[18禁] 逆リョナ系SM小説サイト  〜ソフト苛めからハード拷問まで〜
これまでの「女子高生シリーズ」の内容を多く含んだ作品となっております。
ですので、本作で語っていない背景なども多々あります。
お時間に余裕のある方はシリーズを通してお読みくだされば、よりお楽しみいただけるかと思います。
できるだけ単独でも楽しめる作品を心がけてはいるのですが、事実関係や伏線等について逐一触れると、くどかったり、不自然だったりしますので。
どうぞご容赦くださいませ。


登場人物も多くなってきましたので、人物相関図を作ってみました。
(これまたドヘタクソで大変わかりにくく、申し訳ない限りなのですが)
あくまで、本作に関わった人物を中心にまとめています。
これ以外にもストーリーに絡んできた人物はいるのですが、あえて省略しています。
(本作から読んでいただいた方もいらっしゃると思いますので)
人物整理の参考になれば幸いです。
※携帯でご覧の方はまともに見られないかもしれません。すみません。


   実習生[家庭教師] ―(主従関係)―渚
          |               /
          (兄妹)           /  
          |           (友人)
 ┌(友人) ― 美里 ― (友人)┐  /
  |                   | /
彩香 ―――(友人)――― 紗希 ― (調教済) → 担任


いつも当サイトにご来訪いただき、本当にありがとうございます。
また、応援のお言葉や拍手、ブログランキングへのクリックのご協力に、毎度励まされています。
今後とも、Black Onyx [ブラックオニキス]を、何卒よろしくお願いいたします。

●渚のイラストを頂いています。こちらからどうぞ→イラスト
●彩香のイラストを頂いています。こちらからどうぞ→イラスト
●紗希のイラストを頂いています。こちらからどうぞ→イラスト1 イラスト2

作品を気に入ってくださった方は、ぜひ拍手のクリックをお願いします。
よろしければ、ブログランキングのクリックにもご協力ください。

Back | Novel index | Next
 気が付くと、僕は渚ちゃんの膝枕で寝かされていた。
 びっくりして跳び上がりそうになる。が、身体はまだ動きそうになかった。
 場所はおそらく教育相談室だろう。校内案内の時に、やたら暗い教室だと印象に残っていた。
 ――僕は、生きているんだ。
 それを実感した時、安堵で再び全身の力が抜けていくようだった。
「おはよ」
 と、渚ちゃんが声をかけてくる。僕は申し訳なく思い、謝罪の言葉を口にする。
 渚ちゃんはくすっと笑いを零すと、僕の頭をそっと撫でた。
 僕は渚ちゃんの優しさに、つい涙を流してしまう。美里がそこにいることに気付いたのは、その時だった。僕と渚ちゃんの様子を見ながら「ふふっ」と笑い声を漏らす。
 美里はあらためて僕に「おはよう、お兄ちゃん」と呼びかけ、屈託のない笑顔を見せた。
 僕はそんな美里に会わせる顔がなく、つい目を背けてしまう。
「本当は心配してたの」
 と、美里が口を開く。ひと息つき、再び言葉を続ける。
「お兄ちゃんが家庭教師に行って、いつも痣つくって帰って来てるの……知ってたから」
 僕はその言葉を聞いてますます恥ずかしくなる。
 昨日部屋を出る前に妹が口にした『家庭教師様』の引っかかりの理由がわかった気がした。あれは美里なりの皮肉の言葉だったのだ。
 ――でも、家庭教師だったのは本当だ。決してやましい気持ちで始めたんじゃない。
 それだけは信じてもらいたかった。しかし、喉が痛くて話せない。たくさん絶叫したためだろう。しかし美里は頷き、「わかってる」と僕の両手を握り締めた。僕は救われた気がした。
「紗希さんから渚さんのこと聞いたの。お兄ちゃんが寝てる間、いろいろ話したんだよ。本当に素敵な人で、安心した」
 美里の言葉に、渚ちゃんが少し頬を染める。美里がさらに続ける。
「それにね……あなたは私のお兄ちゃんだからね」
 ――どういう意味だ?
「Mだって、全然不思議じゃないよ」
 渚ちゃんと美里が目を合わせ、微笑み合う。その視線が僕の首元に注がれているのがわかった。見れば、身に着けていた上半身スーツは脱がされ、僕はワイシャツ一枚の姿になっていた。ネクタイが緩められ、ボタンは上から四つ目まで外されていた。
 当然、首輪は剥き出しになっていた。僕はまた恥ずかしさから項垂れる。
「一応、私なりに他人行儀にしようと頑張ったんだけどね。お兄ちゃん、私にも感じちゃうし」
 そう言って、美里はまた「ふふっ」と笑う。
「美里ちゃん以上にドMってことでいいのかな」
 と、渚ちゃんが言い、二人は笑い合った。僕は、ただ俯くことしかできなかった。

