[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  ~美しき女性たちの狂気~
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関東では、つい最近まで桜の木々が桃色で埋め尽くされていました。
それが今では、緑一色。まさに「ただ春の夜の夢のごとし」(平家物語)ですね。
個人的には、葉桜も大好きですが。

本作は、ガーディアンセンターシリーズ第三弾になります。
ゆっくりと、静かに実行されていくプロジェクト。誰も語ることのない、定められたシナリオ。
この世界のもつ雰囲気を感じていただけたら嬉しいです。

GWシーズンですね。
ちまたでは、既に連休に入っている方もいる、などという話もちらほら(?)
皆様は、どんな連休をお過ごしになるのでしょうか?

当サイトは常時、開放しております。連休などとは無縁です。
お時間に余裕のある方は、またぜひご来訪くださいませ。

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 そこにはひとつの美貌があった。
 若い女性だ。大きく切れ長の目。その瞳は、温かさと冷たさが共存しているような魅力をもっている。鼻筋も通っており、薄い唇は淡い桃色の口紅によって上品に輝いていた。流行りの長い黒髪がさらりと風に靡き、時折、彼女の頬を撫でた。
 背が高く、スタイルも抜群だった。
 身に着けているのは、以前、ストレッチ素材と呼ばれていたものによく似た、薄くて伸縮性のあるスポーツウェアだった。身体にぴったりとフィットし、彼女のしなやかな身体のラインを強調している。上半身の半袖は、実用性の高さを意識した丈の短いタイプのものだ。胸の谷間やへそがちらりと覗いている。短いパンツもまた、同じ素材のものだった。肉感的な、長くて綺麗な脚がすらりと伸びている。その足先は、白に紅のラインの入ったシューズに収まっていた。
 彼女は微笑みを湛え、男の様子を静かに見つめていた。まるで、彼が側に来るのを待ち焦がれているかのようだ。片時も、彼から目を離そうとしない。反対に男の方は、女性が目の前にいることも知らないまま、ただ触手に与えられる快楽に酔い痴れていた。
 男がコンベアーの下方に入る。次第に、彼の息遣いが激しくなっていく。悶え、喘ぎ、やがて大きく身体を仰け反らせ、咆哮した。むき出しの亀頭から、白濁液が勢いよく噴出される。
 コンベアーから地面に降り立つ寸前のことだった。男は安堵にも似た息を大きく吐き出し、肩で激しく呼吸をする。彼のチョーカーが外れ、地面に転がる。そして次の瞬間――
 ゴキィッ――!
 鈍い音が響いた。
 男が頭部から吹き飛ばされ、宙を舞う。そして――、容赦なく地面に叩きつけられた。コンベアーから幾分離れた場所だった。声を上げる暇も無く、彼は絶命した。
 アイベルトが外れ、男の飛び出た眼球が露出する。その頭部は歪に変形していた。
 滴り落ちる血液。それらが、彼の顔を優しく包み込んでいた。
 男の頭部付近の草が、赤黒く彩られていく。時間とともに、その範囲はじわじわと拡大していった。これで彼もまた、他の物言わぬ肉塊の中のひとつとなった。近くに転がっている他の死骸が、彼の血液の広がりを妨げた。
 ガーディアンセンターに併設されたこの施設では、これが日常の光景だった。
 女性たちのためだけの遊技場。利用申し込みがあれば、すぐに的となる男が用意された。異常なほど増加した男を削減するためにも、この遊技場は有用だった。
 彼女は微笑んでいた。人工ライトに照らされ、神々しいまでに輝いている。しばらくすると、楕円型の装置上部に設置された電光掲示板が、キラリと光を放った。

 ――α78-pt

 表示された点数を確認した女性は、不満げな面持ちで掲示板を睨んだ。
 血塗れのバットを放り投げると、装置が素早く反応し、新たなバットが彼女の手元に届けられる。
 彼女は新しいバットを手に取り、ぐいと握った。

