[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  〜ソフト苛めからハード拷問まで〜
グリム童話『子供たちが屠殺ごっこをした話』をヒントに執筆した作品です。
残虐性が高いため、途中から削除された物語だったかと思います。
オマージュではありません。オリジナル作品です。それから、フィクションです。当然。

本作は当初、全三話完結の短編として執筆しました。
ですが、連載途中で気が変わりました。
もう少し、この残酷な物語を膨らませてみたいという衝動に駆られました。
後半の"piece"部分が、後に加筆したものになります。
男の子の書いたノートなので、非常に読みにくいとは思いますが(汗)
併せてご覧いただければ幸いです。

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 ルリエちゃんの家についたら、やくそく通りセンタッキをかしてもらえました。
 カリンちゃんとユラミちゃんもいっしょです。お家の人は、るすだったけど、ルリエちゃんがセンタッキのつかい方をおしえてくれたので、できました。
 お家とちがって、カンソウキとかいうのもあって、センタッキが終わったら、そこに入れます。
 カンソウキは、すごかったです。すぐに、ようふくもズボンも、かわきました。
 せんたくが終わったときには、三人とも外に出ていました。ようふくをきて、ズボンをはいて、お家を出たときには、ちょうどルリエちゃんが、お家のお手つだいをしていました。
 
  ニワトリ小屋がありました。

  はねがバタバタとふるえる音がしていました。

  耳がいたくなるくらい大きいニワトリのなき声がしていました。

  ルリエちゃんの手が見えました。

 すごくびっくりしました。ルリエちゃんの手が血だらけになっていたからです。お手つだいのとちゅうでけがをしたんだと思いました。でも、カリンちゃんもユラミちゃんも、ニヤニヤして手を見ているだけだったので、ぼくはまたびっくりしてしまいました。
 ぼくはいそいで、ルリエちゃんの方に走りました。

  ルリエちゃんとユラミちゃんとカリンちゃんがいっせいにこっちを見ました。
 
  首のないニワトリがたくさんいました。

  たくさんの血が見えました。

 ルリエちゃんがぼくをにらみました。にらんでないのかもしれません。わかりません。おこったかおはしてなかったのに、ぼくはその目がこわくてたまりませんでした。
 ぼくは足がふるえて、動けなくなりました。
 そのあと、ルリエちゃんは、カリンちゃんとユラミちゃんにないしょ話をしました。
 三人がニヤニヤしているのが見えました。
 ルリエちゃんが、ぼくのそばに歩いて来ました。そのときには、やさしいかおにもどっていました。
 けがじゃないし、そういうお家のおしごとなんだと聞いて、ほっとしました。
 まだ何かされるのかと思ってこわかったけど、もう帰っていいと言われました。
 もっとうれしかったのは、帰るときにルリエちゃんが言ってくれたことです。
 ぼくはうれしくて、泣いてしまいました。
 男の子なのにまた、泣いてしまいました。

 もういじめないと言ってくれたんです。
 
「あしたで終わりにするね」って。


(以降は破られている)

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 今日は何回も何回も「いやだ」と言いました。いっぱいいっぱい言いました。走ってにげようとしました。
 すぐにつかまってしまったけど、たくさんからだを動かしました。がんばって動かしました。
 でもカリンちゃんとユラミちゃんにりょう手とりょう足をつかまれたときは動けなくなりました。
 そしたら、ルリエちゃんがわらいながら、ぼくのあそこをつま先で思いっきりけりました。
 すごくいたかったです。がまんできないくらい、いたかったです。
 ぼくは、またたおれてしまいました。
 でも、ぼくは泣きませんでした。なみだは出たけど、泣いてません。

 お母さん。またうそをついてしまってごめんなさい。
 ようふくをやぶったのは、ほんとはカリンちゃんとルリエちゃんとユラミちゃんです。
 ぼくがたおれて動けなくなったから、三人で力いっぱいやぶったんです。

