Black Onyx [ブラックオニキス];2007/ 06の記事一覧

ここでは、Black Onyx [ブラックオニキス]での 2007年 06月 に掲載した記事を表示しています。
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 無様な俺の姿を見ながら、彼女は可笑しそうに笑っていた。
 ある程度の時間が過ぎると――と言っても俺にとっては随分と長い時間であったが――彼女はその足の裏を俺の陰部から離した。我慢しきったという多少の満足感と、逝かせてもらえない欲求不満とが俺の中で交錯する。
 しかし、彼女の責めはここで終わりではなかった。
 俺と反対方向に頭を向ける形で彼女が仰向けに寝そべる。ちょうど目線の高さが俺と同じになった。学生服のミニスカートから覗くものが目に入り、さらに俺の興奮が高まる。彼女は俺の両足首をしっかりと握ったまま、今度は剥き出しになった俺のモノを両足で扱き始めた。上下に擦られる快楽は何ものにも例え難かった。
「こ…こんなことがばれたら…」
 俺は急に周りが気になり、教室内をキョロキョロと見回した。もちろんここには二人以外誰もいない。人が入ってくる気配も、近付いてくる様子も全くない。
 ただ異様な静寂だけが、この空間を包み込んでいるようだった。

「よく頑張ったね。じゃあ次はねー。」
 そろそろこの異様な世界からは解放されるだろう、などといった俺の考えが甘かった。
 今度は身体が重なり合うような形で俺の上に被さり、掌で俺のモノをそっと握った。
「お…おい…まさか…」
 彼女の顔が近い。既に吐息を感じられるほどの距離だ。それだけでも抑えきれない興奮と欲求が俺の中で渦巻くというのに。その上こんなことをされては…
 さすがに俺にはもう耐えきれる自信がなかった。下半身が悲鳴を上げているようだ。しかし彼女はそんな俺の思いなどおかまいなしに、その手を動かし始めた。
 ゆっくり…ゆっくり…俺のモノが扱かれていく。俺にはその愉悦に浸る余裕はなく、ただ与えられる快楽と闘わねばならなかった。
「う…うううぅ…」
 彼女は俺のモノを握ったまま身体を器用に反転させた。俺の陰部に唇をあてがい、舌先で亀頭を弄ぶ。その感触は俺をさらに絶頂へと導く。もう我慢はとっくに限界を超えていた。
 ――憧れの彩香の手先が…唇が…俺を…
 俺は既に狂ったようにその感触に身を委ねていた。我慢汁が俺の亀頭から漏れる。
 ――もう、このまま逝ってしまいたい。
 しかし彼女はそれを決して許してはくれなかった。
「はい、寸止め。逝きたいの?…私と付き合わなくてもいいんだね。」
 寂しそうな彼女の声に俺は我に返る。
 ――絶対に彼女を俺のものにするんだ。こんな可愛い女、めったに出会うことはできない。
 その心を見透かしたように彼女はまたも不敵な笑みを俺に向け、ふふっと笑う。
 ――きっと俺は彼女に弄ばれているんだ。心も…身体も…
 でもそんなことは、今の俺にとってはどうでもいいことだった。絶対に彼女を手にする。それだけを心に固く誓っていた。

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 俺たちは教育相談室に移動した。普段はめったに人の出入りがない空き教室だ。俺は勇気を振り絞る。
「好きです。つ…付き合ってください。」
 自分の口をついて出たド直球でベタな言葉に驚く。何度もシミュレーションしてきたこの二週間は何だったのかと自責の念を強くする。しかし、彩香はそれに対しては別段びっくりした様子も見せなければ、馬鹿にした反応も示さなかった。
「ふふ。やっぱりね。私のこと、気に入ってくれたんだ。ありがと。」
 悪戯混じりに彼女は俺にそう言った。俺はその後の言葉を失ってしまった。彩香はそんな俺に冷酷な笑みを向ける。その瞳に、俺は何故か背筋が凍るような感覚を覚えた。
「じゃあ、ちょっとだけ付き合ってもらっちゃおっかな。」
「な…何を?」
「私がこれからすることに耐えられたら付き合ってあげる。」
 彼女はおもむろに俺を仰向けに寝かせると両足を持った。大きく開かれた俺の股間に、ルーズソックスを履いた彼女の足の裏が密着する。
「うっ…」
 俺はそのあまりの突拍子もない行為に一瞬怯んだ。しかし彼女の足の裏が今まさに俺の陰部に押し当てられていると思うと、俺は激しく欲情し、すぐにでも昇天してしまいそうだった。
 彼女はそんな俺の表情を嬉しそうに眺めると、俺の竿を足先で弄び始めた。
「うぐ…あ…あぁ…」
 彼女は俺の雄に心地よい愉悦を与える。ゆっくりと擦るように、時には押し込むように刺激する。
 あまりの気持ちよさに俺は一瞬我を忘れ、その快感に身を委ねた。
 少しずつ振動を激しくされ、俺は絶頂を迎えた。そしてそのまま射精してしまった。
 ズボンで隠されたトランクスにねっとりとしたものがこびりつく感触が気持ち悪かった。
 彼女は意味深な笑みを俺に向けると俺のズボンを勢いよく下げ、俺の中から噴出された白い液体を確認した。あまりの恥ずかしさに俺は赤面する。
「な…何を…」
 彼女は俺の目をじっと見つめながら悪戯っぽい表情を浮かべる。
「誰が逝っていいって言ったの?これはお仕置きだなー。」
 そう言うと彼女は突然、足の甲で俺の無防備な股間を蹴り上げた。
「ぐああああああ!!」
 痛みのあまり、俺は叫んだ。目から涙が溢れてくる。
「たっぷりと苛めてあげるからね。ちゃんと耐えなきゃ付き合ってあげないよ。」
「そ…そんな…」
 再び彼女の足の裏が俺の股間を刺激する。さわさわと弄る彼女の不器用な足が愛おしい。
 俺は必死になって耐えた。先ほど昇天したばかりであるにもかかわらず、俺のモノはまたも最大限に膨れ上がっていたのだ。
「あはは。溜まってるのかな。またこんなにしちゃって。恥ずかしい。」
 彼女の辱めの言葉が胸に突き刺さる。俺は自分の雄と闘うように、我慢を続けた。

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 彩香のクラスの男子は、何故か昼食を終えるとすぐに教室を出て行ってしまう。
 そのことを知っていた俺は、昼休みが来るのをチャンスと考えていたのだ。そして、とうとうその昼休みの時間がやってきてしまった。
 こうなったら…当たって砕けろだ!
 俺は意を決し、いつも通り男子がほとんど出て行った彩香のクラスに入った。

 一人の男子を取り囲んでなにやら話をしている女子たちの姿がまず目に入った。
 その男は俺が教室に入ったのを機に、女子たちを突き飛ばすような勢いでこちらに向かってきたかと思うと、飛び出すように教室を出て行ってしまった。
 女子たちはその状況の中、ニヤニヤした顔つきでその男を目線で追っていた。
「今度遊ぼうねー。」
「ちゃんと覚えておくんだよー。」
 その異様な光景に俺はしばし言葉を失う。ここで一体何が行われていたんだろう。
 少し気になったが、俺にはそんなことを気にしている余裕はなかった。
 …それにしても変なやつだったな。トイレでも我慢してたんだろうか。
 俺はそのこともさほど気にせず、ぐるりと彩香を探す。

 …いた!…

 女子集団から少し離れたところでその様子をじっと見つめている。間違いない。
 俺は息を呑んで彩香に近付いていった。他の女子が騒然となる。
「何あの人?彩香に何の用事だろ。」
「ねぇねぇ、今日の獲物、あいつにしない?ちょっとかっこいいじゃん。」
「それいいね。面白そう。」
 緊張のあまり、言葉の意味は頭に入ってこなかった。ただじっと彩香だけを見つめて俺は歩を進めた。
「あ…あの…」
 フレグランスの良い香りが俺を魅了する。恥ずかしさでつい彼女から目を逸らしてしまう。
 彩香はそんな俺の様子を見て朗らかな笑みを浮かべた。そして、まるで俺が言おうとしていることを悟ったかのように周りに注意を払った。
「他の場所に行こっか。」
 彼女の冷静で思いやりの溢れる対応にどれだけ救われただろう。
 この時の俺は彼女の真意も知らず、そんなことを心の中で考えた。
 俺の彼女への思いはより強まっていた。

