馬鹿にしてくるものだと思っていたから。
 もしかすると、ちょっと背伸びしたいだけの若者たちなのかもしれない。
「こいつ何やっちゃってんの? まさか犯され志願?」
 デブ男の方が茶化すように啖呵を切る。言いながら足が小刻みに震えているのは何でかしら?
「頭やばくネ? やっべ、俺たち怒っちゃうかも。後悔しちゃうよ。」
 もう片方のヒョロ男もそれに乗じて強がる。しかしその声は震えていた。見た感じでは私と彼らの歳はさほど変わらないだろう。二十代前半ほどだろうか。
 私は思わず「ふふ」と声を漏らす。その反応が気に入らなかったのか、啖呵を切ったデブ男は拳を握りしめた。もう一人も体勢を低くし、身構える。
 ――あ、そろそろ始まりかな。
 身に着けたロングスカートを破り、動きやすい態勢を作る。セミロングの髪は後ろで結び、ブレザーのボタンを胸元まで開く。
 デブ男が奇声を上げたかと思うと、次の瞬間には私に威勢よく殴りかかってきた。
 私は軽く横に身体を流して相手を引きつけると、その勢いを利用して腹に膝蹴りを入れた。
「ぐうえっ!」
 デブ男は、私の膝蹴り一発で呆気なく地面に崩れ落ちた。
 それを見ていたもう一人のヒョロ男は、信じられないといった様子でその光景を見ていた。
 ――それじゃ、ちょっと楽しませてもらおうかな……
 私は蹲っているデブ男の太腿にナイフを突き刺した。男が断末魔の声を上げ、地面をごろごろと転がり出した。太腿から勢いよく噴き出した鮮血が私の身体を洗い流す。
 私は踵を返し、ヒョロ男の方へと走った。突然の出来事に呆然としていたその男は、私が目の前に立った時にはまだ何も反応することができていなかった。
「あ……」
 彼がそう漏らすと同時に、私は男の顔面にハイキックを見舞った。ヒョロ男の身体が空中で回転し、地面に叩きつけられる。その姿が何とも滑稽だった。
 ヒョロ男は鼻血を噴き出し、呆気なく気を失ってしまった。

Back | Novel index | Next
毎度お馴染みとなっていますsuzuroさんイラスト紹介です。
今回は早速、ryonaz最新作「教えてあげる」の彼女を描いてくれました。
いつもご協力いただき、ありがとうございます。
※画像をクリックすると、拡大します。携帯の人はこちら→拡大


● 渚
女子高生シリーズ」より
 suzuroさんコメント…渚ちゃんが責めを心から楽しんでいる様を、表現できてたら嬉しいです。
 ryonazコメント…迫力満点! 躍動感、臨場感の溢れる膝蹴り描写が素晴らしいですね。

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。

Back | CG index | Next
某掲示板に掲載させていただいた作品です。
そちらでお読みになった方にとっては、退屈だったかもしれません。ごめんなさい。
せっかく書いた小説だったので、こちらにも掲載したいと思いました。
お読みいただいた方々に、あらためて感謝いたします。

リクエスト投票へご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。
12/10の0:00をもって受付〆切とさせていただきます。
残り数日ですが、お付き合いの程、よろしくお願いいたします。
(※12/10現在:リクエスト投票の受付を締め切りました。投票結果はこちら

最近、作者ryonazの体調があまり芳しくありません。
不調時は筆が進まないこともしばしば。ご迷惑をおかけします。

寒くなってまいりました。今年は、早くもインフルエンザが全国的に流行しているそうですね。
皆様もお身体には十分お気をつけて。ご自愛ください。
今後とも、Black Onyx [ブラックオニキス]をどうぞよろしくお願いいたします。

●渚のキャラ絵 →  


[ 初出 ]
女がリンチや暴力で男を従わせる小説2(dat落ち)
(※作品は、初期の投稿から一部改訂しています。)

