[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  〜美しき女性たちの狂気〜
女王様シリーズ第八弾です。
毎度のことですが、当サイトにしては、比較的SM色の強いシリーズです。
鬼畜・ハード嗜好の方には少し物足りないかもしれませんが、ご容赦ください。
私自身が、時々この二人の様子を描きたくなるもので。
それにしても、M男性の心理を文章で描くのは難しいなと、つくづく感じています。今なお勉強中です。
これからも精進していきたいと思っています。

いつも当サイトへのご来訪、そして拍手やコメント等、大変感謝しております。
サイトを立ち上げてから何度申し上げたかはわかりませんが、おそらくこの気持ちが消えることはないので。
しつこく御礼申し上げます。皆様、本当にどうもありがとうございます。
当サイトを居心地よく感じてくださる方々のご来訪を、これからもお待ちしています。

今後も、Black Onyx [ブラックオニキス]を、どうぞよろしくお願いいたします。

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 僕は奴隷としてあまりに怠惰だった。
 首輪、羞恥責め、言葉責め、鞭、緊張感――そのひとつひとつは、紛れもない、女王様から享受した恩恵だ。女王様の行為によって僕は興奮し、欲情していた。不自由であるがゆえの自由。拘束されることによる安心感。甚振られることによる充足感。それらの全ては、女王様によって与えられていたものだ。僕は今日、そのことに気付けただろうか。いや……
 僕は本当に忠実になるべきものを、はき違えていた。それは自分の欲望ではなく、女王様だというのに……。あろうことか、女王様の隙を窺って覗きをするなんて……
 自責の念に駆られる。
 僕はいつの間にかエゴの奴隷と化していたのだ。女王様の奴隷――それは僕の勝手な思い上がりだったのかと思うと、悲しくてみっともなくて涙が出そうになる。
 そんな僕の背中に、勢いよく鞭の先が叩き付けられた。鋭い痛みに僕は絶叫する。
「あなたの見ていたのは……私と同じものじゃない」
 そう言って女王様は再度、僕に鞭を振るう。一発、二発、三発、四発――
 皮膚を抉る痛みは、僕の心の痛みだった。鞭とヒールの重みは、僕の心の重みだった。
 情けない。
 自分の不甲斐なさに声を上げることもできないまま、僕はお仕置きを受け続けた。背中に感じていた温かいものが地面に滴り落ちる。血だった。それは女王様の流した涙のように、僕には思えた。
 やがて鞭の雨が止む。僕はぐったりと地面に身を横たえていた。
 女王様がリードを手に、すっと僕の前にしゃがみ込む。身体と心の痛みが相俟って、僕は言葉を発することができない。夕日は今にも、海へとその姿を隠そうとしていた。
「あの夕日が沈みきったら――」
 穏やかだが厳しい口調で、女王様が言葉を発する。その口元には笑みが零れていた。
 僕は全身に冷水を浴びせかけられたような不安に襲われる。その後に放たれるだろう言葉が怖かった。どうしようもなく怖かった。
 ――女王様……。僕は、この愚奴は……
 唇が震え、視点が定まらない。あの夕日が沈んだら僕はきっと……
 『捨てられる』
 それがこんなにも恐ろしいことだということを、僕はこの時、全身で感じていた。
 女王様の眼光に耐え切れず、目を逸らす。女王様はそんな僕の髪を鷲掴みにし、ぐいと自分の目の前に顔をたぐり寄せる。女王様が再度口を開く瞬間、僕は思わず目を閉じていた。
「明日の太陽を待たなきゃね」
 ……予想外の言葉に、虚を突かれる。目を開けると、そこには女王様の笑顔があった。
「一緒に見る太陽は、もっと綺麗なはずよ」
 女王様はそこで一呼吸、間を置く。
「……また明日来ましょう」
 その言葉とともに女王様はすっと立ち上がり、僕を見下ろした。山の涼やかな風が吹き抜けた。
 茜色に染まった女王様の顔が、まぶしいばかりに輝いている。僕の瞳に涙が溢れ、視界が歪んでいく。
 僕はその足下にそっと擦り寄り、ヒールの爪先に口付けた。
 うやうやしく。敬愛の全てを込めて。