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 気が付くと俺はまた階段の踊り場にいた。
 目の前の階段を上るとすぐに教室が見えることが分かっているのだ。だからこそ、俺はその足をなかなか前向きに動かすことができなかった。
 そしてまた、意味もなく階段を上ったり下りたりしている。
 決心はとっくにつけてきたはずだ。今日こそは、絶対に告白してやる。
 その気持ちは俺を突き上げると同時に、これ以上ないほどのプレッシャーを俺にかけ続ける。


 二週間ほど前の夕方、楽しそうに友達と下校する彼女を見たことが、事の始まりだった。
 彼女のことがどうしても忘れられなかった。俺は友達を介して彼女のことを聞きまくり、ついに隣のクラスの子であるということまで突き止めたのだ。
 名前は安藤彩香。抜群のプロポーションに、見るものを魅了するストレートロングのしなやかな髪。
 一目惚れなんて言ったらあまりに古臭いと笑われるだろうか。
 いや、ここは的確な言葉を生み出した日本の文化に敬意を表するべきだろう。
 そういえば、「恋は盲目」なんて言葉もあったな。「行動あるのみ」…うまいこと言う人間がいるもんだ。でも…「触らぬ神に崇りなし」とも言うからな…
 彩香はぱっと見は明るく清純で、全身から華やかなオーラを漂わせるとても魅力的な女の子だ。
 言い寄る男子も多いことだろう。俺なんかが告白したところで、笑われるだけなんじゃなかろうか。
 今のまま、彼女を見ているだけでも俺は幸せなんじゃないだろうか。
 そう言えば、あんなに美麗な外見であるにもかかわらず、友達から彼女の良い評判というのはあまり聞かなかったな。
 大方、彼女に告白して撃沈した男共が嫉妬して悪い噂でも流してるんだろう。
 俺なんかにとっては、彼女は雲の上の存在なんだろうな。どうせ俺なんか…
 無意識に自分が今起こすべき行動から逃げ腰になる。このまま自分の教室に戻ってしまおうか…
 消極的な考えが後から後から俺の中に巻き起こる。
 これまで何度となく今日の日のことをシミュレーションしてきたはずだ。しかし、いざとなるとやはり腰が引けてしまう。
 このまま時間が止まってしまえばいいのに…。
 別に今日でなくても…。また明日になったら何かが変わるかもしれない。いや…でも…

 しかし時は決して俺を待ってはくれなかった。そんな俺の迷いをあざ笑うかのように、昼休みの始まりを告げるチャイムは校内に高々と鳴り響くのだった。

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加虐性欲とはいかなるものなのか。
筆者はそれを捉えようと、こっそり苦悩していたりするのですが。
その心情は奥深く、計り知れないものがありますね。M男性の被虐願望もまた然り。
でもSMって、やっぱり相互の信頼関係と愛情抜きには成立し得ない気がします。
むき出しの魂を互いに擦り合わせてこそ、出来上がるものなんじゃないかなぁ……などと思うのです。
(そのくせ、一方的な虐待ものを多数書いているような、矛盾した作者なのですが・笑)


更新の件についてのご意見をくださった方々、本当にありがとうございました。
参考になるとともに、毎日見てくださっている方もいたんだなと、とても感動しました。
しかし、ただでさえ作品数が多い中、次々とUPされていくと追いつけなくなる方も確実にいらっしゃると思います。
いろいろと考えたのですが、試しに一度更新を緩めてみようと思います。
その反応如何で、今後の更新スピードを調節していきます。
基本的に作品中は毎日更新して、最終話をUPした後、次の作品発表までに数日空けるような形とか……
まだ方針が定まっておらず、あくまでテストですので、また形を変えるかもしれません。
それこそ、また毎日更新に戻すかもしれないですし。
正直どのような形が理想なのか、私自身に迷いがあるので。
今後も読者の方々のお声をお待ちしています。いつでもお気軽に書き込みください。よろしくお願いいたします。

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 興奮と欲情が心の中で渦巻く。

 私がじっと見つめると、奴隷は目を泳がせながら小刻みに震えていた。
 少しの空気の動きすら感じられるほど、身体中の神経は敏感になっている。
 緊迫感が部屋中を包み込み、お互いの心はそれぞれ剥き出しのままそこにあった。

 お前にそっと触れた時、その肌からお前の全てが伝わってくる感じがする。
 私はその瞬間、身体中の血がすうっと冷めていくような、でも腹の底から血が煮え滾ってくるような、不思議な感覚に襲われる。
 お前のその目が、表情が、肉体が、魂が…私をさらなる高みへと昇らせようとしている。
 そこには確かに、二人のもつアイデンティティのぶつかり合いと擦り合わせが存在する。
 それは私が、お前が、確かにここにあるということの証明と言い換えられるだろうか。
 もともとは恋人同士だった私たちも、今はもうお互いに完全なる主従関係を求めている。

 お前の首をじわじわと絞めていく。身体のいたる所に噛み付く、鞭を振るう。殴る、蹴る、引っ掻く。
 その全ての凌辱をお前が受け止める時、私もまた与えると同時にお前からその感覚を享受する。
 それは魂のぶつかり合いと言えるのだろうか。私には分からない。
 ただ、今はこの時間と空間の中で、お前を蹂躙することが私の望み。
 お前はそれに耐えることができるかしら。今日は泣き言は許さないつもりだから。

 痛みから、苦しみから、そして快楽から…お前は叫び、興奮し、男を強調してくる。
 顔を歪め、悦楽に浸る低い呻き声は私の心の芯の部分を刺激する。
 私はその姿にさらなる興奮を覚え、お前をもっともっと高い所に連れて行きたくなる。
 そして…
 お前を壊してしまいそうな感覚に私は少し怯える。
 それは歪んだ性癖の合致による、愛情表現の変形物。
 お互いを包むものは何もなく、裸の心で刺激し合う。理性やモラルはとっくに溶け出しているのだ。

 お前は身体を小さく縮め、恐怖から身体をさらに震わせる。そんなお前の姿が私をますます高揚させる。私は奴隷としてのお前をさらに激しく甚振る。
 私がお前を犯し始めると、お前は絶頂に達する。痙攣しながら勢いよく噴出し、果てる。それを見ながら私は愉悦に浸る。
 その興奮は、例え歪んでいても愛情表現であることには変わりはない。

 これからも手放したりしないから、安心してついてきなさい。



END

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またまた構成に苦労しました。
主人公の心情を追っていくのに精一杯で、なかなか物語として形になりませんでした。
こうやって一つの作品として仕上げることができて、ほっと一安心といったところです。
実を言うと、正直もう少し趣向を凝らしたかった部分もあったのですが……
今後の作品に委ねることにしました。ごめんなさい。
これからも登場人物と一緒に歩んでいこうと思います。


話は変わりますが、実は更新ペースについてかなり迷っています。
本サイトは開始時より、ほぼ毎日更新を続けてきました。
ですが、更新が早すぎると逆に読みづらいのではないか、という懸念が生まれてきました。
せっかく興味をもってくださった方が、読むのに疲れるようでは本末転倒ですので。
少しペースを落とした方がいいのでしょうか?
二、三日に一度とか、一週間に一度くらいがちょうどいいでしょうか?
ぜひ皆様のお声をお聞かせください。ご意見をお待ちしております。

ランキングクリックやアンケート(※現在停止)、拍手などたくさんのご協力、いつもありがとうございます。
読者の方々に、本当に楽しんでいただけるようなサイトを志していきたいものです。