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
 気付くと僕は全裸でソファに横たわっていた。
 自分の置かれていたさっきまでの状況を思い出し、ビクッと身体を震わせる。そっと机の方を見ると、渚ちゃんは教科書を片手に熱心に勉強していた。
 僕は慌てて身体を起こすと、股間を隠した。
「あ……あの……」
 彼女に声をかける。
「あ、気付いたんだ。頑張ってるよ。」
 先ほどまでのことがまるで嘘であるかのように、彼女は必死で学習を進めていた。
「あの……服、着てもいいですか?」
 恐る恐る尋ねる。彼女の動きが一瞬止まるのが分かった。
「先生……」
 背筋に冷たいものが上ってくる感覚が僕を襲う。彼女が何を考えているのか、僕には全く想像がつかなかった。
「先生。」
 再び呼ばれる。僕は上擦った声で「はい」と返事をすると、彼女の言葉を待った。彼女はゆっくりと振り返ると、透明な密封袋を僕に見せた。
「これ、何だか分かるよね? 先生。」
 小さな四角い袋の中に、とろりとした液体が入っていた。
「まさか……」
「逝くとこ、可愛かったよ。」
 僕は言葉を発することができなかった。羞恥心や罪悪感が僕を苛む。
「こんなに真っ白なんだね。あ、でもだんだん透明になってきたような……」
 僕は自尊心を破壊され、目の前が真っ暗になった。

「これからもたくさん教えてよね、先生。」

 何故こんなことになってしまったのか。
 ここまでされて、それでも何故彼女に魅かれるのか。

 その理由を本当は知っている。
 だが僕は、それに気付かないふりをして、ただ項垂れた。



END

Back | Novel index | Next
「言っとくけど先生。部屋汚さないでよね。」
 彼女はそう言い捨てると、僕を嘲笑った。蹲った僕の身体を、容赦なくグリグリと踏み躙る。
 僕には既に抵抗する気力はなくなっていた。
 彼女はそんな僕の様子を見て取ると、僕の顔を蹴り始めた。彼女の足から顔に加えられる力の方向へ、僕の身体が無抵抗に弾き飛ばされる。何度も何度も襲い来る彼女の蹴りの嵐に、とうとう僕はぐったりと仰向けで倒れ込んでしまった。
 鼻血が溢れ、フローリングの床に零れる。
「あぁ、汚しちゃったね。お仕置きかな。」
 彼女は僕に、さらに冷たい言葉を浴びせた。
 お仕置きという言葉に、僕は大きく反応する。
「お……お願いします。本当に、許してください。」
 彼女にとって僕の反応は、ただ面白いものというだけのものなのだろう。くすくすと笑い声を上げながら彼女は床に座り込んだ。
「や……ごめ……ぐ……」
 僕の声は届きそうになかった。当然のように彼女は、太腿の間に僕の顔を挟み込んだ。首四の字の体勢になる。柔らかい彼女の太腿が僕の呼吸を奪う。彼女が太腿に力を入れると僕の呼吸器官がさらに圧迫され、全く息ができない。
 自分の顔がどんどん赤くなっていくのを感じる。苦しくてたまらない。
「ぅ……ぅ……」
 喉から絞り出す声は声にはならなかった。だんだんと気が遠くなっていくのを感じる。気を失いかけたところで、彼女は太腿の力を緩める。
「ぐ……がはっ! ごほっ、ごほっ……」
 喉に痞えていたものを吐き出すかのように、僕は激しく咳き込んだ。再び彼女が太腿に力を込める。僕にはもう為す術がない。彼女にされるがままに、身を委ねるしかないのだ。
「先生。気失っちゃダメだって。顔真っ赤だよ。」
 彼女は「あはは」と笑いながらまた首を強く絞め上げる。
 繰り返される首絞めの苦しみは、まさに地獄だった。抵抗することも、逃げることもできないまま、僕は彼女の責めを受け続けた。
 僕はとうとう口から泡を吹いて、気を失った。