 渚ちゃんと出会ってから、僕の周りがどんどん変化していく。
 彼女は僕を捕え、檻に閉じ込めてしまった。
 もがいても、決して出ることはできない心の檻――
 その鍵は、彼女だけが持っているのだ。
 今でも、そして、これからも。



END

Back | Novel index | Next
 何が起こったのか、僕には理解できなかった。
 ただ一つ確信したのは、もう救いはないのだということ。きっと彼女たちは、先生までも……
 サキは何事もなかったように教室に入ってきた。そして皆に向かい、
「ねぇ。せっかく来てくれたんだからさ、渚にも挑戦してもらわない?」
 と呼びかける。女子たちはまた歓喜の声を上げた。
 僕は絶望した。
 それは僕が、こういう状況で渚ちゃんが首を横に振ることがないことを知っているから。
 そして、僕が絶対に彼女に逆らえないということを、僕自身が知っているから。
 自由の利かなくなった身体に鞭打ち、美里の方を見る。美里は相変わらず笑顔のままだった。
 ――妹も、今回の一件で僕に失望してしまうのだろうか。
 そう考えるとやりきれなかった。悲しみの涙が溢れそうになる。
「うん。やらせて」
 渚ちゃんの口から、思った通りの答えが聞こえた。僕は今日、殺されてしまうのかもしれない……
 
 教師になることを夢見て教育実習にやってきた。
 大学での学習も怠らなかった。ひたすら学問に励み、ようやく踏み出した教師への第一歩。
 でも、教師という仕事はそんなに簡単なものではなかった。僕は、現実を甘く見ていた。
 
 渚ちゃんが僕の身体を足で小突く。
 全身から力の抜けた僕は彼女の為すがまま。大の字で床に横たわる形になった。
 ――最後に見えたのは……渚ちゃんの、悪魔のような笑顔と……
 ドスンという音が僕の耳にまで届いた。
 ――渚ちゃんが僕の腹目掛けて思いきり踏み下ろした足。そして……
「ごぶうぅ……」
 ――僕の口から吐き出された、不思議な色の液体……
 薄れゆく意識の中で、僕は快楽を感じていた。あぁ、そっか。また射精したのか……腹責めで……

 『生徒に深入りしないこと』
 その言葉の意味を、僕は知った。

 ――あっちゃー! 渚ちゃん、やっちゃったか。
 ――この遊びは気絶させちゃったらダメなんだよねー。
 ――仕方ないよね。初めてであまりルールも知らないんだし。
 ――それに今日は三人がボコったしね。
 ――あれ? 何か先生、股間濡れてない……?
 
 遠退く意識の中で、僕はそれらの声の数々を静かに聞いていた。

Back | Novel index | Next
 膨らみは女生徒たちによって目聡く見つけられる。
「ちょっと、先生。またここ大きくしてんじゃん」
「ホント、どうしようもないね、このマゾは」
 切り裂くような罵倒を浴び、僕のプライドは既にボロボロだった。背徳感が僕の全身を包む。なぜなら僕は、女生徒たちの知らない事実を知っているから。僕が実の妹に欲情したという事実を……
 僕は妹を汚してしまった。自責の念に駆られる。美里の顔を見るのが怖かった。妹に軽蔑されるのが怖かった。
 ちらりと上目遣いに美里を覗く。彼女は笑っていた。しかし心の中ではきっと……
 その時、ドスンと強烈な一撃が僕を襲った。美里の後ろ回し蹴りが、僕の腹部に見事にクリーンヒットしていたのだ。気付けば彼女の踵は、僕の脇腹に喰い込んでいた。
「うえっ……うげえええぇぇっ……げえぇっ……」
 僕は再び嘔吐した。しかし先ほどのような吐瀉物は出てこない。胃の中が空になってしまっているためか、黄色い液体が喉の奥から絞り出されるだけだった。
 強烈な刺激が鼻を劈く。僕は嘔吐感のみに苛まれ、その苦しさから涙を零した。
「泣いてるの? 先生」
「変なとこ膨らませながら?」
「マジキモイんだけどー」
 再び罵倒の数々を浴びせられる。僕は力なくその場に倒れ込んだ。
 女生徒たちの騒がしい声は、既に僕の脳までは届かなくなっていた。