●夢の女のキャラ絵 →

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 またいつものように、忙しい朝の時間がやってきた。
 俺は下の始末もそこそこにリビングに入る。珍しく今日は親父が俺よりも先に起きてテーブルの席についていた。
「実は、お前に紹介したい人がいるんだ。大事な話だから、今日は早く帰ってくれ。」
 俺にはピンとくるものがあった。きっとあの時の女性だ。大事な話…もしや親父もとうとう再婚するのか。
 俺は心の中で微笑した。親父にもようやく華の季節到来か。
 やはり我ながらいい息子だ。俺は自分のことのようにその告白を嬉しく思っていた。
「分かったよ。なるべく早く帰るようにする。」それに…
 …早く眠ってまたあの女性に会いたいからね…
 親父への祝福の気持ち。それはもしかしたら俺自身にも女神が見つかった余裕から起こったものなのかもしれないが。
 俺はいつになく清々しい気分で家を出た。


 大学から急いで帰った俺は、玄関先に女性物の靴が置かれていることを確認した。
 …もう来ているのか。
 俺は少々緊張しながらも、好奇心から心はわくわくしていた。
 どんな人だろうか。落ち着いていて優しい人だといいな。
 胸を高鳴らせながら玄関先でリビングの様子を窺う。二人が談笑する声が聞こえる。
 綺麗な声だ。
 とっさに俺はそう感じた。親父の奴、あんな顔して案外美人を捕まえたのかもしれない。
 俺は俄かに緊張してきた。どう挨拶していいか分からず、玄関でまごついていると、親父がリビングから顔を出した。
「おう、おかえり。こっち来いよ。」
「あ…うん。行くよ。」
 そうは言うものの、俺の足はうまく動かなかった。
「どうした、緊張してんのか?」
「…まぁね。だって、その人と再婚するつもりなんだろ?」
「あ、いや、なんだその…」
「いいって。照れんなよ。反対するつもりはないしさ。」
 俺の言葉に、親父は心底ほっとしたような表情を浮かべた。
「まぁ、とにかく会ってやってくれ。」
 親父に背中を叩かれ、俺はリビングへと足を運んだ。
 テレビの近くのソファーに、一人の女性が座っていた。部屋に入っていくと、彼女はすぐ立ち上がって俺に会釈をした。
「彼女とは年が離れてるが、職場で意気投合してな…」
 そんな親父の言葉は、俺の耳には届かなかった。無意識に下半身が反応する。

 彼女が身に纏った、上品な白いワンピース。美しい黒髪と、そしてその意志の強そうな――



END

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 夢の中で再び彼女は俺の目の前に現れた。
 付けられていた目隠しを外されたその時に俺の目に映ったのは、彼女が握りしめたノコギリであった。
 白いワンピースとノコギリという組み合わせが、とても不似合いに見えた。
「や…やめ…やめてくれ…」
 口をついて出た言葉に違和感を覚える。自分の中のもう一人の自分が俺に語りかける。
 …本当に?…
 俺は困惑した。恐ろしい凶器を目の前に俺は…何かを期待している?
 …痛み?…それとも…快楽?…
 彼女はいつものように可笑しそうにくすくすと笑いながら、手に持ったノコギリを俺の陰部に当てる。そしてゆっくりと前後に動かした。ギリギリという鈍い音が響く。
「ぐああああああっ!!ぎぃやああああああ!!」
 少し錆び付いたノコギリが肉体に与える痛みは尋常ではない。しかし、俺の下半身は何故か最大限に勃起していた。
 彼女が手を動かす度に俺の肉は少しずつ、少しずつ裂けていった。どす黒い血が俺の股を伝って落ちる。
 俺は絶叫した。襲い来る痛みに歯を食いしばりながら、俺は彼女を見上げた。
 彼女は相変わらずの美しい笑顔を俺に向けたまま、その手を動かし続ける。
 ふいに…彼女が無表情になる。その表情からは何も読み取れない。
「ひぃ!!」
 俺は恐怖を感じ、情けない声を上げた。
 瞬間的に彼女は力を強め、思いきりノコギリを手前に引いた。
 俺の陰部の皮膚が見事に大きく裂ける。しかし、それでもなお俺のモノは勃起するのをやめなかった。
 血管が裂かれ、血液がそこから大量に血飛沫となって噴射される。
「うっがああああああ!!!」
 この上ない叫び声を上げるとともに、俺は亀頭から勢いよく精子を噴出した。
 この世のものとは思えないほどの痛みの中で射精した自分を、俺はもはや不思議には思わなかった。


 目覚めた時に真っ先に俺の目に映ったものは、部屋にある掛け時計だった。針は午前五時を指していた。
 ゆっくりと自分の股間に手を当てる。もちろん皮膚の皮はしっかりとつながっていた。
 ただ、思ったとおり俺はまた夢精をしていた。
 俺は確信した。彼女が俺の女神であるということを。そして、俺が最大限の恐怖と痛みを快楽と感じる身体になっていることを。
 彼女の冷酷さ、加えてその妖艶な姿に幻惑された俺は、すでに彼女の虜になっていたのだ。
 俺の下半身はやはりまだ勃起したままだった。夢の中の興奮がまだ冷め遣らない。
 再びベッドの中に潜り込んだ俺はさっき見た夢を思い出しながら、一人でまた自慰行為をするのだった。

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 目覚めると身体中が痛かった。
 例のあの夢のせいだろうか。それとも単に絨毯の上なんかで眠ったからか?
 俺にその答えが分かるはずはなかった。ただ彼女から夢の中で与えられた数々の傷の跡は、当然の如く現実の俺には全く残っていなかった。
 気付くと俺は夢精していた。トイレにかけこみ、下の後始末をする。
 俺の身体は…どうかしてしまったのだろうか…。いや…
 さっき見た夢を思い出す。痛みと快楽の連続で苦痛を与えられた恐ろしい夢。
 今回は何度も逝かされるという拷問も追加されていたんだ。例え異常な状況下ではあっても、俺は夢の中で執拗に射精させられた。夢精なんてしても不思議じゃない。
 俺はそう自分を納得させた。確かにあれはあれで恐ろしい夢であったはずだ。しかし決してそれが夢精するほどの快感だったとは思えなかった。…いや …思いたくなかった。
 自分に言い聞かせ、そう思い込むことで、俺は未だに大きく膨れ上がったままの自分の下半身に言い訳をしていた。


 再び俺は日常の生活に戻った。
 忙しい朝を乗り越え、大学で講義を受け、帰宅する。遊びに出かける日もあれば、部屋でぼうっと過ごすこともある。
 平和な時間。俺はこの安穏とした毎日が好きだった。しかし…
 俺はあの日から、確かに心の中に何か物足りなさを感じるようになっていた。あの女のことがますます忘れられなくなっていたのだ。
 美麗な肢体と美貌。男を虜にする仕草や笑顔。魅惑的な瞳。
 全てが鮮やかに俺の頭に焼き付いて離れなかった。俺は確かに、そのことにこの上ないもどかしさを感じていた。
 …俺は…彼女に魅かれているのだろうか…
 即否定する。俺は認めたくなかった。
 彼女を求めることの意味は。あれほどまでに残酷な女を求めることの意味は。
 そう考えると俺の頭は張り裂けそうな痛みに襲われる。胸が苦しくなり、どうしようもなくなる。
 彼女に会いたくて眠る。そんなこと俺にとってはあってはならないことであった。
 …あんな非情で残酷な女…
 俺は何かを期待している自分から目を逸らし続けた。
 快楽も痛みも、俺には必要ない。そう自分に言い聞かせることで、何とか心の平静を保つことができた。

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 射精後も俺の下半身は大きく膨れ上がったままだった。彼女はさらに陰部への刺激を続け、同時に身体を引っ掻く力を強める。彼女の爪が皮膚を抉り、傷跡から血が滲んでくる。
「ぐああああ!!」
 その痛みは想像を絶していた。しかし女は手を休めることなく俺の皮膚を次々と引きちぎっていった。
 俺はまたも思いきり射精した。
「あぁ…あ…」
 繰り返される苦痛と快楽。俺はいつの間にか、引っ掻かれる痛みの中での陰部の愉悦に浸っていた。
 三度目の射精をした。それでも彼女の行為は続く。
 彼女の爪は俺の身体にいくつもの傷跡を残していった。血を流した傷はやがて腫れ、身体中が赤く染まっていく。
 時間を追うごとに痛みは大きくなり、体全体を襲う。何度も逝かされることが、快楽を苦痛に変える。
 痛い…苦しい…でも…
 俺は確かにそこに何かを感じつつあった。それが何であるのか、その時の俺には全く分からなかった。
 ただ彼女に為されるがままに…無抵抗のままに…。
 俺はその行為をただただ受け入れていた。