 今日はそれからズボンもぬがされました。
 でも、ズキズキおなかの中までいたくなってきて、しゃべれません。
 すごくはずかしかったけど、そのほうがあそこをけりやすいんだと言われました。男の子は女の子よりいたいんだって、楽しそうに言われて。
 さっきもすごくいたかったし、苦しかったから、ぼくはほんとにこわかったです。
 こわくて「ゆるしてください」と言ってしまいました。
 でも、三人ともニヤニヤしながらぼくを見てるだけでした。

 けられました。やっぱりすごくいたくて、一回でたおれてしまいました。
 そしたらまた立たされて、またけられました。また、たおれました。また、立たされました。
 なかなかゆるしてくれませんでした。
 あそこをけられるのは、ものすごくいたいです。たくさんたくさん、けられました。
 でも、ぼくは男の子だから、がまんしました。がまんして、何回も何回も「いやだ」と言いました。
 そしたらなまいきだって言われて、またいっぱい、けられました。

 今日はようふくはあまりよごれなかったけど、からだがドロだらけになってしまいました。
 ぼくはお母さんのおしおきがこわかったです。
 だから、いっしょうけんめいユラミちゃんとカリンちゃんとルリエちゃんにおねがいしました。
 みんなの家にもきっとセンタッキがあると思ったからです。
 
 めいれいを一こずつ聞いたら、かしてもらえることになりました。

 カリンちゃんは「足がよごれたからなめなさい」と言いました。ぼくはびっくりしました。
 もっとこわいことを言われると思ったからです。
 ルリエちゃんが「もっといいめいれいにしなよ」とわらいながら言うと、カリンちゃんは「いいじゃん。あしたもどうせやるんだし」と言いました。
 ぼくはすぐにカリンちゃんの足をなめました。いっしょうけんめいなめました。カリンちゃんの足には、土や草が少しついていました。なめていると、ときどきぼくのかおをけります。でも気もちよさそうにしていました。
 ぼくはセンタッキをかしてもらうために、がんばりました。

 ユラミちゃんは「馬になりなさい」と言いました。ぼくはまたびっくりしました。
 カリンちゃんも同じだったけど、いつもみたいにいじめられるよりずっとかんたんです。ルリエちゃんはまたわらっていました。
 ぼくはユラミちゃんの馬になってグルグルと歩きました。「ヒヒーン」と馬のなき声をまねすると、みんながわらいます。ときどき、かみの毛をひっぱられたり、あたまをたたかれたり、かかとでおなかをけられたりします。でも楽しそうにしていました。
 カリンちゃんとルリエちゃんもそれを見てたくさんわらっていました。そしたら、ぼくも少しだけうれしくなってきました。大きな声で、なきまねをしました。
 ぼくはまた、センタッキをかしてもらうために、がんばりました。

 ルリエちゃんのめいれいは一番びっくりしました。カリンちゃんもユラミちゃんもびっくりしていました。「手をつないで家までいっしょに来なさい」と言われたからです。
 カリンちゃんとユラミちゃんは、ルリエちゃんに「バカじゃん」とか「何それ」とか言いながら、ずっとわらっていました。
 ルリエちゃんはちょっとおこっていました。はずかしそうなかおもしていました。「いつまで、はだか見せてんの、バカ」と言われました。
 ようふくをきることをゆるしてもらえてよかったです。ズボンもはきました。
 ぼくは、すぐにルリエちゃんの手をにぎりました。そしたらルリエちゃんは「フン」と言いました。でも、ちゃんとぼくの手をにぎっていました。
 ぼくは、しっかりとルリエちゃんの手をにぎって歩きました。カリンちゃんとユラミちゃんも、わらいながらついてきます。
 ルリエちゃんはときどき「いたいよ、バカ」と言ってあたまをたたきます。「はなしたら、だめだからね」と言って、つないでいる手をかんだりしました。
 でもぼくは、はなしませんでした。ルリエちゃんのお家につくまで、ずっとはなしませんでした。

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(男の子のノートより)