 次の男がカタカタと運ばれてくる。
 女性はゆっくりとバットを振り上げて待った。



END

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 カタカタという音がしていた。
 静かな中、場違いなその機械音だけが響いている。
 広大な空間だった。
 緑に彩られた土地が、優雅な自然を演出している。空は見えない。その代わり、高いドームの天井には澄み渡った蒼が描かれ、空中には、雲を象ったいくつもの白い綿状の繊維がふわふわと流れていた。
 設置されたライトが太陽の光を忠実に再現し、適温に調整された微風がドームの隅々にまで行き渡っている。地面いっぱいに敷き詰められた人工芝には、わずかな乱れもない。同じ形、適度な丈を保つように品種改良されているのだから当然だ。
 全ては、快適さを求めて研究された、科学の賜物だった。
 この装置もまた例外ではない。楕円型のそれはライトの光をはね返し、広い敷地の真ん中に腰を据えていた。中央の穴から長いコンベアーが絶えず行き来し、カタカタと一定のリズムを刻んでいる。
 無機質な銀色に、単調な動き。
 自然をイメージさせる空間の中、その装置だけが、場にそぐわない異質な世界を作っていた。
 装置が微震する。
 ガクンと一度大きな音が鳴り、コンベアーの動きがわずかに鈍くなる。再び装置が通常の動きを取り戻した時、いつものように、コンベアーはひとりの男を乗せて運んできた。
 若くてスリムな男だった。黒いアイベルトが、彼の視界を遮断している。
 二つの赤いロープが、彼の両手足の自由を奪っていた。ひとつは彼を後ろ手に、もうひとつは彼の太腿と脹脛をしっかりと固めている。着衣は実に簡素なもので、薄い布切れが、肩と腰の辺りを頼りなく包んでいるだけだった。
 反対に、彼の首に嵌められているチョーカーは華々しかった。ちりばめられた色彩鮮やかな宝石が、煌びやかな光沢を放っている。その隙間を埋めるように、いくつかの小さな穴がチョーカーのそこかしこに開けられていた。その穴からは、何本もの触手が伸びていた。
 ゆっくりと流れるコンベアーの上で、男は正しく座していた。しかし、その口元は常に弛んでいる。チョーカーから伸びた触手が、彼の随所を容赦なく刺激しているのだ。
 触手の先は、全てが女性の手を模して作られており、実にしなやかな動きを見せた。
 ある手は彼の胸全体を優しく擦るように這う。ある手は乳首をつまみ、はじき、揉む。ある手は彼の肥大したモノを、時にリズミカルに、時に撫でるように、時に乱暴に弄ぶ。ある手は彼の肛門から指を滑り込ませ、前立腺を直接刺激する。
 男は喘ぎ声を上げ、息を荒げ、身体をピクピクと痙攣させていた。与えられる刺激の愉悦に浸っている――それを証明するように、彼の陰茎は見事なまでにそそり立ち、衰えを知らなかった。
 男は着々と地面の方へと運ばれていった。
 単調に流れるコンベアーとは対照的に、彼は次第に興奮を増しているようだった。身悶え、涎を垂らし、時折、嬌声にも似た声を上げる。それでも触手たちがその動きを止めることはない。
 コンベアーの中ほどまで来る頃には、彼はぐったりと項垂れていた。相変わらず息が荒い。身体を小刻みに震わせ、口の端からは舌をダラリと垂らしている。弛緩しきっている、といった様子だ。
 地面にはひとつの影があった。
 いずれ男が行き着く先だ。無論、目隠しをした彼の瞳に、その姿は映っていなかった。

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つい先日まで夏だと騒いでいた気がします。気付けば、いつの間にやら随分と涼しくなっていました。
そのうちまた、あっという間に冬がやってくるのかなぁと、光陰矢のごとしを肌で体感しています。

本作は、ガーディアンセンター世界における一場面です。
シリーズにすることは前々から予定しており、設定自体は、ほぼ出来上がっています。
……やはり、私の頭の中だけで、ですが(苦笑)
前作では、たくさんのご感想や拍手を頂き、とても嬉しく思いました。
本作も、お楽しみいただけていれば幸いです。