 彼女の引っ掻きとフェラチオは延々と続いた。
 与えられ続ける痛みと快楽は、俺にこの上ない苦痛を与える。
 …もう…頭がおかしくなってしまいそうだ…。
 『腑抜けのように、ただただ与えられるものを受け入れる人形。』
 俺はこの時の自分をそんな風に思っていた。
 抵抗はできないんだ。抵抗は…できない?…できない?…本当に?
 ある種の疑問が俺の脳裏を過る。
 俺は…抵抗できないんじゃなくて…自ら?…
「うわあああああ!!」
 俺は混乱した。そんなことあるわけがないと思った。
 ベッドに縛り付けられ、俺は身動きが取れない。抵抗は…できないんだ。
 そんな俺の心を見透かしたかのように、彼女はまたも俺に笑顔を向けた。
 ふいに、彼女は俺を縛っていたロープを解いた。まるで…俺に自由を与えるかのように…

 俺が俺でなくなっていくような感覚。それはこんなにも簡単に、即座に訪れる。
 自由の身になった俺はベッドの上で…そのままの姿で…彼女の与える痛みと快楽を受け続けた。
 縛るものは既に何もない。しかし俺は…確かに自分の意志で…そのままの姿でそこにいた。
 身体中を引っ掻かれながら、俺はなおも彼女の口内に射精した。

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 身動きが取れなかった。
 気付くとベッドの上に寝かされている。見たこともない部屋だ。
 またこの夢か…。
 俺はそろそろこの夢を見ることに慣れてきていた。…というより諦めていたと言った方が正しいだろう。
 広い優雅な空間に置かれているただ一つのベッド。
 木漏れ日が差し込み、部屋全体を眩しく輝かせている。
 俺はロープのようなもので身体をベッドに括りつけられていた。俺の目の前で俺を見下ろしているのは、例のあの女だった。
 再びこの夢とこの女への恐怖心が俺のもとに降り立つ。
 …今日は一体…何をされるんだろう。
 彼女は相変わらず朗らかな笑顔のままで、じっと俺を見つめていた。
 不安が募る。これまでこの女に受けてきた拷問の数々を思い出し、俺は身震いする。
「うぅ…」
 ふいに彼女が俺に顔を近づける。見れば見るほど美しい女だ。それなのに…彼女はどうしてこんな…
 そもそも夢に道理を求めること自体おかしな話なのだろう。
 しかし、あまりに何度も見るこのリアルな夢は、俺に何かの理由を探させようとしているように思えてならなかった。
 彼女はしばらく俺の目をじっと見つめた後、その視線を俺の下半身へ向けた。気付けば俺はそこで生まれたままの姿を曝け出していた。
 陰部を丸出しにしていることへの羞恥心は夢の中でも健在だった。
 彼女は俺の身体に自分の身体を摺り寄せた。片方の指先で俺の身体の線をなぞりながら、反対の手で俺の陰部を優しく撫でる。
「あ…」
 身体が敏感に反応する。そのまま彼女は顔を俺の下半身へと移し、俺のモノを咥えて首を上下にゆっくりと動かし始めた。与えられる愉悦に俺は別の意味で、無抵抗を余儀なくされる。
 彼女が身体に触れる度、俺は身を捩って悶えた。
 彼女の舌が俺の陰部のいたる所を刺激する度、俺はその快楽に陶酔した。
「あ…うぅ…あっ…」
 下半身を伝う舌の動きが活発になる。身体を伝う指先の皮膚がやがて爪へと変わる。
 俺はこの時、快楽と痛みを同時に味わった。
 身体中を引っ掻く爪からの痛み。その反面で快感を増していく下半身。
 痛みに耐えながら、陰部に与えられる快楽に身を委ねながら、俺は三分もしないうちに、彼女の口内に思いきり射精してしまった。

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 街を出た俺は、その足ですぐに自宅へと帰ってきた。
 気付くと親父の靴にそろえて女物の靴が玄関先に置かれている。
 リビングからは親父と女の人の楽しそうな会話が聞こえてくる。
 …へぇ…あの親父にそんな甲斐性がまだあったなんて。
 俺は好奇心からしばらく耳をそばだてていた。
 こりゃ、タイミングが悪かったかな。親父の口説き文句っていうのはこんなにも胸の痒いものか。
 俺は心の中で苦笑するとともに、正直少し感心していた。
 全く精気が失せたと思っていた親父に恋人がいたということを、俺は自分のことのように喜んでいた。
 我ながらいい息子だな。自嘲する。
 俺は二人に気付かれないように、そっと自分の部屋へと足を運んだ。

 …それにしても…
 俺は考え込んだ。この現象はもはや偶然とは言い難い。だからと言って…じゃあ何なのだろう。
 あれは幻なんだろうか。いや、俺の中にある一つの願望か?まさか…何か悪い霊にでもとり憑かれて?
 …馬鹿馬鹿しい。
 またも俺は行き詰まり、それらの考えを排除する。
 ――考えていても何も始まらないか。
 あらためて俺は机に向かい、自分の中にあるモヤモヤとしたものを吐き出すかのように学術書に目を通し始めた。


 その夜は深夜になるまで眠れなかった。またあの女が出てくるのではないかという不安が俺につきまとっていたからだ。
 ――俺の中にある願望が彼女を呼び出しているのだろうか…それとも別の何か…。…分からない…
 またも答えの出ない問いが俺の頭の中をグルグルと回る。
 しかし、朝焼けが少しずつ辺りを照らし出す頃になると、さすがに眠気がピークに達してきた。
 俺はベッドに入ることなく、部屋の絨毯の上で眠りに落ちた。

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 気が付くとそこはいつもの講義室であった。いつもの如く、講義中に眠りに落ちてしまっていたようだ。
 全身に汗をびっしょりとかいている。
 …またあの女の夢だ…
 またも無意識に俺は身体中を確認する。舌をグルグルと回してみる。当然異常はない。
 お経のように響く教授の声は、再び俺を眠りへと誘おうとしている。
 しかし俺は先ほどの夢の恐怖もあり、その時間に再度眠りにつくことはなかった。
 あの女は一体何なんだ?…これはもう偶然では片付かない。それに…あの夢の内容…
 俺は夢のことを思い出すと、寒気を感じずにはいられなかった。
 長い長い教授の独壇講演が終わると、俺は逃げ出すように講義室を後にした。


 気分が優れない…。あの夢の状況や光景、映像は鮮明に俺の頭の中に焼きついていた。
 俺はどこか近くの喫茶店にでも入って気分転換をしようと考えた。
 大学を出ると、俺は適当な店を探して街の中を歩き回った。ちょうどその時だった。
 …!!…あ…あれは…!!…
 人混みを器用にくぐりぬけながらしなやかに歩く女性。すらりとした完璧とも言えるプロポーション。白いワンピースに長いストレートヘアー。
 …あの女だ!!…
 女は公道を挟んだ向こう側の歩道を歩いていた。俺は彼女に目線を合わせたまま人混みを掻き分けて追いかけた。

 スクランブル交差点に入り、とにかく向こう側へ渡ろうと信号を待つ。
 彼女は信号に背を向け、向こう側の道の曲がり角を曲がっていく。
 信号が青に変わり、俺が反対側の歩道へ辿り着いたころには、既にそこに女の姿はなかった。
 …見失ってしまったか…
 しかし俺はがっかりする反面、内心少しほっとしたような気分でもあった。
 これまでのことをどう説明したものか。その答えが俺には分からなかったからだ。
 『あなたは俺の夢に出てきた人ですよね。』…それじゃ単なる馬鹿だ…
 きっとあれは人違いだ。あの夢に縛られるあまり、俺は少しでも似ている人間を追い求めるようになってしまっているんだ。
「しっかりするんだ。」
 俺は自分を励ますようにそう声に出した。
 今日は疲れたな…もう帰ろう…
 俺は諦めて帰路についた。ただ、俺の中にある数々の疑問は決して消えたわけではなかった。
 あれは単なる夢…。もちろんそうに決まっている。でも…
 あまりに鮮明な夢の記憶がどうしても頭から離れなかった。この不思議な謎を解き明かしたい。その思いは俺の中に常に残っていた。