 ぼくはクラスの女子にいじめられています。
 カリンちゃんとルリエちゃんとユラミちゃんです。カリンちゃんは目が大きくて、かみの毛が長い子です。ルリエちゃんはかみの毛を二つにむすんでいて、色が白い子です。ユラミちゃんはせが高くて、口が小さい子です。
 ぼくはよわいから、いつも泣かされてしまいます。
 三人ともすごくつよくてこわいです。
 でも、まえにお母さんが「男の子はつよくないといけない」と言ってました。
 お父さんは「いやなことはちゃんといやだと言いなさい」と言ってました。
 だからぼくは、がんばりたいです。男の子だからつよくなります。ちゃんと「いやだ」と言います。


 今日はでん気あんまをすると言われました。
 カリンちゃんとルリエちゃんに体をおさえられました。
 ユラミちゃんにりょう足をつかまれて、あそこをグリグリされます。「やめて」と言ったけど、ゆるしてくれません。
 体も動きません。ずっとずっとグリグリされました。すごくいたかったです。
 でもぼくは「いやだ」と言えませんでした。男の子なのに。

 はずかしかったから、お家に帰ってもお母さんには言えませんでした。
 せなかに土がついていたのは、ほんとはいじめられたからです。ふざけてやったんじゃないです。
 ぼくはお母さんにビンタされました。すごくいたかったです。
 ぼくがよわいからうそをつかないといけません。うそをつくから、おしおきでたたかれてしまいます。
 あしたはちゃんと「いやだ」と言いたいです。つよくなりたいです。


 今日はおなかをたくさんパンチされました。
 ルリエちゃんが後ろからぼくをつかんで、カリンちゃんとユラミちゃんがこう代しながらパンチしてきます。キックもされました。
 何回も「おえっ」てなったけど、なかなかやめてくれません。ものすごく苦しかったです。
 でも今日は、ちゃんと「いやだ」と言えました。
 
 だけど、お家に帰ったらまたお母さんにビンタされました。かべにあたまもぶつけられました。
 それは、ぼくがまたうそをついたからです。
 お母さん、ごめんなさい。
 今日はおなかにパンチとかキックとかいっぱいされたから、どうしてもがまんができませんでした。
 帰るとちゅうでゲロゲロしました。ゲロゲロでよごれたようふくがはずかしかったから、わざとドロにつけました。やんちゃでやったんじゃないです。
 ぼくがよわいから、またおしおきされます。「いやだ」と言えたけど、まだつよくなってないです。
 でも、おしおきはほんとにこわいです。あしたはぜったいつよくなります。
 もっと大きな声で「いやだ」と言います。


 今日はすぐに「いやだ」と言いました。でもそしたら、何回も何回もビンタされました。
 ぼくは泣いてしまいました。
 いつもみたいに、ユラミちゃんとカリンちゃんとルリエちゃんにこう代でされました。
 すごくくやしい。くやしい。
 きのうお母さんにビンタされたばかりだったから、すごくいたかったです。
 ぼくが泣いたらカリンちゃんは「男のくせによわいよねー」と言ってわらいました。
 ユラミちゃんもルリエちゃんもわらいました。「ちょうきもい」とか「しね。ばか」とかいっぱい言われて、ぼくはもっと泣いてしまいました。
 そしたら、ユラミちゃんが「うるさい」と言って自分のクツをぼくの口に入れました。土が気もちわるくて「おえっ」てなります。においでくらくらします。
 そのあと、ルリエちゃんにあたまをけられてたおれたので、またようふくがよごれてしまいました。
 たおれたら、かおとか、せなかとかいろんな所をふまれます。つぶれるくらいつよくふまれました。
 からだ中が、ものすごくいたいです。ずっとわらわれるのが、ものすごくくやしかったです。
 ようふくは土とか、はな血とかでまたよごれてしまいました。

 でも今日は、からだ中にもいっぱいキズがあって血が出てたので、ようふくをすぐにぬげませんでした。
 だから、ようふくをきたままおふろに入りました。ふざけてたんじゃないです。
 ぼくがよわいせいで、いつもお母さんをおこらせてしまいます。
 ビンタがほんとにほんとにいたい。おふろの水にしずめられたときはすごくこわかったです。
 もうおしおきはいやです。こわいです。つよくなりたい。つよくなりたい。