END

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 次第に沈んでいく夕日を見ながら、女王様が背伸びをする。僕はその行為に胸が大きく高鳴った。
 思わずちらりとその脚を横目で見てしまう。ただでさえハイヒールにミニスカートという組み合わせが、僕の欲求を刺激し続けていたのだ。おまけに僕は今、四つん這いの体勢でいる。
 僕はどうしても衝動を抑え切れなかった。
 女王様の足下から美脚を辿り、視線を登らせていく。赤い下着がスカートの奥から覗き、僕は爆発しそうな欲情を必死で堪えた。しかし既に僕のモノの先端からは、透明な液体が糸を引きながら地面に滴り落ちていた。
「悪い子……」
 女王様の言葉に心臓が喉から飛び出るような思いがした。恐る恐る女王様の顔を見る。そこには憐れむような、それでいて見るものを凍りつかせるような厳しい表情があった。自分の行為をあらためて恥じ、嫌悪し、覚悟を決める。
 女王様が僕の方へと向き直る。
「醜い格好で、汚いものを膨らませて……おまけに覗きまで――」
 言いながら女王様は、左足のヒールの先端で僕の右手の甲に体重をかける。
「ぐうぅ……す、すみません。すみません……があっ!」
「恥ずかしくないの?」
 さらに体重をかけ、グリグリと踏み躙る。同時に、背中に両手で爪を立て、ゆっくりと皮膚を削る。
 僕は苦悶し、
「はい。恥ずかしいですぅ! ぐあぁ!……す、すみません。すみません!」
 と答え、何度も許しを乞う。手の甲が熱い。背中から温かいものが溢れてくるのがわかる。
「痛めつけられて……下品なところを大きくして――」
 女王様は言葉を紡ぎながら、両足で僕の背中に乗る。ヒールの痛みに耐え切れず、僕はその場にうつ伏せに倒れた。ヒールの先が背中に突き刺さるのを感じる。
 あまりの痛みに僕は絶叫し、涙を流し、圧迫の苦しみに悶えた。
 突如リードが引かれ、僕は大の字に倒れたまま首だけを持ち上げられる。
「ほら、もう夕日が沈んでいく」
 その言葉を聞いた僕の目に、ほとんど線状になった夕日が映る。それはとても鮮やかだった。
「は、はい……」
「私はここに来て、ずっとあの夕日が沈んでいくのを見てたの」
 そう言った女王様の声色は、どことなく寂しげな響きを感じさせた。
 女王様がさらに言葉を紡ぐ。
「あなたは……?」
「!」
 声が出なかった。女王様のその言葉に、僕は胸を切り裂かれるような気持ちになる。
 ――僕は……、僕は……
 目に映った線状の夕日。それがとても新鮮だと感じた理由が今、わかった気がした。僕はここに来てから、夕日など全く見ていなかったのだ。そのことに、あらためて気付く。
「あなたが見ていたものは何? あなたが感じていたものは何?」
 僕はその問いかけに答えることができなかった。