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「うああああああ!!!」
 彼女の責めは止むことなく俺を襲う。気を失いそうになりながら俺は必死で耐えていた。
 そして、俺の身体から血が流れる度に彼女は嬉しそうに俺の血を舐めるのだった。
 気付けば俺は身体中が穴だらけになっていた。
 彼女から与えられる数々の苦痛に必死になって耐えた。
 でも…どうして?…
 どうして俺がこんな目に遭わなければならないんだ。どうして俺は…我慢し続けているんだ。
 そして…どうしてこんなにも痛みを感じるんだ…。これは…これは夢なのに。
 当然とも言える疑問が俺の中に姿を現す。
 その疑問の数々を俺は彼女にぶつけたかった。しかし何故かそれはできなかった。
 彼女はそんな俺の心の中を見透かしたようにくすくすと笑う。そして彼女は突如として無表情になり、俺にゆっくりと顔を近づけるのだった。
「ま…まだ…」
 そこまで言ってから俺は『こんなことを続けるのか』という次の言葉をぐっと呑み込んだ。
 俺は既に彼女への恐怖心から、言葉を使うことをどこかで恐れていたのだ。
 そう…まるで乱暴に扱われる人形のような心地で…
 彼女はまたも可笑しそうにくすくすと笑うと、突然俺の舌をペンチでぐいと引き出した。

 …!!!…

 俺は寒気を覚えた。
 まさか…まさか…
 俺は見てしまったのだ。彼女の反対の手に握られていたのは、大きなハサミであった。
「や…やめてくれ!やめてください!!」
 俺は声を大にして叫んだ。情けなくてもいい。ただ、助けてほしい。
 哀願するように、俺は何度も頭を下げた。
 そんな俺の姿を見た彼女はにっこりと笑うと、掴んだ俺の舌を躊躇無く切断し始めた。
「あが…が…まがああああああ!!」
 再び絶叫する。彼女は俺の舌をさらにギリギリと切る。
 もちろん一瞬で切れるわけではない。少しずつ、少しずつ…俺の舌が切り取られていくのだ。
 俺の舌からドクドクと大量の血が流れていく。身体から少しずつ離れていく肉塊の感触が妙にリアルだ。
 口の中を血まみれにしながら、俺は声にならない声を上げ続けた。

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 …やめてくれ…やめて…
 俺は手枷と足枷をつけられ、エックス字型の磔台に固定されていた。身動き一つ取れない。
 目の前の女性は怯える俺の姿を愛でるような顔つきで、容赦なく俺に鞭を打ちつける。
 その鞭の先端には無数の棘が付けられ、打たれる度に俺の身体から鮮血が迸る。
 何度も…何度も…。彼女の手は休まるところを知らなかった。
「ぐあああああっ!うああああああ!!」
 叫び声が部屋中に響き渡る。打ち付けられる度に傷跡は赤く腫れあがっていった。
 部屋の中は薄暗く、所々に取り付けられた小さな電球だけが部屋の輪郭をかろうじて映し出していた。
 弱い光に照らされた彼女の唇は紅く、少し開いた口からは舌を覗かせ、艶かしく動かしていた。
 相変わらず彼女は優しい笑みを浮かべながら、何度もその手に力を込める。
 磔台にもたれかかり、ぐったりとした俺の首筋を彼女は舌でゆっくりと舐め回す。
 粘着テープを口に巻かれ、同時に革製の目隠しを付けられる。
 両手を拘束されている俺には当然、抵抗などすることはできなかった。
 後ろ髪を掴まれる。体全体を舐め回す感触に俺の身体は敏感に反応する。
「うぐうっ!!」
 鳩尾に強い衝撃を感じる。彼女の細い膝が俺の腹の奥深くにめり込んでいるのが目隠しごしにも分かった。
「ぐうええええっ!!お…えええええ!!!」
 壁を背に俺は彼女に押さえつけられ、身動きが取れないまま腹を責め続けられた。俺はたまらず嘔吐する。彼女の膝蹴りの嵐は、まさに銃弾のような激しさをもって俺に襲いかかった。
 内臓を抉り出されるような強烈な蹴りを何度も受け、俺はその苦しみを声に出すことしかできなかった。
「おええええ!!げえええええ!!!」
 責めの激しさも相俟って、俺の目隠しが外れた。そこには愛でるように俺の苦痛の表情を嬉しそうに見つめる彼女の姿があった。


 どれくらいの時間責められたのだろう。彼女はしばらくすると俺を拘束していた手枷と足枷を手際よく外した。俺はそこでたまらず蹲り、腹を抱えて悶絶した。
 しかし次の瞬間、俺は左腕にまたも狂いそうなほどの痛みを感じた。
「ぎぃやあぁああああ!!!」
 たまらず声を上げる。見ると俺の左腕には千枚通しが深く根元まで突き刺さっていた。
 彼女は俺の身体中のいたる所に千枚通しを力一杯突き刺していった。
 刺しては引き抜き…刺しては引き抜き…
 その度に俺は絶叫し、穴の開いた皮膚からはドス黒い血が溢れた。女はその流れる血を愛しそうに舐め回すのだった。

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「はっ!」
 到着駅のアナウンスで目覚めた。もう降りなければ。
 無意識に俺は自分の右手を確認する。同時に服を少し肌蹴て身体中を見回す。そうしてから初めて、俺は安堵の溜息を漏らした。
 俺は荷物を無造作に手に取ると、そそくさと出口へと向かった。
 またあの夢だ。あの女は一体?
 流れる人混みに紛れ、俺は駅の階段を一歩一歩上がっていった。


 俺は夢の中の出来事だと頭では割り切っているつもりであった。しかし気持ちの中では、何度も出てくるあの美麗な女性が気になって仕方がなくなっていた。
 …なぜ同じ女が二度も。それに…尋常ではないあのシチュエーション。妙にリアルな痛みや苦しみ。
 駅の階段を上りきった頃、俺は先ほど見た夢が鮮明に脳裏に甦り、立ち眩みを起こした。
 しばらくの間、改札前の隅に腰を下ろして体調が回復するのを待った。
 くそっ。何で、俺がこんな目に。あんな恐ろしい夢、二度と見たくないものだ。
「痛っ…」
 ふいに身体中を刺すような痛みが襲った。そう言えば首周りにも何となく圧迫するような痛みを感じる。
 何となく右手の感覚が少しおかしいような…

 ……

 考えすぎか…
 俺は立ち上がり、周りの視線を気にしながら急ぎ足で同じ大学へと向かう人の波に紛れた。
 あれは夢だ。夢以外の何者でもない。
 しかしやはり夢にしては妙にリアルだったことは否めなかった。とても残酷なことをされた。そして未だにその感触を忘れられないでいる。
 俺は脳裏をかすめるさっきの夢をふり払うかのように頭を乱暴に横にふった。
 馬鹿馬鹿しい。俺は一体何を考えているんだ。夢と現実の区別もつかなくなってるなんてどうかしてる。
 その後、俺は何事も無かったように大学校舎の門をくぐるのだった。