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 風間の視線の先には女の子たち三人の弱々しい後ろ姿が映っていた。俵田もそれに気付き、同じように彼女たちに視線を注ぐ。
「それにしても彼女たち……」
 と、風間が呟く。
 俵田は視線を三人へと向けたまま、彼の言葉に耳を傾ける。風間の瞳は焦燥感を湛えていた。
「いじめは残酷なものです。できれば彼女たちには一生……」
 風間はそこで口篭る。俵田には彼の真意がよく分かっていた。
「そうだな。だがな……。彼女たちの人生はこれからでもあるんだ」
「……やっぱり、いつかは忘れてしまうんでしょうか?」
「望まないか?」
「……分かりません。でも、本来なら……やはり、一生背負っていくべきことだと思います」
 風間はそれ以上口を開かなかった。俵田は明るく、しかし毅然とした口調で言った。
「君の仕事は、そうやって落ち込むことか?」
 その言葉を聞いて、風間はその瞳に光を取り戻す。
「……分かっています」
 そこまで話した後、二人は車に乗り込んだ。


「お母さん。またうそをついてしまってごめんなさい。ようふくをやぶったのは、ほんとはカリンちゃんとルリエちゃんとユラミちゃんです」
 カリンは歩きながらポツリと呟いた。それを聞いた二人はその視線をカリンへと注ぐ。ユラミがそれに続くように口を開く。
「あそこをけられるのは、ものすごくいたいです。たくさんたくさん、けられました。でも、ぼくは男の子だから、がまんしました」
 ユラミの声もまた小さなものだった。
 それは男の子が残したノートの内容だった。
「二人とも、おぼえてたんだね」
 ルリエは下を向いたまま、囁くように言った。
 カリンが再び、静かに口を開く。
「うん。でも、しょうこをのこしてたなんて」
「びっくりしたね……」
 ユラミがそこで口を紡ぐ。
 カリンとユラミの視線が一気にルリエに注がれる。ルリエはその雰囲気を感じ取り、そっと自分のポケットに手を入れる。そこから引き出されたのは、ちぎれた小さな紙の切れ端だった。
 ――男の子が、一番最後に残した言葉。
 ルリエはその紙をしばらく見つめると「私も覚えたよ」と声を張る。そして彼女はその紙を細かくちぎり、排水溝に捨てた。ゆっくりと口を開く。

「今日は、とさつごっこ?とかいうあそびをするって言われました」

 三人の口元が歪み、奇妙な笑みをつくった。



END

【 piece : ノート断片より 】

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 夫は美奈子の肩を擦りながら、三人の女の子に語りかけた。
「君たちの気持ちはちゃんと伝わったよ。この子をこんな姿にしたのは君たちじゃない」
 彼が息子の方へと目を移す。その首は無惨に切り裂かれ、付着した血液は既に凝固していた。
 女の子たちは声を失い、ただすすり泣くばかりだった。夫は言葉を続ける。
「ただ、君たちがこの子をあんな所へ呼び出さなかったら……。いや、そもそもいじめなんてなければ、こんなことにはならずに済んだかもしれないとは思ってる」
 彼が一呼吸おく。
「おじさんたちがそれを忘れることはない。もちろん君たちを許すことも」
 その口調はとても重々しかった。女の子たちは拳を固く握り締め、正座したまま肩を震わせていた。彼女たちの涙は留まるところを知らず、未だ床を湿らせ続けていた。
「もう帰ってくれるかな。酷いことを言うようだけど……この子もきっと、君たちの顔をいつまでも見ていたくはないだろうから……」
 女の子たちは何も言わなかった。頭を下げ、一人ずつ家を出て行く。


 しばらくすると、家の中にいた警察官たちは夫婦の前に集った。
「今日はこれで失礼いたします。ご協力、ありがとうございました」
 俵田がそう言って丁寧に頭を下げる。他の警察官たちも黙って深く礼をした。夫は項垂れていた顔を力なく上げ、軽く会釈をする。美奈子が顔を上げることはなかった。
 風間は去り際に再度、亡き者となった男の子の首筋をじっと見つめた。