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 この異様な僕の姿を、どれだけの人が正確に認識しているかはわからない。もしかしたら、誰一人としてそんなこと気にも留めていないのかもしれない。しかしながら、今の自分の醜態や、それを人目に晒しているのだという僕の中の羞恥心や罪悪感といった意識は、決して僕を解放してはくれない。ましてや僕は、こんな状況下で下品な輩を反り返らせている生粋の変態なのだ。
「あ、あの……」
 消え入るような声でそう呟き、女王様の横顔を覗き見る。そこにある美貌からは、既にわずかな笑みすらも消えていた。無表情のままごく普通に、再び運転に専念している。
 僕にとって女王様は、常にこんな風に背中を追い続ける対象なのだ。女王様の表情、仕草、言葉、行為。そういったものに一喜一憂しながら、僕という存在が成り立っている。別の言い方をすれば、女王様だけが僕の生きる意味なのだ。
 わかってもらえ、しっかりと受け止めてもらえたかと思えば、刹那、くるりと後ろを向いてしまう。心が結びついたと感じられた瞬間、その雰囲気を一気に吹き飛ばしてしまうような冷徹なひと言をさらりと僕にぶつけたりする。
 ――女王様は今、どんな気持ちでいらっしゃるのだろう。
 きっと僕は、それだけを考えながら生きているのだと思う。今だって、女王様の本当の気持ちが知りたくて心配を重ねている。
 ――楽しんでくださっているのだろうか。興味をもってくださっているのだろうか。
 女王様の表情の変化ひとつで、僕の不安は雪だるまのようにどんどん膨れ上がってしまう。何より女王様に見捨てられることが怖かった。
「あの……」
 僕は再度、言葉を重ねる。女王様はハンドルを握ったまま「何?」とそっけなく応える。しかし、僕はその言葉の続きを声に出すことができなかった。「つまらない」という言葉が出てくるかもしれない。それが怖ろしくて、僕の口は次の音を発することができなかった。
 女王様は僕のはっきりしない態度に業を煮やしたのか、再び僕の太腿に力いっぱい鞭を振り下ろした。何度も打たれてきた傷痕がとうとう破れ、そこから血が滲む。
 僕の絶叫は壮大な自然に木霊した。


 女王様がブレーキを踏んだ場所は、山頂近くにある木陰だった。既に人通りは全くない。海と大きな太陽が視界いっぱいに広がる神々しい景色の見える場所だった。沈みかけた太陽は海面に一筋の光の帯を描き出し、下界の全てを朱色に染め上げていた。
 エンジンを切って車を降りる女王様を追うように、僕は車から滑り出す。自分たち以外に人がいないとわかってはいても、いざ車から出るとあまりの心許なさに身体を縮こめてしまう。女王様はそんな僕の様子をいつも敏感に捉える。口の端を持ち上げて僕の方へと足を進め、首輪についたリードをぐいと引っ張る。僕はその力に身を預け、四つん這いの姿勢で女王様と歩みをともにする。
「すごく綺麗だね」
 感動を口にする女王様の横顔もまた夕日に照らされ、その妖艶な魅力を存分にその身に湛えていた。
「はい」
 と口にしながらも、僕の視線は女王様の肢体に釘付けになっていた。

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 鼻腔をくすぐる風が涼やかだった。
「夕日が綺麗だろうね」
 ハンドルを手にした女王様は、僕にそう問いかけたきりしばらく口を噤んだ。
 少し開いた窓の外。
 生い茂る木々のトンネルを幾度となく潜り抜けながら、車は山道を走り続ける。タイヤは、時折落ちている砂利を踏み付け、車体を揺るがす。曲がりくねった道は、ゆるやかに僕の身体を右へ左へと運ぶ。お世辞にも整備が行き届いているとは言えない田舎の山道だった。しかし僕にとってのそれはまるで揺りかごのようで、決して嫌なものではなかった。
 僕は車窓の向こう側に流れていく自然を、ただじっと見るともなしに見つめていた。漏れ入ってくるひぐらしの声は夏の終わりを告げ、狭い山道を照らす斜陽はその力を弱めている。時々すれ違う人々の服装からも、次第に夏特有の開放的な印象は薄れてきていた。尤も、今の自分ほど開放的な姿を晒している人間はいないだろう。
 全裸に首輪ひとつで車に乗ること自体が、そもそも「普通」ではないのだから。
 脇道を歩く人や対向車を見かける度、ドクンと心臓の音が高鳴る。無意識に身体を強張らせてしまう。その時、女王様はハンドルから左手を放し、乗馬鞭を手にする。
「――すみません」
 そう僕が言うより早く、バシッという快音が車内に響く。再び謝罪の言葉を口にするが、女王様から言葉が発せられることはない。この調子で、今日何度お仕置きを受けたかわからない。気付けば、僕の太腿や腕、胸など、至る所には赤い痕が刻まれていた。
 痛い。
 それでも僕はまた、人や車を見かける度に身体を縮めてしまう。
「……そう。悪い態度ね」
 今日二度目に聞いた女王様の声は、突き刺すような鋭利な含みを匂わせていた。意味深な瞳で僕にちらりと流し目を遣す。その視線は僕の身体をなぞるように次第に下半身へと向けられていった。僕の背中を冷たい汗が伝っていく。
「何度言っても身体は縮める。そのくせに、ソコは――」
 思わず覆おうとする手を鞭で打たれる。縮めた身体とは裏腹に、僕の汚棒はその存在を堂々と主張していたのだ。女王様は再び前を見ながら運転に専念する。時々混じる冷笑に、僕の愚息はまた敏感に反応してしまう。
 女王様は、軽くブレーキを踏み、徐行を始めた。それが何を意味するのか、僕にはよくわかっていた。
「す、すみません。すみません!」
 と声を上げる。しかしそれが意味を成さないこともまた、僕にはわかりきっていた。
 歩く人々、すれ違う対向車。その横を、僕らはゆっくりゆっくりと通っていく。そのゆるいスピードに違和感を抱くためか、歩行者はさっきよりもこちらへ視線を向ける確率が高い。対向車の人間にとっても、遅い車の運転席と助手席はよく見えるのだろう。
 羞恥心が僕を苛む。そうであるがゆえに、僕の下半身は一層、声を高める。このジレンマに苦悩する僕の耳に再び女王様の嘲笑が聞こえ、それがトドメとなる。
 僕のモノはとうとう膨張を極めてしまっていた。