小説目次に「小説:その他」を追加しています。
寄贈小説は、他サイト様に差し上げた作品です。
それ以外は「ぼんやりとした歪な脳内イメージ」を具現化したものが主です。日記ではありません。
内容はサイトコンセプトに関係するものだけではありませんので、ご了承くださいませ。
他サイト様に提供させていただいた作品もこちらに掲載しています。よろしければご覧ください。

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●女性のキャラ絵 →

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 男の足が止まることはなかった。
「鬼さんこちら――」
 女性の声に反応し、男はその声の聞こえる方へと身体を向ける。
 男からは既に、人間的な思考力や判断力というものが抜け落ちてしまっているようだった。
 女性の声と手を叩く音だけに反応し、ただがむしゃらに向かっていく。それは、あくまでも本能的な行動であろう。男の足取りは頼りなく、とても走っているようには見えない。とにかく遅い。
 女性は楽しそうに手を叩いては、迫る男の脇を器用にすり抜け、また逃げる。その表情は実に柔和で、温かかった。まるで我が子をあやす母親のようだ。
「ほら、あんまり急ぐと転んじゃうよ」
 女性がそう言葉をかける。しかし、今の男にとってのそれは、もはや「音」でしかないのだろう。くるりと音の聞こえた方へと向き直り、また足を動かす。女性は手を叩きながら、
「あなたが力尽きるまで付き合うからね」
 と言って、朗らかに笑う。
 そこに込められた意味も、おそらく今の男には理解できていない。
 男は言葉を発しない。時折、呻き声のようなものを上げ、音のする方へと足を向けては、ゆっくりと進んでいく。身体中を血で染め上げ、目、鼻、口、肌など、至る所から未だに血を滴らせて。その姿は実におぞましい。
 女性はそんな男を、愛でるような瞳で見つめている。この鬼ごっこを、心底楽しんでいる様子だった。
 この狭い地下室の中で、鬼ごっこは延々と続いた。
 相変わらず人工光だけが、そんな二人の様子を照らす。
 男は蠢き、見えざる者を追いかけ続けた。壁にぶつかっては倒れ、足を絡めては倒れ、咳き込み、吐血し、それでも足を動かした。

 そして男は倒れた。

 女性が男の側に立つ。その瞳は、慈愛に満ちていた。
「あなたは最初から、鬼になんてなれなかったんだよ」
 意味深な笑みを零す。妖艶な瞳の輝きだった。
 女性は男の頭部を足で捉え、高く振り上げる。そして――
「さよなら」
 ……グシャッという音が地下室を包み込んだ。
「脱走者。区分ナンバー"D-EAD-5502"。処理終了」
 そう報告した女性のブーツの底は、男の喉を完全に踏み潰していた。
 男の口から大量の鮮血がほとばしり、女性の黒いブーツを赤く染め上げた。白目をむいて絶命した男の顔を、女性が、しばしじっと見下ろす。
「D-EAD-5502。DEAD――死……」
 女性は床に膝をつき、両手でその顔を包み込んだ。
 静寂の時間。
「最初から死ぬ運命だった人」
 口付けた唇を、男の血が紅く彩った。