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 刺された注射針は、俺の身体に異様な飾り付けを施していた。
 規則的とは言えない針のデザインが、却って俺の身体を彩っているようにも見える。
 身体中の力を抜かれてしまったような感覚に襲われ、俺はしばしその状況に身を委ねる。
 全ての針を刺しつくした女は、騎乗の体勢を保ったままにっこりと俺に笑顔を向けた。
 彼女は瞳を輝かせながら俺の身体中を見つめ、それからまた別の道具を取り出した。
 ――今度は…何を?
 彼女が手にしていたものは薄手のメスであった。銀色に光るその切先に俺は身体を震わせる。
 俺を一体どうしようというんだ。この女の目的は何なんだ。
 彼女は俺の右の手首を掴むと、ぐっと力を込めた。彼女の細い手から与えられる力は、見かけによらず相当なものだった。俺の抵抗など到底無意味であることは、この時の俺にはよく分かった。
 恐怖心の中、俺は呼吸を荒げながら自分の手先をじっと見つめていた。
 ゆっくりと指先に近づけられるメスを前に、俺はただただ怯えるしかなかった。
「ぐがああああああ…ああああああ!!!」
 小指の先にとてつもなく熱いものを感じる。この時、俺の小指の第一関節から上が失われた。
 ぽとりと音を立てて俺の指先が床に転がり落ちる。切断された指先からは大量の血液が流れ落ちた。
「あっぐ…あああ…ああああああ!!」
 絶叫が室内に響き渡る。このような状況下での人間とは何と空しいものなのだろう。
 何もできず、ただ張り裂けんばかりの声を腹の底から吐き出すことしかできないとは。
 彼女はなおも妖艶な笑みを俺に向け、表情を変えぬまま続けて俺の薬指を切断した。
「がああああああ!!!」
 絶叫する。もちろん誰かに伝わるわけではない。ただ、それしかできないだけのこと。
 無言のままでメスを俺の手先に向け続ける目の前の女は、それでも笑顔を絶やすことがなかった。
 その行為自体を楽しむかのような彼女の瞳に、俺は凄まじい狂気を感じずにはいられなかった。

 中指、人差し指、そして親指。
 彼女は冷静に、そのメスで次々と俺の指先を切断していった。その度に俺は叫び声を上げる。
 既に俺の右手は、流れ落ちた血液にまみれて真っ赤に染まっていた。
 床には先ほどまで俺の指先に確かについていたものが、まるでごみのように転がっている。
 自分の指があんなに離れた場所にあるという事実は、未だかつて体験したこともないほどの恐怖を俺に与えるには十分すぎるものであった。
 俺は自分の手をあらためて見る。変わり果てた自分の右手はあまりにも恐ろしかった。俺はそのショックに耐えかね、そのまま気絶してしまった。

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 そこは真っ白な世界だった。
 部屋高くについている一つの窓だけが、外の風景を四角く切り取っていた。ぼんやりとして霧がかかったような外観は、俺の深層心理をそのまま映し出しているかのようであった。
 …あ…
 目の前で昨日の女性が俺をじっと見つめながら立っていた。
 また…あの夢か?…
 女はゆっくりと俺に近付いてくる。甘く、とろけるような芳しい香り。
 彼女はその細い指先で俺の顎を軽く持ち上げると、俺にキスをした。そして次の瞬間、俺の鳩尾めがけて容赦ない力で拳を打ち込んだ。
「うえっ!!」
 思わず声を上げ、悶絶する。女は拳を俺の腹に突き立てたまま、小首をかしげて俺の顔を覗き込む。
 苦しさから身体をくの字に曲げた俺をじっと、笑顔のままで見つめていた。
 目を大きく見開き、口から舌半分をだらりと垂らす。喉元からこみ上げる嘔吐を必死で堪える。
 彼女は続けて俺の首を掴むと俺を押し倒した。倒れた先にはいつの間にかベッドがあり、俺はその上に転がるように身を投じた。
 馬乗りになった彼女は俺を見下ろしながら、両手でじわじわと俺の首を絞める。
「く…かはっ…」
 声を漏らす。苦しくてたまらない。
 徐々に体重をかけられ、息をするのもままならない。
 しかし彼女はその手の力を緩めることはなかった。

 しばらくそうした後、彼女は片方の手を後ろに持っていった。何かを取り出している。
 相変わらず俺の首を絞める力は入ったままだ。
 彼女が片方の手で取り出したもの。それは…いくつもの太い注射針だった。
「な…何を?…」
 彼女は黙ったまま一度その手を離すと、想像以上の力で俺の服を引きちぎっていった。再び片手で首を絞めると、反対の手で俺の身体中に躊躇なく針を突き刺していく。俺は悲鳴を上げた。
 そんな俺を見つめながら彼女はなおも妖艶な笑みを俺に向けている。
 ………
 痛い…痛い…。
 肌を次々と突き破る針の痛みは想像を超えるものであった。
 ――いや、これは夢だ。夢なんだ。痛みなど、実は少しも感じてなどいないのだ。
 そう思い込もうとする俺をあざ笑うように、彼女はくすくすと笑う。
 格調高い品性のある声音。俺はとっさにそんな風に感じた。
 それにしても、身体中に感じているこの痛み。これは本当に虚像なのだろうか。
 俺は確かに感じるその痛みから、必死で目を逸らそうとしていた。

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 気付くと俺は自分のベッドの上にいた。
 時計の針は夜中の四時を指している。額や背中には汗をびっしょりとかいていた。
 …夢…か…
 喉が異常に渇いていた。俺は立ち上がり、洗面台へと足を運ぶ。
 寝室ではいつも通り親父が寝息を立てていた。母の遺影が目の端に映る。親父の枕元には飲みかけの角瓶が置かれていた。
 …親父…寂しいんだろうな…
 そんなことを考えながら洗面台へと向かう。コップ三杯の水を飲んでようやく喉が潤った俺は、再び床に就くべく自分の部屋へと向かった。
 しかし…リアルな夢だったな。
 ふいに彼女の強い瞳が瞼の裏に甦る。彼女からは確かに何とも言えないオーラを感じた。
 あの女は一体…。いや、馬鹿馬鹿しい。全て夢の中の話だ。
 俺は床に就くと、吸い込まれるように再び眠りに落ちた。


 時間の有り余る大学生とは名ばかりで、俺にとっての朝はまさに戦そのものだ。
 朝の掃除や朝食の準備、身支度。母親のいない俺にとっては家事が仕事の一つである。
 四十代半ばにして退職した親父は、母が死んでからというもの家で毎日ぼうっと何をするでもなく過ごす。既に老後生活を堪能している風だ。
 俺の学費は大丈夫なんだろうか?…バイトでも始めた方がいいかもな…
 そんな考えがふと頭を過る。
 親父が寝ぼけ眼で髪を掻き毟りながらリビングに入ってくる頃に、俺は家を飛び出す。
 何しろ電車で二時間はかかる遠い場所なのだ。そろそろ一人暮らしでも始めたいと思うが、あの親父の廃れ具合を見ているとそれもまだまだ先の話だろう。
 通学途中の電車内で、俺はまた何となく昨日見た夢のことを思い出していた。
 あの女の容姿、香り。そして首元に触れた指の感触。全てが鮮明に頭に焼き付いていた。
 それにしても、綺麗な女だったよな。しかし何だったのだろう。あの身を委ねたくなるほどの愉悦と、同時に感じたあのリアルな恐怖は。
 そんなことを考えながら、俺は電車の座席でうとうとと眠りに落ちていった。