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梅雨をテーマに、二人の関係を描いてみました。
思えば、新年一発目に掲載した『鐘』から、早半年が経つわけですね。
時の流れの早さには、つくづく驚かされます。

この時期は、物憂げな気持ちになりやすくて困りますね。
皆様も、体調には十分お気をつけて。どうぞご自愛くださいませ。

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 僕に自由はない。それを必要とも思わない。
 首輪で繋がれ、女王様がそのリードを持っているからではない。では、僕自身がそれを望むから?
 再び皮肉めいた笑いが込み上げてくる。
 僕はやはり駄目な道具だ。その証拠に、本がパタンと閉じられる音が聞こえただけで、僕はこんなにも胸を高鳴らせているのだから。意思をもつ道具なんて、道具失格だ。
 雨は雨として役に立つ。僕は僕としても、いや、道具としてすら役に立たない。
 女王様はひとつ大きなため息をついた後、その体勢を変えた。僕とは反対方向に顔を向けて馬乗りになる。その足先で僕のそそり立ったモノを挟み込み、弄び始めた。
 思わず声を漏らす。
 ふと背中の女王様の方へと目を向けるが、その視線は依然として本に注がれているようだった。女王様の足の裏の感触と陰部を擦る運動の心地よさから、力がどんどん抜けていく。
 そして僕は亀頭から薄汚い液体を存分に吐き出した。と同時に、僕は手足の力を急激に失い、ついに崩れ落ちてしまった。
 肩で息をする。思った以上に身体が重い。息を荒げる僕の横に、女王様が立っているのが分かった。静かにじっと、床に這いつくばった僕を見つめている。
 あまりの恥ずかしさから、僕はその瞳を見ることができなかった。長い沈黙に恐怖心が募る。
 本は既に女王様の手を離れていた。それが何を意味するのか、僕にはよく分かっていた。それなのに……。
 腹部を鈍痛が襲い、僕は床に横たわったまま身体を丸めた。女王様は無表情のまま、僕の腹を何度も蹴り続けた。
 必死で許しを乞う。
 椅子としての役割をまっとうできなかった自分が心底嫌になる。女王様に余計な手間をかけてしまった自分に憤りを覚える。自分の情けなさをあらためて痛感し、自己嫌悪に陥る。
 僕は内臓から込み上げてくる嘔吐感を堪えながら、ただひたすら謝罪の言葉を口にした。しかし、お仕置きは終わらない。何度も咳き込み、何度も苦悶の声を上げる。
 執拗に腹だけを責められた僕は、やがて吐瀉物を吐き出した。同時に汗が、涙が、僕の身体からどんどん溢れ出てくる。
 ――あぁ、僕はやっぱり雲と同じなんだ。
 僕は朦朧とする頭で、以前の女王様の言葉を思い出していた。
 女王様のお仕置きの手が止んだ時、僕はぐったりと床に身体を横たえていた。本当に小さな声だったに違いない。しかし僕は、それでも必死で口を動かし続けた。謝罪の言葉を何度も繰り返す。
 容赦なく、リードがぐいと引かれる。
 僕は腹部の痛みに耐えながら、四つん這いのままで女王様の後をついて行った。
 女王様が玄関の扉を開けると、雨のにおいが鼻腔を包み込んだ。女王様はそこでリードを手放し、ひとり雨の中へと歩を進めていった。僕は慌てて、四つん這いのまま後を追う。
 僕が側に着いた時、女王様は遠くの方を指差していた。指の先へと目を遣ると、そこには雨の中、傘も差さずに泥遊びをする五人の子どもたちが見えた。雨に濡れながらはしゃいでいる。
「あの子たちも楽しいのね。」
 そうポツリと漏らす。言いながら女王様は、その身に雨を浴び続けている。その瞳はまるで子どものように活き活きとしていた。
 女王様は僕の目の前にしゃがみ込み、僕の瞳をじっと見つめる。
「雨雲のおかげだね。」
 そう言って女王様は僕の濡れた頭を撫でた。その手はとても温かかった。