 意識があるだけに苦悶し続けなければならない。それは本当に残酷なことだと思った。
 突き上げるような嘔吐感をもよおす。しかし吐く物自体がもう内部に残っていない。だから僕は床に突っ伏したまま、何度も胃液を口から垂れ流していた。
 ――もう駄目だ。この子たちはもう、僕ではどうしようも……
 と、その時、扉の窓越しに希望の光が見えたような気がした。淡い期待が幻覚を見せているのではないかとも思ったほどだ。しばし目を疑う。しかし、その姿は確実にそこにあった。担任の先生だ。
 僕はこの時、生まれて初めて神様というものに感謝の気持ちをもった。
「た……たすけ……」
 僕の声は塵にも等しかっただろう。
 思った通り、それは女生徒たちの声によって簡単に消されてしまう。しかし先生がこの現場を見ているという事実が、これ以上ないほどの安心感を僕に与えてくれていた。これで助かるのだ――
 
 ふと違和感を感じる。
 待てども待てども、先生が教室に入ってくる気配がない。それどころか、先生の顔は不自然に強張っているように見えた。目を凝らす。そこにはサキの姿があった。先生の肩越しにサキの朗らかな笑顔が覗く。その瞳は透明感を宿し、口元には淡い微笑を湛えている。彼女はその唇を先生の耳元に寄せていた。ともすれば、直接触れてしまうほどの距離だ。先生は身動き一つ取らない。
 もちろん声は届いてこなかった。しかし、彼女がそっと何かを囁いたと思われたその瞬間、明らかに先生の表情に動揺の色が見て取れた。不敵に笑うサキと微震する先生の表情が窓越しに並んでいた。
 先生はやがて教室に背を向け、逃げるようにその場を離れていった。

Back | Novel index | Next
 僕は身体を丸めたまま、床に横たわっていた。
 顔を上げると、美里の姿がぼんやりと見えた。目が霞み、表情までははっきりと見えなかった。
 ――そうか、美里が……。かわいそうに。彼女たちに強要されて、無理矢理……
 思考力が戻ってくるのを感じる。同時に、罪の意識が僕を包み込む。本当は僕にはわかっていたのだ。自分がMであるために、美里に恥ずかしい思いをさせてしまっていることを。そして、現実逃避のために思考を止めていた自分自身の愚かさを。
「ごめんな。美里……」
 と、掠れた声で呼びかける。自分の不甲斐なさに心底呆れる。
 美里がすっと僕の襟を掴み、立ち上がらせる。
 僕は、足にほとんど力が入らなくなっていた。ぐったりと美里にもたれかかる。妹の顔を間近で見た時、僕の中の何かが動いたような感じがした。思わず身震いしてしまう。
 美里は笑っていた。そして歓喜の眼差しで、僕をじっと見つめていた。
「み、美里……?」
「胃の中身、まだ残ってますよね」
 その言葉と同時に、僕の腹に容赦なく肘を叩き込む。
「ぐふうぅっ!」
 僕はたまらず床に倒れ込もうとする。しかしそれは許されなかった。全体重の乗った僕の身体は、美里の拳によって支えられた。腹を突き上げられ、僕は拳にもたれた姿勢のまま呻く。
 取り巻きの女生徒たちが歓声を上げる。そう言えば、さっき彩香が、美里は今日が初めての参加だ、というようなことを言っていた気がする。おそらく美里が闘う姿を見るのも初めてなのだろう。
 しかし僕はそれを知っていた。
 美里は幼い頃から柔術を学んできたのだ。成績の良かった僕と比べて、彼女は勉強が苦手だった。せめて何か別の特技を、という気持ちで彼女が始めたのが柔術だった。美里は熱心に練習に取り組んだ。最終的には全国大会にも出場するほどの腕前になっていた。
 しかしいくらそうだとは言え、美里の力は僕の想像をはるかに超えるものだった。
 彼女は再びスーツの襟を掴み、僕の身体を起こす。そして、
「苦しいですか?」
 と、耳元で囁いた。そして勢いをつけると、僕の腹に重い膝蹴りを放つ。
「ぐえええぇっ!!……う、あぁ……」
 僕の喉は既に、音を発することさえままならなくなっていた。ただただ呻く。
 口からは絶えず涎が糸を引き、床へと零れていく。吐瀉物の臭気が鼻腔を劈き、一層気分が悪くなる。
 気を失ってしまえればよほど楽だろう。しかしそれすらもできない。
 さらに何度も、膝を鳩尾に叩き付けられる。
「手加減……いりませんよね?」
 と、美里が悪戯っぽくそう呟く。その言葉に打たれ、僕の興奮は高まりを見せた。自分の中の理性やモラルといったものの箍が外れていくような感覚。こんな状況なのに……。ましてや相手は、実の妹なのに……
 再び強烈な膝蹴りを受けた時、僕はまたしても下半身を大きく膨らませてしまっていた。