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 額から一筋の汗が流れ落ちた。
 俺は走った。とにかく走って、走って、走って…
 息が苦しい。呼吸ができない。けれど、そんなことには構っていられない。蹴躓きそうになりながらも、ひたすら走って逃げた。
 角を曲がった先に立ちはだかる壁に、絶望的な気分になった。
 気がつくと、あの女は背後に迫っていた。
 夕暮れ時も過ぎ、辺りは既に暗闇に覆われていた。月明かりに照らされた二人の影は、既に重なり合うほど近いものとなっていた。
 ――もう終わりだ。逃げられない。
 そんな風に弱気になる心を叱咤し、最後の希望を託して、俺は女と向き合った。
 驚くべきことに、女は息一つ乱れていなかった。
 俺はというと、心臓が暴れて胸が熱いほどに疲労しているというのに。
 そんな俺の目の前で、女はじっと立っていた。
 すらりとした身体を、白いワンピースが包む。美しい黒髪は背の中ごろまで伸びていて、前髪は目の上で綺麗に切り揃えられていた。今風でないその髪型が、却って彼女を神秘的に輝かせている。
 女は顔を伏せている。整った顔に、けぶる睫毛が美しかった。
 年の頃は若そうで、俺より下かもしれない。
 なんだ。弱そうじゃないか。…などと、気を休めることはできなかった。
 なぜなら彼女の雰囲気が、「これは危険な生き物だ」と俺に告げているからだ。
 身動きできないでいる俺の前で、彼女はゆっくりとその顔を上げた。
 その瞳に、俺は一瞬にして囚われた。
 切れ長の瞳には、強い意志の力が灯る。彼女は、紛れもない美女だった。それも極上の。
 紅色の唇が、吸い込まれそうな魅力的な笑みの形を作る。
 細身の身体からは、先ほどまでとは変わって、女の色香のようなものが漂っていた。
 全身から発せられるオーラに吸い込まれ、気がつくと俺は一歩足を踏み出していた。
 …いけない!
 寸での所で、俺の自制の力が効いてくれた。慌てて壁まで後ずさる。
 この女は危険だ、と自分の勘が再度告げる。
 俺は、この女の正体すら知らない。一体何者なのか、なぜ俺を追うのか。
 全く分からないことだらけなのに、危険の臭いだけを強く感じていた。
 俺が再び逃げ道を探しているのに気がついたのか、突然女が動いた。
 俺のすぐ隣に回り、耳元で何かを囁いた。
 何を言ったのかは聞き取れなかった。それなのに、すぐ近くから立ち上る強い芳香が、俺を俄かに酩酊させた。
 立ち竦む俺に、しなやかな白い女の指が絡みつく。細い指先が俺の喉を押さえ込み、力を込められる。
 俺はまるで酔ったように、彼女に締め付けられるまま身を委ねた。
 手指が痺れ、地に足が着かない。意識が遠くなる。
 ――このまま死ぬのか。
 何もかも分からないこの状況。それなのに、不思議と嫌ではなかった。

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読者の方々のおかげさまをもちまして、サイトのカウンターが10,000ヒットを超えました。
いつもご愛読いただいている方々をはじめ、FC2ブログランキングのワンクリックやアンケート(※現在停止)、ウェブ拍手などたくさんのご協力をいただいている方々、また相互リンクをさせていただいているサイト管理者の方々。
皆様、本当に本当にありがとうございます。
毎度、読者の方々に支えられていることを実感しています。
これからも頑張っていこうと思います。


別件ですが、ウェブ拍手を導入したところ、短期間でたくさんの拍手を頂きました。
管理人としてはこんなに嬉しいことはありません。
どうしてもこの感謝の気持ちを伝えたく、この場をもってお礼を書かせていただきました。
本当に、ありがとうございます。
応援してくださる方々の声が作者の励みです。

今後もBlack Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞよろしくお願いします。
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制作時間三十分です。
構成を何となく描きながらぱっと書き始めて、気付いたら終わっていました。
(もちろん、手を抜いているわけではありませんが。)
閃きで筆が進んでいった作品だったと思います。
「鞭、鞭、そして鞭」がモットーなんですが、今回はちょっと飴が多めかなと?(笑)

こちらもまた、箸休めのつもりで読んでいただけたら幸いです。
これからも応援よろしくお願いします。

●彩香のキャラ絵 →  

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 苦痛と快楽を同時に与えられた僕は一気に脱力し、とうとう白目を向き、足の力も抜けて倒れ込みそうになった。喜びからか両脇の二人もうっかり手を離してしまっていたようである。
 倒れ込もうとする僕を受け止めたのは彩香であった。僕の腹を、再び膝で下から突き上げて支えた。
 内臓が下に下がった瞬間の突き上げ…
 強烈な打撃を受けた僕は、たまらずその場に倒れ込んで悶絶した。
 僕の目に映ったのは、再度僕を思いきり蹴り上げようと振り上げた彩香の足だった。
「あ、とどめは…」
 両脇の二人が彩香を制する。
「そっか!駄目なんだっけ。先生にばれたらまたうるさいもんね。」
「彩香、終了まで九分二十三秒ー。制限時間内、余裕で成功でしたー。」
 時間を計っていた女子が楽しそうにそう告げる。
 ま…まだそんな時間しか経ってないのか?
 僕は嫌な予感がして、背筋が凍りついた。一人の女子が言う。
「今度は私がやろっかな。今度は手コキで連続十回逝ったら終わりでどう?皆、タイム計ってねー。」
 …ま…まさか…そんな…
 今度は強制的に床に寝かせられた。彩香は僕を見下ろしながらさも嬉しそうに言った。
「騒がれるとうるさいから、その口塞いでおいてあげるね。」
 いたずら半分のような口調。しかし、その瞳は真剣だった。
 彼女は僕の顔面にゆっくりと腰を下ろすと、お尻で僕の口を完全に塞ぎきったのだ。
 僕はこれから続く恐怖を肌で感じていた。これなら気絶した方がよっぽど楽だろうに…

 …僕は身体を丸めたまま、まだまだ続くであろうこの恐怖にただただ怯えるだけだった…。



END

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 彩香のパンチと蹴りは休む間もなく僕を襲う。
「ほら!」
「おぐえっ!」
「ほら!」
「う…え…」
「おらおら!!」
「げほっ!…うぐ…」
 教室に僕以外の男子はいない。担任の先生もいない。いるのは…獲物に目を光らせる彩香と…それを楽しげに見守る他の女子だけ…
 僕は自分が情けなくなってきた。僕一人で頑張って…どうなるんだろう?
 終わってほしい…早くこんな遊び…終わってほしい…
 しかしそう願う気持ちとは裏腹に、僕の下半身は既にパンパンに膨れ上がってしまっていた。
「何だよ。お前、感じてるんじゃん。」
「あはは!キモーイ!!こんなに膨らまして…この変態。」
 周りの女子がまくしたてる。片側を押さえている女子が手コキのスピードを早める。
 彩香の攻撃は止まるところを知らなかった。勢い付いた彼女は嬉しそうに僕の腹をしばしじっと見つめた。
「っらー!!」
 しばらく腹を打ち据えていた彩香は突如身体を大きく捻り、その足を目一杯後ろまで引いたかと思うと、全体重をかけたその膝を僕の腹に打ち付けた。
 一際強い彩香の渾身の一撃が、鳩尾に喰い込む。
「うえ…げええええええええええええええええ…えええ…え…」
 僕はたまらず、とうとう嘔吐してしまった。さっき食べたばかりのものが口から大量に溢れてくる。
 情けないことに、同時に僕は下から別のものも勢いよく噴出させてしまった。
 それを見た彩香や周りの女子が一斉に歓喜の声を上げる。
「やったー!」
「おめでとう!彩香の勝ちー!タイムはどうだったのかな?」
「あはは!馬鹿じゃねーの? 誰がそんな汚え液まで出せって言ったんだよ。」
 僕はあまりの情けなさと苦しさで頭がおかしくなりそうだった。
 涙が止まらなかった。それは今の僕にできるただ一つの行為だったのかもしれない。

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「く…苦しいよ。やめて!」
「あははは!みんな!制限時間は十五分ね。これから時間計って!」
 僕の言うことなどお構いなしに彼女は周りの女子に声をかける。
 …冗談じゃないぞ!…
 僕は激しく抵抗した。足をじたばたさせながら両腕に渾身の力を込める。しかし僕より背も高く、体格のいい脇の二人の女子を振り切ることは、僕には到底できなかった。
 僕の右腕を押さえ込んでいる女子は、腕で僕の首を絞めあげている。
 反対側の子は、同時に僕のモノを握り激しく擦り始めた。
 苦痛と快楽が同時に僕を襲う。僕は全身の力を抜かれ、抵抗する術を奪われてしまっていたのだ。
「成功しますように。」
 祈るように彩香は手を合わせる。この状況をとても楽しんでいる様子が彼女から見て取れた。
 …ま…負けるもんか!!…
 僕は覚悟を決めた。こんなこと絶対許されない。絶対負けちゃいけない!…でも…
 刺激され続ける下半身は僕に快楽を与える。絞められていることで意識が朦朧としてくる。そして僕の腹は先ほどから継続される彩香のパンチと蹴りによって激痛を増していった。