END

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 かくして男は、左手に加え、両目をも失った。当然、右手も無傷ではない。
 崩壊寸前にある今の男の頭には「希望」という文字など浮かびもしないであろう。
 男の目にはもはや、ほのかに閃き続ける人工光も届かない。ただでさえ、力の差は歴然だったのだ。目から光を失ってしまっては、女性からイヤリングを奪うことなど到底できそうもない。
 もちろん、義手・義眼など、現在の医療制度をもってすれば、男の治療は容易なことである。ただそれは、ここを生き延びられさえすれば――つまり、女性のイヤリングを奪えさえすれば、の話だが。
 男は床の上に身を横たえていた。生きていることだけはわかる。その様子はまさに、生ける屍のようだった。感情が見えない。そもそも、何かを感じているのかすらもわからない。言葉を発することもなければ、身体を動かそうとする様子もない。ただ、かすかな呼吸の音だけが、彼が生きているということの唯一の証明だった。
 今の男は、まさに死を待つ者でしかなかった。
 対する女性は男の方を見ることもなく、返り血で赤く染まった身を優雅に動かしていた。まるで、男の存在自体を忘れてしまったかのような振る舞いだ。
 特に何かをする風でもなく、そうかと言って退屈している様子でもない。
 ただ、目的が見えない。自由に地下室を歩き回っているのだ。
 時々、息を大きく吸い込んでは恍惚にも似た表情を浮かべている。血の匂いに酔い痴れているのであろうか。そんな異様な光景の中で、時間だけが流れていった。
「ねぇ」
 と、唐突に女性が口を開く。しかし、男は何の反応も示さない。
 もしかしたら男は、死の時刻がようやく訪れたと思い、それを悦んでいるのかもしれない。もちろん、男の様子からはそういった感情は全く読み取れないが。しかし、女性がさらに、
「早くしてよ」
 と静かに言葉を重ねたことで、男はわずかな反応を見せた。足の指先が動く。汗が額にじわりと滲む。女性はそこでようやく男に目を向け、彼を中心に弧を描くように歩き回った。そして、
「足は動くし……まだ片手も使えるよね……」
 と、ポツリと呟く。男の呼吸が乱れる。
 やがて女性はピタリと足を止め、意味深な笑みを零す。その視線は、今や男をしっかりと捉えていた。
 男は相変わらず動きを見せない。思考力があるのかすらわからない。したがって、女性の言葉の意味するところを理解しているのかもわからない。しかし男は、確実に女性の言葉に反応している。男の耳に、女性の声が届いていることだけは明らかだった。
 女性はじっと男を見据えながら「知ってるよね?」と前置きした後で、
「鬼ごっこは、自分が捕まったら鬼になる。相手を捕まえたら、相手が鬼になる。その繰り返し」
 と、言葉を紡ぐ。男は横たわったままだ。
「つまり、この遊びに終わりはないの」
 女性の声に反応するかのように、男の呼吸がにわかに荒くなっていく。額の汗が塊となって床に落ちる。言葉はなくとも、それが彼の冷汗三斗の思いを如実に物語っていた。
「……永遠に続く。そういう遊びなんだよ」
 語りかけた女性の口元に、冷やかな笑みが浮かぶ。
 少し間を置いてから、女性は深く息を吸い込んだ。瞳に凛とした輝きが宿る。そして、強く厳しい口調で、
「立ちなさい!」
 と、言い放った。それに呼応するように、男の身体がビクッと大きく跳ねる。女性が再度、
「立て!!」
 と命令した時、男はその身体をゆっくりと持ち上げた。ふらつく足取りで、ゆらりと身をなびかせて。
 まるで、行き場がわからずに彷徨う、亡者の霊のように――

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 男の絶叫が地下室いっぱいに響き渡っていた。
 既に左腕を庇う動作は見られない。痛みが消え、縦横無尽にのびのびと床の上を跳ね回っているようにすら見える。しかし当然、そうではない。床を転がり、のた打ち回り、身体を丸めては仰け反らせる。その奇怪な動きは、他の痛みを超える更なる痛みが、女性から男に齎されたことを意味するものに他ならなかった。
 男は右掌で自分の右目を覆っていた。指の間からは血液が溢れており、男の右手は赤黒く染まっている。それでも尚、出血が治まる気配はない。身体を不規則に跳ね回らせながら、男は枯れた喉から声を絞り出し続けた。
 白一色で囲まれていた地下室は、今やその大部分が赤黒く塗り潰されていた。
 女性は立ち上がり、着色されていくこの部屋と男の奇妙な動きを、ただ無表情のまま見つめていた。
 