 他の警察官たちがいそいそとパトカーへ乗り込んでいく中、風間はひたと足を止めた。考え込む。
 男の子が発見されたのは夕方四時三十三分。埠頭の工場跡で首を切り裂かれて即死。現場に凶器は見当たらなかった。普段は人一人いない、今は使われていない工場だ。さっきの女の子たちの通報がなかったら、発見はもっと遅くなっていたかもしれない。いじめを肯定するわけではないが、彼女たちの連絡のおかげで早期発見に繋がったこともまた事実だ。
 複雑な心境の中、風間は事件を頭の中で整理していた。その様子を見た俵田もまた、彼の横で立ち止まっていた。風間にとってどうしても腑に落ちなかったのは、男の子が残したノートについてだった。
 風間は隣に俵田がいることを確認し、そっと耳打ちする。
「よかったんでしょうか、言わなくて……」
 俵田は首だけを家の方へと向け、
「今は、そっとしておいてあげたい。お二人が落ち着いた頃にまた来よう」
 と、冷静な声で応える。しかし彼の拳は固く握られ、その唇は強く噛み締められていた。
「そうですね。真相もまだ分からないですし。ただ……」
「分かっているよ。ちぎられたノートのことだろ?」
「……そうです。現場にあった破片は、全てじゃなかった。本当に隠したかったのは……」
 風間がそこで口を噤む。俵田も胸中は同じだった。
 ――まだ見つかっていない、最後のページの破片……
「おそらく、それが重要な手がかりになるはずだ」
 俵田は語気を強めてそう言い放った。

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 ――このノートはお父さん、お母さんへの手がみです。一生わたすことはないと思うけど。
 
 ノートには、そこかしこにちぎられた跡があった。
 切れ切れのノートに綴られた文字を見ながら、彼女は涙を流し続けている。
 変わり果てた姿で家へと戻ったその子が動くことはもうない。
 あの子の気持ちに気付いてあげられなかった。その後悔の念が、彼女を容赦なく責め立てる。
「美奈子……」
 沈み込む彼女に夫が声をかけた。側に寄り添い、静かに頭を撫でる。彼もまた、彼女と同じ気持ちだった。ただ、今は精一杯彼女を支えてあげなければならない。夫はそう感じていた。

 二人の側を慌しく動き回る何人もの警察官たち。
 同情の念もあろうが、何しろ彼らにとっては仕事の時間だ。二人を慰めている時間などなかった。
 若い刑事――風間が、俯く彼女に囁く。
「奥さん、すみませんがちょっとお話が……」
 しかし彼女は動く様子を見せなかった。すぐに別の刑事が彼の行為を制する。俵田という年輩の男だった。声を出さずに首だけを小さく横に振る。風間はため息をつき、夫婦の側を離れた。

 ――今日はでん気あんまをすると言われました。カリンちゃんとルリエちゃんに体をおさえられました。ユラミちゃんにりょう足をつかまれて、あそこをグリグリされます。「やめて」と言ったけど、ゆるしてくれません。体も動きません。ずっとずっとグリグリされました。すごくいたかったです。でもぼくは「いやだ」と言えませんでした。男の子なのに。

 美奈子の視線が、自然とそこにいる女の子たちの方へと向けられる。
「ごめんなさい……。ごめんなさい……」
 座り込んだ三人の女の子は大粒の涙を流し、夫婦の側に座り込んでいた。反省の念を顕わにする彼女たちに追い討ちをかけるような真似はできない。正確に言えば、美奈子にはそんな気力すらも残っていなかったのだった。美奈子は再び肩を落とし、ノートに目を通す。

 ――今日はおなかをたくさんパンチされました。ルリエちゃんが後ろからぼくをつかんで、カリンちゃんとユラミちゃんがこう代しながらパンチしてきます。キックもされました。何回も「おえっ」てなったけど、なかなかやめてくれません。ものすごく苦しかったです。でも今日は、ちゃんと「いやだ」と言えました。