Back | Novel index | Next
 腹責め地獄とはよく言ったものだ。
 彩香の細い腕から繰り出されるパンチは恐ろしく重かった。延々と腹を責められ続ける苦しみは、まさに地獄と呼ぶにふさわしいと思えた。
「これは……暴力だ、げふぅ……。許されないこと……うえぇっ!」
 彩香は容赦なく僕の腹を殴り続ける。身体が持ち上がるほどの力で突き上げられる。一発打ち込まれる度に、僕は苦悶の声を絞り出す。昼食が喉元にまで上り詰めてくるのを必死で堪える。
「クラスメートには……ぐえっ!!……しちゃいけな、ふぐぅ……」
 僕は殴られながら、必死で正義の声を上げた。少しでもこの気持ちが伝わると信じて。
 しかし、その声は想像以上に残酷な声をもって無惨に打ち消された。
 それは、女生徒全員の笑い声だった。落胆する。心が通じないことを無念に感じる。しかしその後の言葉で、僕は一気に血の気を失っていくような感覚に襲われた。
「先生……勃ってんじゃん」
 僕はその女生徒の言葉に動揺を隠せなかった。弾かれたように、笑い声の勢いが増す。
「マジ? 欲情してんの? うわっ、キモっ!」
「ドMかよ、先生。超サイアクなんだけど」
 ……唇が震えた。言われてすぐに理解した。僕は勃起していたのだ。教室中を包み込む笑い声が耳に痛い。先ほどまでの声とは全く質が違う。女生徒たちの笑い声は、僕自身の心に深々と突き刺さるものへと変わってしまった。もちろん、その理由は僕がよく分かっている。今やその声たちは、十分正当性をもつものとなってしまったのだ。
 ――僕は……陰茎を膨らませながら……説教を……
 言い返す言葉もなかった。自分の愚かさを憎らしく思った。
 諦めの気持ちが芽を出した頃、彩香が僕の耳元で、
「昼食、全部出してあげるね」
 と甘く囁く。その言葉で、僕の愚息はビクンと反応してしまう。
 一際強烈な彩香のパンチが僕の内臓を揺さぶる。僕はとうとう限界を迎えた。
 床目掛けて勢いよく吐瀉した自分を、失望感が包み込んでいった。