 ――絶好のチャンス。
 先ほどの瞬間を男がそう見たのは当然だった。
 女性と自分との顔の距離は限りなくゼロに近い。女性の瞳には優しい光が灯り、その身体は自分を包み込むように密着している。唯一使える右手は女性の死角にあり、女性の着けているイヤリングの位置は左側だ。――今しかない、と。
 それを好機と見た男に対して「間違っていた」とは、誰にも言えないだろう。
 女性が再びその顔を男に近づける。男が、女性のイヤリングと自分の右手の位置を確認するように、それぞれに目を遣る。女性の顔がさらに男に近付く。接吻の時を待たず、男が右手に力を込める。
 そのわずかな瞳の揺らめきを、女性は見逃さなかった。
 男の視線がイヤリングへと移行すると同時に、男の右手がそこへ伸びていく。その時男は、自分の視界の端に確かに映っていたはずの、女性の吊り上がる瞳に気付かなかった。いや、正確には、気付いた時にはもう遅く、次の瞬間には見ることができなくなった、と言った方が適切かもしれない。
 女性が突き出した左手の人差し指は、男の右目の中に吸い込まれるように深く入っていった。
 しなやかな指は凶器へと姿を変え、男の右目の角膜を破り、眼球の中身を破壊した。水晶体にまで到達した指は眼房を突き破っており、そこから眼房水が勢いよく噴き出した。それはやがて大量にほとばしる血液によって覆われていった。
 男の右目から光が失われた瞬間だった。絶叫し、身体を大きく跳ね上がらせる。しかし女性はその手を引かない。男の眼球内を堪能するかのように指先を動かし、しばらくその内部を抉り続けた。男は痛みと恐怖が混濁したような声色で叫び、女性は無感情に指を動かす。
 女性の指がようやく男の右目から引き抜かれた時、男は床の上を狂ったようにのた打ち回った。
 イヤリングは、男の血液を浴びてもなお、煌びやかな輝きをもって女性の左耳を飾っていた。


 つかつかとピンヒールがリズムを刻む。その音を妨げるように、男の絶叫が響く。
 女性は男の前でその足を止めると、右足で男の髪を踏み付けてその動きを封じた。怯えを隠さない男を見下ろしながら、左足をゆっくりと持ち上げる。そのヒールの先は、男の左目を捉えていた。
 女性が微笑を湛える。次の瞬間、再び男の断末魔の声が、地下室を覆い尽くした。

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 男の左腕は、もはやその機能を失っていた。
 女性がようやく右足の動きを止め、左足を上げて男の右手を解放した時、彼は反射的に左腕を覆うように体全体を丸めた。全身で左腕を庇いながら、呻き、咳き込み、しゃくりあげるような音を断続的に鳴らしている。その肩は大きく震え、痛々しいほどの恐怖を湛えている。先ほどまでの戦意は、もはや欠片すら見られない。彼の見せる背中は、あまりにも弱々しいものだった。
 呼吸を少しだけ乱した女性が、
「痛い?」
 と、淡然とした口調で問いかける。女性は未だ、男を跨いだままだった。
 男には到底、その問いに答える余裕などないのだろう。さらに身体を小さく丸め、震え続けている。女性はそんな男の様子を楽しげに見つめながら、その背中を容赦なく蹴り上げた。
「ぐっ!」
 小さく男が呻く。転がる身体を留め、再び左腕を庇おうとするが、それは叶わなかった。
 男が仰向けになった隙に、女性が男の腹の上に腰を下ろしたからだ。
「あ……あぅ……」
 心許ない声とともに、男は無意識にか自分の左腕に目を遣る。それから視線を女性へと戻し、
「も、もう……許してください」
 と、泣きつくように言葉を発する。何と発音しているのかすら聴き取りづらいほど、男の声は潰れきっていた。縋るような視線を投げかけている男の凸凹の顔を見ながら、女性は柔らかい笑みを零す。
「あなた、よく見ると可愛いよね」
 女性から放たれた言葉が意外だったためか、男の表情に動揺の色が浮かぶ。女性の瞳には妖艶な光が灯っていた。自分から少しだけ目を逸らす男の頬を、彼女は優しく両掌で挟み込む。そして、
「悪くないよ」
 と男の耳元で囁き、接吻した。
 あまりにも唐突だった。男の瞳が動揺の色を濃くする。彼が再び視線を女性へと向けた時、彼女の頬はわずかに紅色に染まっていた。男はそんな女性の魅惑と接吻による快楽に酔い痴れていくように、次第にその瞳の色を変えていく。彼はいつしか、その顔に恍惚の表情を浮かべていた。
 無音の世界が広がっていった。
 女性は唇の感触を味わうように、男の口を自分の口で包み込む。唇を擦り合わせる。舌を男の口腔内に挿入する。舌を絡める。男の瞳が次第に虚ろになっていく。
 盲目の絡みは続いた。
 いつしか女性は、男に跨っていた身体を少し横へとずらし、指先で男の首筋に触れた。息を漏らし、男は身を捩る。女性のしなやかな手は男の全身を柔らかくなぞり、やがて下半身へと到達する。
 男のモノは肥大化していた。
 女性がその手でそこをそっと包み込むと、男は敏感な反応を見せた。柔らかく擦る女性の手に呼応するように、男は身体を痙攣させ、喘ぐ。
 やがて男は果てた。吐き出された白濁液が下腹部を汚し、幾滴かが床へと零れた。
 唇と唇が離れる。同時に、二人の息遣いだけが、無音の世界を断つ。
 瞳と瞳がぶつかり、男はまた動揺の色をその表情に湛える。放心したように視線を外す。
 その時、男の切れた瞼が大きく開かれた。目に映るそれを凝視し、男は喉を鳴らした。