 何度も…何度も…何度も…何度も…
 僕の腹にパンチと蹴りがめり込む。食後の腹責めは本当に地獄の苦しみだ。
 僕は既に涙目になり、喉まで出かかった食べ物を戻すまいと必死で堪えていた。
「結構頑張るね。うふふ…ほら、もっと強くしてあげる!」
 あどけない笑みを浮かべた彩香。同じように笑みを浮かべる二人の女子と取り巻き。
 それは悪魔の笑みと言っても過言ではないだろう。
 僕には既に抵抗する余力も残ってはいなかった。快楽に悶え、遠のく意識を何とか留め、突き上げられる食べ物を押し込もうと必死になっている。ただそうすることしかできなかった。
 僕は自分の身体がぼろぼろに汚されていくような感覚を覚えていた。
 だ…誰か…誰か助けて…
 弱気になった僕はとうとう泣き出してしまった。涙が後から後から溢れてくる。
 しかしそれを見た女子たちは、まるで水を得た魚のように喜びの声を大にし、彩香の応援の勢いを増すのだった。

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「ねえ、奥野くん?…ちょっと付き合ってもらえないかな。」
 笑顔を投げかけ、甘い声で僕を誘う。僕は憧れの彩香が笑顔を見せてくれたことに感動する反面、照れ隠しから目を逸らした。
 彼女は突然、笑顔のまま僕の腹に膝蹴りを入れてきた。たまらず崩れ落ちそうになる僕を両脇の二人が抱える。
「ぐふっ…おえ…」
 彩香はそんな僕を見てますます意味深な笑顔を僕に向ける。
「な…何で…」
「瀕死遊び、始まりー。」
 甲高い声でクラス全体に聞こえるように彼女はそう叫んだ。それを聞いた男子たちは我関せずとばかりに僕を無視して校庭や体育館、図書室へと次々に姿を隠してしまった。
 反対にクラスの女子たちのほとんどは僕を取り囲んで、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら僕を観察していた。

「瀕死遊びって…前に先生から注意されたばかり…うぐえっ!」
 僕の言葉を遮るかのように、今度は彩香の拳が僕の腹に突き刺さる。
「食後のお腹はどう?すっごく苦しいでしょ?うふふ。」
 楽しげな様子を見せながら彩香は続けて何度も僕の腹を責める。食後の地獄の苦しみに僕は今すぐにでも蹲りたい気持ちでいっぱいだった。しかし、脇で支える女子二人がそれを許してはくれない。
「な…何でまた…」
「前は気絶させたりしたら危ないとかって言われて駄目になったんだよね。」
 言いながら彩香は僕の腹にまた何度も軽く拳を入れる。
「気絶させなくてもいいの。今度はお腹を責めて吐いたら終わりってルール。ただし、謝っても許さないことになったけどね。」
 彼女は唇の端をもち上げながら、淡々とそう話した。
「は…吐いたらって…そ…そんな…。しかも謝っても駄目って――っ!……ぐうええ!!」
 彩香の膝が僕の腹の奥底までめり込む。さっき食べたばかりのものが今にも口から飛び出そうになっていた。

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 お昼の休憩時間が始まる頃、僕はいつも憂鬱な気分になる。
 僕の通っている私立麻美大嶋学園高等部では、一年生全体を通して嫌な遊びが流行しているからだ。
 この歳になってまでこんなこと…馬鹿げてる…
 しかし僕にそんなことを言い出す勇気があれば、こんなことにはなっていなかっただろう。
 女子たちによる男子いじめ。通称瀕死遊び。
 方法は特に決まってなくて、ただ男子を泣かせて謝らせたり、気絶させたりすれば終わりという性質の悪い遊びだ。
 先月までは首絞めが女子たちの中で大流行していた。
 両手でぐっと絞めるものからチョークスリーパー、中には紐を使ったものや足で首に体重をかけ続けるなんてのもあった。
 女子は軽いお遊びのつもりなんだろうけど、僕たち男子にとっては大問題だ。
 今月に入って担任の先生からようやく指導が入って、僕たちにもやっと束の間の安息が与えられた。
 でも…
 女子たちの中でこのブームはまだ沸々と右肩上がりの傾向を見せていたのだ。

 午前中の授業が終わり、昼食が終わると、いつもの女子たちの気になる内輪会議が始まった。
 僕は知らないふりをしながら弁当を片付ける。
 ちょうど片付けが終わった頃、僕は女子二人に両脇を抱えられた。
「な…何?」
 二人はニヤニヤしながら僕の方を見ていた。僕はその突き刺さるような目線にぞっとして目をそらした。
 身動きの取れない僕の目の前にやってきたのは彩香だった。
 発達した胸。完璧とも言えるほどの魅力的なスタイル。サラサラのストレートロングに軽い香水の良い香りを漂わせている。
 僕は密かに彩香に対して思いを寄せていた。だけど…まさかこんな形で彼女と接することになろうとは…

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作品にもたせる世界観に、毎回悪戦苦闘しています。
今回は自分なりにシナリオを重視したい、シリアスな展開にしたいという思いがありました。
しかし現実には……(汗)
こうしてああしての連続で、肝心な構成がめちゃくちゃとか……
書いているうちに登場人物が私の手を離れ、一人歩きしようとしたりとか……
ありゃ、これ第二部で出てきた展開じゃん! とか……
人に物事を伝えるということは、本当に難しい。

『読者の方々に、いかにして伝えるか』

創作者にとっては本当に重要な要素だなと、今更ながら実感しています。
でも、まだまだ勉強不足ですね。
これからもこの気持ちを忘れずに、励んでいきたいと思っています。

なお、これまでアンケートにご協力いただいた方々、本当にありがとうございます。
おかげさまで、着々と票が集まってきております。(※現在停止)
「放課後の夕暮れ」、「由香利ノート」、「正当拷問自白法」、etc...
割とハードなものの人気が高いように思います。
結果のさらなる分析をもとに、今後の作品について検討していきたいと思っております。
アンケートについてはまだまだ投票を受け付けております。ぜひご協力ください。
読者の方々のお声をお待ちしています。

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毎度申し上げて恐縮ですが、ご愛読いただいた方々にはあらためて感謝いたします。
これからもどうぞ、Black Onyx [ブラックオニキス]をよろしくお願いします。

●葵のキャラ絵 →

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 ひとしきり泣き終わった葵は、静かに立ち上がった。
 誰も何も言葉を発しない。いや…発することができない。
 再びこの狭い空間を覆う静寂は、とても奇妙で不快なものだった。
 彼女を包んでいたのは虚無感…それとも…
 葵は丸出しになっていた俺の股間のチャックをそっと上げた。そして、身体中の力が抜けたようにふらふらと…ゆっくり亮平の方へと向かっていった。
「…これでお別れね。こんな結末…見たくなかった。」
 彼女は恐ろしいほど無表情だった。ただ、その瞳は…明らかに何かを決意した目であった。
 葵は最後の力を振り絞って、もはやぐったりと倒れ込んでいる亮平をじっと見下ろしていた。
 俺は背筋が凍るような思いがした。葵…葵…
「やめろ!葵ー!!」
 しかし俺の言葉は彼女には届かなかった…
 葵はその足を膝から曲げて大きく上へと振り上げると、靴底で亮平の頭を力いっぱい踏み潰した。
 何度も…何度も…何度も…何度も…

 潰れきった亮平の頭を見つめながら、虚ろな目で彼女はその場にしばし立ち竦んだ。
 …雪乃…これでよかったんだよね。…きっと…喜んでくれるよね…
 葵は手に持った桐を自分の喉元に突き付ける。
 …やめろ…やめてくれ…もう十分だ…葵!!

 ……!!!……

 葵の喉に、小さな深い穴が開いた。
 喉元から朱が零れ落ち、やがて彼女は倒れた。
 彼女の死に顔をひきたてるように、碧いドレスはとても煌いて見えた。


 …憎しみは何かを解決してくれるものではない。
 それは消えることなく…ただ悲しみと空しさだけを残して去っていくのだ。
 そんなこと…最初から分かっていたはずなのに…
 それなのに…


 俺はその場にへたりこんだ。だんだんと体から力が抜けていく。
 もう二度と目覚めることはないかもしれない。
 それでもいいと思い、俺は目を閉じた。



END

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