 嘲笑が教室中に渦巻いている。
 彩香が僕から手を放す。僕は息を荒げ、床に転がって悶絶した。
 女生徒たちの声がやたら遠くから聞こえる。
「先生Mだから、まだまだいけるよね」
「だね。んじゃ次、誰がやる?」
 朦朧とする頭に響いてきた言葉が信じられなかった。これ以上まだこの苦しみが続くのかと思うと、本当に地獄に落ちてしまったのではないかといった気分になる。
 僕の愚棒は、少し萎み始めていた。
 肉体的な苦痛の大きさからだろうか。精神的な恐怖の大きさからだろうか。それとも……逆?
 ……彩香の手を離れ、苦痛や恐怖から一時的にでも解放されたことへの……失望感……?
 頭を過った考えを否定したかった。しかしそれ以上、思考力が働かない。
「じゃあ、今日こそ美里も参加ね。次、やりなよ」
 と、彩香が言ったようだった。その声も、やはり遠くの方から聞こえた。
 ――サト? みさ、と……? 頭がぼうっとして……

Back | Novel index | Next
 ――僕たちが兄妹だってことはバラさないように、事前に先生方にお願いしてあるんだ。
 ――あまりなれなれしくしない方がいいから。もちろんそれが僕のためでもあるし。

 昨日、自分が言った言葉に後悔はない。
 あくまで他人行儀でいることが、お互いのためなのだ。
 僕は美里に目で合図する。
 美里は小さく頷き、にっこりと笑顔を作った。これでいい。これでいいんだ。
 妹は思いやりのある子だ。きっとこんな環境の中で、ずっと苦しんできたに違いない。皆の調和を崩さないように常に笑顔を見せ、心には大粒の雨を降らせながら。彼女は僕が思っているよりずっと大人になっていたのかもしれない。健気で、かわいそうな美里……
 そもそも、こんな遊びがクラス内で罷り通っていることが問題なのだ。
 そう。僕は妹のためなら頑張れる。僕だって教師の端くれなんだ。こんな遊び、僕が今日限りで断ち切ってみせる。
 彩香に胸座を掴み上げられる。僕は彩香の瞳をキッと睨みつける。
「君たちのやってることはいじめだ」
 そう僕は叫んだ。彩香は不敵な笑みを浮かべ、
「うん。それで?」
 と言いながら、僕の襟をさらに強く締める。僕はさらに叫ぶ。
「暴力だ。そしてリンチだ。今すぐ、……うっ!」
 その言葉は途中で断たれた。世界が暗転したような感覚に襲われ、たまらず身体をくの字に曲げる。その時、彩香の拳が深々と僕の腹にめり込んでいるのが目に映った。
「う……ふぐうぅ……」
 想像以上に重いボディブローに、僕は苦悶する。さらに二発、三発と拳で突き上げられ、足に力が入らなくなる。ぐったりと彩香に体重を預ける。彩香は僕の襟を掴んで身体から離すと、再び拳を握り締めた。
 ふと渚ちゃんの方を見る。彼女は口元に笑みを浮かべながら、じっと様子を見ていた。
 ――きっと渚ちゃんは、僕を試しているんだ。Mとして、しっかり耐えられるかどうか……
 美里は微笑みをその顔に湛えている。彼女の気持ちを考えると、それがまた心苦しい。
 僕は決心した。
 ――ここで屈してはいけない。僕は教師だ。この身をもって、正しい道を教えてやらなければ。
 彩香がその妖艶な瞳を僕へと向ける。しかしそれは、僕にはまるで獣が獲物を狙う目のように見えた。その瞳を見つめ返しながら、僕は『頑張ってね、先生』という昨日の渚ちゃんの言葉を思い出していた。
 腹を殴られ続けた。僕を責め続ける彩香は、本当に楽しそうに見えた。だから僕は耐えた。内臓を抉られるような、強烈な拳を腹で受け止めながら、僕は必死で我慢した。
 ――我慢?
 自問の囁きが聞こえる。もちろんだ。僕は間違いなく我慢している。我慢しているんだ。
 ……まるで殺戮を楽しむような瞳が、目の前にあった。……甘い香水の香りが僕を包んだ。

