{
2009/04/08(水) }
渚は、手にしたリードを片手でぐいと手繰り寄せた。
「確かに、そう名乗ったんだね?」
鋭い眼光を湛え、目の前の男を凝視する。いつものように、彼は全裸だ。渚もまた、いつものセーラー服を着ている。軋んだ首輪に喉を絞めつけられ、彼はしばらく無言のまま恍惚の表情を浮かべていた。その頬を、幾度となくビンタの嵐が襲う。
「返事は?」
渚に急かされ、男はかろうじて「はい」と答えた。
その瞬間、渚の拳が頬に叩きつけられ、彼の足の力が抜ける。渚はリードを持つ手を緩めない。首を吊られる格好になり、彼は苦悶の声と激しい咳を喉から絞り出す。再びしっかりと立ったところを、今度は反対の頬に拳が打ち込まれる。
「それで?」
渚が先を促す。酔ったような表情のまま、男は、
「あ、はい……。あの、僕は兄の廉太郎です、と――」
渚の瞳が再び閃き、廉太郎の腹に膝が突き立てられる。
「んっ……、ぐほおっ!」
身体を丸めようとする彼の首に、引き上げられた首輪がギリギリと喰い込む。
廉太郎は目を大きく見開き、だらしなく開いた口から舌を覗かせ、呻き声を漏らした。よろめく足を蹴られ、重心を失う。掌で胸を突かれ、そのまま壁に身体を押し付けられる。
「馬鹿じゃないの? そんなこと聞いてない!」
渚の罵声が飛び、次の瞬間には――
「ごふっ!……ぐうぅっ!!」
再び、彼女の膝が廉太郎の内部を抉る。壁と膝で腹を圧迫したまま、渚は彼の瞳を食い入るように見つめていた。
廉太郎は咳き込み、やがて口の端から涎を滴らせる。渚はしばらく彼の腹を躙った後、リードを手放した。一も二もなく倒れ込んだ彼は、腹を抱えて四つん這いになる。そして、
「ご、ごめんなさい……。でも、ぼ、僕には、どうしても意味が……」
渚の瞳に訴える。しかし渚は、廉太郎の言葉を気にかける素振りを全く見せない。無言のまま背後へと回り込むと、
「がっ……、んふうぅっ!」
彼の開いた股の間から、睾丸を勢いよく蹴り上げた。
廉太郎は床に横たわり、声を絞り出しながら足をバタつかせる。それでも存在を主張する陰茎を、渚はぐいと踏みつけた。彼の動きはそれで多少止まったが、それでも喉からは音がしきりに漏れてくる。
「こんなとこ膨らませて真剣面しないでよ、先生」
「うぐっ……。ごめんなさい……」
「これじゃお仕置きの意味ないし。……やってらんない」
渚は廉太郎の怒張物からあっさりと足を離した。行き場を失ったように、ソレがビクンビクンと空しく脈を打つ。もどかしさゆえか、彼は両太腿を擦り合わせるようにしながら身体をくねらせる。うつろで淋しげな目を渚に向ける。渚は興醒めたように椅子に腰掛けると、
「それ。その目だよ」
冷淡な口調で言い放った。
「先生のその目は、単なる飾り?」
「ど、どういう……」
「美里ちゃんに花音を紹介された時も、どうせその目は開いてなかったんでしょ。そんな風に」
「そんなことは……。でも、どうして……?」
しかし渚は、それっきり口を開かなかった。
廉太郎は困惑の表情を隠せなかった。彼女の意図がわからないのだろう。しかし、だからといって、それを問いかけられるような雰囲気でもない。
彼は頭を下げて渚に御礼の辞を述べると、服を着て静かに部屋を後にした。
Back | Novel index | Next
「確かに、そう名乗ったんだね?」
鋭い眼光を湛え、目の前の男を凝視する。いつものように、彼は全裸だ。渚もまた、いつものセーラー服を着ている。軋んだ首輪に喉を絞めつけられ、彼はしばらく無言のまま恍惚の表情を浮かべていた。その頬を、幾度となくビンタの嵐が襲う。
「返事は?」
渚に急かされ、男はかろうじて「はい」と答えた。
その瞬間、渚の拳が頬に叩きつけられ、彼の足の力が抜ける。渚はリードを持つ手を緩めない。首を吊られる格好になり、彼は苦悶の声と激しい咳を喉から絞り出す。再びしっかりと立ったところを、今度は反対の頬に拳が打ち込まれる。
「それで?」
渚が先を促す。酔ったような表情のまま、男は、
「あ、はい……。あの、僕は兄の廉太郎です、と――」
渚の瞳が再び閃き、廉太郎の腹に膝が突き立てられる。
「んっ……、ぐほおっ!」
身体を丸めようとする彼の首に、引き上げられた首輪がギリギリと喰い込む。
廉太郎は目を大きく見開き、だらしなく開いた口から舌を覗かせ、呻き声を漏らした。よろめく足を蹴られ、重心を失う。掌で胸を突かれ、そのまま壁に身体を押し付けられる。
「馬鹿じゃないの? そんなこと聞いてない!」
渚の罵声が飛び、次の瞬間には――
「ごふっ!……ぐうぅっ!!」
再び、彼女の膝が廉太郎の内部を抉る。壁と膝で腹を圧迫したまま、渚は彼の瞳を食い入るように見つめていた。
廉太郎は咳き込み、やがて口の端から涎を滴らせる。渚はしばらく彼の腹を躙った後、リードを手放した。一も二もなく倒れ込んだ彼は、腹を抱えて四つん這いになる。そして、
「ご、ごめんなさい……。でも、ぼ、僕には、どうしても意味が……」
渚の瞳に訴える。しかし渚は、廉太郎の言葉を気にかける素振りを全く見せない。無言のまま背後へと回り込むと、