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 鈍い音が地下室を覆った。
「ぎぃやあああぁっ!……うぁ、……がああああぁ!」
 間もなく、男の断末魔の声が部屋全体に響き渡る。その勢いで男が瀉血する。
 女性の足はまっすぐに、男の折れた左腕へと伸びていた。同時に、男の背後にあるシェルターの壁が軋み、音を立てる。
 男の左腕は、女性が放った蹴り足とシェルターの壁に挟まれ、完全に押し潰されていた。
「はあっ……かっ……」
 男は声にならない声を必死で絞り出そうとしているようだった。折れた部位を追撃されたことによる苦痛は、男にとって想像を絶するものだったに違いない。擦れた息音だけが空しく喉から吐き出される。
 顔面を床へ押し付けるようにして、男は崩れ落ちた。男の顔周りの床には、じわじわと血溜まりができていった。
 間髪入れずに、女性は足で男の身体を押すように蹴って仰向けにさせる。
 男の顔は腫れ上がり、諸所が切れていた。口鼻からは血が流れ、既に原形を留めていないと言ってよいほど歪んでいる。加えて、先ほどの折れた左腕への追撃がよほど堪えたのだろう。男の開ききらない目は涙で覆われていた。
 しかし女性は、攻撃の手を止めるどころか、緩めるつもりもないらしい。彼女の瞳の煌々とした輝きが、その意思を明確に示していた。
 女性は、男と目線がしっかりと合う位置へと身体を動かす。頭の向きが二人同じになる。男の顔を見下ろしながら、女性は男の身体を跨いだ。突如、男が身体をビクッと反応させる。とっさに左腕を庇おうと男が動かした右手の掌を、女性は左足のピンヒールで突き刺し、押さえ込んだ。
「うあぁっ!」
 と、男が悲痛な声を上げる。右掌から血が滲む。
 女性は「ふふっ」と声を出して笑うと、既に力の入っていない男の左腕の方をじっと覗き込む。男は女性の行為を予測してか、全身を大きく震わせ、
「や、やめ……やめ……」
 と、断片的な言葉を放つ。大量の脂汗が男を包む。しかし女性は、男の心境を全く意に介していないようだった。嬉々とした表情を顔全体に浮かべ、再び、折れた左腕を執拗に足で責める。
「うあっ……っがあああああっ!……ぐっ、ああああっ!」
 男の声はすっかりしわがれてしまっていた。
 女性は、男の表情とその左腕を交互に見ながら、その足で左腕だけを徹底的に痛めつけた。女性は恍惚の表情を浮かべており、継続的に流れる笑い声は嬌声にも似ていた。
 ピンヒールブーツの爪先で、裏で、踵で――踏み付け、踏み躙り、突き刺し、抉り、嬲り、弄び――
 男の絶叫が鳴り止むことはなかった。
 彼の左腕は全体的に肥大し、赤みと青みの混じった奇妙な色へと変わっていく。さらに歪みを大きくしていく腕が、骨折部の増加を物語っている。諸所から鮮血が溢れ、その数も時間とともに増えていく。例えるなら、ゾンビの腕のよう、であろうか。今や男の腕はおぞましい物体へとその姿を変えていた。
 苦痛に加えて、狂気を湛えた女性の瞳、そして刻々と姿を変えていく自分の腕の恐ろしさもあろうか。
 男の悲鳴は恐怖を極めたように、限りなく本能に近い声色となって、この密室に反響し続けた。