Back | Novel index | Next
 男子は蹲り、嘔吐した。激しく咳き込んではいるが、辛うじて意識は保っているようだった。
 失禁した上に吐瀉物を吐き出した彼を、女生徒たちは嘲笑し、激しく罵倒した。そのうちの一人が、声高らかに「十一分二秒!」と叫ぶ。
 背筋に冷たいものを感じる。同時に、熱い血が沸々と身体中に巡っていくのがわかる。
 ――彼女たちにとって、暴力は遊びであり、ゲームなのだ。決して許されることじゃない。
 固く拳を握る。震える唇を目一杯噛み締める。もう我慢の限界だった。
 僕のやり切れない気持ちは、この異様な光景を目にした渚ちゃんにとっても同じだと思っていた。
 しかし、彼女は違った。
「面白そうだね……」
 と呟くと、蹲った男子の後ろの襟首を掴み、ぐいと持ち上げる。ぐったりとした彼を見ながらにっこりと微笑む。その表情は、彼女の冷酷さを存分に醸し出していた。彼は怯え、激しく身体を震わせた。
 複雑な心境に苛まれる。これは失望感? それとも……嫉妬心? 僕は再び混乱していた。
 ――僕のご主人様が……今まさに別の男を……
 気付けば僕は扉の窓越しに顔を近付け、その光景に魅入ってしまっていた。
 渚ちゃんの口の端がゆっくりとつり上がる。瞳が妖しい輝きを放つ。飢えた獣のようなそれは、昨日僕が目の当たりにしたものと同じに見えた。
 記憶がまざまざと蘇ってくる。
 生殺しのまま帰宅した僕は、その後の忙しさや疲れからすぐに寝入ってしまった。悶々としつつも、放出することなく。
 下半身がそれを主張するように、今になって激しく疼いてきていた。

 その時、背後に気配を感じた。驚きふり返ると、そこにはサキが立っていた。
「あ、あの……これは……」
 言葉がうまく出てこない。
 サキはくすくすと笑いを零した。彼女がそっと呟く。
「仲間に入れてあげるよ。先生」
「あ……あぅぅ……」
 サキはガラリと扉を開け、僕の背中をドンと押す。僕は勢いよく教室内に倒れ込んだ。
 皆の視線が一気に僕へと注がれる。それは渚ちゃんも同じだった。
「うわああぁぁ!」
 と叫び、男子はふらつく足取りで教室を飛び出していった。
「……せっかくのゲームが……台無しね」
 と、渚ちゃんがポツリと漏らす。その表情からは笑みが消え、無感情な瞳が僕を貫いていた。
 ストップウォッチを手にしていた彩香も続けて、
「責任取ってよね、先生」
 と、ずいと僕に詰め寄る。
 僕は腰を抜かしてしまっていた。見回すと、他の女生徒たちは皆、口元に笑みを浮かべていた。
 ふと、美里の姿が目に入る。彼女は戸惑いの瞳で僕を見つめていた。

Back | Novel index | Next
 呼吸を整え、高鳴る鼓動を必死で抑える。
 実習初日ということもあり、名前がわかる生徒はごくわずかだった。それが悔やまれる。名前がわからなければ、その人間関係を掴むことなど到底できない。その結果がこれだ。
 目の前にある異常な光景。それを目の当たりにした僕は今、軽いパニックに陥っている。ともすれば未然に防げた事態かもしれない。対応も考えられたかもしれない。そう思うと、後悔の念が尽きない。
 しかし今となっては、そんな悠長なことを言っている余裕もなかった。
 ――事実が変わるわけではないのだ。
 僕は必死で状況の把握に努めた。
 一人の男子生徒が複数の女子生徒に取り囲まれていた。二人の女子が、直接男子を押さえつけている。羽交い絞めにしている子と、足を固定させている子。そしてまた別の女子一人が、無防備になった男子の腹を延々と責め続けていた。
 ――彼女の名は、……安藤彩香といったか。
 明朗快活で容姿端麗。繊細で艶やかなストレートロングが印象的な綺麗な子だった。クラスでも一際目立つ存在だ。そのため、僕も彼女の名前は辛うじて覚えていた。
 男子は口に泡を浮かべ、同時に黄色い液体を垂れ流している。彼の目は次第に白くなってきていた。
 ――これはいじめだ。暴力だ。リンチだ。見逃してはいけない。止めなきゃ……
 勇気を振り絞る。しかし、いざとなると足が震え、なかなかその一歩が踏み出せない。
 思わず扉の前を離れ、隠れるように壁に寄りかかる。眩暈がする。情けない……
 その時、一人の女生徒が僕の脇をすり抜け、教室の扉をサラリと開けた。よく見る制服だと直感的に感じた。しかしそれは学園指定のものではない。しばし呆気に取られる。
 その女生徒は教室内にすっと入り、
「紗希。遊びに来たよ」
 と、元気に声をかけた。
 その声に心臓がドクンと脈打つのを感じた。後ろ姿にも見覚えがある。
 ――僕はこの子を知っている。
 再びパニックに陥る。足は依然として動かない。
 そんな中、彼女の呼びかけに応じる声が教室内から聞こえてきた。
「あなた……渚? どうしたの、急に?」
「ん。ただのサボり。暇だったからさ」
 その言葉に僕は仰天し、我を忘れるほどの衝撃に見舞われる。
 ――渚ちゃん? 渚ちゃん! どうして? 一体、何が目的で……?
 扉の陰からそっと中を覗き込む。見れば渚ちゃんは、クラスの女子一人と親しげに話していた。
 ――確かさっき、渚ちゃんは「サキ」と呼んでいた。知り合い? どうして?
 サキだと思われるその子は、端正な顔立ちにボブカットがよく似合っている。小柄だが魅力的な肢体をしている。射抜くような瞳が印象的な子だった。
 サキが「強いよ、この子は」と、他の女生徒に渚ちゃんを紹介している。何がなにやらわからず、僕は頭を抱える。その間にも彩香は男子を痛めつけ続けていた。彼女がふとその手を止める。その口元からは笑みが零れていた。
「じゃあ、あなたも後でやってみる?」
 彩香のその言葉を聞いた男子は「ひぃっ」と声を上げ、間もなく失禁した。