 美奈子の涙が、指紋防止用の手袋の上にポタリポタリと零れていった。夫は美奈子を気遣いながら、その涙をハンカチで拭う。そこには、息子の残したノートが濡れてしまわないようにという配慮もあった。

 ――何回も何回もビンタされました。ぼくは泣いてしまいました。いつもみたいに、ユラミちゃんとカリンちゃんとルリエちゃんにこう代でされました。すごくくやしい。くやしい。

 そこまで読んだ時、とうとう美奈子は大声を上げて泣き崩れた。
 彼女の泣き声に呼応するように、三人の女の子もまた大声を張り上げて泣いた。

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『ピューと吹く!ジャガー』という漫画があります。
ご存知の方も多いかと思いますが、うすた京介氏の書かれているギャグ漫画です。
その中の「五月病」を取り扱った作品を見ていて何となく思いつき、何となく書きました。
軽いタッチの不条理ストーリーです。
最近はドギツイ作品ばかり執筆していましたので、ちょっと頭休めにと。
頭が弱いので、時々こうやって脳みそをユルユルにしないと滅入ってしまいます(苦笑)
気軽に読んでいただければ幸いです。

GWも終わりました。
皆様におかれましても、どうぞ五月病にはお気をつけくださいませ。

逆リョナ@wiki」作成にご協力下さっている方々、本当にありがとうございます。
皆様から頂く情報には、大変助けられています。個人レベルではやはり限界がありますので。
情報は随時募集しています。ぜひ、お気軽にお寄せください。よろしくお願いいたします。

次回は「女子高生シリーズ」続編を掲載予定でおります。
よろしければ、どうぞお付き合いください。
今後とも、Black Onyx [ブラックオニキス]をどうぞよろしくお願いいたします。

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 苦しさから目に涙が溜まってくる。
 ひとしきり吐き終えた時、ふと後ろに気配を感じた。ふり返ると、そこには真紀が燃えるような瞳で僕を見つめていた。僕は身体を無意識に縮こめる。
「殺してほしい?」
 真紀が恐ろしい言葉を吐く。僕は大きく身震いをすると、首を何度も横に振った。しかし彼女は「ふーん」と気のない返事をする。そして後ろから僕の髪をぐいと掴むと、今度はトイレの壁に僕の顔面を叩きつけ始めた。
「があっ!」
 たまらず倒れ込みそうになる。真紀はそんな僕の腹に膝を突き立て、身体を支える。
「ぐぅえっ!」
 再び髪を掴まれ、瞳を覗き込まれる。真紀の口元は緩み、「ふふ」と声を漏らす。彼女が右手を振り上げるのが見えた。パンという音とともに、僕の顔が横に振られる。打たれた左の頬はすぐに熱を帯びてきた。さらに右側からも打たれる。それから何度も、彼女のビンタは右から左から容赦なく飛んできた。僕はただひたすら「ごめんなさい。ごめんなさい」と情けない声を上げ続けた。
 しばらくすると、真紀はふと僕の髪から手を放す。僕は彼女から与えられた苦痛で身体中がだるく感じられてきていた。
 真紀はしばらくぼうっと天井を見つめ、それからふと僕を見る。先ほど部屋で見たのと同じような、うつろな瞳だった。彼女がポツリと口を開く。
「ちょっと、何してるの?」
 予想外の言葉に僕は呆気に取られる。
「もう、嫌らしいんだから。女の子のトイレ覗くなんて最低。」
 ――?……いや、あの……え?
「早く出ていってよ、もう。」
 あまりにも理不尽な言葉だと思った。しかしながら、この時の真紀は確かに僕の知っている真紀だった。さっきとは打って変わった明るい声だ。僕は彼女の手から解放されたことに安堵し、ふうっとため息を漏らす。「ごめん」とだけ言い残し、すぐさまトイレから出る。やがて中から、彼女の機嫌のよい鼻歌が聞こえてきた。
 ――何だったんだろう?……一体、彼女って?
 疑問は尽きなかった。しかしながら、真紀がいつもの様子に戻ったことで僕は安心感に包まれていた。しかしながら、彼女から受けた攻撃は未だ僕を苛み続けていた。彼女がトイレから出てくる頃には、僕は身体の限界から布団の上に倒れ込んでいた。真紀はそんな僕の姿を見て心配そうな声を上げる。
「どうしたの? 大丈夫?」
 僕にはもうツッコむ気力すら残っていなかった。身体中が痛む。
「大丈夫だよ。ただ、ちょっと休んでいい?」
「あ、うん。もちろんそれはいいけど。本当に大丈夫?」
 言いながら真紀は僕にそっと布団をかける。側に横になり、僕の頭を撫でる。心配そうな顔をしながら、彼女はしきりに僕の傷痕を擦る。彼女にその優しさが戻ってくれただけで十分だった。しかし身体の痛みは消えない。僕は正直に答える。
「……うん。ただ、何だか身体が重くなってきちゃって……」