 僕の目から、再び涙が零れ落ちた。まるで雨のように。



END

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 額から、じわりと汗が垂れた。
 女王様の踵が、何度も僕の腹を抉る。
 僕は呻き声を上げながら、身体を小刻みに震わせる。
 視線を下へと落とした僕の視界の隅には、すらりと伸びた女王様の脚が映っていた。
 内部から込み上げてくる苦しみが、僕の興奮を煽る。
 背中に感じるお尻の感触と重量感も相俟って、僕の陰部は大きな膨らみを見せていた。
 どのくらいの間こうしているのかなんてもう忘れてしまった。
 床についた膝や肘の感覚はとうに無くなっていた。
 読書に勤しむ女王様は沈黙を保ったまま、時折ページをめくる音を立てる。そして時々僕の腹を蹴り上げる。痛烈な痛みが襲う。吐き気を堪えながら、僕は必死で両手足に力を込める。
 今、女王様の意識の全ては目の前にある本の世界に入っているのだろう。反対に、僕の意識は全て女王様に向けられているのだ。いや、そもそも意識をもつこと自体が罪なことなのかもしれない。
 なぜなら僕は、椅子なのだから。
 それ以上でもそれ以下でもない。もちろん昨日までの僕は椅子ではなかった。しかし今日、僕は椅子になった。それは当然、僕の意思によるものではない。
 女王様がそう望んだから。
 僕にとって、それ以外の理由など必要なかった。
 女王様の手元から伸びたリードは、僕の首輪にしっかりと繋がれている。
 再び腹を蹴り上げられ、僕はたまらず蹲りそうになる。しかし当然、椅子である僕が崩れることは許されない。
 リードがぐいと引かれる。それが僕への合図。僕は同じ姿勢を保たなければならないのだ。
 項垂れていた頭が持ち上げられる。
 窓の向こうで降り続く雨が視界に入った。
 女王様は依然として読書に執心している。その瞳が、その意識が、女王様自身がこちらに向くことばかりを、知らず知らずのうちに考えてしまう。下品な部位を肥大化させながら。僕は自分の欲深さに落胆する。
 僕は女王様によってのみ価値を与えていただける下衆だと言うのに……
 椅子であるという価値が与えられて初めて、僕は僕の存在価値を知ることができると言うのに……
 限りなく募っていく自分のエゴが許せなかった。
 ビクビクと脈打つ汚らしい自身に嫌気が差していた。
 暗雲は陽光を見事に遮っていた。
 以前、女王様に、あなたは雲みたいなものだと言われたことがある。あれはどういう意味だったのだろうか。太陽の輝きを背中で受け止めるあの雨雲。彼は一体、何を思っているのだろう。
 陽光を自分の身ひとつで遮断できることを誇りつつ、恵みの雨を地上へ届けようと自信をもって必死で頑張っているのだろうか。それならあの雨は、雲の流す汗なのかもしれない。
 逆に、生命の源である陽光を地上から断ち切り、人間や動物たちに鬱陶しく思われる雨をその身から流していることを嘆いているのだろうか。それならあの雨は、雲の流す涙なのかもしれない。
 そこまで考えた時、僕は自分の口元が少し皮肉に歪むのが分かった。
 今の僕と、とても似ているような気がしたから。