Back | Novel index | Next
 こんなに時の流れが早いと感じたのは初めてだった。
 さっきまで教育実習の初日だと意気込んでいた。するといつの間にか、昼休みの時間になっていた。職員室で昼食をとる。慌しく弁当を頬張る先生方を見て、僕は取り残されたような気分になっていた。
 頭の中は真っ白だった。
 午前中に自分が何をしたのかすら思い出せない。当然、うまくできていたのかどうかなど全くわからなかった。
 しかし、僕は実習生の身だ。一日が終われば、今日の反省や感想を日誌にまとめなければならない。
 そう思うと、ぼうっとしているわけにはいかなかった。
 僕はこの時間を使って、今日半日のことを少しでも思い出そうと試みた。


 朝礼が無事に終わり、ほっとひと息ついた頃には、もう担任の先生は準備を始めていた。
 一時間目は英語だった。僕は初日だから、教室の後ろで授業見学をした。
 その時に取ったメモが手元にきちんとあることを確認し、僕は一安心する。頭は真っ白だったが、とりあえず内容は書き留めてある。後でこれを、日誌を書くための材料にしようと思った。
 二時間目は担任の先生が空き時間だったこともあり、授業の心得のようなものを聞いた。やっぱり頭は働いていなかったが、それでもメモを見るときちんと書き留めてある。僕はここでもほっと胸を撫で下ろした。
 そのメモの中で、一際目立つ一文があった。
 『生徒に深入りしないこと』
 三行目に書かれたその言葉は、一体どういう意味なのだろう。
 ただ、それを話してくれた担任の先生の、深刻そうな顔つきが印象に残っていた。


 弁当箱を閉じた僕は、無意識に教室へと足を運んでいた。
 教室に行けば何かヒントが得られるかもしれない。根拠はない。単純な思いつきからだった。
 何気なく教室の前に立ち、扉についた窓越しに中を覗き見る。もちろんここで足を止める気などなかった。すぐに扉を開けるつもりだったのに、なぜか躊躇してしまう。
 僕はこの瞬間、何か言いようもない異様な感覚に襲われていた。
 じっと中を覗き込む。そしてそれに気付いた時、僕は足が震えて動かなくなった。
 男子の姿が見えないのだ。いや、正確には一人だけ見えている。たった一人だけは。彼はどこにいる? そう。女生徒の輪の中。そこで彼は女生徒に……女生徒たちに? 何を?……何を!?
 パニックに陥る。未だかつてこんな光景を目にするのは初めてだった。目に飛び込んでくる情報を、脳が処理できていない。何度も目を疑ってみたところで、何も変わりはしない。
 僕は完全に足が竦んでしまっていた。

Back | Novel index | Next