「がっ……、んふうぅっ!」
彼の開いた股の間から、睾丸を勢いよく蹴り上げた。
廉太郎は床に横たわり、声を絞り出しながら足をバタつかせる。それでも存在を主張する陰茎を、渚はぐいと踏みつけた。彼の動きはそれで多少止まったが、それでも喉からは音がしきりに漏れてくる。
「こんなとこ膨らませて真剣面しないでよ、先生」
「うぐっ……。ごめんなさい……」
「これじゃお仕置きの意味ないし。……やってらんない」
渚は廉太郎の怒張物からあっさりと足を離した。行き場を失ったように、ソレがビクンビクンと空しく脈を打つ。もどかしさゆえか、彼は両太腿を擦り合わせるようにしながら身体をくねらせる。うつろで淋しげな目を渚に向ける。渚は興醒めたように椅子に腰掛けると、
「それ。その目だよ」
冷淡な口調で言い放った。
「先生のその目は、単なる飾り?」
「ど、どういう……」
「美里ちゃんに花音を紹介された時も、どうせその目は開いてなかったんでしょ。そんな風に」
「そんなことは……。でも、どうして……?」
しかし渚は、それっきり口を開かなかった。
廉太郎は困惑の表情を隠せなかった。彼女の意図がわからないのだろう。しかし、だからといって、それを問いかけられるような雰囲気でもない。
彼は頭を下げて渚に御礼の辞を述べると、服を着て静かに部屋を後にした。
Back | Novel index | Next
この記事へのコメント
梨央様、僕、いつも、本当に感心しちゃうんです。っていうか、本当に感動させていただいてばかりなんです。梨央様のお描きになられるお仕置きシーンって、本当に素敵だなぁって……。いつも、本当にうっとりさせていただいてばかり、胸キュンキュンさせていただいてばかり、至福に浸らせていただいてばかりなんです。僕、ブラックオニキスにお邪魔させていただくようなって間もなくの頃に、『教えてあげる』で渚様に巡り逢わせていただいて、まるで実在する女神様に恋させていただくみたいに、いっぺんに虜にしていただいちゃったものですから、特に渚様のお仕置きシーンが、その中でも廉太郎先生へのご調教シーンが大好きなんです。本当に好きで好きで堪らないんです。いつもうっとり、胸キュンキュン、心ぽかぽかさせていただくだけでなく、知らず知らずのうちに穢らわしいモノを熱く熱く、堅く堅くさせていただいてしまって、気づいたら年甲斐もなく……(^_^;)。ごめんなさい、下品なことを申し上げてしまって……(^_^;)。ですから、このご作品を楽しませていただいているときも、この頁だけは、いつも『八卦』の最後の頁を、憧れの梨央様の飼い犬にしていただくことを妄想させていただきながら、ついつい時間を忘れて何度も何度も繰り返し読ませていただいてしまうのとまったく同じように、いつも一旦ストーリーを離れさせていただいて、何度も何度も繰り返し読ませていただいて、渚様の素敵なお仕置きを心ゆくまで堪能させていただいてしまうんです(*^_^*)。梨央様は、上品で毅然としたお話ぶりが、占い師さんになっておられるときの相川さんにそっくりでいらっしゃいますから、渚様みたいな感じのご調教はなさらないのかもしれませんけど、こんなにも素敵なお仕置きシーンをお描きになられるくらいなんですから、やっぱり梨央様も、さぞや素敵なご調教をなさるんだろうなって、僕、梨央様の奴隷さん方が羨ましくて羨ましくて仕方なくなってしまって……(*^_^*)。身の程知らずな夢を見させていただいて、本当にごめんなさい(^_^;)。いずれにしても、梨央様、本当に素敵なご作品や女神様方、小悪魔様方を、沢山沢山お産みになってくださいまして、素敵な夢を沢山沢山見させてくださいまして、本当にありがとうございます。やっぱり、梨央様は、渚様と同じく、僕の永遠の女神様で在らせられます(*^_^*)。厚かましいことを申し上げて、ごめんなさい(^_^;)。
2014/04/05(土) 12:14 | URL | 次郎 #-[ 編集]
感激、恐縮、くすぐったさ、気恥ずかしさ、etc...
過分なお言葉を頂き、様々な感情によって現在混乱中の作者です。
私自身は、もちろん言葉や表現にはこだわっています。
ですがそれも、読者様に「心」が無ければ成り立ち得ません。
こんなにも物語――人物に夢中になる。それは、次郎さんの感性の為せる業だと考えています。
ちなみに、この私自身にも夢中だという意味でいいんですよね?(笑)
本作・本場面が、次郎さんにとってのお気に入りになれたことを、大変嬉しく思っています。
過分なお言葉を頂き、様々な感情によって現在混乱中の作者です。
私自身は、もちろん言葉や表現にはこだわっています。
ですがそれも、読者様に「心」が無ければ成り立ち得ません。
こんなにも物語――人物に夢中になる。それは、次郎さんの感性の為せる業だと考えています。
ちなみに、この私自身にも夢中だという意味でいいんですよね?(笑)
本作・本場面が、次郎さんにとってのお気に入りになれたことを、大変嬉しく思っています。
2014/06/15(日) 21:45 | URL | ryonaz #mLlZp4Zg[ 編集]