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明けましておめでとうございます。

一年の計は元旦にあり。
というわけで、今回は女王様と僕の二年参りの様子をご覧いただきました。
揺れ動く「僕」の心情と、女王様の慈悲深い愛情。
そして生まれる、新たなる二人の信頼関係。
新年を迎え、二人は今後どのような道を辿っていくのか。
この二人にとって今年がよい年になるよう、どうぞ応援してくださいね。

皆様におかれましても、今年が実りある一年になりますように。
今年もBlack Onyx [ブラックオニキス]をどうぞよろしくお願いいたします。

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 僕は女王様に続き、慌てて参拝をする。僕の祈ることは全て、女王様に関することばかりだった。
 ――どうぞ今年も、女王様と一緒にいられますように。女王様と、出来るだけ長い時間を過ごすことができますように。どうぞ、その手にしたリードを、女王様が手放しませんように……
 再びリードを引かれる感触があり、僕たちは今来た道を逆に進んでいった。
「何をお願いしたの?」
 唐突な質問に、僕は口ごもる。
 ――僕の願いはただ一つ。あなたと一緒にいたい。出来る限り……出来る限り長い時間……
 それは声にはならなかった。
 声に出してしまったら、それが叶わないような気がしたから。女王様と僕をつなぐ糸が、切れてしまうような気がしたから。不安な気持ちが、もっともっと大きくなってしまうような気がしたから。
 女王様はそんな僕の姿を見て「ふふ」と笑った。呆れられてしまったのだろうか?
 ――女王様。あなたにこの僕の気持ちが分かりますか? 女王様……。
 そんなことを考えていた矢先、女王様がふいにその足をピタリと止めた。
「……出していいわよ。」
 女王様が僕のコートの中に手を入れる。指先で僕の最大限に膨れ上がったものを指で弾く。
「あ……ああっ、はううっ……」
 欲望の溜まっていた僕は、女王様の指先一つで、下半身から煩悩を一気に爆発させた。
「今年も、いい年でありますように、でしょ? 普通は。」
 しばし放心状態で立ち尽くす。地面には白い液体が滴り落ちていった。
 液体とともに僕の煩悩の全てが身体から抜けていく。そんな錯覚に陥っていた。
「本当に馬鹿な子。そんなことだろうと思ってたわ。」
 そう言うと、女王様は僕の首輪をパッと手放した。そして僕の前に背中を向けてすっと立つ。
「私はあなたの飼い主だから……。こんなものなくても、ちゃんとペットはついてくるものよ。」
 その言葉で、僕の瞳には涙が一気に溢れた。
 ――女王様……女王様……。これからも、こんな僕を飼ってくださるんですか?
 忘れもしない秋の日。一人で歩かされることに恐怖を覚えた。女王様の真意を微塵も感じ取れず、僕は孤独感でいっぱいになっていた。女王様には分かっていたのだ。卑屈に曲がった僕の心が。
 ――そんな僕を、あなたは許してくださるとおっしゃるんですか?
 涙は止められそうになかった。ただ女王様に対する敬意だけが、僕の中で大きく膨れ上がっていった。

「……ありがとうございます。」

 ゆっくりと進んでいく女王様の背中を見ながら、僕は深々と頭を下げた。

 ――今年も、いい年でありますように……



END

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