Back | Novel index | Next
 間髪入れずに、さっきよりも強い口調で僕を責め立てる。
「どうして服着てるの?」
 バシッという音が部屋に響く。平手で打たれ、僕はたまらず倒れ込む。頬がじわじわと熱くなっていくのを感じた。
「ちゃんと脱いで待ってなさいって、いつも言ってるよね?」
 彼女は制服のネクタイを少しだけ緩めながら、僕をきつく問い質した。
「でも、もしも渚ちゃんのお母さんが部屋に入ってきたら……」
「そんなの私に関係ないし。」
 彼女はそう冷たく言い放った。
「うぅ……」
「うぅ、じゃないよ。本当に分かってないね、先生。」
 部屋に置かれていた座布団が僕の顔に投げつけられる。彼女はまたゆっくりと僕に迫ると、再び右手を振り上げた。
「あと何回されたい?」
「ご……ごめんなさい、渚ちゃ……、渚様。」
 僕は急いで服を脱ぎ始めた。彼女はそんな僕の姿を見て満足そうに笑みを浮かべると、僕の身体を悪戯混じりに蹴った。
 僕が服を脱ぎ終わると、彼女はいつものように机の引き出しから首輪を取り出した。



「ぐうっ……ううっ……ぐえっ!」
 彼女は僕を拘束しながら、僕の腹に膝蹴りを何度も入れた。首輪を掴む彼女のか細い手。しかし、その力はとても強い。
 僕は倒れ込むことすら許されない。ただ胃の中を掻き回されるような感触に身を委ね、苦悶する。彼女の膝蹴りは僕の内臓を悉く抉り、その度に僕は呻き声を上げる。口の端からは、胃液が糸を引くように零れてきていた。
 彼女が首輪を放すと、僕は呆気なく膝から崩れ落ちた。
「うええっ……げえっ……」
 胃から吐瀉物が込み上げてくるのが分かる。酸っぱいものが今にも口の中まで上ってこようとする。跪いたまま、僕はその苦しみに必死で堪えた。

Back | Novel index | Next
 フローリングの床が足の甲を刺激して辛かった。
 もうどれくらいの時間こうやって正座しているのか、自分には分からなかった。彼女を待つのは初めてではないが、この時間の緊張はいつも解けることはない。刻一刻と彼女の帰宅時間が迫っていると思うと、僕は自然と全身に脂汗が溜まっていくのを感じる。
 僕はおもむろに、鞄から教科書を取り出す。
 ――今日教える内容は、数学と物理……
 家庭教師としての自分の仕事のことを考えると、少しだけ心は落ち着いた。しかし自分が設定したそのカリキュラムが果たして実行可能であるかどうかは、僕には分からなかった。
 なぜならそれは……彼女自身が決めることだからだ。
 教科書をじっと見つめながら教授内容を頭の中でイメージしている間は、余計なことを考えなくて済む。限界まで痺れた足のことだって、忘れることができた。
 その時、部屋の空気が一気に張り詰めた。
 トントンという音とともに、人が階段を上ってくる音が聞こえてくる。
 僕は再度、背筋を伸ばしてドアの方へ視線を向ける。目の前にある扉が開くまでの時間が、やたら長く感じた。バタンという音がして、人が入ってきた。想像に違わず、それは僕が家庭教師をしている教え子だった。
 可愛らしい顔立ちに栗色の髪。良い香りが部屋中に広がる。セーラー服を着こなした彼女は、一見、清純で無垢な感じのする女の子だ。胸は発達していて大きい。そのイメージのアンバランスさが、彼女の魅力をより引き立てているようだった。
 僕は彼女の方を向いて「おかえりなさい」と声をかけた。しかし緊張のあまり、その声は上擦ってしまっていた。恥ずかしさから僕は顔を赤らめる。彼女は僕の姿を見ると、全身からふっと力を抜いてリラックスしたようだった。そして、冷たい視線を僕に投げかけた。
「……どうして土下座してないの?」
 彼女は開口一番、そう僕を叱責した。
 ゆっくりと僕に近付き、僕の髪をぐいと掴んだ。額を床に押し付けられる。
「ぐあっ……」
 急な痛みに、僕は思わず声を上げる。彼女は髪を掴んだまま再び僕の顔を持ち上げると、厳しい瞳で僕の目を覗き込んだ。

Back | Novel index | Next
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。