「そっか……。もしかしたら五月病なのかもね。」
 
 ……僕は彼女がますます分からなくなった。



END

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「うーん……」
 と真紀は唸り、再び憂鬱そうな表情を浮かべる。
 幸い今日は日曜日だ。休日になるとデートに出かけるのが僕たちの日課になっていたが、気分が悪いのなら無理をする必要はない。
「今日はゆっくり休もうか。」
 そう言って、僕は布団を用意する。真紀は深いため息を吐き、また窓の外に目をやっていた。
 真紀の症状が分からず、僕は不安に駆られる。
「……やっぱり、季節柄なのかな?」
 無意識に出た独り言だったが、真紀はそれに反応する。
「季節柄って? どういうこと? こういう気分になる病気があるの?」
「いや、病気って言うかさ……」
 そこまで言って僕はふと先ほどのことが気がかりになった。真紀のあの態度の変容は一体何だったのだろう。いきなりあんなことをするなんて。そう思うと、僕は口を開かずにはいられなかった。
「あの、さ。さっきは何であんなに怒ったの?」
「え? 何が?」
 真紀の反応に僕は驚く。
 まるでさっきまでのことをすっかり忘れてしまったかのように、彼女は平然とした表情を見せていた。
「何って。さっき僕を蹴ったでしょ? すごく怒って。聞いただけだったよ、五月病じゃないかって――」
 そこまで言った時、真紀は唐突に立ち上がり、僕の方へと向かってきた。
 顔を掴まれ、僕は自分の敷いた布団の上に倒される。
「え? ちょ……あ、もごっ……」
 僕の口に真紀の足が捻じ込まれる。喉につかえる感触に不快感を感じ、たまらず吐き気を催す。彼女はやがてその足を僕の口から引き抜くと、躊躇なく僕の顔面を踏み付けた。噴き出す鼻血とともに、痛みが込み上げてくる。思わず僕は唸る。
「……今、何て言ったの?」
 その真紀の声音は明らかに威嚇の様相を呈していた。
 僕は何が何やら分からず、ただその痛みに悶え苦しんだ。彼女の足の下から滑り出すと、僕は顔面を押さえて身体を転がした。
「ぐ……あぁ……」
 呻き声を上げる。それでも真紀の猛攻は収まらない。転がる僕を甚振るように、何度も身体中を蹴り上げる。僕は理由が分からないまま、ただ身を丸めていた。
「ご、ごめん。僕、何か気に障ること言った? だったら、謝るから!」
 しかし真紀の蹴りはなおも続く。しかし、この時僕には一つだけ分かったことがあった。「五月病」だ。さっきからこの言葉に彼女は反応し、普段は決して見せることのない凶暴性を発揮している。嫌な思い出があるのかもしれない。何かトラウマがあるのかもしれない。
 そんなことを考えていた矢先、真紀のニードロップが仰向けに倒れた僕の腹を見事に抉った。
「ぐ……うええぇ!……あぐぅ……」
 強烈な不快感が僕を包み込む。内部から突き上げてくる嘔吐感に耐え切れず、僕は必死でトイレへと駆け込んだ。
「どこ行くんだよ、おら!」
 真紀の罵声を背中で聞きながら、僕は便器に顔を突っ込み、喉の奥から勢いよく吐瀉物を吐き出した。

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