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 必然の結果だと言ってしまえば、元も子もないかもしれない。
 ただ、この闘いが男にとって不利なものであることは、誰の目にも明らかだった。
 ガーディアンシステムの確立したこの完全な管理社会にあっては、全ての面において男が女に劣るのは当然のことだった。理由は、この社会のもつ女性上位の性質の影響が大きいからである。

 システムに反対する男たちもいたが、それは叶わなかった。
 実質九割を占める男性過多の社会状況。男の欲求不満ゆえの強姦事件の頻発。
 女性と人類の保護という大義名分を前に、反対派の抵抗はあまりにも説得力を欠くものだった。

 かくして成立したガーディアンシステムは、女性優位の不平等社会を着実に作り上げていった。
 女性は生まれた時から手厚い保護を受けながら教育を受ける。そして、成長に伴って住居区に移り住むことができる。そしてそれ以降は、いろいろなシステムサービスが与えられる。一方、男はセンターの敷地内から出ることすら許されていない。システムサービスを受ける自由などもない。
 つまり、これだけでも三つの男女不平等が成り立っているのである。
 一つめは、教育の違いによる知的レベルの差。
 二つめは、居住する環境の違い。住居区で太陽の光を存分に浴びて育つ女性と、センター内の人工光のみで育つ男性の発育の状態は、決して同じではない。
 三つ目は、システムサービスの有無。男がセンター内授業の体育だけで身体を鍛えるのに対し、女性は希望次第であらゆる運動ができる。女性が学べることの中で、特筆すべきは格闘技だ。空手、拳法、合気道、柔道、剣道、その他。様々なジャンルの武術を学ぶ機会が、女性にのみ与えられている。
 そして、この女性には格闘技の心得があった。身体こそ妖艶でしなやかであったが、内に秘めているものが違いすぎる。仮に、先の二つの条件を抜きにしても、この二人の差は最初からあまりにも大きかったのである。


 男は昏倒寸前だった。
 項垂れ、壁に身体を預けたまま、座るような体勢で腰を地に着けていた。
 手はダラリと垂れ下がり、足は前に放り出されている。身体中に傷痕や痣ができ、口からは相変わらず鮮血が零れていた。先ほど女性の蹴りを受けた左腕の一部が、不自然な形に曲がっている。いや、関節がひとつ増えているかのようだ、と言った方が適切かもしれない。男は骨折していた。
 そんな男の様子を見て、女性は瞳を輝かせていた。口元を妖しく歪め、舌をチロリと覗かせる。息も少し荒くなっているようだった。それはおそらく疲労からではなく、興奮によるものなのだろう。女性の艶然たる表情が、それを明確に物語っていた。
 女性はヒール音を奏でながら、ゆっくりと男に近付くと、
「今度は、また私が鬼かな?」
 と、子どもっぽい声色で問う。男の口がわずかに動く。何かを伝えようとしているようだが、そこから音が出てこない。女性の目尻がにわかに下がる。まるで、か弱い小動物を愛でるような瞳だった。
 女性の脚が、静かに持ち上げられた。

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